鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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第一話後編パートです

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俺は人形が嫌いだ2

 ハンマーを下ろし、トリガーに指を掛ける。

 息を整えて姿勢を作り、サイトに焦点を合わせて目標に重ねた。

 

「・・・ふぅ」

 

 思い出すのは人形が救いを乞う姿。

 人形がいくら人間の姿にそっくりだとしても、結局は人形じゃないのか?何故、情を持つ。人形と人間の間は対等じゃないはずだ。人形は疑似人格を持っている。その感情の幅は人間と近い。それでも本来ならば尽くすものとして立ち振る舞う設定がなされているはずで、あの時の人形の行動を説明できない。

 何故、人形は自分を優先した?

 夫人を主としているのなら心配するのはそっちじゃないのか?

 夫人が撃たれる前に撃たれていたとは言え、高品質の人形であればあの程度の銃創なら動けたはず。だがあの人形はそうはしなかった。

 理解が出来ない。

 普段から娘・・・人間として扱われるあまりに、自身のあるべき姿を見失ったのだろうか。

 それがいいことなのか、悪いことなのか、全く分からない。

 

 三発の発砲音と共にホールドオープン。スチールのテーブルにマガジンが落ちた。

 機関部に弾薬が残っていないかを確かめ、スライドを戻す。

 誰も居ない射撃場は破裂音が響いた以外全くの静寂。

 心は冷静じゃない。拳銃を置いた腕は震えている。

 

「死体を見るのは久しぶりだったな・・・」

 

 正規軍に入ってすぐは血を血で洗うような生活をしていたが、治安維持の特殊部隊に回されてからは滅多に見なくなった。この程度で心が乱れるなんて俺もまだまだだ。

 的の点数を確認する。

 三発撃って、大体中心に入っている。こうなるまでに十四発外していたが、それはこの腕の震えとは関係がない。俺の未熟ゆえだ。

 ため息をつき、ガシガシと短く刈り込んでいる黒髪を撫で上げた。

 

「サム、隊長が呼んでいる。射撃の片づけはしとくから」

「分かった」

 

 空の弾倉を丸っこい独特な形の拳銃に入れる。ベレッタPx4、ベレッタ特有のデザインから脱却したセミオートの傑作だ。

 

「サム伍長、入ります」

「おう」

 

 隊長室に入るなり、ソファを勧められた。

 

「すまんな。いきなり呼び出して」

 

 煙草を手に取った隊長は火をつけ、対面に座る。書類を持っていた左手の指がトントンとテーブルを小突いていた。

 

「単刀直入だが、お前はクビになる。ま、分かるだろ?」

 

 頷く。

 

「・・・氏は、大層にお悲しみになられている。伴侶であった夫人を失い、家族同然であった人形も整備する必要があったからだ」

「そして・・・氏からのクレームが入った」

「サム、お前は人形に向かって銃を構えたな?」

「人形はそれがトラウマになったらしい。ヒステリーと破壊衝動のあまりに、整備中に暴れだしたそうだ。解体処分を行った。・・・氏はその事実に心を打ちのめされたようだ。誰か責任を取らなければ、我々に対する支援を打ち切るとも明言された。・・・氏は我々の大口サポーターだ。とてもじゃないが逆らえない」

「すまん、サム。俺はお前(かぞく)を守れなかった・・・」

 

 その日、俺は正規軍の服を脱いだ。

 

 

 

 

 来たこともない街。随分と辺鄙なところだ。道が分からず、何とかたどり着いた酒場で聞いても高い酒でぼったくられ。新参者に対する嫌がらせは何処も同じらしい。

 僻々していたところで街頭に居た少女が道を教えてくれた。

 変わった髪色をサイドテールにした少女は何か含みを持った、イヤーな笑い方をしているが、嘘は言っていないようで目的地にたどり着くことが出来た。

 どうやら目的のPMCはグリフィン&クルーガーという大手のPMCの基地を間借りしており、変な乗り物を運用しているそうだ。

 グリフィンと言えば、最近業務を拡大している戦術人形中心のPMCで、現在の人形のシェアを独り占めしているIOP社と提携しており他社よりも鉄血に対し、有利。

 その程度の知識ではあるが、まさかグリフィンの戦術人形もあの人形のように厄介な思考を持っているのだろうか。とてもじゃないが作戦を遂行するのに適しているとは思えない。

 

「お前がサムってやつか」

「ボス、誰よその男!」

「ボスの新しい、ソレ?」

 

 首を左右に全力で振る。

 格納庫のすぐそばまで歩いてきた俺の肩を叩いてきた男は俺の名前を知っているようだ。「ボス」と取り巻きに呼ばれたそいつはスキンヘッドの頭を光らせ、快活な笑顔を浮かべた。歳は五十過ぎだろうか、中年にはとっくに足を踏み入れている。なんか臭うし。

 オカマ口調でひょろながの体を気だるそうに動かしている男は眼鏡をはめ、優男のような髪を弄っていた。

 続いて出てきた小柄な黒人は調子が軽そうだ。

 取り巻きの二人は俺と同じくらいか?二十代後半のようだ。

 

「サム“元”伍長だ。俺たちの新しい仲間になる。俺が社長で車長。ボスって呼んでくれ。そっちのもやしが砲手(ガンナー)のジョージ。そんでチビの方は操縦手(ドライバー)のマイケルだ」

 

 砲手に操縦手に車長?

 

「俺たちの乗り物はアレ。お前は装填手(ローダー)だ」

 

 後ろを振り返るとそこには大きな鉄の塊が居た。

 馬上兵の槍のように構えられた主砲、ポーランド騎兵(フッサール)の羽のように立っているアンテナ、まるでこちらを押しつぶすような重量を感じる車体。

 

「戦車・・・?」

 

 それは紛れもなく時代遅れの戦車ってやつだった。

 

「ボス、こいつ一六式のこと戦車って言いやがりましたよ!」

「マイク、普通に見たらこれ戦車だから」

「馬鹿もやし!どう見たってこのタイヤを見りゃ装輪装甲車って分かるだろ!」

「無理無理」

 

 口喧嘩をしているジョージとマイケルに拳骨を落としたボスが振り返りざまこう言った。

 

「ようこそ、サム。ようこそ、MCVカンパニーへ!ようこそ、鉄の棺桶へ・・・」

 

 不敵な笑顔に背筋が冷えた。




サム転職。戦闘職種が機甲職種になっていいことあるのかしら?

次回予告
装填手となったサムはイマイチ自分の役割を見つけることはできない。初陣においてポカをやらかし、叱責され、奮起するサム。
第二話「ボス、俺を使ってくれないか」

タイトルは漫画のパクリです。何の漫画か分かった人居るかしら・・・
(調べたら一発で出るので調べちゃ)ダメです

ヒロイン?まだ出ないし、今回出てきた子はヒロインじゃないよ。っていうかこの描写で分かる人多いだろうね・・・

次回更新の予定は次の0時。上がらなかったら書きあげられなかったということです。
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