鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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ドールズ・アンド・オペレーション1

「・・・時間だ、行くぞウェルロッド」

「頑張ってちょうだい、VAG」

「416に言われなくてもやることはやる。報酬分はな」

 

 フライボードの準備を行いつつ監視の任務を変わった416と36に手を振りつつ、土砂降りの雨の中を歩く。辛うじてブーツには浸水していないが、歩くたびに跳ねる泥がニーソを汚した。

 高い空からヘリが飛来する音が聞こえ、敵の敷地内で小さな爆発が連続する。敵のDIY迫撃砲が並んでいる広場を狙ったものだ。これが反撃の狼煙だった。

 視界に霧はかかっていないものの、十キロほど先はよく見えないぐらい。ここから酷くなることはないという予報だが、信用性は皆無。人類によってボロボロになった地球の機嫌はころころ変わるし、かつての天気予報と現代では比べ物にならなかった。

 丘を越え、腰を落として進んでいく。

 

「敷地内、一、警備人形」

「了、制圧する。ポインター、行くぞ」

 

 進入路に入る俺の後ろからウェルロッドが報告。彼女は攻撃指示のための無線機を担いでいるので俺が敷地内に入って綺麗にした後ゆっくりと入るのだ。

 制圧任務のために連れてきたポインターは物音を立てないように、かつ相手の動きを止めるために回り込んでいく。

 雨に足音と雑草が揺れる音がかき消されてて、相手に近づけた。

 使われていないトーチカの陰、歩哨に立っている警備人形とはおよそ五メートル。ロストも大きな損傷もさせないから大人しくお縄についてくれよ・・・

 ポインターに指示を出す。

 

「生き物?・・・違ッ!?」

「悪いが寝てもらうぜ」

 

 手を掛けて陰に引き込み、すかさず機能停止の物理コードを当てる。IFFが書き換えられてこちらに害を成す可能性がある以上、回収後の整備までスリープモードから起きない状態にするこれは重要だ。

 今回戦闘に参加する戦術人形には全員にスタンガンに近い形をした物理コード送信機を貸し付けられている。もちろんIOPが管理しているもので、指揮官が三日間交渉して用意した。これを悪用されてはこの事件の二の舞になるだろうし、決して無くすなと強く命じられている。

 

「ポインターこっちに敵は?」

「!!!」

「オーケー、あと五体と二人か」

 

 広場に向かっての爆撃で厳戒態勢になっているにも関わらず、この程度の警戒と呆れるぐらいに警備が薄い。第二フェーズ開始に向けて一六式含めた陸上の攻略隊が敵に見つかっようだ。正面にばかり気が行って、グリフィンが戦争レベルの攻略作戦を行うなんて思っていないのか。

 ウェルロッドに向かって身振りでこの地点までの前進を提案する。こちらがカバーしていると、一人歩哨の反応が消えたことに気づいた警備人形がこちらに向かってきた。

 作戦のタイムテーブル的に、ここでウェルロッドと一緒にあの7つの敵を無力化するのがスマート。もちろん俺とポインターだけでもやれるが、それじゃあ時間配分が気持ちよくない。

 

「ポインターと一緒に人形、左から回れ。フィフティーンカウント」

「了解」

 

 心の中で十数えたところで目を閉じる。気配と見た情報を頭の中に思い浮かべ、空間を把握。相手はこちらを警戒しているが幸いにも上への注意が薄かった。

 残り三カウントで倉庫の天井に登り終わり、敵の兵を捉える。

 

「申し訳ないが、かなり・・・!痛いぞ!」

 

 ホルスターから抜いた半身、VAG-73をセミオートで二三発、それを二回繰り返す。銃を最優先でつぶし、上から一人に飛びかかった。敵が手に持っていた銃の精密部分の横っ腹に当たり、ノリンコ製ARとも言うべきそれは吹っ飛ぶ。

 驚愕している敵のヘルメット下にある首元へ蹴りを入れ、突き倒した状態でもう一人に取り掛かる。手で無線機を手に持つのでそれを撃った。

 絶望に染まる表情に何の感慨もわかない。こいつらは制圧対象だ。

 二人の敵兵を布製のバンド型手錠、ハンドカフで拘束、五体の警備人形が寝転がっている方を見る。

 

「報告!」

「五体とも不活性化処置完了、そちらは?」

「一人右手銃創。両方無力化した。リンク情報に入れといてくれ」

 

 敵の状況管理は爆撃後ヘリボーンまで上空に待機している輸送ヘリに中継されて指揮車両に報告、これを利用して制圧や無力化された敵と人形を回収するようになっている。

 無線が混信することは分かり切っているので、俺たち小隊メンバーのみが無線で報告し、後から突入してくるA~C班は指揮車両からのリンクデータを端末で確認し、データリンクに報告して行動する。

 

「正直ここまで情報化されてると何が何だか分かんなくなるぜ」

 

 第二フェーズ開始前の僅かな待機時間、物陰に潜みつつ周りを警戒しているがやけに静かだ。

 思わずぼやいてしまう。

 こういう連携を行う技術自体は三次大戦以前に確立されていたわけで、ハイテクに感じるが実はそうでもないというギャップを感じた。

 

「そうですか?私たちにとってはこっちの方が演算システムを有効に使えると思いますが」

 

 そりゃ元から人形として、いわば機械としての演算を前提にしてる電脳ならそうだろう。

 

「俺ぁおつむが弱いんだよ」

「自分で言いますか」

 

 耳に差したイヤホンに雑音が走る。

 

「第二フェーズ開始、一分前」

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