鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
「ハハハッ!ハハハハハハハッ!」
唐突に爺が笑い出した。
「なにがおかしい」
「滑稽だ!実に滑稽だ!」
「なにがだよ・・・」
あんたが金で雇った人間は居なくて、手元に残っているグロックはホールドオープンしている。
もう抵抗のしようがないはずだ。それなのにも関わらず、爺はうつ伏せで口からよだれを垂らしながら笑い続ける。
「今すぐに私の私兵が来る!貴様と人形を殺すためにな!」
外に数台の輸送車が止まった。バタバタと足音が聞こえ始め、俺の背中には冷や汗が浮かぶ。
「マジかよ・・・サブリナ、こっちで隠れてろ」
「・・・うん」
そっと倉庫の奥にサブリナを隠し、VAGを抜く。入口を完全武装した兵士が封鎖した。武器はAR-15系のアサルトライフルを持ち、ボディプレートまで着こんでいる。
十人ほどの男たちは統制が取れていて、さっきまでの寄せ集めの兵士なんかとは比べ物にならない。
倉庫の裏口にも回っているだろう。
「両手を上げて、地面に這いつくばれ」
先頭に居たリーダー格が顎で指示する。大人しく膝をついて手を頭の後ろに回した。
万事休すか。
こんな初歩的なしくじりをするなんて、俺はダメダメだ。
絶望的な状況で脳の回転は遅くなっていく。こういう状況、あまり得意じゃないんだ。殴り合いとかは大好きだけど、抵抗できないなんて苦しすぎる。
「・・・!」
あることに気づき、俺は口角を上げた。そうか。やっぱり仲間って素晴らしい。
「なんだ?!」
聞きなれた音が遠くから聞こえてきた。それは段々とスピードを上げ近づいてくる。
敵は戸惑っているようだ。
ドン!
砲声と共に入口が爆ぜた。
敵の半分は倒れる。形勢逆転。VAGを抜き、傍に居た敵のリーダーを無力化。残っている兵士も手早く制圧し、裏口から入ってきた残りもぶん殴った。
「サム!サブリナ!無事か!」
「ボス、あんたやっぱり最高だぜ!」
「社長!」
倉庫の入口に横付けした一六式、その装填手席のハッチから社長が出てくる。
「旦那!迎えに来たぜぇ」
「マイク!」
続いて操縦手のハッチからはマイクがピースサインを見せた。
それに砲撃をしたということは・・・
「全く。アタシはなんだってこんな・・・」
「ジョージ!」
戻ってきてくれていた。
俺が傷つけてしまったのに、俺を助けに来てくれた。
「サム、一人でヒーローごっこなんてお前らしくねぇじゃねぇか」
「もっと仲間を頼ってくれよな!」
「アタシは別に、ただ二人が行くって言ったからついてきただけだし」
にやけてしまう顔を抑え、溢れてくる涙を拭う。
「ありがとう。本当に、ありがとう!」
くしゃくしゃの顔を必死に取り繕う俺を見て皆が笑う。
俺だけじゃ、サブリナを助けられなかった。45に9、そして仲間たち。一人では何もできない。だからこそ本当はもっと早く頼るのが正解だったんだろう。それでも、家族は助けに来てくれた。出来過ぎた仲間だ。
「ボス、帰ろう?」
一足先に一六式の方に歩み寄ったサブリナが手を差しだしてくる。
グリフィンの人形や兵士も集まってきていた。爺は拘束され連行されていく。その背中は寂しそうだ。
俺ももしかしたらあんな背中を見せていたのかもしれない。あれは俺の未来の姿かもしれない。
思考を振り払う。
今を生きることが大事なんだ。未来の事なんて後で考えればいい。
「・・・あぁ!」
サブリナの手を取り、家族の待つ一六式に戻った。
▽
そうして、密かに反人形勢力に武器を横流しした上に騒ぎを引き起こすよう先導した実業家の老人はグリフィンに拘束された。
正規軍への支援を行っていた彼を追い詰めたのは、間違いなく俺のせいで。そんな行動を起こすためのパートナーに人形排除派を選んだのは、ある意味皮肉なのだろうか。それとも一人の人形を愛していたからだろうか。
今となっては彼から直接聞かなければ分からない。
そんな騒動から数日が経ち、俺はUMP姉妹に報酬を支払って貯金が跡形もなくなったことに咽び泣いた。両親の遺産を分けた妹からの電話でそのことが露呈し怒鳴られたことも泣くことの助けになった。情けない兄貴でごめんな・・・
一先ず貯金が吹っ飛んだことからは目を逸らし、俺はバーに向かった。
▽
「・・・うっ頭が痛い・・・」
頭痛が痛い。
昨晩はMCVカンパニー全員で飲んでて・・・結局寮に戻ってきても乗員四人全員で飲みなおしてたんだ。マイクとジョージが早々に部屋に戻り、サブリナと日付が変わるまで飲んでいたことは覚えている。
ということは二日酔いか。
酒を飲み過ぎて最後の方の記憶が残っていない。ベッドに入っていたということは意識はあったんだろうが・・・
「うーん・・・」
「うん?」
悩ましい声がすぐ隣から聞こえてきた。
おかしい。
俺とサブリナはそれぞれシングルベッドで寝ていて、ベッド同士はすこし離しておいてあったはずだ。
なのにも関わらず、俺のすぐ隣から声がする。
そーっと隣を見た。
「・・・むにゃむにゃ、サム激しすぎぃ」
サブリナが一糸纏わぬ姿で、絹のように白い肌を惜しげもなく出していた。
「俺、もしかして、やっちゃった?」
血の気が引いていく。
家族に手を出すとか、お前男としてのプライドどこに残してきたんだよ!!!
第二章最終パートでした。
「俺やっちゃいました?(なろう系)」
やっちゃったんだよなぁ(遠い目)
お酒は怖いね。
次回更新は
幕間「アンジャッシュサム×リナ」をお送りいたします。
タイトルでオチてる。
評価、感想、ありがとう。じわじわと増えていく声援に作者はにやけてます。
第三章は展開は予想できるけど最後ぶっ飛ばしてくから(犯行声明)
第三章のあらすじは次回に書きます。