鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
「うーん・・・うーん・・・」
「姉貴はさっきからどうしたの?」
「クルーガー社長と何かあったんじゃない?」
頭を抱えつつ、必死に思い出そうとする。俺は気になったことを引きずる性格なんだ。
思い出せそうな記憶なんだけど、古すぎて思い出せない。あの二体の人形と会ったという事実のピースからバラバラになっている過去のピースを探し出せなくて、どのパズルなのかも分からない。
運転しているサブリナの隣には私服姿のリンヤオ。俺はベレーを外して座席に置いている以外は特に変わりない。というかサブリナ達が着せようとする服は恥ずかしくて外に着ていけなかった。
基地から十分で街の繁華街に着いた。支社のあるこの街は、位置的に考えれば栄えている。そうは言っても後方の地区まで行くには時間がかかるので道路に居るのは自家用車はなくて、電気スクーターと輸送トラックがほとんど。
俺たちの乗っているジープはMCVカンパニーの車だ。これまたボスがどっかから引っ張ってきたもの。
「姉貴ー、指定された場所には着いたよ」
「分かった。っていうか俺はいよいよ耄碌したんだろうか」
ツードアのドアまで行くのは面倒なので取り外されているルーフ部分から飛び降りた。そのまま外からドアを開けて、リンヤオをエスコート。
帰りはナビゲーター席を動かしてリンヤオと後ろに乗ろう。
「サム、ここって」
「そ。サブリナは前に連れてきたよな」
俺の・・・サムの行きつけのガンショップ。
孫煩悩のガンスミスの爺さんが経営している知る人ぞ知る名店だ。
「でもさ、お爺さんはサムって分からないよね」
「あー・・・いちおー俺は機密だから隠すようにはするよ。俺はサブリナの妹で、こっちのお嬢様の護衛、って感じで」
「つまり僕は姫プレイができる・・・!」
ひとまず戯言を叫んだリンヤオには軽くデコピン。
別にあの爺さんはこのことを他言するような人間でも、ましてや他言したところで影響するような人脈も持っていない。それにバレることは分かりきっていた。あくまで公然と話さないというのが重要なんだ。
「んじゃ姉貴、入るよー」
「姉貴って言うな。今は護衛って言う設定なんだから」
「よし、家来。戸を開けよ」
「はっ倒すぞ」
リンヤオは再びデコピンに沈む。よくもまぁこのペースでそのボケができるな。基地に帰るまでにおでこがすり減ってないといいが。
「・・・いらっしゃい」
「あ、お久しぶりです」
「お前さんは・・・サムの奥さん」
「ぶっ」
思わず吹き出してしまった。
ちょっと待て!
普通そうは思わないだろ、と心の中で爺さんに突っ込みつつ平静を装う。
何がどうなったら夫婦と断定できるんだ。カップル・・・とかならまだわかる。結婚せずに事実婚で済ませるのも珍しくない世の中だ。子供を育てるなら籍を入れるが、男女が同様に働く現代ではそれ以外に結婚のメリットがない。
「違ったか」
「いやぁ・・・なんというか」
「サムは死んだのか」
察しが良すぎる。
判断材料が何かも分からない。銃器市場という一種の恐ろしい世界に生きてきたからだろうか。
「アイツに売ったVAG-73はそろそろ整備が必要だからな。それで?未亡人様がこんな爺のところに何の用だ。遺品売却か」
「えぇっと・・・VAG」
どうすればいいのか分からなくなったのか、自称姉がこちらに縋ってきた。一呼吸置いて、いつも爺さんが居るカウンターを叩く。
「アンタの腕を見込んで二つ、仕事を頼みたい」
「なんだお前は、彼女の妹か」
「そんなもんだ」
俺の言葉にサブリナが目を輝かせる。ぶっ飛ばすぞ。
「一つ目の依頼は、銃器を探してきてほしい」
「二つ目は?」
「この銃を整備してほしい」
ごとりと置いたものを見た老人は心臓が止まったかのように驚き、俺とそれを交互に見た。
「何故、お前がこれを」
「俺は戦術人形だ。その銃を半身にして戦っている」
俺の言葉にわなわなと揺れる手。銃を触り続けて半世紀以上、M1014に着剣できるぐらいの強度を持たせてほしいという俺の無茶な注文にだって軽口を言いつつ応える凄腕が揺れる瞬間は初めて見た。
「こいつの由来を聞いているんだ!」
「もう、分かってるだろ。んでこれが整備分の報酬」
爺さんはなんとなく気づいている。それは非現実的なオカルト事象で、理解が行かないので怒ってきた。
それを黙らせるために、いつも通りちょっと多いぐらいの報酬を叩きつける。
「・・・まさか、いやよそう。ワシはこいつの整備を請け負う。それが仕事だ」
「賢明な判断だ」
張り詰めた空気が緩む。
「それで、一つ目の注文はなんじゃ?」
「ある鉄砲を探してもらいたい」
「言え」
「第一希望はホーワM1500のヴァーミンター」
「ある」
俺が伝えた銃は、高精度を誇る傑作ハンティングライフル。その中でも小さな害獣(ヴァーミント)を駆除するためのモデルは、生産国の日本の警察に狙撃用ライフルとしても採用されたタイプだ。
なんのために、こんな高級品を頼んだのか。何に使うのか。爺さんは疑問に思っているだろう。
そもそもサムは狙撃が優れているわけでもない。もちろん特殊部隊に身を置くために、一般部隊でいればマークスマンに選ばれるぐらいはこなせるが、本業には勝てなかった。
「ま、そっちに居るお嬢様のための奮発ってことよ」
「・・・サムの妹、か」
「正解。そんなに似てるか?」
「似てる。なんとなくだが、似ているな」
ちょっと待って!この流れだと!という声が聞こえてきます。分かっている。
あと一話書かせてくれ。
感想返し
「取り敢えず、社長の髭毟ろうぜ(唐突
てっきりリンヤオが銃器の才能開花させて、他の人形が新しい人形って間違えるとか深読みしちゃったぜ(w 」
クルーガーさんの髭むしりは昔のカリーナの特権(偏見)知らんけど。
あと予想はいい線行ってるので次パートか次の次のパートにご期待くたし
いつもながらに感想とか諸々助かりやす。