鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
フルオートで右と左の足元にばら撒く。
相手が十五人近くと言えど狭い倉庫では誤射の危険もあって、射線は絞られてくるうえ狙ってくる銃口もせいぜい五個ぐらいだ。
十数発撃ってそのままコンテナの陰に転がり込む。
気づいたように撃ってきた銃弾が頭の上を飛んでいった。
口笛を吹き、天井に向かって一発撃つ。
「任せて。9!」
「うん!」
無線に繋いだイヤホンに二人の声が聞こえたのと同時に倉庫の上の方から射撃音。屋根から倉庫同士の隙間に射線を通し、的確にダウンさせていく。
人間サイズにFCSを搭載した戦術人形はやっぱり強い。
「貴様ら!前の男を殺せ!殺すのだ!」
爺が叫ぶが所詮烏合の衆だ。訓練も受けていないんじゃパニックに陥っても仕方がない。
銃声が止み、顔を覗かせれば爺以外の人間は誰も立っていなかった。
それどころかグロックを持っていた爺の右手も原型を留めていない。改めて戦術人形の恐ろしさを実感した。これは兵士を人形で代替していくのが進むわけだ。
人形なら非情にならない、命令を守る、作戦遂行を努力する。実に優秀な兵士だから。
「爺さん。もうやめようぜ」
VAGをホルスターに戻してゆっくりと正面に立った。
爺の足は生まれたばかりの小鹿のように震えている。抵抗も出来ない年寄りをなぶる趣味はないのだ。
「うるさいうるさいうるさい!」
しゃがれた声でヒステリックに叫んだ爺はテーブルから何かを取った。
その何かは本能的に分かる。昨日のデモ騒ぎでもいくつか押収された手榴弾だ。
ピンが抜かれてしまえばその爆発を抑えるのは手の握力のみ。
そしてあの手榴弾は馬鹿みたいな威力があるらしく、騒ぎでは庁舎の廊下で爆発したそれがデモ隊の一部を仲間ごと吹き飛ばしたそうだ。この空間で炸裂すれば俺はともかくサブリナが危ない。
「逃げて!」
あまりに早すぎる展開と俺の登場にしっかり気が動転し座ったまま呆けていたサブリナが叫んだ。
逃げる?それが一番正しいかもしれない。
「45、やれ」
「ッ無茶言うわね!」
大声で意思を伝えれば後は行動するだけ。
走り出した俺に吃驚した爺が手榴弾を落とす。これは想定内。むしろこちらに転がってくるならチャンスだ。
手榴弾を掴み上にトス。三メートルほどはありそうな天井、出口に近い空間に飛んでい行った。
「ぎゃっ!ボス!?」
「頭下げてろ!」
サブリナを椅子ごと倒し、傍に居る爺さんも引っ張って二人の頭を上半身でカバー。
「ッ・・・45流石だぜ」
爆発が収まれば煤けた空気を払って立ち上がった。
力を込めていたからもろに衝撃を受けて耳が痛い。
埃をはたきながら外にいた45にサムズアップ。ナイスショット。
「なんで私が手榴弾を撃ち抜くと思ったの」
「それが最善だろ?」
「45姉さっすがー!」
何をやったかと言えば簡単な事だ。
俺が放り投げた手榴弾に銃弾を当て弾き、倉庫の入口の方で爆発させた。ただそれだけのシンプルな手段。爆発の範囲がネックなら遠くで爆発させればいいのだ。
ただまぁ、そもそもこんな作戦を約束もなしにやることなんて基本無理だし、俺のトスするポーズのハンドサインだけで理解する45も45だ。もし伝わってなかったら俺の背中は焼けただれていただろう。
なにより放り投げられた手榴弾を銃弾ではじくなんてコンピューターの積んでいる人形だから出来る芸当だし、人形でも訓練と経験を積んでいないと成功しないはず。
如何に45が優れている人形か、ギャランティも納得の値段である。
「45、9、グリフィンに連絡してくれ。昨日の騒ぎに武器を提供していたって言えばすぐに来るだろ」
「りょーかい」
「行ってくるねー!」
UMP姉妹を送り出し、サブリナの方へと振り返った。
「サブリナ、迎えに来たぜ」
「・・・ボス、なんで?」
「なんでって・・・お前が居なくなったから探しに来たんだが」
コンクリート床にへたりと座り込んでいたサブリナに手を貸す。
「ボス・・・なんで探してきてくれたの?」
ペシリと右手をはたかれた。
それはまるで拒絶の仕草で、俺は何かしてしまったのかと猛烈に不安になる。
「大切な家族だからだよ。それ以外にだってなんだって理由は作れる」
サブリナの乱れた前髪に隠れた顔から幾筋かの涙がこぼれてきていた。
「ボスが人形を殺したって、本当?」
「・・・あぁ」
「でも、ボスはこうして助けに来てくれた」
「あぁ」
彼女はゆっくりと振り向く。
「それってさ、矛盾してない?」
人形を殺してなんとも思わない人間が人形を家族として大事にするって、確かにおかしい。
「俺には優先順位がある。一番は仲間、次に自分、最後に他人」
あくまで俺の考えだ。
俺にとっちゃ他人なんて死んだってかまわない。
「人形かどうかは関係ないって、こと?」
跪いて、サブリナの肩に手を掛ける。
「あぁ。だからサブリナ、戻ってきてくれるか?」
そこまで聞いたところで態勢が変わった。俺は尻もちをつき、上を向く姿勢になったのだ。
「・・・もちろん!最高のショーを見せてあげるよ!」
「期待してるぜ」
抱きしめてくるサブリナの背中に両手を添える。
「サム、・・」
何か言われた気がするが、胸板にもろに当たっている柔らかい感触のせいでよく聞き取れなかった。まぁ特に大事な事じゃないだろ。
サム「え、なんだって?(胸の感触で聞いてなかった)」
こんな主人公嫌だぁ・・・
SPASちゃんが惚れるのが早いって?
第一章の時点でかなり堕ちてただろ(タバコ吹かしながら)
次回で第二章は終わり!幕間を一話やって第三章に入る予定ですが、来週行事があって四日ほど海の方の田舎にドナドナされるんですよね。そんなわけで連載が中断します。許して。
お気に入りとかいつもありがとうございます。
SPASちゃんの小説もっと増えてって感想で貰ったけど本当にソレだからね。みんなもSPASちゃんの二次創作を書こう。書くんだよ(豹変)