鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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アイツを倒す三本の矢3

 

 おんぼろで小さなレンガ積みのアパート。空の段ボールが立ち並ぶ廊下は昔の法律ならばアウトだと思うが、その部屋の住人が世の中くそくらえなダメ人間なので改善はしないだろう。

 

「ボス、こんなところまで会いに来るのって誰なの?もしかして婚約者(フィアンセ)?」

「違うって。妹だよ妹」

 

 サブリナの柔らかい手を引っ張り、段ボールのキルハウスを壁を壊さないようにクリアリング。なんだか埃っぽい廊下は人が住んでいるとは思えない。

 俺には血を分けた妹が一人。両親が死んでいるので唯一の実の家族であり親族だ。

 俺のせいで働けなくなってしまっている以上仕送りをしているが、全くこれでしっかりと生活しているのだろうか。兄貴は心配である。

 同じ遺産を半分で分けた妹がちょっとしたお金持ちであるのに対して、俺は無駄遣いをしすぎたせいで生活が苦しい。もちろん無駄遣いをしたことがバレた時には怒られてしまったものだ。

 

「おい、リンヤオ。廊下はもう少しどうにかならんのか・・・リンヤオ?」

 

 合鍵でドアを開け勝手知ったる玄関に入ると、人の気配は薄い。

 俺と違って祖先の国に近い名前を持つ妹はいつも通りに部屋に籠っているようだった。足を悪くしているから出不精になるだろうし、組織の連中に見つかるのも困るから基本出掛けられないとは言え、隣のダルトさんちのおじさんおばさんとは仲が良かったはずだけど。

 

「・・・なんだよ、クソ兄貴・・・って女?兄貴、まさか金を使ったって女を買ったの?」

 

 あたるとも遠からずな答えに俺は言葉を濁すだけだ。

 確かにサブリナは人形で、しかも無駄遣いはサブリナ関連。そういう関係のために買ったわけではないと言っても信じてはもらえまい。

 

「えぇっと、リンヤオちゃん・・・でいいんだよね?私はサブリナ・フランキ。サムに買ってもらった人形なんだ」

「・・・人形?」

 

 リンヤオは怪しむような眼でこちらをにらむ。動いた唇はこう言っている。「そういうプレイ?」違うわ。そんなプレイに興味は全くないし、サブリナは本物の人形だよ。

 

「ま、今の会社の同僚みたいなもんだ。仲良くしてくれ」

「あーい。んじゃ僕はゲームしてるから、買ったものは冷蔵庫に入れといて。あとお昼もよろしくー」

「分かったよ。焼飯でいいよな?」

「それしか得意じゃないじゃん」

「悪かったって」

 

 妹は足を引きずって部屋に戻っていく。扉の先には真っ暗な部屋からゲーム独特のテレビの激しい点滅が見えた。

 

「リンヤオちゃんってずっとゲームしてるの?」

「あぁ。ここに引っ越して十年以上経つが、俺が正規軍で前線に立ち始めてからずっとだよ」

 

 二人で組織と関わらずに生きようと決めて家を出てリンヤオが足を痛めて引きこもった。俺は生活費を稼ぐために正規軍に入り、最初の間はなるべく家に戻ってきて朝晩ぐらいは飯を作ってやっていた。けれど前線に行ったり特殊部隊に入ってからは休みの日に大きな買い物を手伝うぐらいしか出来ていない。

 酷い兄貴だよな・・・

 

「十年、それだとあの子いくつなの?」

「確か今年で二十五だ」

 

 でも怪我のせいか身長はほとんど伸びず成長もしていないせいで、見た目はジュニアハイぐらいしかない。これでも結婚適齢期のはずの年齢なのに、いつ見ても年の離れた妹のままだ。もしかしたらあの時から時間が止まっているのかもしれない。そんな辛い人生を強いるのは俺だ。

 

「ご飯とかって」

「一応自分の分は作ってるらしい。料理は小さい頃から得意だったしな」

 

 料理も出来る、節約も得意で家事全般も上手い、顔は美少女であるし、もう少し背丈があって家の外に出ればモテると思うのだが、家から出ないせいで出会いもない。そろそろ合コンぐらい行ってもいいと言っても怒っていやがる。

 結婚した方が体調を崩した時に俺に頼らなくてもいいだろうに。

 

「コーラは一本出しておけばいーい?」

「あぁ。サブリナはよく食べるし五人前ぐらい作るか」

 

 リビングに繋がっているキッチンでサブリナと肩を並べ買ってきた食材を整理する。

 コーラが大好きだけど体が弱いせいで中々買ってこれない妹のために買いだめしたコーラや明日までの食材をサブリナが冷蔵庫に放り込み、俺が昼飯の準備をする。

 ふと端にある蒸し器からいい匂いが漂ってきた。

 

「うーんイイ匂い。リンヤオちゃんが作ったのかな?」

「小籠包、あいつの得意料理だよ。俺が一番好きな食べ物なんだ」

 

 ここに暮らし始めた時にふと呟いた言葉から練習し、一年経ったあたりから店を出せそうなほどの腕前を持ったリンヤオは俺が帰ってくるたびに作ってくれる。

 本当にいい妹だ。

 優しくて人間的にしっかりしている奴に嫁がせたい。女がいいというのなら認めてやるし、最悪ダメ男に貢ぐと言い出しても生活ができるのであれば苦渋の決断になるだろうが仕送りを続けてやるつもりだ。

 全くそんな浮いた話を聞かないからかなり心配である。

 

「リンヤオ、覗いてるんならそろそろ蒸し器から出したらどうだ?」

 

 フライパンで炊いたライスを焼いていると後ろから視線を感じる。振り向いて声を掛けてやればすごい音を立ててリンヤオの部屋のドアが閉まった。

 今頃思春期か?

 

「・・・クソ兄貴の○○○○(ピー)野郎!」

 

 ものすごい剣幕で叫んでいる。やっぱり思春期かよ。




あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!妹回を書こうとしたら長くなりすぎて次回に続きそうになった!本来の予定ならもう次には出撃のつもりだったのに、更に二回ぐらいは書けそうなほどだ!リンヤオちゃんは体弱め僕っこ合法ロリシスコンだけどあくまでちょいだしのつもりだったんだ・・・!

最後のシーンを解説すると
リンヤオ「僕だけの兄貴に女が居る・・・?しかも仲良くキッチンに並ぶとか、僕にすらやってくれなかったのに・・・!(小さい頃はやってます)体が幼いのがいかんのか?あの女もボンキュッボンだしな・・・!あいつに貯金をぶっ放すとか相当惚れてるんじゃないか?ふざけないでよ・・・!兄貴は僕のお兄ちゃんなのに・・・!」
みたいな感情が隠れてます。
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