魔法の世界のアリス   作:マジッQ

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お待たせしました。
今回は長かった。過去最長の話だよ。

そしてアリス活躍劇(アリス無双とも言う)の始まりだよ。

ー追記ー
今回登場した魔法の説明を追加。


第一の課題

「―――えっ?」

 

いま、ダンブルドア校長は何て言った? 私が代表選手に選ばれたと?

いやいや、ありえない。そんなのありえて堪るかと恥じも外聞も気にせずに叫びたい。そもそも私はゴブレットに名前を入れてすらいないのに何でゴブレットから私の名前が出てくるのだろうか。誰かが私の名前を入れた? 誰が? 何のために?

というか、他人が他人の名前を入れてそれが適応されるのだろうか。もしそれが通ってしまうなら年齢線なんて処置はまったくの無意味ということではないか。大体―――

 

 

「―――ス。―――リス! アリス!」

 

「―――!? あっ……パドマ?」

 

隣でパドマが大声で呼んでいるのにようやく気がつき弾かれるように顔を上げる。そこでようやく自分に注がれる多くの視線に気がついた。大広間中から身体に突き刺さるような視線を受けて戸惑いが隠せないが、それでも気持ちを落ち着かせようと深呼吸をする。

 

「アリス・マーガトロイド!」

 

ダンブルドア校長が声を荒げながら呼んでいる。まぁ、こんな四人目五人目の代表が自分の学校から選ばれたというのもあって流石の校長も冷静とはいえないのだろう。

私より先に呼ばれたハリーの方を見る。ハーマイオニーに背中を押されながらノロノロと大広間の前へ進んでいるのが見えた。その顔は戸惑いや焦りといった感情が見て取れる。

 

「はぁ―――それじゃパドマ。いってくるわ」

 

「うん、気をつけてね……大丈夫、私はアリスのこと信じてるわ」

 

そう言ってパドマは隣に座るアンソニーにも確認を取るかのように視線を向けた。その視線の意味に気がついたのかアンソニーは私に視線を向けるとサムズアップをした。

 

「ありがとう、二人とも」

 

大広間の前へと歩を進める。最初に感じた驚きや混乱といったものは二人の励ましもあってか随分落ち着いてきた。進むごとに突き刺さる視線はいまだに気になるが、それも最初ほどではない。

 

大広間の前へと辿り着きハリーと合流して、他の代表選手が向かった扉に入っていく。扉の先はゆるい螺旋の階段で下へと向かっているようだ。階段を下りる途中ハリーの様子を窺ってみるが、先ほどと変わらず表情が固まっていた。

 

『あら、アリス。どうしたの?』

 

階段先の部屋へと入ると多くの肖像画に描かれた人からの緯線が集中し、そして先に入っていた代表選手も少し遅れて私とハリーに気がついた。その中でフラーだけは話しかけてきてくれたが、他の二人はなんともいえない表情をしている。

 

『どうしたの、アリス。私達に何か伝言でもあるの?』

 

フラーは私達が代表選手に伝言を伝えにきたメッセンジャーか何かだと思っているようだ。その言葉を聞き、残る二人もこちらへと近づいてくる。

どうやら、この三人の中では私達は完全にメッセンジャーとして認識されているようだ。まぁ、四人目と五人目の代表選手として選ばれてきましたなんて想像もできないだろうから仕方がないといえばそうだが。

できれば私もメッセンジャーの役割でここにきたかった。

 

私がフラーの言葉を否定しようと口を開く前に、後ろの階段から勢いよく扉が開かれる音が響く。そして足並みも荒くして校長や教員をはじめとする対抗試合の関係者が部屋へと入ってきた。

その中で、誰よりも先んじて近寄ってきたのは、バグマン氏だった。

 

「いやいや、これは凄い! まったく驚きだ! 諸君驚きたまえ! 信じがたいことかもしれないが、たったいま新たに二人の代表選手が選ばれた! 四人目と五人目の代表だ!」

 

