鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
お気に入りとかコメントとかありがとうございます。前回の更新はギリギリだったので後書きとか書けなかった。
「たく、何もぶん殴らなくたっていいだろ・・・」
グチグチと呪詛のように恨み言を呟く。
手に持ったクリーナーの先を砲身に入れ、掃除。ボスに言いつけられたとはいえ、どうせ次出撃する前にまた掃除するんだし適当でいいような気もする。ただまぁ、俺たち歩兵が自分の銃のメンテナンスを怠らないように、機甲兵のやつらも自分の命を繋ぐ武器の整備は手を抜かないのだろう。
「えぇっと、この後は弾薬の整理と機関銃の弾薬抜くのと、あぁー砲閉鎖器の整備もある・・・マニュアル通りとは言え砲閉鎖器触るの大変なんだよなぁ」
砲閉鎖器のマニュアル、見たこともない文字だし。聞いたところによれば日本語ってやつらしい。日本って国の言葉なのは分かるんだけれど、半分以上が中国語の文字と被ってるので意味はなんとなく読み解ける。今となってはどっちも全く使われてないから古文書か魔法書でも読んでる気持ちになるが。
クリーナーを一六式に戻し、車内に入って弾薬庫を見る。
懐中電灯で照らして、砲弾に書かれている諸元を見て弾薬の管理。
「えぇっと今日使ったのが徹甲一発。瞬発信管が二発で遅延が一。今日のプランからはしめて二発の無駄玉で、徹甲は使ったかもしれないけれど一発はマジで俺のミスだ・・・」
間違えないように手前にある弾薬庫に瞬発を入れ、遅延は別の即応弾薬庫に入れる。最初からこうしておけばよかったんだ。反省反省。
弾薬の整理と共に、残弾の数を整備のメモに纏めておく。
ジョージは自分の仕事をとっくに終わらせ、MCVカンパニーの寮に帰っている。マイケルはテキトーに終わらせるとバーに行った。ボスはその仕事すらも手際よく直し、今日の仕事の発注者であるグリフィンに報告しに行った。
新人でなにもかもトロい俺はこうして残業に励んでいるというわけだ。
「なんか新人時代を思い出すなこの仕打ち」
正規軍に入った頃はこんな感じで仕事を割り振られて、ベッドに戻った時にはくたくたになってた。
「見返してやりてぇな」
このまま笑いものにされるのは納得がいかない。俺にできることを徹底的にやって、うんと見返してやりたいのだ。
砲塔に増設されたM2ブローニング機関銃から弾薬を抜き、弾薬箱を火薬庫に戻す。
三回往復し、ようやくノルマが終わったと思った時だった。
「ふむ。して、新人はどうだ?」
「今日は大ポカやらかしやがりました。報酬はあいつの分から削ろうかと」
「使えそうか?」
「他のやつらよりは筋もいい。判断も悪くはねぇし、咄嗟の行動も取れる。ま、特殊部隊所属だったんだからそれぐらい出来なきゃ雇いませんよ」
ボスと女の声だった。多分、グリフィンのお偉いさんだろう。MCVカンパニーは実質的なグリフィンの下請けなので(吸収はされていないが業績的に時間の問題とはマイケルの話だ)、ボスでも頭が上がらない様子。
格納庫から様子を覗き見しているとボスの禿げ頭の先に、銀髪でモノクルをつけた少しキツい感じのする若い女が居た。服はシックな赤色でグリフィンの制服と似ている。年齢はボスと親子ぐらいに離れてそうだ。
「伝手でクビになったところを引っ張ったんだが、それならいいだろう。次の仕事も期待する」
「ありがとうございやす!」
ボスが頭を下げているところは初めて見た。
軍隊の鬼軍曹みたいな、力の権化なボスが素直に頭を下げている様子は、少しだけクスッとくる。
っていうか、俺の分からギャランティ引くって言わなかった?
確かに今回は仲間の命を危険に晒したし、砲弾一発無駄にした。減らされる理由はあるが恩情を出してもらえる理由はなかった。
深々とため息をこぼす。
覗き見をやめ、手袋を外した。グリフィンから仕事を貰い恩を感じたボスが選んだ赤色のタンカースジャケットを緩めると汗をすった肌着が気持ち悪い。通気性もくそもねぇんだよこのジャケット・・・
「まぁだ作業してんのか、サム」
「ボスお疲れ様です。ところで訓練用の砲弾って使っていいですか?」
「いい、が・・・何する気だ?」
「砲弾を抱えた状況で判断力が落ちないように持ったまま三キロ走ります」
どうせ筋トレするんだからそれっぽい理由をつけて勤務態度をよく見せないと。そうしたらお給料削られないかもしれないし。
「そんなことしたって給料は上げないぞ」
タンカースジャケットを脱いで畳む。砲弾を持って、走りはじめようとして一つ思い出した。
「今日の失敗は明日に活かす。俺は諦めの悪い性格だから、あんたたちに何と言われようと自分の仕事には最善を尽くせるようになりたい。そのためにあんたたちに色々聞くと思う。クビにするのはいいが、俺は相応の自信と能力を持ってるつもりだ」
「だから、ボス、俺を使ってくれないか」
それは決意表明だった。
正規軍をクビになってからなんだか考えがあやふやになったが、殴られてスッキリした。徹底的に努力して見返してやる。
俺の言葉にボスは不敵な笑顔を浮かべた。
「そこまで言うのなら、もっと厳しくしてやるよ」
次回は少し時間が進む。
第一章本編スタート、って感じですね。
次回予告
MCVカンパニーの次の仕事は、「敵勢力下にて逸れたグリフィンの戦術人形の捜索」。廃工場から昇る煙を頼りに人形を探し始めたサム達だが、そこでは鉄血と人形が戦闘を行っていた!人形を救うため、サムは愛銃を片手に廃工場の中へと進む・・・
第三話「廃工場の決闘」