鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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君/お前のことが3

「サム、何か隠してるでしょ」

「いや、いやそんなことは、ない・・・ぞ?」

「バレバレじゃん」

 

 街の喫茶店にはいつもの服のサブリナが待っていて、軽く近況を話し終えたところで今日の本題かのような勢いで問い詰められた。

 実のところ、俺は昨日の夜からずっと挙動不審だ。なんていうか、あの出来事にボディと精神の本能のせめぎ合いが起きている。

 だけど昨日の今日のことは流石にバレてないだろうし、俺が何かやらかしたか・・・?

 

「・・・話すよ。驚くなよ?」

「うん」

「昨晩、指揮官に誓約してほしいって言われたんだ」

 

 後ろの方のテラスから椅子が吹っ飛ぶ音が聞こえた。そちらを振り向いても誰も居ない・・・この喫茶店は持ち帰りもできるし急な用事が入って走っていったのだろうか。

 それはともかく、好きな相手に別の相手からプロポーズも同然のことをされたとカミングアウトするのは変な気持ちになる。

 

「段階飛ばし過ぎじゃない?サムがそっちに行ったのってまだ半年も過ぎてないじゃん」

「言われてみれば・・・」

 

 WAは倍以上の付き合いがあるはずなんだよな。なんで俺なんだ。

 疑問は浮かぶ。俺よりもSAAが、SAAよりも416、416よりもWA、俺を選ぶ理由が分からない。

 

「なにしたのさ」

「特に変わったことはしてないんだけどなぁ」

 

 サブリナの顔が一気に呆れに変わった。

 

「サムがそういう時って、大体ダメなんだよね」

「マジ?」

 

 きっぱり言い切ったサブリナはカフェラテを飲む。こちらに向きなおした目はジト目になる。

 どうも俺の「普通の対応」は普通じゃないらしい。言われてみればリンヤオにだって普通の兄として行動していたつもりが・・・ってことがあったし。

 

「まじまじ。返事はどうしたの?」

「いや、断ったぞ?俺男だし・・・」

「見た目はオンナじゃん」

「そういう問題でもねぇ!」

 

 俺は同性愛疑惑を否定するのに躍起になって、サブリナの調子がいつもと違うことに気が付かない。

 アイスコーヒーを一気に飲み干して、大きく深呼吸。今伝えるしかない。

 

「俺は好きな相手が居るんだよ」

 

 そこから、本人にその気持ちを伝えようとして言葉に詰まった。

 とっくに空になったグラスの汗が手について湿る。喫茶店の喧騒だけは時間が進んでいることを知らせてくれるものの、俺たちの間の空気が止まっていた。

 この期に及んで俺は迷っているらしい。ずっと答えを保留にしておいて、遅れすぎた回答すらも足踏みする。相手の気持ちも既に知らされていて、その気持ちが変わっているなんて、思いもしないのにそれをお題目にして俺は歩き出そうとしない。

 なるようになるなんて言っているくせに、怖くて踏み出せない。

 

「・・・サムのバカ!」

「あ、サブリナ!」

 

 サブリナはバっと店を出ていった。思わず伸ばした手は空を掴むだけだ。テーブルにはカフェラテの残ったカップだけがサブリナの存在を示すだけ。

 

「・・・俺はヘタレだ」

 

 俯き大きくため息をつく。サブリナはかなり怒っていた。死ぬ前にだって気持ちを伝えられたのに軽く返しただけで、一度とは言え体すらも交わしてしまっているというのに一向に相手にされないなんて、同じ立場なら俺だって不機嫌になる。

 あのサムと俺が同じという確証もないんだけど。

 苦しいのはサブリナなんだ。

 サムが鎖を付けてしまった。それをサムの生き返りである俺が外せるわけもない。外せるのは死んだサム自身だ。

 

「どうしようもねぇよ・・・」

 

 俺の気持ちを変えることも出来ないんだ。

 お互い気持ちを捨てられないが故のスレ違いなんだと思う。

 こんなんじゃ一六式にも戻れねぇよな・・・

 重くなった気を紛らわすように天井を見上げた。背後から気配と殺気を感じて振り向く。

 

「よ・・・416?あの?なんでそんな怖い、怖い笑みをお浮かべになられていて?」

「VAG?指揮官から誓約ってどういうことか教えてもらえますよね?」

「あっはい」

 

 外出組の416とロクヨンだった。ロクヨンは困ったような苦笑いをしているだけだけど、416は静かにキレている。笑いながらも頬は引き攣っていて、顔から受ける印象はこれっぽちとも笑顔のそれじゃない。おまけに敬語。これはあれだ・・・「面貸せ」ってやつ。

 

「はぁー・・・確かにVAGって指揮官に甘いですものね」

「甘くはねぇよ・・・」

 

 そりゃWAとかと比べたら優しくしているとは思うけどさ。

 俺がやったことなんて、仕事手伝ったり、軽く雑談したり、男子特有の困ったことを元男子として解決してやったぐらい・・・あれ?

 

「分かったみたいですね。VAGは距離感が近すぎるんです」

「・・・はい」

 

 一々淡々と問い詰めてくる416が怖い。ロクヨンはいつも通りおろおろしていた。

 

「はぁー・・・副官サマも私も行動に躊躇しすぎたみたいですね」

「・・・416、やりすぎないように頼むぜ?」

「もちろん。最悪指揮官が動けなくなってしまっても私たちが障害を全て乗り越えるわ」

 

 怖いわ。

 

「えぇっと、あの子を追いかけなくていいの?」

「外には俺の家族が居る。そっちにメッセージ送ったら、今日は会うな、って」

 

 喧嘩別れみたいな状態で期間が開くのは辛いが、次会う時に整理をつけるためにもそれまでの間を頑張るしかない。




次回予告
・・・新しいスキン?いや、この前着たばっかじゃん。
待て36、なんだそのワキワキした手は・・・はぁ!?俺もやれって?
・・・もえもえ、きゅ・・・無理だわ!ぜぇったいに無理!ていうかこれはメイドじゃなくてメイド喫茶だろぉうが!?!?
幕間「スキン「奉仕技術習得」」
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