そう声高に叫んだバグマン氏は私とハリーの背を押して前へと押し出す。バグマン氏の言葉を聞いた三人は目を見開いて私達を見ていた。

 

『どういうことなの? アリス。この人特有のジョークか何かかしら?』

 

『―――私もジョークだと思いたいんだけれど、残念ながらそういうわけでもないのよ』

 

『どういうこと? アリスもこの子も十七歳ではないわよね』

 

『えぇ。フラーの言うとおり何だけれど、その上で入れてもいない私とハリーの名前がゴブレットから出てきてしまったのよ』

 

私がそうフラーに言うと、フラーは遅れて入ってきたマダム・マクシームのところへ向かっていった。マダム・マクシームはカルカロフ校長と共にダンブルドア校長へと激しく詰め寄っている。ダンブルドア校長はフラーと入れ替わるようにハリーと私に近づいてきた。

 

「二人とも、炎のゴブレットに名前を入れたのか?」

 

「「いいえ」」

 

ハリーと私の否定の声が重なる。

 

「上級生に頼んで炎のゴブレットに名前を入れたのかね?」

 

「いいえ」

 

ハリーが再度否定の言葉を言う。

 

「いいえ。というより、その言い方だと上級生に頼めば下級生でもゴブレットに名前を入れることが出来るということなんですか?」

 

ハリー同様否定の言葉を口にして、さらにダンブルドア校長の言葉に対して先ほどまで考えていた可能性についての疑問を尋ねる。

 

「なるほど。ダンブルドア? 貴方の言葉に私もそこの女生徒と同じ疑問を抱いたのですが、どうなんでしょうかね?」

 

カルカロフ校長が私の言葉に反応してダンブルドア校長へと詰め寄っていく。口元は笑っているようだが、目は笑ってなどおらずに冷たい光を宿していた。

 

「そうじゃの、カルカロフ……ワシの不備じゃ」

 

「であれば、ホグワーツから選手が三人も選ばれた以上、残る二校からもあと二人選手が選ばれるまで選考を行うべきだと私は思いますがね」

 

「君の言いたいことは分かる。しかし、ゴブレットの炎は先ほど完全に消えてしまった。次の試合が訪れるまで再び火が灯ることはない」

 

「ほう? では今回の試合にホグワーツは三人の選手で挑むと仰るか? 対し我々は一人の選手で挑まなくてはならないと?」

 

「そんなのは、とてーも認められませーん!」

 

カルカロフ校長の言葉にマダム・マクシームも同調して声を荒げる。まぁ、二人の気持ちも理解はできる。開催校から三人の選手に対して他は一人だけなどあまりに不公平すぎるだろう。私としては出来るなら辞退をしたいのだが、ゴブレットによる選考は魔法契約だと言っていたし望み薄だろう。

 

 

 

「さて、再度確認するが。二人とも自らゴブレットに名前を入れてはいないのじゃな?」

 

しばらくカルカロフ校長とマダム・マクシームと話し合っていたダンブルドア校長が話を切り上げて確認してきた。

 

「入れてません」

 

「私も入れていません」

 

「と、本人達は言っておりますが。ダンブルドア、この二人が本当にゴブレットに名前を入れていないとどう証明する?」

 

カルカロフ校長が私達の言葉に対してその真偽をダンブルドア校長に問う。マダム・マクシームも言葉にこそしていないが、表情を見るに内心はカルカロフ校長と同じようだ。

 

「―――そこまでお疑いなら、羊皮紙に書かれている筆跡を調べてみてはいかがでしょうか? 私は書いていない以上、そこに書かれている筆跡は私のものではないはずです。それはハリーにも言えることでしょう。それでも納得が出来ないようであれば、真実薬(ベリタセラム)をお使いになってはどうでしょうか? それで私達が嘘をついているかどうか一発で判るはずです」

 

私がそう言うと、ダンブルドア校長が真っ先に反応した。

 

「いや、そこまでする必要はなかろう。無論、羊皮紙に掛かれた筆跡については後ほど調べさせてもらうがの。それに、自らに真実薬を使えと言う者が隠し事をするはずもなかろう。お二人とも、この件に関しては一先ずよろしいか?」

