鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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アイツを倒す三本の矢4

「「いただきます」」

「・・・チイッ。いただきます」

 

 妹の機嫌が悪すぎる。

 さっきからサブリナの事を睨み続けているし、配膳している俺の脛をゲシゲシと蹴り飛ばしてくる様子はちょっとした反抗期だ。お前成人済みだろうが・・・

 

「おっ、やっぱりリンヤオの小籠包は美味い!また腕を上げたんじゃないか?」

「お、おだてたって何もないし。そんなに美味しいなら兄貴が一杯帰ってくればいい話だし」

 

 テーブルの対面から脚が飛んでくる。着古したTシャツに短パンから見える手足は病的なまでに細いし白いせいで、蹴りに力は入っていない。

 

「リンヤオ、そろそろ外に出ても大丈夫だぜ?もっと出掛けてくれた方が、俺は嬉しい」

「・・・だからと言ってあいつらが僕たちを探していないって言えないでしょ」

「それは、そうなんだけど・・・」

 

 組織の攻撃でリンヤオは足を痛めた。次に狙われれば殺されるか、祭り上げる対象として誘拐されるか。既に怪我をしている以上、トラウマで必要以上に恐怖を持つのは当然だった。

 

「別に僕の足がダメになったのは兄貴が悪いわけじゃない。むしろ自由にしてくれたんだ」

「ボスにリンヤオちゃん、その出来事って私が聞いてもいいものなの?」

 

 三人前の焼飯にスプーンを入れているサブリナが恐る恐る聞いてくる。

 俺たち兄妹は顔を見合わせアイコンタクト取ってから、ゆっくりと話を始めた。

 あれは十二年前のことだ・・・

 

「俺の両親は、新興宗教、それもカルトの中心だったんだ。かなりデカい組織は、元々親父の祖父母の家から続いていた」

 

 そうは言うモノの、俺とリンヤオは無神論者だ。

 

「十三年前、僕と兄貴を残して両親は揃って死んだ。組織は次に祭り上げる対象として僕たち兄妹を選んだんだ」

「俺は正直両親の行動は理解しなかったし、率先してリンヤオを外に連れ出して宗教から遠ざけて育てていたから、どっちも継ぐのは無理だった」

 

 それでも組織からすれば後継者は俺たち兄妹しか居なかった。

 

「十二年前、組織の連中によって僕たちは監禁された。実家の豪邸、教団の建物の地下で監禁されて、僕たちは子をなすことを命じられたんだよね」

「・・・子をなす?それって!」

「近親相姦だよ。マジで狂ってる。もちろん俺は拒否して、暴行を受けながらもリンヤオを庇って生活してた」

 

 俺の両親ですらも近い血筋だったらしい。そのせいもあってか妹は生まれつき体が強くなかった。

 そういう教えを信じている組織のやつらは明らかに正気ではないと思う。

 真っ暗な部屋で、兄妹二人閉じ込められて生活をしていた一年間は辛かった。リンヤオはいつも泣いていたし、俺は泣く姿を見せないためにトイレで嗚咽していた。そんな三百六十五日以上の生活は地獄そのもので、俺たちが脱走を決意したのは当然の結果だと思う。

 

「一年監禁されて、僕と兄貴は脱走を決意した。あの頃の兄貴はお世辞にも戦えるとは言えなかったけど、持ち前のセンスと習っていたボクシングで瞬く間に監視から銃を奪って、実家から連れ出してくれたんだ」

「ま、逃げる途中でリンヤオは足を撃たれてしまった。盗んできた両親の金から治療費はいくらでも出せたけど組織のやつらが探し回ったせいで治療が遅れ、後遺症が残ったってわけだ」

「・・・遺産があったから、ボスは私を買えたし、リンヤオちゃんは生活できてるってこと?」

「そうみたい。でも僕も兄貴も、遺産を辿られて組織の連中に見つかるかもしれないんだよね」

 

 遺産の馬鹿みたいに価値のあるデカい天然のダイヤモンドを売り払った俺たちのことをどこかしらか組織の連中がかぎつけるかもしれない。一応身元は隠して信頼できる筋から売り払ったが、あんな恐ろしい品、どんな人間が買ったのやら・・・

 

「んで、後は俺が生活費を稼ぐために正規軍に入隊。リンヤオは引きこもりって話だ」

「・・・すごい兄妹だね。強くて、とっても素晴らしい絆だと思う」

「「兄貴(リンヤオ)が居たからね(な)」」

 

 俺たち兄妹の絆は地下室で強固になったと思う。その前からリンヤオは俺の後ろを鳥の子供のようについてきていたが、脱走して足を動かせなかった頃は甘えん坊だったし。

 

「昔はお兄ちゃんお兄ちゃんと言って俺の言うことを素直に聞いてくれたんだがなぁ」

「今も素直に聞いてるだろバカ兄貴」

「じゃあ、早く結婚して俺を安心させてくれ」

「・・・死ね!デリカシー皆無兄貴!」

 

 

 

 

「いよいよ明日か」

「そうだね。きっと勝てるよ!」

「なぁ、サブリナ。俺が死んだら、リンヤオを気にかけてくれるか?」

 

 アパートの部屋を一瞥してからサブリナの方を見ると、視界の下半分がサブリナのつやのある髪色で染まる。

 ギュッと抱き着かれていることだけが分かった。

 

「・・・ふざけないでよ。サムだけ死なせるわけないじゃん!だって私は・・・私は・・・サムの事を・・・あ・・・好きだから!」

「分かってるよ。死に急ぐつもりはないさ。それでもやる時はやる。だからその時には、妹の事を任せた。一番信頼してるからよ」

 

 左腕を背中に回し、右手で優しく髪を撫でる。抱き着いてくる力は強い。

 

「サム、私の気持ちを受け取ってほしい」

 

 胸板から顔を上げたサブリナの目は覚悟が決まっている。目元は少し赤い。

 

「分かったよ」

 

 サブリナは目を閉じて背伸びをするように足を伸ばす。段々と距離が近くなって行って、俺は目を閉じた。

 唇が触れる。素面で意識がある状態の初めてのキスは、あまりよく分からなかった。




次回予告
無傷のダミーはFG42率いる人形第二部隊と会敵、第一部隊が雑魚を掃討し、遂に本体と対面する一六式。サムの渾身の一撃は届くのか。
第三章第二話「解析器をぶっ壊す(パーサの拠点での言葉(政見放送)」


ドルフロ要素薄すぎるってそれ一番言われてるから(自虐)
一応シーズンツーからは人形一杯だすつもりなんでもう少しやりたい放題やらせて。もちろん人形だしてからもやりたい放題やっていくつもりなんだけども。

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