鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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朝更新お休みしました。今後は休まないように、がんばる・・・

あ、今朝の6時ぐらいにランキングを確認したのですが、日刊に居ました。ありがとうござい(何位かは覚えてないけれど

皆さんのおかげです。僕は好き勝手書いてるだけなんで


僕だって2

 

「距離は最短で八百、立てこもっているのはどちらも屋上だから打ち上げる状態・・・風もあまりよくない、か」

「六四式自では狙撃できません」

 

 手詰まりだ。

 ベレーを取って頭を撫でつけた後、ため息をつく。ROも同様のテンションだ。

 事案は全て早期に解決するべきだが、狙撃に関しては人質の安全や犯人を一撃で殺せなかった場合のリスクが高すぎた。かといって、素直に屋上に階段でエントリーしたり、ヘリからのロープ降下の方が問題が出てくる。

 犯人は胴に爆弾を巻いており、そのトリガーが何か分からない以上、下手な手を出せない。

 市民感情を考えれば、犯人を正確に射殺して人質を解放するのが最善策。

 しかし、そのレベルの狙撃を出来るのはWAだけだ。

 後方基地、俺たちが居た基地に居る戦術人形ならば市街地狙撃に優れた個体も居るハズだが、応援を呼ぶのも時間がかかる。

 WAに二件を処理させるのも、位置的な問題で難しかった。

 

「僕に、一つ考えがある」

「指揮官、戯言を言ったら吹っ飛ばすぞ」

 

 この状況、嫌な予感がビンビンに立つ。

 リンヤオが操作するホーワM1500ならば、この狙撃も可能だ。だけど、それは裏返せばあいつに間接的に人殺しをさせるわけで、許せるわけもない。

 

「分かってる、けどM1500を使うしかない」

 

 俺やROの指揮能力では対人への安全機能を外すことは出来ない。それはM1500も同様だ。だから、その殺人は指揮官が命じたものになる。

 俺たち戦術人形、いやロボットやAIには自律させた殺人すら許されないのが基本だ。

 俺たちが対人射撃を行うのは、あくまで指揮官という人間からの指示というお題目がある。

 三次大戦やその前の対テロ作戦に参加した無人機ですらオペレーターが運用するべきものだった。

 AIが自律した結果に人間への反抗が出来てしまったのが、鉄血共なのだから。

 そういうことを考慮したとしても、リンヤオはトリガーを引き、スコープの中で敵が死ぬところを見るのだ。

 許せるわけがない。

 

「・・・わかっちゃいたけど、俺が許さないってことも含めて言ったんだろ」

 

 そんな理由で否定できるような提案を指揮官がするわけもないのは分かっている。

 俺はやるせない怒りを持って、ブリーフィングルームに入ってきたリンヤオを捕まえた。

 

「おい」

「姉貴、悪いけど」

「なんでだよ・・・」

 

 妹は人を殺すべきではない。そうやって手を汚すのは兄のサムと俺だけで充分だ。

 俺は家族や作戦の目標を遂行するためなら躊躇なくトリガーを引ける。殺す時に思考が走らないのか、って聞かれたら断言はできないし、サイコパスだという自覚もないけれど、常人の意識でもないと分かっていた。

 彼女にはそんな風になって欲しくないのだ。

 当たり前の感覚を持って、当たり前の生活をして、当たり前の幸せを得て欲しい。

 束縛かもしれない。

 今更に変えることも出来ない。十年以上、そうやって考えていたのだから。

 だから、思わず零れた言葉は問い詰めるものだった。

 

「なんで、って僕の勝手だろ」

「んなの、許せるわけがねぇ」

「姉貴には関係ないだろ」

「関係なくても、だ。人間が手を汚す必要は」

 

 うだうだと文句を言い続ける俺は醜かっただろう。

 いい加減にキレたリンヤオがやや上にある俺の頬を叩いた。

 

「いい加減にしてよ!いつも、いっつも!なんだよ!僕だって、皆を守りたい!人の役に立ちたい!」

「別のアプローチがあるだろ!」

「今必要な力があるのに、その力を持っているのに、使えないなんて嫌だ!」

 

 眼鏡の奥の瞳には闘志が燃えている。

 今まで、リンヤオの目が生き生きしているところなんて二十年以上一緒に居て一度も見たことがない。

 いつも気だるげで物事を斜めに見ていたハズだったのに、俺を睨み返す上目遣いの目は戦う決意をした兵士のそれと比べることができるぐらいだ。

 

「ダメだ」

()()!アンタは僕を置いて死んだ、その時こっちがどう思ったのか分かるだろ!」

「・・・それは」

 

 痛いぐらいに考えた。悪夢のように繰り返す。

 不安にさせてことは間違いなくて、怒りすら持たれたはずだ。

 

「僕は、もう失いたくない!そうやって考えちゃダメなのかよ!」

 

 だらんと垂れて力の入らなかった手を握る。

 彼女の気持ちは痛いぐらいに分かるし、それだけの決意を見たのなら他人だったのなら諸手を上げて許した。狙撃が可能な腕も、人形という力もある。

 唇を噛みつつ、目を閉じた。瞼の裏には走馬灯のように思い出が走る。

 

「ダメだ」

 

 呟く。

 過ったイメージは、被弾して治療するまで痛みに苦しんだ時の顔。

 トラウマを植え付けるわけにはいかない。人に向けて銃を撃つのは恐ろしいことだ。

 

「分かってるよ!これが兄貴の考えと背いてるのは」

 

 抱きしめられる。

 

「サブリナ姉さんにだって許されないに決まってる。僕自身人を殺すこと自体嫌だ」

 

 ワンワンと泣き出した背中に手を伸ばした。

 

「お願いだから!お願いだから、戦わせてくれ!」

 

 頭が痛い。心臓の鼓動が早い。右の脇腹が引き裂けるように痛い。心は荒れていた。

 

「・・・分かった」

 

 言葉が口から出れば、心の中がぐちゃぐちゃになる感触。足から力が抜けるが抱き寄せられてソファに置かれた。

 もう、引き返せない。




いつもながらに評価とかお気に入りありがとうござい。
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