 

ダンブルドア校長がカルカロフ校長とマダム・マクシームに確認を取ると、納得はしていないと態度で表しながらも、この場でこれ以上講義をしても意味がないと思ったのか口を噤んだ。

 

「では、二人の処遇に関してバーティ、君の判断を仰ぎたい」

 

「……規則は絶対です。炎のゴブレットに選ばれた以上、本人達の意思に関わらず試合で競い合う義務がある。今この瞬間より、二人も代表選手だ」

 

「決定だ! 予定とは違うが、ここに五人の選手が選ばれた! ではバーティ、早速第一の課題について説明をお願いしたい」

 

「よろしい。最初の課題は君達の勇気を試すものだ。この場では詳しいことは伝えない。なぜなら、未知のものに遭遇したときの勇気とは、魔法使いにとって非常に重要な資質であるからだ。課題は十一月二十四日に全生徒及び審査員の前で行われる。選手は課題に取り組むに当たって誰からの援助を得ることは許されない。武器は杖だけ。第一の課題が終了した時点で第二の課題についての情報が選手に与えられる」

 

クラウチ氏が説明を終えるとこの場は解散となり、クラウチ氏とバグマン氏が部屋から出て行った。

私も寮へと戻ろうとして入り口へ向かおうとすると、フラーが近づいてきた。一目散に帰ろうとするマダム・マクシームはフラーがこちらへ来たため立ち止まっている。

 

『アリス』

 

『……フラー?』

 

話しかけてきたフラーになんて言おうか迷っているところに、フラーは手を差し出してきた。

 

『驚いたけれど、こうなってしまった以上はお互い頑張って試合に挑みましょう』

 

『……怒ってないの? あなた達からしたら、ホグワーツから三人の選手が選ばれるのは不公平だし、私達は十七歳にすらなっていないのよ?』

 

『確かに最初は怒っていたわ。私達が長い日をかけて選手に選ばれる努力をしてきたのに、本意にしろ不本意にしろあなた達は学校の名誉と賞金を得るチャンスが得られているのだから』

 

でもね、とフラーは続け。

 

「わたーし、考えまーした。オグワーツが何人選手をだーしても、わたーしがみんなに勝てば問題あーりません。もーともと、わたーしは優勝するためーにやってきたーのですかーら」

 

最後だけフランス語ではなく英語でそう言い放ったフラーは、今度こそマダム・マクシームと部屋を出て行った。英語で言ったのは私だけでなく、ハリーや先生達にも自分の考えを伝えたかったからだろうか。

 

「いいですか?」

 

フラーが出て行った先を見ていると、今度は後ろから声を掛けられたので振り向く。そこにはビクトール・クラムが立っていた。その後ろにはカルカロフ校長も立っており、威圧するように見下ろしてきている。

 

「ヴぉくもあなたたちに言っておきます。ヴぉくもあなたたちに負けるつもりはありません。優勝できるのが一人だけなら、あなたたちが何人いても関係ありません。ヴぉくの力を一番に示せばそれでいいのです」

 

「よくぞ言ったぞ、クラム! そうとも、優勝杯を手にするのはお前なのだから、相手が何人いようとも関係がない!」

 

カルカロフ校長はビクトール・クラムの宣言に感極まっているのか先ほどまでの不機嫌さもどこかに去っていった。ビクトール・クラムはカルカロフ校長の後ろについていき、一度だけ私とハリーを見てから部屋を出て行った。

 

「ほっほっ、青春じゃの。さて、三人とも今日はもう寮へと戻りなさい。他の生徒たちが君達のことを祝いたくて待っていることじゃろう。せっかく大騒ぎする口実があるのにダメにしてはもったいないからのう」

 

そうして急かされた私達は部屋から出て大広間への階段を登っていった。

大広間にはもう誰も残っておらず、宙に浮かぶ蝋燭とくり抜きかぼちゃだけが光を放ちながらふわふわと浮かんでいた。

 

