鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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幕間「416のミルクアイス(非売品)」

「おーい416、どうしたんだ?」

 

 宿舎には日本風に畳の上に布団を敷いて寝るようになっているんだけども、俺が布団を片付けていると隣の布団が凄くもっこりしていた。そこの主、416は不健康なぐらいに白い肌を青白くして震えている。

 人形は風邪をひくことはないし、ソフトやハードのバグならば自己診断ブログラムでその部分をカットして調整に行く。思い当たることはメンタル面しかない。

 

「調子悪いか?」

「えぇ。報告書は終わってるから代わりに出してきて」

「分かった。飲み物は冷たい方がいい?常温がいい?」

「常温で・・・」

 

 部屋に常備されている粉末の子袋を取り出して、プロテインシェーカーでスポーツドリンクを作る。風邪はひかないけど、生体パーツ内の水分量の変化は悪影響があるので飲み物は飲んだ方がよかった。

 

 

 

 

「って感じだったんだよな」

「何があったんだろう。メカニックのところにもいかないのか?」

「それが不思議なんだよなぁ」

 

 書類をやり取りしつつ、416の不調を教えると指揮官も首を傾げる。

 

「ちょっと不安だし、僕からヒアリングしてみるよ。動けるかどうか聞いてきて」

「分かった」

 

 そうして宿舎に戻って扉を開けた時のことだ。

 

「416-大丈夫か?」

「「あ」」

「・・・すごい特殊なプレイっすねそれ」

 

 いや趣味は自由なんだけどな?

 部屋の先、唯一広げられた416の敷布団の上に416が四つん這いになっている。そのわきの下にSAAが手を突っ込んでいて、416の下には小さなボトル。ボトルの中には結構な量の液体が溜まっている。

 簡単に言ってしまえば搾乳プレイというやつに分類されるやつだった。

 

「待って!」

「いや、見たのは悪いけど流石にそれはどうなんだ・・・?」

「話を聞いて!」

「こ、こーら~」

 

 416はワイシャツのボタンを閉じつつ俺を止める。SAAは部屋の冷蔵庫の方に逃げていった。

 

「ここ数日胸が張って、今朝から母乳が出た・・・と」

「そうなの。だからSAAに絞ってもらってて」

 

 SAAは見た目がウエスタンガンマンっぽいけどカウガールだったかぁ。

 

「理解はしたけど、人形って母乳出るんだな」

「えー、それってそういうことじゃないんですかー?」

「ふふふふふふふ」

「あ、416が壊れた」

 

 俺がデータにない情報で思考停止しかけている横で、SAAが常識を持ってきて416が不気味な笑い声でバグを起こす。

 

「とりあえず、指揮官のところに行くぞ。ハード面のバグかもしれない」

「はーいパパのところに行きましょうねーお母さーん」

「ふふふふふふふふ」

「SAA、その扱いはやめた方がいいと思うんだけど」

 

 今日が部隊の休日で良かった。唯一のアサルトライフルで隊長がこんな状況ではまともに動けない。

 

「事実チェックの時間だオラァッ!?」

「VAG?!」

「指揮官!一つ聞きたいことがある」

 

 指揮官は驚きの表情に包まれていた。

 

「やったか?」

「なにを・・・?」

「ヤったか?」

「そのイントネーションはなんなんだい?!」

 

 機能停止していた416が指揮官に顔を俯いたままで迫る。416のいつもと違うテンションに副官のWA含めてデータルームの中の空気が固まった。

 

「指揮官、認知してくださいね?」

 

 WAの表情が一変するも指揮官はなにがなんだかわかっていないようだ。

 

「ごまかさないでください指揮官。私おっぱいが出るようになったんですよ?」

「ちょっと待ってくれ!僕は手を出してないし、そもそも人形の機能に母乳出すものなんてないはずだよ!?」

 

 指揮官の言う通り、俺たち戦術人形はそう言うことは出来てもアタることはない。アタることがないので母乳が出る機能もない。民生人形だと乳母役のためにそういうオプションがある。けれど戦術人形だとそこまで大きくするのは弊害があるし、ボディが少しでも変わると面倒だ。人間のモノと違って最初から出るようになっている人形用の母乳オプションは非常に容量を食う。しかもかなり大きいサイズなので、416は積んでいないようにしか見えなかった。

 

「ちょっと待って、元凶に話を聞いてみるから」

 

 指揮官が嫌そうな顔をしてビデオ通話を繋ぐ。

 

「はぁ~い、タバタくんげぇんきかしらぁん?」

 

 うわでた。

 思わず端末のカメラの範囲から逃げた。

 奇怪な口調とケモミミ、死にそうな顔をしているのは、人形としての俺の生みの親でもあるペルシカのアマだ。

 クルーガー社長と居るときや他人と話すときは普通の話し方なのに、知り合いになってくると変な口調なんだよな。どうも指揮官は気に入られているらしく、中々本題に入れない。

 

「それで原因は・・・」

「テストの実験体よ」

「はぁ」

「これから人形と人間のパートナーが出来ていくにつれ、そういう機能も追加する。だから、母乳を出せるように胸を大きくするナノマシンと人口器官を投入したってワケ」

 

 ここの416は、先行量産型らしく。折角のテスト個体だし、配属される指揮官はお気に入りだからという理由で実験体に選ばれたらしい。

 事実が解き明かされていくたびに416の顔が歪んでいった。「既成事実が・・・」とか凄いことを口走っている。

 ていうかそういうことされた覚えもないのに既成事実もないと思うんだよな。

 

「どうやったら落ち着くんですか?」

「それは一時的よ。一種の発情期みたいなものだからぁ、好きな人に絞ってもらえれば二か月は元通り。そうじゃなければ、一週間ぐらいかしら。忙しいから、また今度ねぇ~。タバタくん、今度差し飲みよろしく~」

 

 全員の視線が交差する。

 

 

 

 

「あれから一週間かぁ」

「そうだな。これおやつのアイス」

「・・・おいしい!VAGが手作りしたのか?」

「あぁ。ちょっと面白そうだったモンだから」

 

 廊下からものすごい圧力が届く。ヘタれの波動を感じた。

 

「よ、416?!」

「指揮官!そんな汚いものぺーっしてください、ぺーっ!」




VAG-73ボイス
後方支援開始「ちょっくら仕事!また後でな!」



次回予告
ワンちゃん欲しいよな。え?らしくない?
いやそういう意味じゃなくて、警備犬みたいな戦力が欲しいんだよ。でも本物はハンドラーも必要だし難しいよなぁ。
鹵獲ダイナゲートのカスタム?そういうのもありか。
2-2「治安維持小隊の日常」第一話「犬っぽい」

評価とお気に入り、しおり、ありがとうござい。
92位だけどランキング襲撃成功。
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