鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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第三章「因縁の決着」
黒の津波1


 

 

 手が震える。脇腹が痛む。視線だけはずっと前を睨んでいた。

 

「藪をつついたら蛇が出てきたって感じだな」

「ボス、そんなこと言ってる場合?!」

「まぁ落ち着けって。防衛戦はこの車両の十八番だぜ」

 

 双眼鏡の先、目的地のシェルターがある街の更に奥から鉄血の増援が迫っている。

 周りのビルやアパートからは散発的に狙撃が飛んできていた。威力も狙いも甘いから多分ヴェスピドだろう。それでもアサルトライフルだって侮れないし、ずっと撃たれていては後ろの兵員輸送車は危ない。輸送車には二部隊合わせて八名の人形。ここで迎え撃つしかないが、彼女たちを有効に使わなければ、津波のように押し寄せる鉄血人形は捌き切れないだろう。

 

「どうする、やるの?」

「やるしかないだろ。目標はこの先だ、鉄血基地の戦力を迎え撃てると考えれば悪くない。指揮官、俺はここで迎撃するべきだと考える。指示をくれ」

 

 纏め役らしいアサルトライフルの人形が無線を通して話しかけてくる。二台の輸送車に積まれている無線機では後方のヘリへと電波を送れない。一六式の通信機器は大掛かりなものをつけているのでギリギリではあるものの応答が可能だ。

 

「迎え撃ちましょう。タイムリミットを考えるともう一度出撃するのは難しい。FAL達第一部隊は迎撃。FG42(エフジー)以下の第二部隊は付近の洗浄の後迎撃に加わって!」

「行きましょう、自由な世界へ!」

「久しぶりに本気出す!」

 

 輸送車を左右の路地に隠し、人形達が展開する。アサルトライフルやマシンガンで構成された第一部隊はすぐ近くで防衛線を張り、隊長以外はハンドガンとサブマシンガン、ショットガンで構成されたバランスのよさそうな第二部隊が、足止めのための狙撃をしてくる鉄血の制圧に向かった。

 

「着発用意。目標敵先鋒の護衛(ガード)!あいつらを倒さないとブローニングが効かない」

「着発入れた!」

「敵距離、四百五。砲塔ちょい右だ」

「よし」

 

 砲身がゆっくりと狙いをつける。

 ジョージが小さく呟いたのが発射準備の合図だ。シールドを持って迫ってくるサブマシンガンの鉄血、ガードは他の人形より防御力に優れ、盾役になってくる。接近されればマシンガンで武装している第一部隊の人形ですら御しきれないのが分かっている以上、大火力で吹っ飛ばすしかない。

 

「撃っ!」

 

 着弾すればガードの半分ほどは吹っ飛んだだろうか。

 残りの鉄血は物陰に隠れチャンスを狙っている。こういう時には狙撃のできるライフルの人形が欲しいがないモノをねだりをしている場合じゃなかった。

 

「陣地転換する・・・あぁっとFAL、人形を一人貸してくれ」

「AEK、行きなさい!」

「あららーそろそろ来ると思った!」

 

 銀髪のもさもさした髪型の人形が一六式に飛び乗り、バスケットに登る。

 人形を乗せて走り出すと最後に見た敵の位置と正面向かって引き付けている第一部隊からの無線と照らし合わせて敵の位置を想像し、奇襲をかけるためのルートを組んだ。ここらへんのドローン写真はあるが精度はあまり頼りにならないので、ビルなんかが立ち並んでいる整然とした街並み整備を信じてルートを選ぶ。

 

「前の右角に曲がれ。そのまま右側に隠れた鉄血をしばく」

「イントロの始まりだ!」

 

 バスケットの方から発砲音がする。確かAEK-999って言うロシアのマシンガンを使う人形だったか。

 

「バッカいきなり撃つなって」

「狙われてるんだから仕方ない、仕方ない!」

 

 確かに敵が後から投入し浸透してきたライフルの鉄血、猟兵(イェーガー)が狙って撃ってきている。確かに狙われているんだろうけど、移動する車上からカウンターなんて当たりっこない。

 

「AEK、前の狙え」

「レッツロック!」

 

 答えになっているかよく分からない返事と共にこちらの駆動音を聞いて出てきたヴェスピドとダイナゲートが吹っ飛ぶ。

 

「遅延信管!路地入口にぶち込め。停止射撃、用意」

 

 グッと止まり背中のすぐ後ろを狙撃される。車内に体を隠し頭だけ出して距離を測る。

 

「距離60、撃てっ」

 

 砲弾が入口の傍のコンクリートブロックに刺さり、飛び出してきた敵が近づいてきたタイミングで炸裂した。廃墟染みたコンクリート製の壁が崩落し、その路地に居たロボット共を一網打尽にする。

 

「次、カウンターやる。弾種着発、砲塔左旋回。AEK、狙えそうな敵は」

「十一時の方角のアパート四階に固まってる!」

「ジョージ狙えるか」

「いける」

 

 砲塔が回りだしたことに気づいて銃弾の飛んでくる早さが気持ち早くなった。

 AEKはバスケットに捕まって砲塔に隠れながら次々とイェーガーに牽制していく。

 軽機関銃特有の射撃音は、市街地戦になれてCQBを基本の戦いにしていた俺からするとかなり怖い。アサルトライフル級の銃弾が次々に飛んでくる上、人形のそれは反動制御がしっかりしていて制度も中々だ。

 照準目標はようやく気付いたのか場所を変えようと動き出した。

 

「遅いな、う・・・ッ?!」

 

 砲身が揺れた。砲身の先には黒い服と白い肌と黒い髪の毛。

 忘れもしない因縁の相手だ。

 キュートなその口許からおどろおどろしい声が聞こえてくる。

 

「みぃつけたぁ・・・!!」

 

 脇腹が刺されたみたいに痛い。

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