鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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第四話、2パート目になります。


地獄への転進2

 ゴーストタウンを抜け、やや勾配のある街道を使ってかれこれ一時間。鉄血の姿は見えず、時折ゾンビのようなE.L.I.Dの感染者(バケモノ)が彷徨っているだけだ。

 昔、それも特殊部隊に配属される前はあいつらに向かってライフルをぶっ放していた。倒しても倒してもキリがない。アイツらはレーザーを使っても戦車を使っても押し寄せてくるので銃で狙うというよりは乱射すれば全部当たる、そういう類の相手だった。

 すぐに弾切れを起こした分隊員を守るために銃剣突撃して格闘したり、戦車に群がった感染者達を剥ぐために殴ったりしていたら前線に居た隊長に目をつけられ、特殊部隊に配属。

 その後から照準に入れたのはほとんど人間だった。

 立てこもり、強盗、快楽殺人集団。嫌になるほど人間味に溢れたサイアクな奴らだ。そういう奴らを撃つことに躊躇いをもったことはない。

 確かに人間味はあった。でもそれは人間の本来の姿(いやなところ)を凝縮していたんだ。

 善良に理性を持って(ただしく)生きている人たちに、そいつらが牙を向くのを止めることには誇りを持っていた。

 いつか、それが崩れ去る時が来るなんて、考えてもみなかった。

 何故俺はあの時、人形に拳銃を向けてしまったのだろうか。

 まかり間違っても、あの行動はいけなかったんじゃないか。

 一度考え始めると思考はグルグルと回り始め、答えを導きだすことはない。

 

「サム、そんな気難しい顔してどうしたの?」

「いや、なんでもない。そうだSPAS、お菓子食うか?」

「え、まだあるの?これぐらいじゃ体重増えないよね大丈夫だよね・・・」

 

 車内からこちらの顔色を見てきたSPASに自分のバッグに入っているチョコレートを渡した。

 見た目が美少女なものだから、例えそこがむさ苦しい車内だったとしても華になる。普通のお菓子さえもオシャレな雰囲気に感じてしまうのだから、美少女様々と言った感じだ。

 

「旦那は遠足気分で一杯おかし持ってきたからなー」

「うるせー」

 

 マイクが茶化してくる。延々と真っすぐの街道を進んでいるうえ行きと同じルートなものだから、彼の仕事はほとんどない。

 

「遠くに行くからお菓子一杯もってくるとか全くガキかって思ったぜ。な、そう思うだろ、ジョージ?」

「え、えぇ・・・そうね」

「どうしたんだ、ジョージ」

 

 心ここにあらずと言った様子で受け答えするジョージの様子を変に思い問い詰めるが、少し強い口調で平気だと言われる。何かありそうだが、また今度でいい。

 

「別に何もないわよ、それよりサム、この後のルートはどうするの?」

「あぁ、最短の道は安全かどうかの確証が持てないし、来た通りの迂回路でいいかと思ってる」

「サムが決めたのなら、それに従うわ。ね、マイク」

「おう。今は旦那が車長(ボス)だからな」

 

 信頼されたことが分かる返事が返ってくるのは、ゴーストタウンでの戦闘でチームワークが築かれたからだと思う。実に嬉しいことだ。

 

「・・・マイク、止めろ」

「了解?」

 

 ゆっくりと一六式が停止する。

 車内からどうしたんだと言わんばかりの無言の圧がかかってくるが、俺はイヤーカフを外しホルスターから拳銃を抜いた。

 

「ちょっとぐらい待ってくれてもいいんじゃない?」

「止まってるだろ、誰だあんた」

 

 草むらに隠れていたのは恐らく戦術人形だ。見た目が普通の少女だし、正規軍の使っている戦術人形とは似ても似つかないので、グリフィン所属か。

 依頼主(ヘリアントス)の情報ではこの地域に人形は救出目標以外居ないはずだ。この時点でこいつは何者か疑うに値する。

 

「そんな戦車でここまで来た理由はナニ?」

「あんたの方こそ、なんでこんなところに一人なんだ。分隊はどうした」

「逸れたの。多分仲間はもう帰ってるだろうけど、私はヘマしたから」

「所属はグリフィンか?」

「いちおーね」

 

 こんがらがってきた。グリフィンの人形回収が俺たちの仕事。人形は一人しか居ないはずで、他の人形が遭難したという情報は聞いていない。つまり、SPASとこの人形、どちらかは救出目標ではないと見るのが正解だろう。

 

「もう一つだけ質問いいか、あんた、どこが目標だった?」

「貴方たちが来た方向」

 

 謎は深まる。

 この人形の分隊がSPASを救出しに行き、そこで逸れたのなら依頼の時点で俺たちに伝えているはずだ。

 

「ま、いいか。マガジン抜いて、装填済みの弾は出せ」

「武装解除ってこと?そんなことしても私の力なら乗員全員どうにだって」

「人形が居ても、か?」

「え?」

 

 素早く武器の諸々を済ませるその仕草は非常に洗練されている。経験は多そうだ。

 亜麻色のサイドテール、左目に残る傷跡、見たもの全てを食いつぶしてしまいそうな瞳の色が神秘的だ。その人形はバスケットに登ってタンクデサントの姿勢になると、こちらを見て笑った。

 

「私は、45、そうやって呼んでくれればいいよー。あと進行方向から私の事追いかけてきた感染者が居るから、直に襲われるよ」

 

 ケラケラと笑う45の表情は実に楽しそうだ。

 それが何を意味するのか、俺はマイクの怯えた声が聞こえるまで分からなかった。

 

「・・・旦那、化け物がすげぇ居るんだけど」

 

 感染者達の群れが津波のように街道を進んでくる。

 咄嗟に逃げ道を求めて見た後ろ側には、ものすごい勢いで進撃してくる鉄血人形達。

 前門の虎後門の狼。

 

「左旋回、全速前進!最短ルートを突っ走るぞ!!!」

 

 これが地獄への全力疾走になるとは全く考えてもいなかった。




恐らく皆さんが疑問に思っているであろうことをここで書きたいと思います(唐突)
「何故主人公の愛銃がべネリM4であるにも関わらず、ヒロインがM1014ではなくSPASなのか」
答えは「SPASちゃんが可愛いすぎるからね、しかたないよね」というのはともかく、実はこの後のストーリーで主人公がべネリM4を使う回がないからです。一回こっきり。なんでかって?一章と二章の幕間で出てくるかもね。
Q「なんで、M1014ちゃんをヒロインにしてべネリM4を振り回すストーリーにしなかったの?」
A「SPASちゃんが可愛いからこのストーリーにしたんだよ!!!!」

別にM1014ちゃんが嫌いというわけではない。それだけははっきりと真実を伝えておきたい。

さて、主人公たちがUMP.45と合流しましたね。サムに道を教えたのはオフの45でした。まぁ、サムは45だと気づいてないんですが。



評価ありがとうございます!そしてお気に入りとか諸々いつもありがとう、全て目を通しています!



次回予告!
逃げる一六式!迫る鉄血!目の前には地雷原!!!
追い詰められたキツネはなんとやら、サム達はこの状況を乗り越え、帰還することが出来るのか!
第五話「砂漠の一六式」
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