鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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暗雲、立ち込める2

「早速だけど突入任務が入った」

 

 待機ルームにはWA以外の小隊メンバーが揃っている。揃っているとは言うものの、訓練とかの仕事がなければ基本ここに待機という取り決めなので単純に休んでいただけだ。

 俺は読んでいたグリフィンの社内報をソファの後ろのラックに入れて、ブリーフィングを行うスクリーンの方を眺めた。

 

「指揮官、目標は昨日の仲間?」

「そうだ。大柄な犯人の足取りが分かった上、場所も分かった。逃げられる前に確保したいんだけど、その過程で僕たちが突入する必要がありそうだから」

「指揮官!先に行かないで頂戴!」

 

 ようやく副官のWAが入ってくる。手には端末を持っていてプロジェクターに繋いだ。

 

「作戦目標は、対象の確保及び隠れている家にいる対象の家族の保護」

「人質が居るのと同じね」

「あぁ。そういう理解でいい。保護対象は確保対象の妻と息子。どちらもDVを受けていると報告がある」

 

 こんな世紀末、片親とか親無しとかも普通だがDVもかなりある。DV自体をグリフィンが解決することは必要ではないが、作戦遂行に当たって犯人が人質として使うことが想定された。

 指揮官がそれを伝えると皆一様に顔を暗くする。そりゃ、誰だって親が子供を盾にするなんていい目はしないし、作戦に当たっての大きな障害だ。

 

「突入は俺が一番槍として、次に416・・・狙撃がWAでバックアップがSAAか?」

「性能的にまぁそうなるよね」

 

 突撃して犯人を捕まえるのが俺の仕事。416は小隊長であるものの突撃班の人数が少ないしSAAよりも連射が効く。

 コルトSAAと言えばガンアクションが有名だが、まだ俺はSAAが早撃ちしているところを見たことがない。銃よりもコーラの瓶を持っているときの方がデフォルトだったりする。

 ともかく半身の銃の特性的にSAAはもしもの時のバックアップが最適だと思った。

 それは指揮官も同じ意見だったようで、伝えられたポジションは同じ。建物は普通のマンションで少し離れたビルの屋上からWAが照準し、SAAは建物の外で警戒。416がブリーチングをして俺が突っ込むといった流れになった。

 

「優先目標は対象の確保。もちろん銃器や手榴弾を携行している可能性があるから制圧射撃も現場の判断でいい」

「ただし命は取るな、ということね。いいわ私は完璧よ」

「うん。この事件の計画は全てこいつが仕込んだものだ。絶対に確保する必要がある」

 

 ブリーフィングが終わり、指揮官が全員を見回した。

 既にこっちはスイッチが入っている。小隊を代表して416が命令を復唱し、人間に対する射撃を行うと宣言した。

 

「治安維持小隊はこれより作戦行動に入り、作戦行動中は安全装置を外します」

「許可する。対象を確保することも重要だけど、君たちが戻ってくることも大事だ」

 

 随分と甘ちゃんですこと。これじゃあ切り捨てることを迫られた時に判断が遅れてしまう。

 

「指揮官、それは足元を掬われるわ。私たちは人形だから」

「そう言わないでくれ416。僕の心がそれを認めない」

 

 ま、それが俺たちの指揮官の悪いところでありいいところってことなんだな。

 

「行くわよ。二十分後に車両の前に整列」

「きゃっほー出撃、出撃!」

「私が部隊長も兼任した方がいいと思うのよね」

「いいのかWA、そんなこと言って喧嘩してたら二人共ども集合時間に遅れるぜ?完璧な人形と殺しのための人形が聞いてあきれるな」

「「はぁ!?」」

 

 軽口を交わしつつ装備を準備していく。

 俺が持っていくものはフラッシュバンにバヨネットにVAG、マガジンは一つでいい。弾薬庫から出してきたケースレス弾はIOPが新しく生産したもの。マガジン一つ分で一袋に密封されたそれをマガジンに装填していく。

 最後に鏡を見て、髪がもっさりしすぎていないか、服が変なところはないかなんてことを確かめた。身なりに気を付けるのは自称姉の言いつけだ。

 

「俺お先~」

「きゃっほーあたしもー!」

 

 ハンドガン勢があっという間に装具室から出ていく。そうは言っても俺たち銃以外の装備も特に必要ないし、SAAに至っては銃しか持っていなかった。準備よりも出撃前のコーラタイムっぽい。

 その点、WAは狙撃銃の準備が面倒くさそうな上やけに髪を弄ってるし、416は単純に準備の量が多い。HK416のハンドガード下にはブリーチングショットガン(マスターキー)を付けて、装備のチャックもあるみたい。

 

「誰が運転するんだ?」

「うーん、あたしたちは身長的に結構アウトだよねぇ」

 

 そう俺たちハンドガン勢は百五十を切っているレベルなので、米国成人男性を基準に作られたハンヴィーは普通にキツイ。

 

「いつもはどうしてる?」

「ハンヴィー使うのは初めてだからわっかんないや☆」

 

 聞くに、警備に行く時はウラルバイクに分乗するし、昨日みたいな事件が近くで起きた時は基地局の機能があるバンに乗るらしい。

 初めての別地区作戦ってのは勝手を掴みながらだから面倒くさいだろう。

 

「なぁ、416の運転って荒いか?」

「大丈夫☆大丈夫!人形は車酔いしないよ!」

 

 俺のシステムは夢を見たりするあたり人間に近いから、ごく悪い予感がする。

 寒気を感じて体を震わせた。




VAG-73ボイス
重傷「これぐらい、これぐらい!」


お気に入りとか評価が来てて嬉しい。このまま好き勝手やるんでついてこれる人だけついてこい!

あとここのSAAはアンソロ漫画のSAAパイセンa.k.a.超武骨ちゃんをリスペクト。
そのアンソロの「相手が死ぬまで打ち続ける。それしかできないからさ」ってセリフ大好き。あと大人な感じの雰囲気なのに身長大きくない辺りも大変好。
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