鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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副官騒動2

「それでさー、蓋すら開けるのも忘れてコーラを口に突っ込もうとして416に笑われてたんだよな」

「コーラちゃん中毒起こしてない・・・?」

「コカだからな」

「アブナイアブナイアブナイ。そのネタは非常に危ない」

 

 ゲラゲラと思い出し笑いをしながらコーヒーを飲む。なにげない日常の話をしてやれば、指揮官の表情も疲れより笑いに変わっていった。かなり草臥れていたようだけど、WAはツンデレのツンが強すぎて上手く行ってないんだろうなぁ。

 

「さて、あと二時間も頑張れば今日の分は終わりだな。頑張ろうぜ」

「うん。仕事に付き合わせてごめんVAG」

「はぁー・・・」

「えぇっとなに?」

 

 申し訳そうな顔をして謝ってくる指揮官に向かってため息をついた。不安そうな表情を浮かべる彼の姿に普段の様子が見えてくる。

 こういう時に言われて嬉しい言葉を教えてやらないとな。

 

「こういう時はごめんじゃなくて、ありがとうって言ってくれ。こっちは好きでやってるんだ」

「あぁそういうことか。そうだね。ありがとう」

「どーいたしまして。さ、残りもちゃっちゃか片付けちまおう」

 

 そうして再び作業を手に付けて一時間ほどが経過したころだった。

 ドタドタと喧騒が部屋に向かって歩いてくる。揉めている様子は穏やかではないが、指揮官の表情は諦観。いつも通り。

 

「「指揮官!」」

 

 416とWAが肩をぶつけつつも指揮官の机を強く叩いた。

 二人は指揮官にどちらが副官にふさわしいと思うかと問い詰める。

 指揮官はどちらも素晴らしい性能だけど適材適所に役職を与えていると返答。416が不機嫌になる。416はすごい不安定な口調で何が足りないのかと指揮官の襟に縋りつく。それを見てWA嘲笑。とっつかみ合いになる。

 お願いだから相手の態度を許容できるような心の余裕を持ってほしい。

 

「416!WA!いい加減にしろ!」

「どうして貴方がここに?もしや!」

「はっまさか・・・」

「「この泥棒猫!」」

 

 こめかみが引きつくのを抑える。どうしてあんな仲なのに共通の敵を見つけると息ピッタリなんだ。それを指揮官相手に二人でやればすぐにでも誓約できるだろうに。

 

「お前らが仕事放ってるから指揮官が困ってたんだよ!416!戦闘報告書、終業の三十分前までに提出!」

「え・・・あ、分かりました」

「WA!グリフィンへの報告書、同じ時間までに提出!」

「なんでアンタに命令されなくちゃいけないのよ!」

「いいからやる!データルームは狭いからオフィスでやれ!ハーリィアップ!」

「「さ、サーイエッサー!」」

 

 勢い任せて二人を追い出す。一応強制的な命令機能はマニュアルでオフにしてあるけど、雰囲気的に従うことにしたのか二人は鬼教官に怒鳴られた新兵のごとくキビキビと動いた。

 

「・・・はぁ。どこまで打ち込んだっけ」

「ぶ、VAG?」

「なんだー指揮官」

「ありがとう。僕だと二人をセーブできないんだ」

 

 情けねぇの。いくら指揮官が人形に優しいタイプとは言え主導権を奪われてしまっては意味がない。作戦の時の命令はどちらも素直に聞くが、執務ほっぽりかしてこれなのは目に余った。

 

「たまには強く言ってもいいと思うぜ」

「そうもいかないんだ・・・WAは最初から付き合ってくれているし、416はIOPでの研修からの付き合い。どうしても、ね」

「それで仕事がうまく行かないなんておかしいだろ」

 

 そりゃ、大切な仲間の行動を尊重したいのは分かる。けどそれじゃあ仲間だなんて言えない。だってそれで自分を酷使するということは仲間視点に置き換えれば、同じ仲間を尊重していないことになるからだ。大切にするのならば支え合うべきだ。片方に依存する関係は良いものじゃない。

 

「でも・・・」

「でももだってもない。俺からも取り持つから、結論を付けよう。な?」

 

 結局のところ、指揮官は二人に嫌われたくないのだ。どちらも大切だと思っているから平然と自分を潰してでも両方を尊重する。指揮官は自分が甘ったれていると言い訳するけど、やさしさに甘えているのはWAと416の方だ。

 一度全員で話し合った方がいいと思う。

 

「終わったぁー」

「お疲れさん。今日の分は全部終わったし、先回りもしてる。まだ十六時、ゆっくりできるんじゃないか?」

「VAGのおかげだよ。ありがとう」

 

 指揮官は疲れ切っている。残っている仕事は副官と部隊長様の報告書をグリフィンに送付するだけ。それはあいつらに任せればよかった。

 ソファに背を預けリラックスしている指揮官の隣に座る。

 

「指揮官が頑張ったからだよ。そうだ、お礼と言ってはなんだけど、何か一つ言うことを聞いてやるよ」

「逆じゃない?」

「いいっていいって。指揮官が自分の気持ちを教えてくれたお礼さ。できることなら何だって聞くよ」

 

 たった一か月の付き合いなのにあの二人には教えられない気持ちを打ち明けてくれたことはかなり嬉しかった。それでもお礼ってのは意味が違う気もしたけど。どっちかと言えばご褒美だ。

 

「ひ、ひ・・・ま・・・ら」

「なんだって?」

「膝枕してほしい」

 

 あーそう来たかー。うんうん、膝枕ね。俺もサブリナにしてもらったことあるけど凄い気持ちが休まるんだよな。

 WAと416に見つかったら指揮官がnice boat.してしまいそうだけど。

 

「それぐらいならいいよ。ほら」

 

 膝をポンポンと叩いて誘った。




VAG-73ボイス
スキル2「はぁ!?ぶっ飛ばす!?」



VAGちゃん無意識でやってるから怖い。中身が男の分距離が近いし、元がお人好しのせいでヤバイ。無自覚な辺りがヤバいよね。

お気に入りとかじわじわ増えているのがうれしい。感想も来るとうれしい。評価もありがとうございます
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