鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
「VAG、顔色が良くないわ。そっちで休みなさい」
服が割かれていて汚れている人形達の肌を拭き取り、毛布で包んで背負って運ぼうとする。作戦に参加した他の人形達は敵の護送に大忙しで、毛布やタオルなどの衛生用品を置くだけで行ってしまった。
そんな状況で動いている俺の姿を見て416が咎めてきた。
「いい。もう吐かない」
「私たちが頑張っているから云々考えているのなら休んでください」
「無理するのはよろしくありません」
ウェルロッドと36まで心配してくる。自分の思っていた以上に心にダメージが来ているらしい。
敵の兵士はかなりの数が死んだり大怪我したりしている。既に生きる見込みがなくなって外で燃やされた骸があるし、貫通銃創があるにも関わらずまともに止血すらされずにトラックに載せられた敵も居た。
敵はどれだけクズな奴らでも人権はあった。もちろん俺たちや作戦に関わった全ての人形に指揮官、人間だろうが人形だろうがこいつらには怒りを持っている。だけどその感情で見捨てたわけじゃないのだ。
俺たちは政府の組織でもなく、一企業。こいつら敵勢力を刑務所のように捕える場所はないし、裁くことも出来ない。かといって正規軍はここら辺まで来ないし、地区だって受け入れることは出来ない。
どうするかなんて、上層部が一番困っている状況だ。
野放しにするわけにもいかないので、敵兵士の処理は鉄血との最前線に置かれて追放される・・・実質的な処刑が現実的なプランとして挙がっていた。
シェルターの中の状況と、情報を得るために殺さずに捕まえた敵の兵士の未来を考えると心が落ち着かない。
「・・・どうすりゃよかったんだよ」
コントロールルームの壁に背を当て座り込む。体育座りをした膝におでこを擦りつけた。
俺は敵を殺した方がよかったのか?大した情報も持っていないことがわかりきっていた敵を、わざわざ生かす必要はあったのか?
安全装置を外せない他の戦術人形や警備人形達はテーザーなどを使って、生かした状態で敵を確保している。そうじゃない敵は自分たちが使役する自爆人形の爆発やロケット弾頭の誘爆、一六式のトーチカへの砲撃で倒れた。
一思いに死んだ方が、荒野で感染者や鉄血を前に絶望に染まりながら嬲り殺しにされるよりはマシなんじゃないか。俺たちは裁く立場にもないのに処刑と同等のことを決めていいのか?
こいつらは悪いことをした。だけど誰でもかんでもそれを個人が罰してしまうのは間違っている。
「わっかんねぇよ・・・」
これ以上考えても何も分からないし、何も変わらない。
俺たちの仕事は敵を制圧することだけで、後のことは関知しない。
そういう仕事は指揮官やお偉いさん、事務方の仕事だ。
そう納得させて、前を見ることにした。
「VAG、一通り処理は終わりました」
「すまん36。もう、もう大丈夫だ」
「・・・それなら大丈夫そうですね」
差し伸ばされた手を掴んで立ち上がる。
「VAG、気分は落ち着きましたか?」
「帰りましょう?」
「ウェルロッドに416、すまん迷惑をかけた・・・!?」
照明が壊れて暗いコントロールルームにパッと光が差したのに気づいて俺は足を止めて振り返った。壊れたはずのコンソールが砂嵐と共に何かを表示する。
ひびの入った画面に映りだす像に他の三体は唖然としているが、俺は明確な恐怖をもっていた。
ありえて欲しくなかったことが起きている。
画面にはゴスロリ姿で少し大きくなったせいでツインテールが似合わなくなったものの、明らかに意匠が残っている奴が映りこむ。
「・・・鉄血のハイエンド」
「どうして鉄屑が人間の組織と関わっているんです!」
「VAG、大丈夫ですか!」
36に声を掛けられて俺はようやく自分の手足が小鹿のように震えて、腰が抜けているのが分かった。
鉄血、それもあの敵ならば急場しのぎのIFF書き換えに人形の改造方法だって知っている。
考えたくなかった。アイツは、俺が殺したのに。
人形は基本的に人格データのバックアップがある。ロストしても作り直すことが出来るのだ。人間の脳構造という莫大なデータを電脳にした俺は例外で、バックアップを作るには長い時間と資金が必要になる。
鉄血人形もハイエンドになってくると同様にバックアップが取れるという情報は、あいつを倒す前にも聞いていたが、いざ改めて出てくるという現実に振れると思考がエラーを吐いた。
「多分、そこニ居るハズ。聞こえてルよネェ?VAG・・・うウン、我が愛おシキ夫、サム」
「・・・ふざけんなよ」
小声で悪態をつく。
「ワタシはパーサ・リヴォルト。サムに愛サレたあのパーサさ。前世は実に気持ちのイイ最期ダった。今回のコレはデモンストレーション」
「ふざっけんなァ!」
モニターをぶん殴った。叫びに任せた衝動を誰も止めない。いや、驚きのあまりに動けないのだ。
「サァ!次はドンナ手で殺シに来てクレるンだイ?!」
それだけ言うと画面の明かりは消える。
「・・・ぜぇったいに殺す」
反応で出てきた言葉は冷静さを欠いていて、実現できるわけもない考えだ。俺の仕事は治安維持なんだから。
「VAG、落ち着いてください」
「一先ずこのことは指揮官に報告ですね」
「厄介ごとが増えたわ・・・」
そんなわけで!シーズンスリーは!復活したパーサとの殴り愛!
ていうかシーズンツーほとんど鉄騎兵要素無かったね
次回予告
俺はお前にどう思われていようと、この気持ちを偽れない。
受け入れなくていい。
だけど、俺の言葉を聞いてくれ!
次回「告白」