鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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望んで巻き込まれたわけじゃない4

 夜も深まってきた。次の交渉が始まる時間だ。道路を封鎖する車両からのライトが建物に差し込んでいるものの、中の明かりも明るいので体は昼間と勘違いしてしまいそうだった。

 未だに巨漢の犯人は出てこない。チビと子分もようやく焦ってきたようで下を見に行くかと相談し、片方が居なくなれば簡単に制圧されてしまうと議論は水平線。多分、巨漢の男からは切り捨てられていた。

 

「ワルサー、もう一人は逃げたと思うか?」

「えぇ。そう見るのが当然よ。あの二人は哀れね」

 

 指揮官の声が聞こえてきた。人質の人間は限界が既に来ている。突入するとしらこのタイミングだ。犯人が爆薬があることをカミングアウトしてから三時間も経過している。もしこれが受信機が何を引き起こすか分からなければ躊躇っただろうが、爆薬であれば既に解除されているはずだ。

 実に間抜けすぎて笑ってしまう。

 

「おい!着いてこい!」

「いや、いやぁぁぁ!」

 

 建物の従業員と思しき女性にチビがナイフを首に当て、出口の方へと連れていく。片手で発信機のある鞄を振り上げていた。馬鹿でも状況がまずいことぐらいは分かっているようだ。

 

「おまえら!こいつがどうなっても」

「ワルサー、暗視を切れ」

「えぇ」

 

 付近の電気を止めたのか一気に暗くなる。車両のライトも消してしまえばそこは夜の静けさに包まれた。

 チビはわめくが無情にも十秒の時間が経つ。

 犯人や他の人質には暗順応という人間の目の機能が起きているはずだ。それは明るいところから暗闇になって見えなくなった視界が段々と慣れてきて見やすくなること。

 手榴弾が転がってくる音がした。俺は立ち上がる。

 

「うわ?!なんだ?!」

「アニキ!?」

 

 手榴弾、いやフラッシュバンが炸裂し子分はわめいている。チビは人質の頸にナイフを当てた。

 俺たち戦術人形は暗視機能がついてる個体がある。主に制圧部隊向けだ。一々暗視スコープにしたりそれを使い分けるより、ずっと単純だから搭載されている。それを切ったのはこの状況になることが分かっていたから。

 

「マジでこいつをころ、ぐわっ?!」

「アニ、ぐへぇ!?」

 

 チビと子分が同時に呻いた。俺は近くに残っていた子分の方にタックルしたが突入部隊はすぐ近くにいる。

 

「一名制圧、発信機無力化」

「あれー?あなたは?」

 

 チビの方にはアサルトライフルを抱えた紫髪の人形が立っていた。髪色が近いが俺やサブリナよりスーッとした感じのロング。あと涙のようにタトゥーが入っている。随分と慎重な性格をしているのかチビに後ろ手に手錠を付けた後でも銃を向けれるように構えていた。

 近くにいて、子分の方を制圧するつもりだったのであろう人形は小さい。多分俺のこの体と同じくらいだった。手にはリボルバーで金髪の上にあるのはガロンハット風の帽子。ウエスタン・・・西部開拓時代の人間をモチーフにしているのだろうか。

 

「あぁっと、VAG-73。戦術人形さ」

「きゃっほー!新入りね!」

 

 言葉を交わしながらもSAAがノビた子分の手に手錠をかける。その後には警備ロボットたちが集まりドンドンと事態を進めていっていた。既にもう一人は逃げてしまったようで、突入部隊の出番はないらしい。

 

「ふーん、私は貴方の部隊長よ」

「オーケーあんたらが次の仲間か。そこにいるので全員?」

 

 あごを使ってワルサーを示すと416はそっちを見て鼻で笑った。

 

「ふん」

「はぁ?!なによ!」

「それでよく副官が務まるわね。やっぱり完璧な私がやるべきよ」

「ふざけないで!」

 

 416とワルサーが口論を始める。どうも配属される部隊は隊長を416が、指揮官のおつきがワルサーらしい。たった四体しかいないのに分業する必要があるってどういうことなんだ?

 おまけにSAAが呆れているのを見るに、二人のこのやり取りはいつもの流れらしかった。

 

 

 

 

「色々あったけど、とりあえず自己紹介からしよう」

「俺はVAG-73。よろしく」

「私は隊長の416よ。よろしくVAG」

 

 416は随分と表情が薄い。さっきのWAとの口論は別だけど、感情をそこまで表に出さないタイプか?

 

「私はワルサーWA2000。いーぃ?VAG、指揮官みたいに「わーちゃん」なんて呼んだらぶっ飛ばすから」

「なんか親近感湧くぜ。よろしくWA(ダブルエー)

 

 WAはツンと顔を背けて握手してきた。指揮官に「わーちゃん」と呼ばれ、怒りはするもののまんざらでもない辺り、完全にホの字なんだろうなぁ。

 

「あたしはコルトSAA!よろしくねVAG!」

「おう。ていうかSAA、そのコーラ帰ってきてから二本目じゃないか・・・?」

 

 SAAは話半分コーラ半分で手を差しだしてくる。

 

「そして僕が指揮官だ。よろしくね、VAG」

「よろしく。見返りに合う仕事をするさ」

 

 最後に赤の制服に身を包み、制服以外はてんで普通過ぎる見た目の指揮官が全員を確かめた。

 

「これで僕たちはチームを結成できる。バランスはまだよくないし駆け出しだけど、頑張ろう!」

「その前に今日の書類を終わらせなさい」

「VAG、部屋はこっちよ」

「コーラ!コーラ!」

 

 なんというか既にこの部隊のパワーバランスが分かってきた気がする。




VAG-73ボイス
出撃「しっかりと働いてしっかりと帰るぞ」

次回予告
寝つきが悪い・・・宿舎を抜け出して・・・やることはトレーニングしかないか
WA?あぁ、ちょっと夢見が悪くて・・・
人形は夢を見ないだろって?
俺が何者かなんて・・・
第二話「暗雲、立ち込める」


ここの416は量産品です。あと3体ぐらい人形は増えていく予定…

お気に入りとかありがたい。目に見える評価はやっぱりモチベが上がるので
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