鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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今回からヒロインの人形と敵の人形の名前が明らかになります。敵は勝手に考えたのを入れました。

そんなわけで第三話第二パートをどうぞ!


廃工場の決闘2

「ニンゲン・・・?!」

 

 鉄血の顔が驚愕に染まっている。痛快だ。

 銃剣を突き刺したそのままの勢いに鉄血をコンクリート壁に叩きつける。初動は完全に俺の勝ちだ。それでも気は抜けないが、かなりのダメージを与えたと思う。

 人間とそっくりの見た目である人形のうなじ部分に刺さった銃剣を引くために一発発砲。散弾がもろに鉄血の肩関節に向かって命中し、人工血液が噴き出してきた。

 

「ォォォォオオオオッ!」

 

 腹の底から叫んで引き抜いた銃剣を今度は仕留めるために顔面に向かって突く。

 殴り合うときに声を上げるのは体の力を引き出すためだ。スポーツで叫んだりするアレと同じ理論である。

 

「ヤリヤガッタナッ!」

 

 どこか片言な鉄血は迫る銃剣に人間の比ではないスピードで真剣白刃取り。マジでこいつら頭おかしい性能してる。

 銃剣を握られて銃が動かない。人形は足を使ってこちらを払ってきた。

 

「・・・ふぅ」

 

 距離が開いたところで、鉄血は持っていった銃剣を握りつぶし放り投げた。

 ひしゃげた銃剣はまるで俺の未来の姿のようで、恐怖心が芽生える。息を吐き、跳ね上がる心臓を必死に抑えた。

 奇襲したおかげで相手は右腕が壊れている。両脚はしっかりしてこちらとの間合いを計っていた。

 

「見逃してやってもいい。そいつのコアは奪ったからな」

「てめぇの方が傷を負ってるじゃねぇか。今んところ俺の方が有利だぜ」

「ふん。ニンゲン、調子に乗るのはいい。ワタシにここまでの傷を与えたことを褒めてやろう」

「光栄だな」

 

 廃工場の埃臭いにおいが鼻を突く。時間が進んでいくのを体が感じる。空気が変わったような気がした。

 

「だが、ここまでだ」

 

 一瞬で距離が縮まる。トリガーを引いたが相手の上を切り裂くだけだ。無傷の左手で首を掴まれ、コンテナに向かって叩きつけられた。

 肺から一気に空気が抜け、意識が飛びそうになる。抵抗しようとしても武器がない。頭の中には息ができなくなって倒されるという結末以外出てこなかった。

 

「何をワラッテイル?」

 

 この状況に至っても俺は悲観的にはならなかった。別の結末を信じていたからだ。

 

「見えるのさ」

「なにがだ!」

 

 怒鳴った敵の後ろを見て、俺は勝ちを確信した。

 

「正義は勝つ。そういうビジョンがな!」

 

 叫び、力を振り絞ってゴスロリの生地を引っ張る。

 瞬間、弾けた。病的なまでに白い肌に鮮血が広がる。

 

「・・・何をした・・・?」

「俺に集中したのが悪手だったな、鉄血」

 

 いつから戦うのが俺だけだと錯覚していた?

 いつから自分を傷つける敵が一人しかいないと思った?

 グリフィンの戦術人形は武装解除したから大丈夫だと思った?甘すぎるぜ。

 もし俺が自分の武器を密かに渡していたら、人形ならば戦いに参加する。烙印システムに適さない銃だったとしても、戦術人形と繋がりを持たない銃でも撃てないことはない。

 確かに戦術人形はその名を冠した銃を愛用するが、もしもの時には撃てるはずだ。

 すべて確証はない、推論の末の行動だが今回は成功ということだろう。

 ゆっくりと体を引き起こし、頭に一発喰らい物言わぬ人形と化した鉄血を地面に転がす。

 Px4を理想的な射撃姿勢で構えているのは、先ほどまで鉄血に追い詰められていたシアンの戦術人形だった。

 

「助かったぜ。人形さん」

「え、あ、うん」

 

 気の抜けた返事は恐らくこの事態を想像していなかったということか。

 改めて姿を見れば、落ち着いた髪色に気高く光を灯す瞳。端正な顔つきは十人中十人美人と答えるだろう。豊満な体つきに、赤に白のフリルのついたミニスカートから覗く生足は艶やかしい。

 こちらの視線に気づいたのか、気まずそうに顔を逸らしていた。

 一言謝り、無線機のスイッチを押した。

 

「サムからボスへ」

「なんだ、終わったか?」

「敵ハイエンド人形は倒した。人形は確保したから今から連れ帰る」

「よくやった。さっさと帰ってこい、ずらかるぞ」

「了解、アウト」

 

 Px4を返してもらい、吹っ飛んでひしゃげたヘルメットを持つ。

 

「あの!」

「あぁ、怪しいものじゃない。グリフィンに依頼されて探しに来たんだ」

 

 痺れる足と両手を動かし、鈍痛が残る体を押して立ち上がる。

 

「そうだ、よかったらあんたの名前を教えてくれよ」

「え?」

「あるんだろ、名前」

 

 帰りの五時間、名前も分かんないんじゃ気まずくて仕方ない。

 

「あ、名前ね・・・」

 

 すぅと息を吸い、人形は名を名乗った。

 

「こちらSPAS-12!貴方の堅牢な盾となりましょう!」

 

 キリッとした顔は「決まった・・・」と言わんばかりである。それを見て少しだけ噴き出した。

 

「ちょっ、なんで笑うの!」

「なんでそんな口上なんだよ・・・ぶふっ」

 

パリーン!

 

 窓が割れた。倒したはずの鉄血が足を動かし左腕に大きな何かを持って、ゾンビのように消えた。

 

「ボス!そっちに鉄血が行った!RPGを持っていやがる!」

 

 無線に叫び、窓を突き破って拳銃を構えた。

 

「ワタシの名前は『パーサ』だ!覚えておけ!」

 

 鉄血はそう叫び、一六式にRPGを向けている。

 俺はトリガーを絞るが、頭をぶち抜かれても生き返る人形は人間みたく頭を撃ち抜けば動きが止まるというわけではない。

 再び頭を撃ち抜かれた鉄血の先に、一六式のキューポラから身を乗り出したボスが見えた。

 

「ボスっ!」




ボスはピンチ!

ヒロインはSPAS12ちゃんでしたとさ。プロローグに出てきた「サブリナ」って名前はSPASちゃんの名前「サブリナ・フランキ」から来てます。分かったかな?
プロローグで当てた人には・・・特に何もありません。

鉄血の名前は「パーサ」。意味は第一章の〆に出る予定です。コアというヒントから、どんな敵になるかを考えればおのずとこの物語の展開が見えてくると思います。


次回予告
鉄血ハイエンド人形「パーサ」により重傷を負ったボス。朦朧とする意識の中、彼は命令を下す。
「サム、お前が次のボスになれ」
鉄血の集団が迫り、新たな戦いの火ぶたが切り落とされる。
第四話「地獄への転進」
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