「それじゃ」

 

大広間の出口近くにまで来たところで、今まで喋らなかったセドリック・ディゴリーが微笑みながら話しかけてきた。

 

「僕とハリーは、またお互いに戦うわけだ! ミス・マーガトロイドとは初めて競い合うことになるかな。よろしくね」

 

「そうだね」

 

「こちらこそ、よろしく。それと私のことはアリスで構いわ」

 

「なら、僕のこともセドリックって呼んでくれ。それで、君達はゴブレットに名前を入れてはいないんだよね? もし入れたのなら、どうやって入れたのかコッソリ教えてもらおうかなと思ったんだけど」

 

「残念だけど、本当に私達は入れてないわ……当然のように否定してきたけれど、ハリーも入れてはないわよね?」

 

さっきからハリーのことも含めて否定してきたけれど、当の本人に事の真偽を確認していなかったことを思い出して尋ねる。

 

「うん。僕も本当に入れていない」

 

「まぁ、もし入れてたら真実薬を使って真偽を確かめたらなんて言わないだろうからね」

 

「……ひとついい? さっきから言ってる真実薬って何なの?」

 

「真実薬。その名の通り、服用者に一切の嘘を吐かせずに真実を曝け出させる魔法薬よ。使用は魔法法律で厳しく制限されているんだけど、使用した場合たった三滴でどんな相手でも隠していることを洗い浚い自白させることができるわ」

 

「えっ!? そんなのを使えなんて言ったの!?」

 

「何をそんなに驚いているのよ。それとも、何かバレたら拙いことでも隠してるの?」

 

「いや、その……うん、別に何もないよ」

 

嘘下手だな、というのが今のハリーを見て正直に思った感想だ。

まぁ実際問題、真実薬を使われないで安心しているのは私も同じだ。ハリーもそうだが、私にも当然バレたくない秘密というものがある。特にドールズ、ヴワル図書館、パチュリーの三つに関しては最たるものといってもいい。前々からダンブルドア校長は私のドールズのことについて探っていたみたいだし、どさくさに紛れてドールズについて追求してこないとも限らない。

 

選手として試合にでることが決定してしまっている以上は、名前を入れたかどうかなんてことの真偽は意味ないだろうし、ダンブルドア校長は何かとハリーを擁護している節があるので、ハリーも服用する可能性がある以上はダンブルドア校長が止めるだろう。事実、あのときに誰よりも早く反応したのはダンブルドア校長だ。

つまり、ダンブルドア校長はハリーが不用意に危ない状況になると、手助けをする可能性が高い。逆に言えば、ハリーさえ巻き込んでしまえばある程度はダンブルドア校長が擁護してくれるということでもある。もちろん例外はあるだろうし限度というのもあるだろうが、ダンブルドア校長がハリーを助けるという傾向にあるのは間違いではないだろう。

 

その後は途中でハリーとセドリックの二人と分かれてレイブンクローの寮へと向かっていく。寮の入り口へと到着して談話室への扉を開くと中から喝采が響いてきた。

予想していた通りに面倒なことになりそうだなと、憂鬱になりながら談話室へと踏み入れていった。

 

 

 

昨夜、レイブンクローの談話室では散々質問攻めに合わされた。散々と言っても聞かれているのは実質「どうやって名前をゴブレットに入れたのか?」ということだけではあったが。

聞かれるたびに懇切丁寧に否定していったが、あの騒ぎでどこまで聞いていたかは分からないし、聞こえていたところで信じてはいないだろう。唯一、パドマとアンソニーだけは私の話を信じていてくれているようで正直ホッとしている。とはいえ、ゴブレットが設置されてからフラーに学校の案内をしていたときを除けば、殆どの時間パドマと一緒にいたのでアリバイはあるのだが。夜中にこっそり抜け出してという可能性があるので、そのアリバイを盾に他の人を説得することができないのが悔やまれる。

 

