鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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廃工場の決闘1

 ガタガタと揺れること実に五時間。低速とは言え、もう勢力圏からは出てしまっている。

 

「ボス、ホントに人形が居るんですかね」

「分からん。分からんが依頼された以上探すしかないだろ、見つからなくても報酬は確約されてるんだから」

 

 外を眺めているボスにジョージが話しかけた。

 俺は車酔いで口を抑えているのに他の三人は全くそんな素振りを見せない。これは慣れとかそういう問題なのだろうか。

 ペリスコープを覗くと見渡す限り何もない荒野。こんなところに人形が居るとは思えない。一杯食わされたとかやめてほしい。

 

「おっ、市街地が見えてきましたぜ」

「そのまま近くで隠れるところを探して止めてくれ」

「あいあい」

 

 マイケルもあんな居心地悪い操縦手席で何時間もずっと座ってられる根性はヤバいと思う。

 

「サム、偵察頼むぞ」

「・・・了解」

「なんだ吐くのか?車内はやめてくれよ」

 

 そろそろ限界だったのでハッチを開けて身を乗り出した。

 

(汚いのでこれ以上は書かない)

 

 

 

 

「ふぅ、すっきりした」

「スッキリするのはいいが、さっさと準備してくれ。いつ敵に見つかるか分からんから」

「はーい」

 

 砲塔後部にポン付けされたバスケットから装備を入れたコンテナを引っ張り出す。

 ボディプレートを着込み、装備品を引っ掛けるベストを着る。Px4のスライドを引いて初弾を入れ、ホルスターに入れた。

 ゆっくりと長物の入ったガンケースを開け、中身を確かめる。

 

「散弾銃、そんなもんまで持ってるのね」

「破壊力じゃ右に出るものはないからな、鉄血は人間より頑丈だからこっちの方がいい」

 

 M1014、別名べネリM4。セミオートのショットガンで俺は崩壊した某国軍のものを使っている。高威力の三インチ系の弾を使えるのが気に入ってる。

 それをスリングで肩に掛けることで準備を終え、一六式に向かって敬礼した。

 

「作戦通り、この町の奥の廃工場まで一通り見てこい。敵が居たら自分の安全確保が第一だ。二時間後までに帰ってこない場合置いていく、以上」

「頑張ってきてちょうだいね~」

「死ぬときはちゃんと報告しろよ~」

 

 後でマイケルとジョージはぶん殴ろう、なんかいらっとした。

 

 

 

 

「人の気配はしないが・・・嫌な予感がする。嫌なくらいに静かなんだ」

 

 安全装置を外したPx4をゆっくりと下ろし、周りを見回して無線機に報告を入れる。

 

「なんかあったか?」

「何もなし。怖いぐらいに何もない」

「シックスセンスが反応したか?」

「あぁ。廃工場を見終わったらもう一度報告する、オーバー」

 

 足を前に出す。本当に何もないのか?

 

「!!!」

 

 ゴーストタウンに響く一発の銃声。廃工場の方からだ。

 走り出し廃工場の手前まで来れば、いるわいるわ。

 犬に人型まで居る。人型は一般的なスズメバチ(ヴェスピド)だろうか、持ってるのはアサルトライフルだ。この間合いじゃ、全く勝ち目はない。

 

「ボス、鉄血を見つけた。廃工場の入口に集まってる」

「人形は見つかったか?いや、質問を変えよう。匂うか?」

「八割は確証を持って言える、居る」

「廃工場まで五分で着く。近づいたら合図をする、グレネードで陽動を頼む」

「了解、オーバー」

 

 路肩に止まったままの廃車からそっとそっちの方を向くと、犬が不審げにこちらの方を見てくる。

 更に奥には、ハイエンドなのか仮面をつけていない人形まで居た。そいつが廃工場の中に入っていくということは中になにかあるのだろう。

 心拍数が上がってくる。久しぶりだぜこの感触、これこそ戦うってことだ。

 四十メートルほどだが、撃たれてしまっては一方的にやられることは間違いない。

 

「今だ!」

 

 手榴弾(アップル)のピンを抜き、全力投球。少し遠いくらいだが気を引くためだ。

 一六式が馬鹿みたいな騒音をバラまいて近づいてくる。先制攻撃で敵をぶっ飛ばし、そのまま残骸と残党に突っ込んだ。

 

「ボス、あんた最高だぜ」

 

 敵がほとんど吹っ飛んでしまった。スカッとする。

 

「サム、人形は中に居るか?」

「恐らく。この鉄血達の親玉みたいな人形が入っていくのを見た」

「んじゃあ俺たちはいつでもずらかるために傍に居るぜ」

「気をつけて、帰りの足をなくしたら意味がない」

「言われなくとも」

 

 1014に結束バンドでつけた付け根にそっと銃剣をつけた。

 着剣。いい文化だ。

 スリングを引っ掛け構えて、朽ちて長い建物へと足を踏み入れた。

 

「居ない。まだ奥か」

 

 匂う、匂うぞ、敵の匂いだ。鉄血のハイエンド人形は外で部下が死んだことを気にしてないのか。もしかして誘い込まれたのかもしれない。ここがやつらの巣だったのなら俺はクモの巣に着地した虫みたいなものだ。

 

「・・・!」

 

 ようやく見つけた。

 銀髪のシニヨン、黒と赤を基調にしたゴスロリのような服で武器は見当たらない。それでも戦闘能力は頭一つ抜けているはずで、俺で倒せるのだろうか。

 

「あらら・・・もう見つかっちゃったか」

 

 声がする。それは鉄血の人形に睨まれていても堂々とした態度を取っている。

 シアンの髪を二つに纏め、リボンをつけていた。赤色の瞳はこの状況に至っても全く曇っていない。手には散弾銃を持っている。

 依頼の戦術人形だ。

 

 重い足を一気に踏み出した。

 

「うおおおおおっっっっ!!!!」

 

 鉄血の驚いた顔が実に愉快だ。

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