鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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俺にとってお前は特別だ2

 

 日の当たらない倉庫コンテナの陰。

 アサルトライフルで武装していた輩が通った瞬間に引き寄せて口に手を突っ込み銃を回収する。まぁ使わないから近くに放り投げておくだけなんだけど。

 

「ひぃっ!むーっむーっ」

「大丈夫だ。道さえ教えてくれりゃあ殺しはしないぜ」

 

 そうやって甘やかしてやれば訓練もされていない金で雇われただけの輩はすぐに仲間を売った。

 

「-っ!」

「ありがとよ。約束通り殺しはしない」

「・・・!」

「まぁ少しばかり痛いがな」

 

 内臓に傷をつけないように、されど痛みで悶えるぐらいにナイフで刺す。

 

「さて、行くか」

 

 ハンドサインで行き先を知らせる。事前の取り決め通りに作戦を遂行しよう。

 倉庫街は物音一つ立たない静けさだ。

 俺の足音が嫌になるほど目立つ。相手の数が多かったらどうしようもなかったが、特にそういうこともなさそうだ。幸運だ。

 敵の目的は俺を呼び寄せること。サブリナの誘拐はあくまで手段でしかない。正面だって喧嘩を売ってこない、陰気臭いその行動は俺を怒らせるのに十分だった。

 俺を殺しに来るならいい。それだったら普通に相手してやったし、殺しまではしないだろう。だがサブリナに手を掛けたのなら、どうなるか教えてやる。

 

「居た」

 

 倉庫の合間から武装した男が数人歩哨しているのが見えた。

 その奥の倉庫に居ると思う。歩哨を倒せばまず相手にバレる。

 

「45、9。ちょっとひと暴れするから倉庫の中の注目を引きつけてくれ」

「りょーかーい」

「頑張ってね!」

 

 構えていたVAGをホルスターに仕舞い、ナイフを鞘に戻す。呼吸してグッと体に力を込めて走り出した。

 

「グっ!?」

「なんだ!?」

 

 手前に居た男と奥の男の確認が途切れたタイミングで手前を倒す。気づいた瞬間にトリガーを引いたようだがまともに狙いをつけていない弾が当たるわけもなく。こちらは引っ張って勢い付けたカラシニコフの銃床を顔面に叩きつけた。

 倉庫の方からはグレネードの破裂音。

 もう一人が気づいた時には俺は立ち上がっている。

 

「ひいっ!」

 

 銃剣のついたカラシニコフを構えられたのが分かり、脇腹がピンチを知らせた。

 距離およそ十五メートル。銃の間合いだが、この程度数秒もせずに詰められる。

 振り返ってタックルの姿勢で突っ込み、トリガーを引き切る前に銃の横っ腹を蹴り上げた。

 

「ぶっっっ!いてぇ・・・いてぇッグッ!?!?」

 

 蹴った衝撃でトリガーガードの中にかかっていた指は曲がり、男はうずくまる。その頭に向かってコンバットブーツの踵を落とした。痛そうだが許してくれ。俺は今手段を選べるほど余裕はない。てめぇらの雇い主が卑劣な手段で俺を呼び出したのを悔やんでくれ。

 

「さて、最後はあんたか」

「ひいっ!撃つぞ!」

 

 倉庫の入口から出てきた男がグロック片手にこちらを狙った。間合いが近い。拳銃を当てられる自信がないのか?

 銃口の向きからギリギリを見てグロックを蹴り上げる。数発後ろに飛び、偶然にも倒れていた輩どもに命中したらしい。

 手ぶらになった男を殴る。ご飯を食べているのか怪しい線の細い体が吹き飛び、シャッターにぶつかった。

 

「中を狙えるか?」

「もちろん。9、そっちはどう?」

「こっちもオッケー!」

「それじゃあ援護頼む。相手の目的を確かめるからすぐには撃つなよ」

 

 無線機のスイッチを切り、シャッターに手をかける。

 スルスルと開き始める鉄の物体の奥を見れば椅子に座ったままのサブリナと見覚えのある爺が居やがった。

 忘れもしない。俺が銃を向け、結果的に殺した人形の持ち主だ。

 更にその周りには軽く武装した貧しそうな大人や子供の男。

 近くに居た子供が叫ぶ。

 

「誰だ!」

「呼んだのはあんたたちの方だろ?」

 

 カラシニコフを向けられ両手を上げざるを得ない。初っ端から撃つのもいいが、流石に両手で数えられない数の人間を倒すには骨が折れる。

 

「来たか。お前はメリアを殺した。同じ人形のこの子も殺すのだな」

「馬鹿言うんじゃねぇ。サブリナは俺の大切な家族だっての」

 

 そうやって吐き捨てると爺は切れ散らかし、手に持っていた拳銃を撃った。一度も射撃の経験がないのか、最初の一発はシャッターに当たるものの反動で上に行き、天井を叩いた。

 外に居た奴と同じグロック系。連射できるなら18Cか。AK-47にグロック・・・昨日の人形排除派と同じ武器なのは偶然ではない。

 

「お前は私の家族のメリアを殺したのだ!そんな非情な人間は同じことを繰り返す!」

 

 ギャーギャーわめく年老いた間抜けな男の言葉を小さな声で止めた。

 

「なぁ。自分の家族と他人の家族を等号で結べるのかよ」

「・・・は?」

「そりゃ、あんたの人形をダメにしたのは悪かった。あんたの怒りだって、俺が今怒っているのと同じベクトルなんだろうな。痛いぐらいに分かるよ」

 

 こういうことをされたって仕方ないのは分かってる。

 俺に正面から向かわずに弱いところを突くのは当然の戦術だ。

 

「お前に何が分かる!」

 

 あぁ、分からないさ。

 

「あんたが家族を守りたかったように。俺も家族を守る必要があるんだよ」

「だから、あんたたちをぶっ飛ばす」

「サブリナを使って俺を呼び出したのが間違いだったな」

 

 右手をそっと降ろす。

 

「俺は今最高にキレているっ!」

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