鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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黒の津波2

 心臓の鼓動が早鐘を打つように早くなる。

 キューポラ上のカバーについた防弾ガラス越しに、視線が合っていた。

 IOPやグリフィンが躍起になってパーサのことを探していたのだから、俺とサブリナが協力して撃退したあのパーサはダミーだったということだ。もしかしたら今睨みあってるこいつもダミーかもしれない。

 偽物だろうが本物だろうが、肝心のコアとその解析データさえ回収すればいいのは分かっている。それでもそれならこのゴスロリ人形自体を倒すのが手っ取り早い。

 

「・・・会いたかったぜ、パーサ」

 

 震えそうな声を無理くり抑えて、いつもより低い声で呟いた。

 砲身が自由じゃないから今はAEKか俺しか狙えない。あまりの出来事に人形であるAEKですら反応できなかったのだから、俺がブローニングを構えていなかったのは事実だ。

 体に染みついた癖はそれをしなくなって数か月経っても抜けることはなく。

 

「・・・チイッ!」

 

 VAGをホルスターから抜き、防弾板の隙間からフルオートで乱射した。

 パーサはゴスロリのスカートをはためかせながらバク宙し、小さな店の屋根に飛び乗っていく。人形の身体能力は目を見張るものがあるな。

 前の戦いでPx4の9㎜パラベラムを二発ド頭にぶち込まれても動ける程度には、他の鉄血人形とは特性の違う性能だった。というかヘッドショットで機能が停止しないならバラバラにしないと倒せないかもしれない。

 しかし、7.62㎜ケースレス拳銃弾が十数発近く飛んで来れば逃げるようだ。

 

「悪いリズムだぜ、これ!」

「言ってる場合か!ばら撒いて追撃しろ」

 

 AEKが愚痴りつつ牽制を行って相手との距離は少し開いた。

 

「全力後退、今がチャンスだ。距離を取って仕切りなおす!」

「ボス!着発でいいの?!」

「あぁ!ジョージ、パーサの足元に向かって砲塔回せ。次弾はVT榴弾(反応信管)!」

 

 VTは馬鹿みたいに高いから正直使いたくないが、動きの速くて小さい人形相手には最適な砲弾だ。ただ百五ミリ砲純正の砲弾というわけではなく、既存の榴弾に高すぎる信管を組み合わせただけだったりする。それでも通常の砲弾を数本買うのと同じくらい。

 全速でバックする一六式の動きは俺たち乗員の心情を表すかのようにビビっている。こんな時に不調とか起こさないでくれよ。

 

「距離百二十、撃てっ!」

 

 こちらの出方を伺うパーサが動き出す瞬間を見切り、発射の合図。

 砲声がいつもと違うような気がしたが、周りからは断続的に銃声や爆発音が聞こえるのでどれがどれなのか分からない。

 なにより砲弾は飛んで炸裂したわけで、すぐに砲身がダメになるとかそういうわけじゃないだろう。

 

「二代目、照準と砲弾の飛び方が違う!」

「パーサに細工されたのか?」

 

 砲身に飛びつけば照準と少しずれるという種だ。人形ほどのパワーだからこそ出来る曲技。もっと不具合が出ているかもしれないが、一撃で倒せるだけの力があるのは戦車砲だけだ。使わないという選択肢はなかった。

 

「VT、入れた!」

「とっておきの砲弾だから、チャンスを絞るぞ。各員機銃で牽制、地面に寄せろ!」

 

 四門のブローニングとAEKの銃弾が撓るような曳光弾の線が道路の先からジャンプして近づいてくる黒を地面に縫い寄せる。

 

「スモークを後方に射出、射撃のタイミングを隠してブッ叩く。・・・ぶちかませ!」

 

 砲塔に増設したスモークディスチャージャーが進行方向である後ろにスモーク弾を射出し、展開されたスモークに突っ込む寸前でとっておきの一撃を放った。

 

「やったか・・・?」

 

 ジョージが小さな声を上げる。それ、昔の映画でよくあるやれてないフラグなんだが。

 

「次弾着発だ。警戒を怠るな」

 

 一六式はバックを続けて、俺はブローニングを構えた。近づいたところをVTで反応した榴弾で吹っ飛んだはずだけど避けられた可能性だってある。

 

「オモシロイじゃナい?!」

「来てる来てる来てる!!!」

「!?回避行動っ!」

 

 AEKが一番最初に気が付き、太陽の差してくる上側を狙う。

 パーサはこれっぽちも損傷していない状態で太陽の光と同化しながら急降下してきた。あれを狙えるのは自由に照準できるAEKだけで、備え付けのブローニングでは仰角が足りない。

 全速から減速しつつ右に左に動く一六式の上では、たとえAEKが人形であろうとまともに当てられなかった。

 直上から急降下してくるパーサがどうやってそこまで来たのか想像もつかない。人形だって人を模しているわけで動きには限界があるはずで。

 

「ボス、前にもパーサが居る!」

「前!?今落ちてきたやつとは別かよ!」

 

 慌てて見回せば、着地して迫ってきている無傷のパーサからうーんと遠くのところにボロボロになったもう一人のパーサが居た。居やがった。

 マズイ。VT信管の砲弾は一発しか買えなかった。どうやって倒す?無傷のあいつを倒す方法を思いつけない。

 

「二代目、停止射撃させてほしい。絶対に当てて見せる」

「・・・分かった。マイク、五秒後に停止。距離だいたい百で撃て」

 

 ジョージの腕前は千メートルからでも的の中心を撃ち抜けるほどだ。今までの戦いでいやなくらい信用させられている。

 今はそれに賭けるしか、ない。

 

「了解。絶対に外さない」

 

 ゆっくりと狙いを合わせる。車体が止まった。狙うこと一秒。

 

「撃っ!」

 

 瞬間、砲塔を衝撃が襲った。




はい。(つるし上げられながら)
作者です。二回投稿って言っておきながら、昨日の夜の更新をしませんでした。サボりました。許してくれとは言わない。悪いのは私だ。

あと明日は二話書くつもりなので、明後日の朝更新から土曜か日曜までお休みになります。流石に出先では話をかけない・・・

そんなわけで、多分中途半端なところで止まっちゃいます。


いつもながらお気に入りとかありがとうございます。
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