鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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サプライズ

「サムー準備できたー?」

「オーケー、行けるぜ」

 

 黒のブーツを締めるジッパーを上げ、踵を合わせる。トンと立ち上がり背伸びをしてから鏡で服装を確かめた。

 

「なぁサブリナ」

「どうしたの?」

「シャツ上まで止めないとダメか?」

 

 ドアに仁王立ちしているサブリナに恐る恐る聞いてみる。姉を自称する彼女は俺の無防備さに不安を覚えて、今まで着崩すことを許してくれなかった。

 

「下着が見えなければいいよ」

「分かった」

「・・・分かってないじゃん、あと一個は閉めて」

 

 リボンを緩めて首元を開けていると、グッと引き寄せられて直される。

 特に下着が見えているわけでもないし、前に使っていたスポーツブラと違って面積も少ないはずなのに。

 そんな感情が表情に出ていたのか、サブリナは軽く拳骨を落としてきた。

 

「サム、次の基地では私も居るから。ちょっとでも危なかったら容赦なくやるから、覚悟してね」

「ところで次の基地はどこなんだ?」

 

 もう出発の時間なのに。

 一緒に派遣されるのは一六式とそれを動かす三人と聞いている。三人には行き先は知らされているのに、俺にはいつまで経っても知らされない。

 

「行けば分かるよ。だから目隠ししてね」

「納得いかねぇ・・・」

 

 社屋から出れば、ガレージの前に止めてある一六式にマイクが乗り込んでいる。どうやら俺とサブリナが一六式に乗って、ジョージは荷物を載せたジープで先行していた。

 車内に入ってアイマスクをさせられ、走り出す。

 動いている間に聞こえるのはエンジン音ばかり。俺が不安になってきたのを察したのか、サブリナは周囲警戒をしながら時折頭を撫でてきた。これでは本当に姉妹でしかない。

 

 

 

 

「はい、着いたよ!」

「目隠しを取っていいか?」

「もちろん」

 

 既に周りに気配を感じる。数は・・・二十五ぐらい。

 ジンワリと見えてくる視界の先が見えてくるにつれて、俺は自分を疑いそうになった。

 

「「「おかえりVAG!」」」

「・・・ただいま?サブリナ、俺って新しい貸与に来たんだよな」

「うん」

「ここって即応小隊の基地なんだけど」

「ここで間違ってないよ」

 

 混乱しているこちらに対して、さも当然と言わんばかりの受け答えに俺は混乱が続く。

 どういうことだ?

 それはともかく、ここに戻ってこれて嬉しい。それはいいんだけど・・・

 

「なんでリンヤオまでここに居るんだ?」

 

 そう、居るのだ我が妹が平然と。ジョージと一緒にジープに乗ってきたであろうリンヤオは、引きこもっている時の格好と違って髪は整えているし、服もOL風。年齢相応の服装に感動を覚えるのもつかの間、どうしてここに居るのが全く分からない。

 

「一六式の事務係、だよ姉貴」

「お前仕事できるのか?」

「な!なにを失礼な!事務だってもう半年はやってるよ!」

「そうなのか、すまん・・・嬉しいよ」

「べ、別に兄貴のためにやってるわけじゃないし!サブリナ姉さんのためだし!」

 

 リンヤオはふんすと息巻きている。

 俺はリンヤオがずっと変わらないんだと思っていた。原因は兄であるサムが死んでしまった以上、そうなんだとばかりに誤解していた。

 リンヤオは変わった。それはサブリナのおかげなんだろう。俺はサブリナの世話になりっぱなしだ。

 

「よし。なんとなく状況は分かった」

 

 一呼吸置く。ゆっくりと深呼吸して目を見開き、皆を見回した。

 

「VAG-73、色々あったけど、また頑張る!MCVカンパニー共々、よろしく!」

 

 

 

 

「部屋割は、36さんがAAさんとロクヨンさんのところに入るように代わりました」

「そうか、ありがとな荷物持ってくれて助かったよ、MP5(フュンフ)

「いえ全然!ここがVAGさん達の部屋です!それじゃあ、これで!」

 

 MP5が案内してくれたのは人形の宿舎。ジョージとマイクは基地の職員向けの宿舎に案内されている。本来ならばリンヤオも個室のある職員宿舎に行くのだが、あちらは女性向けの設備がない。

 二段ベッドが二つ。すぐに目線による暑い火花が散った。

 

「サム、一緒に寝ない?」

「何を言ってるのサブリナ姉さん。姉貴は僕と一緒に寝るんだよ」

 

 なんで二段ベッドなのに一緒に寝る云々なんだ。上下に別れるんだからどっちでもいいだろう。

 

「お前らが上下でやればいいんじゃないか?」

「「カチッ」」

「・・・なんでお前ら迫ってくんの?待って!待ってくれ!その手はなんだ!おい!押し倒すな!やめろ!やめろください!」

 

 

 

 

「酷い目に遭った・・・」

 

 乱れた服装を整えつつ、逃げるために息も絶え絶えの状態で食堂に入る。

 喉が渇いた。そして食堂のキッチンにあるあれが切れることはない。なぜならばSAAが居るから。

 

「コーラ泥棒・・・SAAに言いつけよ」

「AA、久しぶり!」

 

 立ち上がって振り返れば、棒の飴を口に突っ込んでいるAAが居た。

 

「はぁ」

「人に向かってため息をつくんじゃない」

「変わってないようで」

「そうそう変わるもんか。別に変わる必要もないのさ」

 

 このやり取りで何を思ったのか知らないが、AAは鼻で笑い、いつもより少しだけ機嫌がよさそうに食堂から出ていった。何か用事があったんじゃないのか?

 過ぎたことはひとまず忘れて、キンキンに冷えたコーラを飲み干す。炭酸の爽快感とコーラの甘みが五臓六腑に染みわたるようで、声が出た。

 カタンと入口の方で何かが落ちた音がしたので振り向くと背筋に冷や汗が出てくる。

 

「・・・コーラ泥棒!」

 

 そもそも食堂のコーラは共用のものなのだが、AAとのやり取りを思い出して血の気が引く。何も後ろめたいことはないのに。

 

「え、SAA!これは違うんだ!」

「なんて冗談ですよ!おかえりVAG!」

「ただいま」

 

 こんな感じで全員とやり取りをしている内に一日が終わった。




次回予告
妹に趣味を作らせたい。その趣味から友達を作ってあわよくば、そんな気持ちで射撃を勧めた兄。しかし妹には思わぬ才能があって・・・?
次回「新しい人形・・・?ホーワM1500登場」


感想返し
「しっぽ装備!

肉弾戦で獲物に襲いかかる豹や猫みたいな姿勢からの飛びかかりとかしたら萌えそうだ!(爆」

萌えるのはいいけど相手は死ぬ(無慈悲)
本当は性癖にしたがって獣耳もつけたかったけど自重しました。


いつもながら感想とかありがとうござい。
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