鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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作戦会議1

 

 

 体に纏った泡の層をお湯で一気に流し落とす。汗をかきすぎて俺のブラウスは白い跡がついてパリパリになっていて、それを見た36は絶句していた。仕方ないだろ・・・背嚢には監視用具とか食糧入れたらパンパンになって下着類しか突っ込めなかったんだから。

 こういう時に来ているのがつなぎやコンバットシャツの類だったら気軽に捨てられるし数枚持って行けるんだけど、俺たちのサイズはないからなぁ・・・

 ウェルロッドは三つ離れたシャワースペースで体を洗っているが、声を聞くにこちらも洗うのに苦労しているようだ。

 ここは敵の拠点に比較的近い町の公衆浴場だ。小隊の本部はこの町にあるビルの一部階層を借り上げているグリフィンの支部に設置されている。

 前の壁に両手をつき、ゆっくりと深呼吸。

 本当はこのままぐっすり休みたい・・・だけど二時間後に作戦会議なんだよな。その後拠点に戻るまでの時間がある。それで英気を養わないと。

 

「ふぅ・・・!?」

「あ」

 

 シャワールームの入口の方から聞きなれた鼻歌が聞こえて振り返ると、肩のあたりまでしかない仕切りとして機能していない板の先に見慣れたバストラインが見えた。

 小隊の面子よりも一回りは大きいであろうそれは紛れもなく、奴である。

 しかも厄介なことに俺の動揺が聞こえたのか、豊満な胸を持つ相手がこちらを伺ってきた。

 

「・・・サブリナ」

「・・・おかえり」

 

 やり取りはぎこちない。最初に会った時さえこんなにギクシャクしていることはなかったのに、過去になく関係性はガタガタだ。触ってしまえば曲がってしまいそうなぐらいのそれを強固にする方法は分からない。

 ゆっくりと視線を前に戻してシャワーを浴び始めると右隣からも水音が聞こえてきた。

 聞きたいことはいくらでもある。作戦の第一段階は問題なかったか・・・とか、なんで役割は終わったのにここに居るんだとか。

 だけど今の状況で聞く気にもなれないわけで、俺は長い時間お湯に晒していた肌にあまり質の良くないタオルを擦りつけた。

 

「VAG?そろそろ上がりましょう」

「おう。先、行っててくれ。五分ぐらいで上がる」

 

 扉が閉まる音と共に、空調と隣の水音だけが空間を支配する。ちらっと上を眺めたら少し曇ったシャワーヘッドに、情けない顔をした俺の顔が映っていた。

 ダメだ・・・考えはまとまっていないのに、作戦が終わるまで何も話さないのが辛すぎる。今の状況で伝えてもそれは要領を得ず、彼女の怒りを助長するだけなのに。

 水音が止まったのを疑問に思った瞬間、後ろに気配が出てくる。振り向くのは遅れて、視界は何も見えなくなった。

 

「・・・可愛い可愛い私の妹」

「妹じゃねぇって」

「ごめんね。私は我儘だから、サムの言うことすぐに飲み込めないの」

 

 ぐっと背中を強く抱きしめられる感触と前に当たる柔らかい感触は今のボディでは何の感慨もわかない。心は正直に反応して鼓動を速めている。それが自分の二面性を表しているようで悔しい。

 

「もし貴方が私の事を愛しているとしても、私はサムという人間自身が好きだったの。今でも忘れられない・・・パーサから助けてくれた時、一緒に戦った時、買い物に行った時、ご飯を食べた時、寝た時、私が疑ったのに助けに来てくれた時も・・・サムの表情全てが格好良くて、一つ一つの動作が愛おしくて、リンヤオちゃんの前では一際優しいお兄ちゃんの顔をするサムの事が好きだった」

「・・・重いわ」

「そうかもしれない。だけどさ、考えてみてよ」

 

 とっくに五分は過ぎているが、察せないほどウェルロッドは初心じゃない。

 拭った肌がぽたぽたと濡れていく。そう言えば正面を向いて抱き着かれたのは、人間だったときが最後・・・

 

「物語で、お姫様が白馬の王子様に惚れないことはある?」

「・・・ねぇな」

 

 サブリナにとっては最初の出会いは「勝ち目もない敵にただの人間が突っ込んできた」わけで無謀なことをした俺を、彼女は「助けてもらった」と感じている。

 事実は違う。助けた事実で俺が彼女を延々縛り付けているのだ。妹と同じように・・・

 俺はサブリナに好きだと言える立場ではない。

 

「いつまで自分を縛り付けているの?」

「縛り付けてなんか・・・」

「リンヤオちゃんに、私・・・ううん、ジョージとマイクにだって」

「俺が皆を縛り付けたの間違いだろ?」

 

 リンヤオは足の自由と不自由ない生活を、サブリナは戦術人形としての生活を、ジョージからは弟を、マイクからは両親を奪った。

 金持ちの爺さんからは、奥方と人形、未来を奪った。

 甘えん坊な子供からも両親を奪っている。

 

「いい加減にしてよ。私はサブリナ・フランキとしての人生を楽しんでいる。他の人はあずかり知らないし私が分かるわけもないけど、少なくとも私はサムのすべてを許容してるから」

「・・・重いんだって」

 

 なんでそんなに全許容できるんだ。

 

「私の気持ちって重いから・・・重いから・・・貴方のことを愛しい人じゃなくて妹だってすり替えてるの!」

 

 何も言えず、かといってあの時みたいに抱きしめ返すことも出来ずに、俺は立ち尽くす・・・




・・・作戦・・・会議・・・?

誤差だよ誤差。


あ、色々話の編成を考えてシーズンツーは2-3本編と幕間までで終わります。シーズンスリー突入よ(これ9月までに終わるのか・・・?

ドルフロの公式~集を買わないといけない・・・
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