鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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大してアンジャッシュっぽくないのは許して


幕間「アンジャッシュ サム×リナ」

 震える手で服のボタンを閉じていく。

 ダラダラと流れていく冷や汗と耳に届く時計の針の音が止まりかけていた思考を叩き起こした。

 落ち着け。冷静に考えるんだ。

 サブリナは裸だし、俺も全裸だったが、なにもそういうことをしたという結論にはならない。酒に酔ってお互い脱いで寝落ちしたというだけなら、忘れてしまえばどうにでもなる。酒癖が悪かったとだけ覚えておけば同じ過ちは踏まないはずだ。

 そう、そうなんだ。俺はなにもしていない。あぁそうなんだろう。

 

「飲み過ぎには注意だな」

 

 そっとシーツをサブリナにかけ、扉に手をかけた。

 

「あっ・・・サム、おはよう!」

「おう、おはよう」

 

 サブリナが目を覚ましシーツを持ち上げてこちらを見ていた。

 裸で寝ていたことで怒られたりしないだろうか。声音は怒っていないようだが、女性やそれを模した人形のテンションは山の天気のように変わりやすいと聞く。

 蛇に睨まれた蛙のように動きがゆっくりとしながら、俺はそちらを振り返る。

 

「昨日は、その激しかったね・・・」

 

 そう言って頬を紅く染めて顔を両手で隠すサブリナの二の腕の隙間から見える脇と膨らみの丸みから発する重力に俺の視線という林檎は引っ張られた。

 俺は本当に昨日何をしたんだ!やったのか?やっちまったのか?!

 大切な家族とそういうことをやってしまったとしたら、少なくとも一六式の車内では猛烈に気まずい。

 いや、そもそも女性的なあれやこれやに視線が行ってしまう時点で家族としてどうなんだと言われてしまえば反論できないんだけど。

 

「は、激しかったって?」

「うーん、でもまぁ昨日は私から誘ったからなぁ」

 

 今度は体育座りで体にシーツを羽織るサブリナの足が妙になまめかしい。

 昨日の酒が残っているのだろうか・・・いやいやアルコールはとっくに分解されているはず。俺が助平なだけだ。

 

「さ、誘った?」

「うん。(添い寝に)誘ったよ」

「シングルベッドを繋げたのは?」

「(寝転がって)動くには狭いじゃん」

 

 ヤバイヤバイヤバイ。もしかして俺って昨日割と意識あった状態でそういうことしたのか?

 そもそも誘いに乗るんじゃないよ俺のバカ!

 

「ごめん」

「何を謝ってるのか分からないけど、私は(添い寝して)気持ちよかったからいいよ」

「・・・あぁ、うん」

「それにサムの(背中は)大きかったから!」

「(ナニが)大きい!?」

 

 落ち着け落ち着け俺、状況がブラックゾーンに両足を着地させていてもブリッジをすればグレーゾーンにぐらいまでなら両手をつけるはず。体を前のめりにしてアウトの方向に入れさえしなければいい話。人としてはどうかしている。

 

「サム、どうしたの?いつもとテンション違くない?」

「俺はこの状況で冷静に居られるサブリナの方がどうかと思うぞ?!」

 

 俺の様子を見てサブリナは怪しむような顔を見せるが俺からすればそもそもこの状況で何とも思わない方が不思議だ。そういうことしたら関係がうまく行かないのが普通だし、少なくとも冷静に見ることなんてできない・・・はず。

 俺が純情過ぎて、普通の人はこんなに動揺しないのだろうか。

 

「えー、昨日のぐらいならよくあると思うけどなぁ」

「よ、よくある?!」

「うん。(添い寝すれば)人肌を感じられて眠りやすくなるし」

「別の意味で寝てるじゃん・・・」

 

 顔を抑え大きく深呼吸。そうだ、サブリナが気にしてないなら大丈夫。逆に気にして掘り返すのはよくない。あくまで一夜の過ちだと思って忘れるのが一番なんだ。

 最低なことだと自覚はしてるけど他の手段が思いつかない。

 

「これからも定期的に(添い寝を)受け入れてくれるといいな」

 

 そこまで話していたところで唐突に俺の頭脳は冴え始め、別の考えが頭に浮かんできた。

 

「なんかさ、俺たちの会話噛み合ってなくね?」

「え?私が添い寝をしてほしいってお願いしたのをサムは起きたら忘れてただけでしょ?」

 

 そういうことか!

 あぁそういうことか・・・俺が勝手に舞い上がっていただけだった。そうだよな、そもそもそんなに時間を過ごしていない俺たちがそういうことするわけないよな。

 安心して大きなため息が出たうえ、足から力が抜けて扉に背中を預けた。

 

「あぁ、うん、ごめんな」

「何を考えてたの・・・ッ、エッチ」

「ごめん」

 

 悪いとは思ってるけど、言い訳すると誰だってこんな状況になれば同じ思考に陥ると思うんだ。

 ジョージみたいに男以外に興味ないとかマイクみたいにそういうことに関心がないなら考えないんだろうけど、サブリナほど魅力的な人形相手だったら誰だってこうなる。

 

「もう!準備するからサムは出ていって!」

 

 枕を投げられ、部屋から追い出された。

 そういうことをしてなくてよかった。もし手を出していたら、俺は自分の気持ちに嘘をつけなくなっていたから。こんな世迷言から逃げられなくなってしまったら自分が自分でなくなってしまいそうだ。

 だから、良かったんだ。




最後でシリアスっぽく閉めるのはやめろ。

今回の登場人物
サム
純情童貞勘違い派。
サブリナ
特に悪いことはしていない



そんなわけで幕間でした。

なんか猛烈にしおりが増えててびっくりしてます。


次回予告
奪われたコアがパーサによって解析されてしまうシステムセキュリティ上の期限三か月に迫る一週間前、遂にグリフィンはパーサが立てこもる鉄血基地を見つけ出した。グリフィンの部隊とMCVカンパニー。しかしダミーを含め複数で迎撃してきたパーサと鉄血人形の数に押されていく・・・
第三章「因縁の勝負」第一話「黒の津波」
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