鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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幕間「帰ってきたぞ」
うそ、俺の会社ヤバすぎ・・・?1


 欠伸をかみ殺す。人形の体は機械のハズでこういう生理現象まで再現しているのかと驚きながら、自分のボディなんだから慣れていかないといけないだろう。そうは言っても俺は元々人間なので、変わったところと言えば性別とか身長、馬力なんかのスペック面だ。

 会社に戻ってきてはや一か月。未だにトイレは男子トイレに入ってしまうし、シャワーの後に髪の毛を乾かすのも面倒くさくなってしまって、そのたびにサブリナが世話を焼いてくる。それを見た野郎三人衆は「まるで姉妹だな」なんて抜かしやがるし。

 

「そりゃ髪の色は似てるけどよォ」

 

 つっても俺の顔にはけったいなタトゥーが入ってるし、温和そのものなサブリナの顔とやや攻撃的なこっちでは似ても似つかないと思う。

 似ているところなんて髪の色とそれを結ぶリボンの色ぐらい。俺のボディを作ったIOPの技師が何を考えたのかは知らないが、それだけの共通点だけでサブリナがお姉さんぶった責任ぐらいは取ってもらう。誰なのかも知らないが。

 

「暇だなァ」

 

 事務所の応接ソファでふんぞり返って何時の間にか三時間も経っている。ボスが俺以外の面子を引っ張っていった。置いていかれることに不平は言ったが、なんでも俺は連れていけないらしい。

 あと俺が居なくなっている間に、事務所の地下室に人が住んだらしい。かなりの頻度でサブリナが会いに行くが、俺だけは会わせてもらえないのだ。

 

「地下室には誰が居るんやら。まさかリンヤオだったりして・・・なわけないかー」

 

 サブリナに面倒を見てもらうことは頼んであるし、ボスからは今は会うなと止められている。俺が人形になったなんて知ったらあいつ気絶するぐらい吃驚するだろうし、簡単に受け入れてもらえるとは思えないから仕方ない。

 リンヤオもやれば出来る子だから、なるようになっているだろう。結婚してたりして・・・いやないな。妹に対して随分とヒドイ考えをしながら時間が過ぎていくのを待った。

 

「VAGもそろそろ弄りたいのになぁ」

 

 VAG本体はIOPが記事の切り抜きごと持って行ってしまっている。パーサとの戦いでケースレス弾は全部使い切っているし、あの弾薬の製造に時間がかかっているのは分かるけれども代わりの拳銃の一つや二つ貸してくれたっていいと思うんだ。

 Px4?サブリナが護身用に持ってる。というかあの戦いの前に渡しておいた。あとこのボディになっても握ると手が震えてしまったから俺が持っていても意味がない。

 

「マジで暇だぁ。筋トレするかぁ?」

 

 それがいい。このボディはどれだけトレーニングをしても筋肉がつくことないが、逆に少女の見た目を保ちながら好き放題にトレーニングしていいとも取れる素晴らしい設定。

 俺の場合は筋トレという行為に喜びを感じているタイプの人間だったので、筋肉がつかなくても問題ない。時間つぶしにトレーニングは妙案だった。

 ブラウスのボタンを緩め、下着のスポーツブラだけに。スカートとソックスとガーターは脱いで、普段着の下着と短パン姿になって事務所一階のガレージにあるトレーニング用品の元へと向かった。

 

 

 

 

「ふぃーいい運動だった。プロテイン・・・はこのボディじゃ要らないか」

 

 人形の機能の一つである発汗によるクールダウンが行われて下着の感触が気持ち悪い。外の道路から見えてしまうのでこれ以上楽な服装にするのは無理なので諦めるしかなかった。

 妥協としてスポブラの胸元をパタパタと扇いでいる。

 

「ちょ・・・サム!」

 

 慌てた声が外から飛んできた。聞きなれない呼び方は、サブリナやジョージと揃って俺の事をサムと呼ぶようになった純情青年(おこさま)だ。

 振り返って軽く右手を上げる。

 

「お、マイクお疲れさん!」

「あ、あぁってもうちょい恰好どうにかしてくれよ!」

 

 ははぁん。

 頬を真っ赤にして視線を隠そうとしているマイクを見て悪戯心が刺激された。

 中身が(オレ)でも、見た目のせいで俺だと見れないんだなぁ?

 

「大丈夫だって。誰も見てねぇよ!」

 

 そうやってけたけたと笑いながらマイクの肩を叩く。

 大体俺の見た目はジュニアハイかそこそこ。胸だってそこまで大きいほどじゃないし、いざとなれば人形パワーで撃退出来る。

 

ゴツン。

 

「さぁーむー?」

「ひぃっ・・・」

 

 何時の間にか傍に居たサブリナ(オニ)が拳骨を落としてきた。滅茶苦茶いい笑顔であるものの目は笑っていない。怖い。

 

「サムはもう見た目が女の子だから気を遣ってって言ったよね?聞いてなかったなんて言わせないよ?」

「いや、これは、その、悪気は、ない、んです、はい」

「そんなわけないよね?」

「・・・はい」

 

 身長差も相まってか、サブリナと俺は見た目「悪戯をした妹が姉に怒られている」それだ。納得いかねぇ。でも反抗できねぇ。

 

「いい加減お姉ちゃんの言うこと聞いてよねー?」

「誰が妹じゃ誰が」

「サム」

「っすぞコラー!」

 

 体が一回り以上も大きいサブリナに抱き寄せられると対抗できない。人間となら勝てるだろうが、俺は非力なハンドガン人形。重いSPAS12と人形の中ではそこそこ重そうな装備で戦っていた上、正規の手順を踏まずに民間になったせいで出力が戦術人形のままのサブリナには勝てないのだ。

 

「色々手続きが終わったから仕事の話するぞー」

「姉妹喧嘩もそこそこにしてちょうだいよ」

 

 遅れて帰ってきたボスとジョージが笑いをこらえていた。こいつら俺がどうしようもないのを見て笑っていやがる。

 

「んあんで俺が妹なんだよぉぉぉ!!!」

 

 俺の魂の叫びは乾いた空に消えていった。




VAG-73ボイス
入手「VAG-73だ。仲間を守る分にはしっかり働く。頼んだぜ」


感想返し
「三十路さんの嘘つき!」
そうなんすよ(同意)サムのケースにはしっかり前例があるので成功してるんですね。つまりサム君はピ―――(自主規制)と同じような特殊能力を持っていま(ドンドン!
おっと水道管検査の人が来たようだ・・・

感想ありがとうございました。

いつもながら応援ありがたいです。シーズンツーも好き勝手やるんで。
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