ハリーも同じ寮生から応援されているようだ。だが、それは同寮の生徒からだけであって、それ以外の寮からも同じように応援されているわけではない。

まず、一番反応が強いのがハッフルパフの生徒だ。言い方は悪いが、ハッフルパフは滅多に脚光を浴びるということがなく、今回セドリックが代表に選ばれて注目を浴びれたというのにグリフィンドールとレイブンクローからも同じように代表が現れたことで、ハッフルパフが得た栄光のチャンスを横取りされたと思っているのだろう。

 

次に反応が強いのがスリザリンだ。ホグワーツの四つの寮の内、スリザリンだけが代表選手に選ばれなかったのだから、まぁ気持ちは分かる。当事者たちからしたら傍迷惑以外のなにものでもないのだが、スリザリンにとっては関係がないのだろう。

 

残るグリフィンドールとレイブンクローについてはハッフルパフ、スリザリンほど他に対する反感があるわけでもなく純粋に興奮しあっていた。とはいえ、ハッフルパフやスリザリンからのあからさまなやっかみについては思うところがあるようで、時たま口論しているのを見かける。

 

 

そして月曜日。この日は代表選手の杖を調べるとかで、一同が一つの部屋に集められていた。部屋に入るとハリー以外の選手はみんな集まっており、バグマン氏と記者―――確かリータ・スキーターだったか―――が並べられた椅子に座って話している。

 

部屋に入った私に気がついたのか、セドリックと話していたフラーが軽く手を振ってきた。私も手を軽く振り返しながらフラーへと近づいていく。

 

『こんにちは、アリス』

 

『こんにちは、フラー。お邪魔だったかしら?』

 

そうフラーに言いながら傍にいるセドリックを横目で見る。セドリックは私達が話している内容が分からないのか首を傾げているが、それでも笑みを絶やさないのは流石だと思う。

 

『そんなんじゃないわよ。まぁこの学校で見てきた男の中ではそれなりだけれど、私の好みではないのよね』

 

フラーの好みか。セドリックは私が知る限りでもかなりの優良物件だと思うが、それでもフラーのお気に召さないとなると、どういった人がフラーの好みなのか。セドリックがフラーをどう思っているかは知らないけれど、このことは黙っておこう。

 

暫くフラーとセドリックと雑談をしていると、先ほどまでバグマン氏と話していたリータ・スキーターが話しかけてきた。

 

「ちょっといいかしら? ミス・マーガトロイド、少しだけお話の時間をいただいてもよろしいかしら? ほんのちょっとでいいの」

 

「はぁ、いいですけれど」

 

リータ・スキーターの勢いに押されて思わず了承してしまう。私の返事を聞くや否や、リータ・スキーターはそそくさと部屋の入り口へ向かい、こちらに手招きをしている。

この短いやり取りで分かってしまった自分が嫌になるが、あれはこちらが了承するまで粘るつもりだったな。最悪、こちらの返答関係なしに強行してきそうな感じだ。

 

「ごめんなさい。そういう訳だから少し行ってくるわ」

 

「あぁ、頑張ってね」

 

『気をつけてね。あの女、嫌な感じがするわ』

 

二人の言葉を聞き部屋の入り口へと向かう。廊下に出て近くにあった柱の影に入ると、リータ・スキーターは手提げバッグから羊皮紙と羽ペンを取り出した。

 

「自動速記羽ペンQQQを使っていいざんしょ? こちらのほうが速く取材ができるしね」

 

「珍しいペンを持ってますね」

 

自動速記羽ペンQQQ。持ち主の性格や癖、言動に合わせて素早くかつ精密に動く魔法の羽ペンだ。確か一時期流行したけれど、便利さに反比例するように扱いづらいということで製造中止になったものだったはず。いまでは骨董屋でも見つけるのが困難だとか。

 

「そうざんしょ? 私が記者としてデビューした年に運よく見つけることができたの。それ以来私が取材するにあたって必要不可欠な最高のパートナーなのよ」

 

「羨ましいです。私もこの羽ペンのことを知ってから色んなお店を探しているんですけれど、いまだに見つからないんですよ」

 

