鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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告白3

「はい、初めて出すけど味は保証するよ」

 

 しっかりと蒸されていることが分かるほどに蒸気を感じる蒸し器を前にして俺はよだれが出ていることを自覚する。もはや条件反射になるほどに大好物なこれは、きっと妹がサブリナに教えたのだろう。

 

「すごいな・・・美味そうだ」

「まだ蓋も開けてないんだけど?」

「雰囲気で分かる。こいつは美味い」

 

 俺の戯言は流され、白いベールの中から小籠包が出てきた。ごくりと息を飲みつつ、手を合わせる。もう我慢できないぐらいにはお腹が空いているし、しっかりとした料理もなんやかんや一週間ぶり。

 

「召し上がれ」

「いただきます!」

 

 待ての状態からよしを出された飼い犬のように俺は小籠包を食べ始めた。箸を差し込めばレンゲの中に黄金のスープが出てきて、中の具としっかり蒸された皮の三つの要素に心が躍る。

 口に含めば、慣れた味と全く変わらなくて手が止まらなかった。

 他にも炒飯とスープが並んでいてボリュームは素晴らしい。サブリナは既にご飯を食べ終わっているのか、肘をつきつつこちらをニコニコと眺めてくる。

 

「どーう、おいしい?」

「あぁ。リンヤオと練習したんだろ」

「よく分かるね」

「俺が妹の味を忘れるとでも?」

「なんかフクザツなんだけど・・・」

 

 作戦前はギクシャクしていたせいで、こんなに軽く話せるとは思わなかったが杞憂で済んだようだった。さっきは少し怒っていたようだけど、人間の頃と違って今は損傷しても一応なんとかなることがほとんどなので、許されただろうか。

 あれだけあった食事もいつのまにかすっからかんになって、気づけば起きてから一時間半ぐらい経っていた。

 

「ごちそうさまでした。美味しかったからまた今度作ってくれ」

「もちろん。だけど一つだけ約束してね」

「わかった」

 

 ニコニコと笑っていたサブリナの表情が沈み、悲しそうな顔色になる。

 こんな表情を続けさせないためにも、どんな約束だろうがこなさないといけないはずだ。

 

「私は・・・人間のサムの事が忘れられないし、今後もVAG・・・ううん、サムの事は妹として扱うつもり」

「あぁ・・・」

 

 サブリナも俺と同じように一週間ずっと考えていたらしい。その結果は現状維持。

 俺はそれを否定できない。サブリナを縛り付けているのは今の俺ではなく、サムという存在だったのだから。

 

「だけどね?これからは・・・もっと仲良くしたい。今のサムともしっかりと向き合いたいんだ」

「分かった」

「だから、これからはサムの気持ちも全部話して。二人で考えよう?」

 

 心の中が暖かい。まるでお日様に照らされた冬の午後三時の陽気のようで、ジンワリと広がっていった。

 拒絶されたわけでもない。おそらく状況的に考えれば最も嬉しい状況なのだ。

 

「約束は分かった。その程度ならしっかり守る。ただ・・・」

「どうしたの?」

 

 一週間考え切った気持ちを言うべきか。

 この結論なら言わない方がいいんじゃないか?

 もし、気持ちを伝えて仲が離れてしまったら本末転倒だ。

 鼓動が早くなって呼吸が苦しくなってくる。心臓の辺りがきゅーっと痛い。思考は自分の気持ちと現実を客観的に見る判断がぶつかってエラーを吐きだしていた。

 サブリナは隣の椅子に座り直し、俺の震えている手を掴む。

 

「一つ、ずっと言いたかったことがあるんだ」

「いいよ、話して」

「お、れ、は・・・」

「ゆっくりでいいよ」

「俺は・・・」

「落ち着いて」

 

 これだけ励まされているのに、俺はヘタレてしまいそうになった。どこまでも臆病な俺の心の中で、ただでさえ縛り付けている彼女を、わざわざ二重に縄に掛けるようなことをしてしまうことに躊躇いが起きる。

 視界は震えて、頬に涙が落ちた。口から言葉が出るたび震えてかき消される。

 散々やっておいて、自分の気持ちを伝える段階になった瞬間こうなるのは、俺の本来の姿が小心者だという表れだった。

 両親のカルトからリンヤオを離したのも、大切な妹まで狂うということが怖かったから。ボクシングを始めたのも、自分に力がないことが怖かったからだ。逃げるときには、その力を使いこなせるかも分からなかった。

 それでも、妹と生きていく段階になったら怖がりという姿は封印していた。強い兄貴じゃないといけなかったから。

 結局のところ、三十年近く生きてきてもサムという人間は怖がりなのが本性だ。

 

「俺は、今になってもサブリナの事が好きだ」

 

 ようやく口から出た短い言葉を吐き出すと、心臓に乗っていた重石が消えた。

 いつまで隠すんだ。今こそ変わるべきだ。そう言い聞かせて出した言葉で、場の空気は固まったと思った。

 

「ぶっ・・・」

「ちょ、なんで笑うんだよ!」

「そんなことわかりきってるじゃん!」

 

 サブリナは真剣な表情では耐えきれないと言わんばかりに噴き出し、お腹を押さえて笑い出す。

 ちょっとイラっと来たので、言いたいことを全部言い放つ。

 

「妹だろうが、姉だろうが、俺はサブリナと一緒に居れるならなんでもいい。人間のサムがどうだろうと知ったモノか。俺が好きなんだ」

 

 人間のサムがサブリナ・フランキを愛していたのなら、VAG-73の俺が彼女を愛したっていいはずだ。

 もちろん略奪愛とかそういうのじゃない。

 

「サブリナ、それでも俺と仲良くしてくれるか?」

 

 俺たちという関係を作りたいのだ。

 確かにそれは真っ新な状態からのスタートじゃない。だけど、真っ黒だとか虹色だとか、そういう状態でもない。

 これから綺麗な絵に出来る、そんな余裕あるキャンバスのような今の関係を発展させたい。

 

「それ本当に疑問形?」

「・・・?」

「断るわけないよ」




くぅー疲()


次回予告
「・・・あのお二方、いつまでいちゃついているつもりですか?」
うるせぇぞ。あと一分ぐらい許せ。
「ちょっと指揮官!逃げないで!指輪が三体分来たって本当なの!?」
あっちもヤバそうだな(他人事)
幕間「ギャルゲーみたいな基地に住んでる人形(オレ)はどうすりゃいいですか?」

ぬ〇たし2発売中だハメ
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