鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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新しい人形・・・?ホーワM1500登場4

 

「・・・姉貴、頬引っ張って」

「お前、何かに目覚めたか?」

「いや、姉貴だって自分のほっぺ引っ張ってるじゃん」

 

 俺たちは唖然としていた。キルハウス競技で一位を取った三日後、指揮官と護衛のSAA、おまけにリンヤオの護衛の俺はWAとリンヤオの狙撃競技に着いてきている。

 競技が終わってようやく結果が張り出されたわけだが、場の空気がいたたまれないものになっていた。

 

「僕、なんで人間枠一位なの?」

「上手かったからだろ」

 

 反射速度や精度では人形に一歩及ばぬ結果だが、腕に自信のある指揮官たちのような社員と同じかそれ以上を弾き出した、見た目少女の二十台中盤のリンヤオに注目が集まっている。

 

「なんで僕たちが総合優勝なの?」

「どの種目も落とすことなく、射撃距離でヤバイ距離出したからだろ」

 

 WAは、ぶっちぎり一位。普段の言動を見ていると残念さを感じるが、本気を出すとやばい。

 いくらASSTに慣れている人形達が長距離用の銃に慣れていなかったとはいえ、そいつらと同じ距離を抜いた妹は何者なんだ。

 

「これは、あれかな。あれを言う場面かな」

「?」

「俺何かやっちゃいまし、あうっ!」

 

 調子に乗ったリンヤオがおどけたので、すかさずデコピンで沈める。

 

「酷いよ、姉貴・・・」

「成績がいいのはいい。少しぐらいは調子に乗ってもいい。だが、驕らないでくれ」

「分かったよ、気を付ける」

「よし。デコピンして悪かったな、今日は祝賀会だ!」

 

 一先ず、会話を切ってリンヤオをWAと指揮官の方に連れていく。社長から小さなトロフィーを貰う表彰式があと五分に迫っていた。

 これで我が基地が得たトロフィーは二個目。

 他の参加チームも主力と補欠の半々構成がほとんどだったけど、ウチは他のところよりも前線基地よりの経験数だ。ちょっとずるしたみたいにも感じる。

 

 

 

 

「この結果を見たペルシカ博士からの贈り物・・・って」

「人形、に見えるわね」

 

 贈り物の包装と同封されていた手紙で開封に俺とリンヤオを同席するように、とあったらしい。

 呼び出された俺たちは指揮官と416と一緒に梱包材に包まれた人形を引きずり出した。関連の物品も多く、食堂のスペースにはボックスが並んでいる。

 リンヤオの実力はその月発行の社内報に取り上げられてしまった。もちろん名前とか素性は隠しているものの、「普段は関連会社の事務を行っている女性」が優れた結果を残したという記事が載っている。

 こんな記事があったところで、ひどく注目されることや警戒されることはないので特に変わることもないのだが、ある人間のスイッチを動かしてしまったらしい。

 

「姉貴とそっくり」

「・・・あんのアマ」

 

 人形の姿はあら不思議。ショートカットで少しパーマのかかった髪色は俺とサブリナと同じ、タトゥー類はない。

 

「えぇっと・・・この人形は遠隔操作式の人形のテストタイプ、だって」

「遠隔操作って、どういう意味ですか」

 

 自律人形ではないのは分かる。戦術人形ではないし、プログラムタイプの人形でもないし、ましてや動かないのがその証拠だ。

 

「これが、認識コントローラーか」

「へぇー、でもこれって僕が必要なものなんですか?」

 

 指定された番号に対応する荷物を開けると色々細々したものが出てくる。頭を囲うような大きなヘルメットに、指や太ももに貼り付ける電極のような操作する側に装着するモノ。人形側に搭載する通信機なんかが、出てくるわ出てくるわ。

 同梱されたマニュアル片手に荷物を纏めれば、しっかりと装備が行われた人形と操作するためのデバイス類が完成した。

 

「・・・なぁ」

「VAG、私も嫌な予感がしたところ」

「これは」

 

 この人形は器だ。

 

「僕が操作するってことだよね・・・」

 

 それに入る中身は妹。

 リンヤオの言葉を最後に全員が同時に大きなため息をつく。

 ペルシカが何を考えてこれを作ったかは、なんとなく想像がついた。

 

「そもそもリンヤオの腕がよくたって、戦わせるわきゃいかんだろうが」

 

 リンヤオは一般人だ。人を傷つけたこともない。善良な一般市民で、銃は持っているが人には向けたこともないし、これからも向けるつもりはなかった。

 この人形が働くという状況では、人間にも牙をむく必要もある。相手が鉄血だろうと、普通の神経をしていればトラウマものになる戦闘という非常識に妹を触れさせるわけにはいかなかった。

 

「と、とりあえず!依頼のテスト運用だけはやろう」

「指揮官、俺は妹をこんなことに使われたくないんだが」

「それは分かってるよ。・・・リンヤオさんはどうします?」

 

 指揮官が敬語でリンヤオに聞く。本人の意思の方を尊重する、その理論は分かるけど俺は不満に思っていた。今は血縁がないとはいえ、心持は実の家族だというのに。

 ・・・いんや、彼女もとっくに成人を過ぎているし、立派に働いている。口を挟むべきではないのか?

 思考の海に沈む俺を傍目に、リンヤオは決意を固めた表情で答えた。

 

「我が社に入る報酬、それを中心にMCVカンパニーとの契約という形を取っていただけるなら」

「おい、自分の心配は」

「大丈夫だよ。危なかったら姉貴が助けてくれる」

 

 問答無用、根拠なしの大きすぎる信頼が含まれた微笑みに俺は頭痛が出てきそうだ。

 いくら俺でも電子の世界にまでは干渉できん。電光超人と会わない限り、な。それは絶対に無理だわ。




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