鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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こんなの兄貴じゃない!(ドンガラガッシャーン2

「そんなこと、ありえるわけないじゃん。兄貴は死んで、もう帰ってこなくて、だからサブリナ姉さんが面倒を見るって」

 

 リンヤオは肩を震わせ頭を抱えて自分の心を守ろうと考えを小声で整理している。俺と妹に挟まれたサブリナが抱きしめた。

 何も今すぐに受け入れてもらうわけじゃなし、これぐらいの反応は優しかった方だと思う。こんなに想っていてくれたなんて兄冥利につきた。

 

「大丈夫。何も今すぐに受け入れてって話じゃないから」

「ねえさぁん・・・」

 

 サブリナがお姉さんぶるのは、妹が甘えていたからなのか。そうなるとサブリナが一番上で俺が二番目、リンヤオが三番目のポジションなんだろう。今の俺とリンヤオってそれほど変わらないぐらいだし。髪色だけリンヤオが仲間外れになってしまうが。そもそも俺はサブリナの妹でも姉妹機でもないんだけどな。

 

「お前の兄貴は死んだし、俺はサムって呼ばれているだけのVAGだ」

 

 俺自身サム本人という確証はない。クローンかもしれないし、サムという人間を模したAIなのかもしれない。

 人間のサムが死んだ以上、リンヤオと血のつながった家族は残っていなかった。心では妹だと思っていてもこのボディでは、人形の俺では人間の妹であるリンヤオとは血縁がないのだ。

 

「それでも俺と仲良くしてくれるか?」

 

 ソファに落ちていたリンヤオの右手を両手で握りしめる。昔いつも握っていた手は、変わらず小さいままだったけれど俺の手と同じぐらいで、俺自身変わってしまったことを理解してしまった。もうあの頃にはどうやったって戻れない。

 

「どう考えたって見た目は兄貴じゃないし、ずっと優しかった手は小さいし、大きかった背なんて見る影もないし、仕草はほとんど女だし、それなのに・・・それなのに、ご飯の味は兄貴の作るそれだ。なんでだよ。帰ってこないんじゃなかったのかよ」

 

 サブリナがそっと手を広げた。

 

「返せよ、僕の悲しみを返せよ!」

 

 三人顔を突き合わせる。

 

「なんで、人形になって帰ってくるんだよ・・・僕は兄貴であるサムが好きだったのに!」

「好き?」

 

 なんかニュアンスがおかしかった気がしたので思わず聞き返す。

 

「そうだよ!言わせんなよ!」

 

 思わず吹き出しそうになった。そうか、そういうことだったのか。そりゃ俺の言動の移り変わりで反抗期になっていくよな。それにサブリナを連れて行った時の反応だって説明がつく。

 

「笑うなよ・・・元は兄貴が悪いんだし」

「サム、なにしたの?」

「普通に兄貴をやってたつもりなんだけどなぁ」

 

 妹はいつから道を踏み外していたのか。そもそも俺たちが逃げた理由はそういう感情の対象にしないためだったのに、その過程で妹がそんな思いを持っていたなんて想像もしなかった。

 本当に可愛い妹だよ。

 

「はーぁ。おかえり、バカ兄貴改め姉貴」

「その呼び方は納得いかねぇけど、ただいま」

 

 

 

 

 どうしてこうなった。

 目の前の惨状を見て思わず呟いた。

 

「姉貴、聞いてる?」

「聞いてる聞いてる。だから服のボタンを外すな」

 

 足の間に体を置いて絡みついてくるリンヤオの怪しすぎる手つきを叩く。さっきはガーターと下着に手を掛けやがったので軽く拳骨をしたはずだが、探究心は収まることを知らないらしい。

 あとさっきからリンヤオが言っていることは八割がた意味不明だ。

 

「ウェへへへへ、さーむー!」

「サブリナ、水を飲め」

 

 顔を真っ赤にしている酔っ払いにコップの水を飲ませた。人形はアルコール分解機能付きだが、機能をオンにしなければ人間同様に酔える。

 

「姉貴ィー結婚したくないよォ、養ってー」

「養うもなにも貯金があるだろ」

「違うよォ、僕は愛情が欲しいんだよー」

「普通に相手を探してくれ」

 

 俺はお前のことをあくまで妹でしか見ていない。そう言う意味で好きな相手は別にいるから思いには答えられないのだ。

 

「さーむー、さーむー、さーむー」

「はいはい。お前は俺の左腕を捥ぐつもりか」

 

 サブリナはさっきからなんなんだよ。ずっと胸と顔を摺り寄せてきているがその姿は人懐っこくてふわふわな毛並みの大型犬だ。

 原因である瓶の中身は半分ほどで度数は高いものではないし、二人がここまで耐性がないとは知らなかった。サブリナが普段分解機能を使っていることは分かったが、妹がここまで弱いとは・・・悪酔いするタイプだ。

 

「もう寝ろー」

「姉貴ー添い寝してー」

「そうだぞー姉妹仲良く一緒にねよーよ」

「俺はお前らの姉妹じゃねぇっての!」

 

 雰囲気が変わった。なんか二人して髪を乱して表情を隠す。リンヤオが右腕、サブリナが左腕を掴み迫ってきた。例えるなら合コンで好みの相手をロックするイケイケ系のギャルって感じ。グリフィンでは「合コン全敗の残念美人」が居るらしいとまことしやかにささやかれていることを思い出した。それは現実逃避だったけれど。

 

「姉さん、下を」

「はーい!」

「お前らなにを!?」

「僕は上をー」

「ウェへへへ・・・」

「バッカなにしやがる!?マテマテマテ!待ってくれ!頼む!お願いだから!やめろください!やめてください!」

 

 スケベ親父と化した二人がドンドン服を脱がしていく。なにがそこまで突き動かすのか分からないが、俺は脱がされた上に肩に担がれ(おこめだきされ)、地下室備え付けのキングサイズベッドに投げられた。

 

「大丈夫大丈夫!私たち女の子同士だから!」

「なにがだよ?!」

「実は僕女の子の方がイケるんだよね」

「はぁ?!」

 

 にじり寄ってくる獣に枕を投げて抵抗。

 

「「グヘへへへ可愛いなぁ姉貴(サム)・・・」」

「なんなんだよぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」

 

 まぁ、こんな暖かい関係が戻ってきたことを喜ぼう。なんか別の意味で暖かい感じになってしまいそうだけども。

 この後は添い寝しただけだった。脱がす必要はなかっただろ。




なんかこの章短すぎたので、幕間扱いに変更します。

次回からがシーズンツー第一章。各所を直しておきます。

VAG-73ボイス
強化完了「ありがとよ。いつも感謝してるぜ」


次回予告
強盗発生?WAは?え?現場にいる?新人も?聞いてないって!なんで部隊設立すらできてないのに事件が起きるんだ!WA、キレてヘマしないといいけど・・・新人のVAGはなんで巻き込まれたんだ?416、コーラちゃん、準備は出来た?やるしかないからね?
2-1「VAG、着任」一話「望んで巻き込まれたわけじゃない」
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