嘘ではない。実用品としてはともかく私用として使うならかなり便利な羽ペンなので、いつかは手に入れたいと思っていた品だ。

 

「そうなの。まぁ今では見つけるのが大変だろうから、根気よく探してみるのがいいざんすわ。さて、それじゃまずは……どうして三校対抗試合に参加しようと決めたのかしら?」

 

「どうして……ですか。あえて言うなら、後には引けないからでしょうか」

 

私がそう言い終える前に、自動速記羽ペンが羊皮紙の上を流れるように動いていった。視界に端に映っただけなので細かくは分からないが、いまの問答で得られる以上の内容を書いていることは間違いなさそうだ。

 

「後には引けない? それはどういうことざんすか?」

 

「私自身は参加するつもりはなかったんですが、他の誰かが私の名前をゴブレットに入れたらしくて。ダンブルドア校長の予防措置が十全に引かれていればよかったんですけど、どうにも穴があったようで。規定年齢に達していないにも関わらず参加することになってしまったんです」

 

「あらあら、そうなの。それじゃ、そんな貴女が試合に挑む心構えを聞かせてもらえるざんすか?」

 

「もちろん、参加する以上は優勝を目指していきます。とはいえ、若輩の私が正規の代表選手たち相手にどこまで対抗できるかは分かりませんが」

 

「素晴らしい心構えざんすね。私も応援しているざんすわ。それじゃ次の質問なんだけれど―――」

 

 

 

時間にして五分くらいだろうか。リータ・スキーターの取材を終えた私は部屋へと戻り思わず溜め息を吐いた。本心と嘘を混ぜて無難かつ彼女の好みに合いそうな答えを返したつもりだが、果たしてどこまで効果があるか。

リータ・スキーターの記事は事実か嘘かは分からないがかなりの酷評で書かれている。それも大部分の記事がだ。残りの記事は普通の内容に見えるが、その実不自然なほどに美化され過ぎている。私が思うに、彼女は内容に関係なく相手のことを中傷したり美化することで逆に中傷する記事を書く人物だ。つまり、こちらがどんな風に答えても、最悪彼女の中で曲解されてあることないこと書かれてしまうことが考えられる。これは彼女の取材を受けてしまった時点で回避不可能だろう。

 

となれば、私に出来るのは可能な限り私に被害が及ばないように、彼女の好みに合いそうなことに意識を向けるように答えていくこと。幸いにも、私が対抗試合に参加することになった原因についてはダンブルドア校長の非ということにもできるので利用させてもらった。事実、ダンブルドア校長の引いた年齢線は上級生に頼めば下級生でも名前を入れられるという穴があり、逆にいえば十七歳以上の人物なら誰の名前でも勝手に入れられるということになる。年齢線以外にもゴブレットに入れた名前が本人かどうか判断する措置を取ったり、教員の誰かを最低一人でもゴブレットの見張りにしておけば今回のような事態は防げたはずだ。

 

つまり、私が対抗試合に参加することになったのは学校側が悪い。なので、リータ・スキーターの記事の中傷されるであろう矛先を学校側に向けても悪くはないはず。

 

リータ・スキーターが学校側の非を無視してまで私のことを書いてきたらどうしようもないが。

 

 

『アリス、大丈夫だった?』

 

『えぇ、多分ね』

 

「大丈夫かい? アリス。随分疲れているようだけど」

 

「なんとかね。セドリックは彼女のことについて何か知ってる?」

 

少し前に部屋へと入ってきたハリーを引っ張って外へ向かったリータ・スキーターを指して尋ねる。

 

「あぁ、うん。彼女は中傷的な記事を書くことで有名だからね。それもかなりでっち上げの内容で。もちろん、それが全部という訳じゃないだろうけれど」

 

「やっぱりそんな感じか。数日後の日刊預言者新聞が楽しみね。私との問答でどんな記事を書いてくるのか」

 

『あの人、そんなに酷い記事を書くの?』

 

『夏に彼女が書いた記事には、ダンブルドア校長のこと“時代遅れの遺物”って書いてあったかしらね』

 

