鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
暗闇に慣れた目が一秒もしないうちに閃光で眩む。かといって敵を見ない事なんてできない。目を離したらやられる。敵を倒さないと・・・
「サム!アモ!」
「了解!」
車両の残骸に据え付けられた軽機関銃についていた同期が叫んだ。発砲音とイヤーマフの上では微かにも聞こえないそれは、機関銃の発砲炎に照らされた口の動きから察するしかない。
後ろからは迫撃砲弾と味方の攻撃が、前からはじりじりと迫る感染者達が。前者は鋭く攻撃的に、後者は海岸に押し寄せる白波のように迫っては消えていく。
最前線の味方は俺たち以外はほとんど残っていない。無線は機能していないし、弾薬は少し後ろに纏めてあるのでそこまで走る。俺たちに与えられた命令はこの戦線の死守。
上層部は最前線は死んだと思ったのか、砲撃ラインを寄せていた。味方だろうが作戦のためには撃つ。合理的な判断とは言え当事者になるとは思わなかった。最前線にいたのは同期の新兵ばかりだ。
「補給!軽機弾薬と替えの銃身!・・・って誰も居ないか」
二十分前にだって弾薬補給所は閑散としていた。補給しに来る陣地の兵が居なくなったから。それでも数人はかわるがわる補給に来ていた。それは一緒に訓練所の釜の飯を食った同期だったり、比較的経験の薄い先輩の歩兵だったり。
簡易型の外骨格と接続されたバックパックに弾薬と数本の銃身を入れて、きた道を戻る。所々穴ぼこがあるが、恐らく戦闘ヘリのロケット弾だ。ここらにだって味方陣地があったのに、敵が戦線を食い破ったのを確かめるなり攻撃したのだろう。
感情は特に変わらない。こんな状況じゃ何も考えられなかった。
只管に走って仲間に補給を渡さないといけない。例え生き残っても崩壊した前線から救出されることは想像できないが。
「・・・ヤバい!」
俺とバディの居た陣地の周りに感染者が群がっている。銃声は聞こえるのでまだ生きているはずだ。
「間に合え間に会え間に合え!」
今時珍しい頑丈な銃床のアサルトライフルに着剣、手榴弾のピンを抜いて敵の群れから少し外すように投げる。
一マガジンしっかり撃ちきって、リロードの合間に踏み込む。
「ふざっけんな!生きてるだろ!おい!手伝え!逃げるぞ!」
軽機関銃の銃声が止まった。
右わき腹が痛い。
それから数十分戦っただろうか。いい加減バディは死んでいるだろうし、戦線はもっと後方に行っている。感染者は倒しても倒しても群がってきて嫌になった。
銃剣の切れ味が鈍ってきているようにも感じる。とっくにマガジンは切れているし、邪魔なので外骨格からバックパックを外した。外骨格のバッテリーも切れかけている。
「いい、加減に!しやがれ!」
外骨格のパワーアシストが切れると、両足と腰に機械の重みがかかって動きが鈍くなった。この状況で外せないそれは邪魔でしかない。
一時間ぐらい経ってバディが見える。まだ息があるようでこちらを見つめていた。血だらけで原型をとどめていない手が伸ばされて、それを掴もうとして・・・
▽
「!?はー・・・はー・・・」
「サム、大丈夫?」
悪夢にうなされ飛び起きようとしたところで、肩に力がかかって倒される。くらくらとする視界を落ち着かせると見慣れたお山を下から見上げる絶景が・・・
「でけぇなぁ」
「何言ってんのさ」
サブリナは五段盛になっているパンケーキを一口サイズに切り分けて口に運びつつ、何故か俺を膝枕しているらしい。客間のテーブルにフォークを伸ばすたび、俺の顔面がクッションに押し当てられた。
薄いノースリーブシャツ越しのそれはいつもながらに安心感が来るし、お腹に当たっている片耳には落ち着いた心音が聞こえてくる。それはまるで何かに包まれているようで・・・心が安らぐ。
「何時?」
「夜の十時」
「そんなに食って太らないか?」
「やだなー、これは夜ご飯!」
夜ご飯にしてもその量は・・・いやその分動いてるから大丈夫なのか?
俺たち人形は生体部品を使っているから体重の増減があるとは言え、基本身長や体重は大きく変わらない。そう言うのは別機能なのだ。しかし例外もあるようで、うちの416のように後付けで機能が追加されたり・・・サブリナみたいに胸に栄養が行って大きくなるとかもあるらしい。個体差・・・にしては妙だし、人形によっては設計が違うのだろうか。
「マイクとジョージは?」
「もう寝てるよ」
「寝るってどこに?」
「皆あちこちの会議室とか廊下にマットレスを引いて寝てるよ」
サッと周りを見れば反対側のソファでは指揮官がベレーを頭に乗せて眠っている。寝顔はよく見えないが、動きがつかれている人のそれ。支部で書類をこなしつつ、お偉い人との折衝をして、各地の基地にも作戦を説明したりと大忙し。誰よりも働いているだろう。
客間の入口側にはジョージとマイクが居た。ジョージは大人しく寝ているんだが、反対にマイクの寝相が悪くて、サブリナのパンケーキのお代わりをもってきた36がタオルケットを掛けなおす。
・・・え?サブリナまだ食べるの?
作戦会議(4パート中1パート)
タイトル詐欺が過ぎる。
しれっと過去編を挟んでいくスタイル。正規軍って特殊な技能を持つ兵士は安全にハイテク武器を使わせて温存しそうだけど、貧困層から搾り取った兵士は普通に使い捨てにしてほしい(個人的性癖)あ、この感染者達は正規軍の主力でもって消し炭になりました。時間稼ぎってやつですね。
こうしてサム君は仲間を守るという信念を得るとともに、鬼人のごとき活躍を特殊部隊の隊長に見つけられて配属され、シーズンワンの開幕につながるわけです。
あとサブリナのおっぱい描写にこだわろうとして時間の末に断念しました。
更新を落とすわけにはいかないのじゃ・・・
次回予告
高空から爆撃を行い、作戦の進行に合わせ降下する輸送ヘリ。誰かが流し始めたワーグナーとドアガンを盛大にぶっ放す人形。
「全く戦場は地獄よ、あーっはっはっはっ!」
「わーちゃんェ…」
吹っ飛べ敵基地!弾けろ美少女の汗!コ○ンドー!
次回「ドールズ・アンド・オペレーション」