鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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シーズンツースタート。(二度目の正直


2-1「VAG、着任」
望んで巻き込まれたわけじゃない1


「おらおら下手な真似するんじゃねぇぞ!?」

 

 目出し帽で顔を隠したやせ型低身長中年の男が拳銃を振り回す。訓練はされていないようでトリガーに指がかかったままだ。いつ暴発するか分からないが、天井にばかり向けているので目を瞑るか。もしもが起きるかもしれないけれど、撃つ覚悟はないようでその時には男は動揺するだろう。取り押さえるならその瞬間しかない。

 場所は街の中心的な建物。中は一つのホールに放射線的に就労、貸金、手続き、依頼などを請け負うブースが立ち並んでいる。

 犯人は三人。痩せ型チビで拳銃を持っているのがホールの中心、爆薬を持っている太くて大柄なやつが建物の地下に、もう一人の細長い男が人質を見回っていた。

 今のところ武装は拳銃一丁に刃渡り十数センチほどのナイフ、そして爆薬。

 落ち着け。武器がない以上、格闘で三人を仕留めるのは難しい。いくら私が殺しのために生み出された戦術人形だったとしても、人間相手には命令なしに攻撃できないから無力化するまでに一対多の状況に陥ってしまうし、人質全員の安全を保障できなかった。

 犯人の目的は、貸金への強盗か。担保の物品を奪うあたりだ。

 

「きゃっ、お姉ちゃん」

「大丈夫よ、心配しないで」

 

 地下の方から爆発音。金庫の扉を壊したようだ。

 同じ人質で近くにいた女の子が距離を近づける。本来の役割とは違うものの人間に奉仕するのは人形のさだめ、安心させるべきだと動く。

 人質は全員後ろ手に結束バンドで拘束されている。私の半身たるライフルは建物の外に放り投げられていた。

 この状況どうするべきか。

 私が所属する部隊は治安維持を任務に設立される予定ではあるものの最後のメンバーが着任するのが今日、よって作戦を行うのは難しい。他の部隊や基地からの応援も来るだろうが、人間相手の制圧を行うためのシステムロックの解除権限はこちらの指揮官しか持っていなかった。

 最悪はアサルトライフルとハンドガンで突入・・・出来ないことはないか。

 

「おい、なに勝手に近づいてやがる?」

「ひいっ、お姉ちゃん!」

 

 ホールに居た男がこっちに向かってにじり寄る。

 私の事をつまさきから頭のてっぺんまで舐るように眺めてくる視線は気持ち悪かった。

 

「近づかないで、くさいから」

「あぁ?!」

「触ったら蹴るわよ!」

 

 拳銃をテーブルに置いて近づいてくる男が手を近づけてくる。両手が自由であれば鼻っ面叩き折ってやりたいところだ。

 あくまでも気丈に振る舞う私を見て何を思ったか、目出し帽の中で笑った気がした。

 

「その顔を快楽に溺れさせ、チイッなんだよ」

 

 汚らしい腕を頬に寄せる寸前に男が外を見張っていた仲間に呼び出されて離れていく。

 

「アニキ、上玉を捕まえましたぜ・・・!」

「あとであの気の良さそうな女と一緒に犯すか」

「へい!」

 

 二人の腕の間には、人形?しかも拳銃を取られたということは戦術人形・・・件の新入りかもしれない。

 どうして拘束されるようなへまをしたのか自分の事は棚に上げて突っ込みたくなる。そもそも立てこもり事件が起きている建物にホイホイ入ってくるとか馬鹿の極みだ。

 

「なんなんだよ、俺が下手に出てやったら調子乗りやがって・・・」

「なにやってんのよ」

「・・・あんたも人形か」

「おあいにくね」

 

 近くに座らされた戦術人形がぶつぶつと呟いてるところに野次を入れると返事が返ってくる。あっちもこちらが人形であることを理解し、少ない言葉で戦えないという枷を認識した。

 

「データベースでは見たことがないけど貴方はハンドガンね」

「あぁ。VAG-73だ、近くの基地に着任する予定」

「私はワルサーWA2000。足は引っ張らないでよ」

「この状況で足を引っ張るって何事だよ・・・」

 

 薄い紫髪のちびっこ人形が呆れたようにため息を吐く。

 服装のわりに随分とけったいな顔。それに座る仕草も足を開いているので男臭い。ミスマッチすぎる特徴を抱え合わせているそいつはキョロキョロし始めた。

 

「なにしてるのよ」

「状況と空間把握」

「はぁ?」

「目を瞑ってでも格闘できるように覚えてるんだ」

 

 両手が不自由なのにそんなことが出来るわけもない。新しくロールアウトしたばかりでAIにバグでも抱えているんじゃないか。

 

「なんでこんな事件に首を突っ込むのよ」

「望んで捕まったわけじゃないんだが」

「よっぽどの馬鹿なのね」

「基地への道を聞こうとして建物に近づいたら、あれよあれよという間にこんな状況さ」

 

 グリフィンは治安維持業務も請け負っているものの、かつての警察ほどの対応の迅速さはない。状況は基地に通報されていても警戒線を張るのが遅いのは仕方なかった。

 今頃、外に警備人形が展開する音が聞こえてきた。

 犯人の中でも子分染みたひょろながが慌てている。対抗する武器も手段も持ち合わせていないように見えるし計画の無鉄砲さがにじみ出ていた。

 時刻は三時、暗くなるのが六時ぐらいだからやるとしたら電気を落としての突入しかない。ホールが広い分薄暮はリスクがあるし、夜闇であればフラッシュにライトで目潰しが出来る。

 

「エントリーは夜になるわね」

「あとは犯人の切り札さえ破れば楽に確保できるんだろうが・・・」

「切り札?」

「すぐにわかるさ」

 

 ニヒルに笑うチビを睨んだ。




VAG-73ボイス
コミュニケーション1「どうしたんだ?今日はえらく甘えん坊じゃないか」
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