鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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パーサをぶっ壊す2

 

 

 砲身に見えたそれが爆発し、敵が突っ込んでくる空間に炸裂した。

 

「ナニをしやがった!」

「指向性散弾さ」

 

 聞こえるわけもないだろうが答えてやる。

 砲身に見えていた砲身の半分以上先は全て、前方に向かって散弾をバラまく筒になっていた。敵は前回一六式が砲身損傷により戦えなくなったことを知っている。だから最初に狙ってくるのは分かっていた。来ることが分かっているのなら、確実にダメージを与えたい。おまけに砲身長が短くなっていることで警戒されても困ったので、砲身は以前と変わらない長さで近づいてカウンターをぶちかますことを狙っていたのだ。

 パーサは破片を避けるために地面へと急降下、動きが止まった。

 

「・・・クソっ!」

 

 すでに一六式の新しい槍は狙いを付けている。

 

「ガンランチャー、榴弾装填!」

「入れた!」

 

 空挺戦車向けに生産された百五十二ミリガンランチャーの短い砲身が地面に叩きつけるように落下したパーサの鼻っ面と正面を向く。

 シニヨンに結ばれていたパーサの銀髪が解け、長髪の銀と服の黒の対比が美しい。

 

「行ける」

「距離二十五。用意、撃てっ!」

 

 絶対に外さない。この距離なら対応できないだろうし、万が一直撃しなくても大ダメージは間違いないのだ。

 一発の砲声が、バンカー前の静寂を打ち破った。着弾煙は次第に晴れていくものの不安が募っていく。脇腹が痛い。

 

「・・・うそ」

 

 乗員の誰かが呟く。

 

「ヤリヤガッタなぁッ!」

「マジかよ」

 

 パーサは生きてやがった。大口径の榴弾を至近距離で喰らっているのにも関わらずだ。

 確かに大ダメージは与えている。顔の右半分は人工皮膚が爛れ、右手はズタズタに引き裂かれて動いていない。右半身だけじゃなくフリルのついた服の所々は破けて、病的なぐらいに白い肌が露出していた。

 おどろおどろしい叫び声は闘志を失っていない。対照的に行動は立ち上がるなり、バンカーの方に脱兎のごとく逃げ始める。

 残弾のロケットやミサイル、ブローニングをバンカーの入口に向かって撃っても当たらなかった。足だって機能不全を起こしそうなぐらいには損傷しているはずなのに、必死に逃げていくパーサは未だ厄介に違いない。

 

「パーサの本体は右腕損傷、顔面も半分焼けてるし、ダメージは入っている。FAL、FG、追撃は待った方がいいか?」

「こちらFG、前回損傷させたパーサと接敵しています。雑魚も出てきて少し時間がかかりそう」

「こっちは外から雑魚敵が集まってるわね。私たちは構成上バンカー内の戦闘が難しいし、即席の防衛陣地で集まってくる雑魚を止めるべきだと思うわ」

「だ、そうだ指揮官」

 

 無線機の先から戸惑いが聞こえた。

 そこまで雑魚が多くないとは言え、こちらは戦力は少ないし本来はあと二部隊を増強して行うこと前提の作戦。作戦変更はしないといけなかったのだろうが、現在この付近のグリフィンが受けもつ戦線は揃って攻撃を受けている。戦力はそちらに回すべきだし、現に指揮官は残りの二部隊を指揮しながらこっちも指揮していた。

 少ない以上の予定は一体ずつを一部隊と一六式で討伐し、一部隊は一帯に集まってくる鉄血の増援を倒す感じだったが、現状パーサは同時に出てきたものだから戦力が分散している。

 どう考えたって不利な状況故に、俺たちが本体を仕留めなければいけなかった。

 

「FGはダミーをなるべく早く倒して。その後バンカーに突入して作戦目標の遂行。FALと一六式は倉庫を利用して鉄血の気を引いてください」

 

 指揮官は最適解を捻りだしたと思う。

 

「指揮官、一つ頼んでいいか」

「なんです?」

「俺にバンカー内の偵察をさせてほしい」

 

 だけれども第二部隊が突入するまでにパーサが身をくらませた場合、IOPの人形システムは暴かれてしまうかもしれない。サブリナのコアを隠滅のために破壊されてしまうかもしれない。後者の結果は俺にとって一番望まない未来。その結果の蕾を摘み取るためなら、多少の危険を押してでも、俺自身の手で進めたい。

 これは俺の我がままだ。分かってる。俺みたいな人間が出たって、人形のパーサには今の損傷状態ですら勝てない見込みの方が大きいことは経験で知っているのだ。

 それでもやらなくちゃならない。

 

「・・・分かりました。事前ミーティングの通り、バンカー内は鉄血に改造されていなければ比較的単純な構造です。空調ダクトを使って偵察ぐらいなら大丈夫だと思いますがそこはサムさんの腕を信じるべきでしょうか」

「任せてくれ。ヘマはしないつもりだからな」

「許可します。一六式は待機をお願い。今は一人でも戦力が欲しいから、ごめんなさい・・・」

「感謝する」

 

 指揮官は俺の意思を嗅ぎ取ってくれたのだろうか。特に反対することなく認めてくれた。

 VAGのホルスターとバヨネットを吊るしたベルトを巻き、無線機とインカムを落とさないように固定する。重い装備は向かないだろうから軽いバッグにケースと注射器を入れ、背中に掛けた。

 

「サム、本当に行くつもり?」

「よっぽどのことがなければ、殴りあわないさ。あくまで作戦目標の遂行のための手段だ」

 

 饒舌に嘘を重ねる俺はさながら、浮気のバレた夫と言ったところか。

 自嘲するように笑ってしまう。

 

「んじゃ、行ってくるぜ」

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