鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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暗雲、立ち込める4

「修復終わったぜ。っと皆揃ってるか」

 

 右腕の肘から下を交換し、少しの違和感を感じる右手を握ったり開いたりしながらブリーフィングルームに入った。

 雰囲気は穏やかじゃない。どれぐらい穏やかじゃないかと言えばSAAがコーラを持っていないぐらいだ。

 

「VAG、隠しても無駄よ?」

「場合によっては、覚悟して頂戴」

 

 雰囲気きつめの416とWAが睨む。SAAは不安そうだし、指揮官は俯いていた。

 

「あー、隠すつもりはなかったんだ。いつか話そうと思ってた。タイミングを自分から作らなかったのは悪かったよ」

 

 前置きを終えるとともに深呼吸をして全員の顔を見回す。

 

「結果的に隠すことになっていた。多分その隠していたことが原因なんだ」

 

 指揮官がペルシカのアマに問い合わせているはずだ。俺を電脳に入れた処置を行ったのはほかならぬ彼女。絶対に何か知っている。

 

「俺は、元人間だ」

 

 静寂が訪れ、やけに空調の音がうるさかった。

 

「・・・人間、どういうこと?」

 

 416が全員の意見を代弁する。指揮官も知らないような顔つきだったので、ペルシカのやつは「トリガーをひけなくした」原因しか聞いていないんだと思う。

 

「人間の脳をデータ化した・・・らしい。俺・・・いや区別するために「サム」と呼ぼう。サムはその処置を始めた時には死を待つ状態だった。意識はあるが見ることも聞くことも感覚すらも感じない。だから俺自身その処置が本当なのかは分からない」

「サムという人間の脳内をデータにして、それを搭載したのがVAGということね」

「あぁ。ただ、本当にVAG(おれ)サム(おれ)であるということは分からないし、確かめられない」

 

 クローンかもしれないし、そもそもサムという人間自体死んでいるのだから、俺がサムと同じという風にはならない。

 416はあっという間に理解していたが、それでもそれを飲み込むのには時間がかかっていた。

 

「それでもアンタは人間の意識を持ってるってこと?信じらんない。人間の思考データをディープラーニングしただけじゃないの?」

「俺も信じられなかった。WAの言った、学習したAIだっていう方がすんなり飲み込めるはずだしな」

 

 それでも、それでも俺はVAGである前にサムという人間だ。

 リンヤオの兄貴で、MCVカンパニーの家族たちは大事。それにサブリナの事が・・・ああっとともかくそういう人間だったはずなんだ。

 その気持ちすべてがサムという人間を学習した結果かもしれないけれど、もしそれを信じてしまえば俺が俺でなくなってしまう。

 

「だけど、家族たちは俺を俺だと受け入れてくれた。大切な人たちがそんな風に信じてくれているなら、俺から否定するのは絶対に違うんだ」

 

 言葉を紡ぐたびに俯いてしまいそうになった顔を正面に向ける。

 

「元人間だろうがそうじゃなかろうが俺は俺だ。隠してしまっていたことは謝る」

 

 否定されてしまえばどうなるだろう。また別の基地、別の指揮官の元に配属されるだけだ。何も変わりもしない。受け入れることは強制できるわけがなかった。

 

「それでも、VAGを・・・俺を仲間として認めてくれるか?」

 

 再び静寂が訪れる。人工血液が循環する勢いが強くなり呼吸が早くなった。

 

「ふん!別に受け入れる受け入れないどうこうは聞くまでもないわ。私たちはアンタが変なことをしたんじゃないかと疑ってるだけ」

「・・・WA」

「皆も同じ意見なのは、アンタが居ない間に話してるのよ」

 

 他の一人と二体も肯定する。俺だけが思いつめて一人でクヨクヨしていただけらしい。

 

「それで指揮官、何が原因なの?」

「VAGは人形に対して指揮ができるらしい」

「それは人間だったからですね?」

「うん。だから今回の話はVAGの「撃つな」という命令が416とわーちゃんに「トリガーを引いてはいけない」という命令として伝わっていたんじゃないかな」

 

 つまり、俺は人形に対する指揮権限が存在するらしい。あのアマが何を考えてそんな機能をつけたかは全く分からないし、どうも指揮官曰く「少しの命令しか効かない」ということだった。電脳の所以の副作用とでも言うべきか。

 

「俺はなるべくこの機能を使わない。指示は416のものを聞くし、命令と指揮は全て指揮官からしか受けない。それを破った場合、煮ても焼いても構わない」

「VAGがそういうのならそれで構わないわ」

「濫用したら覚悟しなさい」

「イイ感じ系?」

 

 肩を並べて戦う仲間たちは認めてくれて、最後は指揮官の言葉を待つばかりだった。

 

「VAG、君の由来がなんであろうと。なんであろうと、君は君だ。これからもよろしく」

「失望はさせない」

 

 ひと悶着はあったものの、こうして俺は治安維持小隊の一員として認められたのだった。

 

「やっぱり祝杯はコーラですよ!」

「はぁ・・・私は遠慮します」

「よく飽きないわね」

「いやまぁSAAだしなぁ」

「あの、コーラちゃん・・・?人数も増えてきたしコーラの本数を減らすと言うのは・・・」

「コーラは全てを救うから減らすのは無理!」

 

 指揮官の人柄ゆえか、この部隊も随分とアットホームな雰囲気だ。




VAG-73ボイス
撤退「次は絶対吹っ飛ばす!」



次回予告
段々この基地の勝手にも慣れてきた。
指揮官、まだ仕事終わってないのか。416とWAは?え?喧嘩の末にシューティングレンジに行った?はぁ・・・いいよ手伝ってやる。
お、WAおかえり。
は!?泥棒猫ってなんだよ?!
2-1第三話「副官騒動」


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