鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

71 / 157
狼煙が上がっている2

 

 

「今回、囮に参加してもらうPMCを紹介する」

 

 指揮官が合図をするとブリーフィングルームに見慣れた人影三人分。

 

「おーすサーム」

「マイク・・・空気ぐらい読んでくれ」

 

 気楽な様子で濃い肌の青年から手を振られる俺の方に、小隊の目線が差し込んでくる。

 ジョージはマイクの頭をぐりぐりとしてお仕置き。サブリナは・・・この前のが原因で目線を逸らされた。

 

「えぇっとVAG、説明いいかな?」

「分かった。前に話した通り俺は男の人格を持ってる。その時にこの三人と一緒に戦ってたんだ。四人で一両のIFVを運用している。まずこの調子いいのがドライバー」

「マイケルだぜ。よろしく!」

「んでこっちのひょろなががガンナー」

「ジョージよ」

「最ご「サブリナ・フランキです!」

 

 俺の言葉に重ねるようにサブリナが自己紹介する。やっぱり怒ってるようだ。

 それにサブリナを見て小隊の面子は何かを察していた。

 

「サブリナさんって・・・SPAS12ですよね?」

「はい!元戦術人形ですよ」

「VAG、なんで逃げるのかしら?」

「逃げようなんて思わない事ね」

 

 空気を察したロクヨンがネタ晴らしを始めた辺りで俺はブリーフィングルームから出ようとする。俺が度々サブリナの事を話しているせいで、興味を持たれていた。特に俺を捕まえてきた416とWAは俺の肩を引っ掴んで椅子に落す。

 この二人は誓約ガチ勢なので、人間のサムが「戦術人形」の払落しを購入したエピソードが気になるみたいだ。目が血走っている。

 

「と、とりあえず積もる話はあとにして!今はシャコ取り作戦の第一段階と第二段階についてだ!」

 

 指揮官が取りなおしたことで作戦会議は始まった。

 

 

 

 

「・・・サム」

「どうしたマイク」

「いや、なんつーか・・・」

 

 打ち合わせも終わり、出撃時刻までの時間の間に格納庫に訪れるとマイクが突っ立っている。気の抜けた様子は作戦会議中からだった。

 マイクの様子が変わった原因はなんとなくわかっている。

 

「MCVカンパニーの皆さま、食事の用意が・・・あら、マイケル様。先ほどから具合がよろしくなさそうですがなにかお手伝いできることは」

「あ、だ、大丈夫です!」

 

 分かりやすい・・・

 格納庫に36が入ってきて、それを見たマイクは挙動不審になった。まるで好きな相手にドギマギする思春期男子のような姿だ。

 マイクの育ての親でありおそらく初恋の相手、人形の「マリー」とG36は似ているらしい。そういう偶然もあるのか。

 エッチングで作られるボディはランダムだけれど、ボディ自体の設計は基礎のデータがあり。そのデータの内に民生人形「マリー」と戦術人形「G36」というメイドの性質を持つ二体の人形に共通点があるのは神様のいたずらか。

 

「まーいーくー惚れたかー?」

「違うって!違う、違う!」

「でも気にはなってるんだろ?」

「だけどマリーじゃないし・・・」

 

 言われてみればそうだ。俺もサブリナの事は好きでも、他のSPAS12が好きというわけじゃない。そりゃあ見た目で気になることはあっても、惚れたのはサブリナだけだ。

 しかしマイクのテンションを見る限り、似ているだけじゃないのは分かった。マイクは、ギャンブルが得意でMCVカンパニー御用達のバーでの賭けではポーカーフェイスを活かして無敗を誇っている。

 そんなマイクが挙動不審になるのは俺たち家族の前だけだった。

 

「ちょっとサム、マイクからかってないで用件を話してちょうだい」

「はいはい。一六式に機関砲がついてるけど今はどんな感じで運用してるんだ?」

「そうねぇ、機関砲は対空の三十五ミリ機関砲を使っているわ。ベルト給弾だから戦闘中は装填もなし。サブリナが車長をしてるの」

 

 俺いらないじゃん・・・

 

「俺なしでもやっていけてるんだなぁ」

 

 突きつけられた事実で呆けていると、一六式の方からおかしの入った子袋が飛んできた。

 キューポラに頭が消えていくのと飛んできたものを見てすぐに分かる。サブリナはやっぱり怒っていた。怒らせた理由もわかるし、仲直りもしたいんだけど、踏み出せない。俺って情けない・・・これじゃあマイクの事をヘタレだなんて笑えないよな。

 

「サム、一つ言っておきたいことがあるんだぜ」

「一六式の運用にサムが必要じゃなくなっても、MCVカンパニーもサブリナにとってもサムはずーっと必要なのよ」

「・・・ありがとう」

 

 マイクとジョージがガシガシと頭を撫でてくる。精神年齢はほぼ一緒で、それどころか男の頃は俺の方が優しくする立場だったのに、気づけばほとんどの人から頭を撫でられるし、時折ハグされていた。納得いかねぇ・・・

 

「サブリナ!作戦が終わったら話をさせてくれ。嫌なら断っても構わないから!あとお菓子もありがとうな!」

 

 砲塔を叩いて言葉を投げ、食事を取るブリーフィングルームに足を向けた。

 シャコ取り作戦を成功させてから自分の考えを纏めて伝えるんだ。もう気持ちに嘘はつかない。

 なんだか死亡フラグを立てたような気がするけど、そんなものぶん殴って折ってやる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。