そうフラーに言うと、フラーは信じられないという風に目を見開き、口を手で覆っていた。いくら今回のような不備があっても、やはりダンブルドア校長の評判というのはフラーの国でもかなりのものなのだろう。

 

 

 

杖調べの儀式は五人の審査員、ダンブルドア校長にカルカロフ校長、マダム・マクシーム、クラウチ氏、バグマン氏の前で、オリバンダーが行うようだ。

オリバンダーは部屋の中央に立ち、選手を一人ひとり呼んで杖を調べていく。フラーから始まりセドリック、ビクトール・クラム、ハリーが終わり最後に私の番となった。

 

「最後に、ミス・マーガトロイド」

 

呼ばれ、部屋の中央に立ちオリバンダーに杖を渡す。

 

「おぉ、そうじゃとも。この杖のことはいまだに覚えておる。長い間眠っていた杖じゃ。桃の木にユニコーンの鬣、二十六センチ。軽く振りやすい。杖の状態は上々じゃな。手入れはしておるのかね?」

 

「はい。定期的に手入れをしています」

 

「とてもよいことじゃ。杖は自分の大事にしてくれる主人には最大の忠誠と最高の力を発揮する。この杖は今まで手入れをしてきた中でも素晴らしいものじゃ」

 

オリバンダーが軽く杖を振ると杖先から桃色の花びらが部屋中に広がり、再度杖を振るうと花びらは一斉に消えた。

 

「完璧な状態を保っておりますよ。これなら今後も貴女の力を最大限に引き出してくれるでしょう」

 

その後は選手と審査員の集合写真と、選手個別の写真を撮影して解散となった。

 

 

 

 

杖調べの日から幾日かが経った土曜日。

来週の火曜日にはいよいよ第一の課題が行われるということもあり、学校中がそれに関する話題で盛り上がっている。第一の課題で何が行われるか、当日になるまで生徒はもちろん代表選手にも一切知らされないので、余計にみんなの想像に拍車を掛けている。

私も考えられる事態に備えて出来る限りの準備はしているが、課題内容が不明なのでどこまで意味があるかはわからない。日も迫っている状況で出来ることといえば、当日に備えてコンディションを整えておくぐらいだろう。

 

また、話は変わるが杖調べの日に行われたリータ・スキーターによる代表選手の取材。その記事は取材を行った四日後に発行されたのだが、それはもう酷いものだった。主にハリーにとって。

 

実際にハリーの取材現場を見たわけではないので真相は不明だが、新聞発行後のハリーの様子を見るに相当脚色されて書かれているだろうことは分かった。スリザリン生はそんなハリーの内心を知ってか知らずか、新聞片手にハリーをからかっているのがよく見られた。スリザリンほどではないにしろ、ハッフルパフでもハリーにちょっかい出している生徒がいるようだ。

ちなみに、ハリーほどではないが私の記事についても脚色が施されていた。脚色といっても私が言った内容を拡大解釈したような誇張表現が殆どだったのでハリーほど実害は受けていないのは幸いだ。取材前のご機嫌取りや話の内容が功を成したのだろうか。

 

記事の割合としては全体の八割はハリーについての内容で、一割が私、残る一割がセドリックとフラーとビクトール・クラムの内容となっていた。本来の正規代表選手である三人が申し訳程度に書かれているのに対してイレギュラーの私達の記事が大きく―――ハリーの記事が目立つので私の記事はそれほど目立っている訳ではないようだ―――取り上げられているのは、生徒たちからしたら気分のいいものではないだろう。

 

そんなこともあり、生徒からの他の選手に対する反応は全体的に好評といった感じとなっている。フラーとビクトール・クラムの二人に対しては純粋に応援の声が上がっているし、本来なら正規のホグワーツ代表であるセドリックに対しても非難の声など上がらずに応援を受けている。

そしてハリーに関しては先に言ったようにスリザリンとハッフルパフを中心に中傷の言動が目立っている。グリフィンドールはハリーの所属寮なので当然非難など上がらず、レイブンクローからも私のこともあってか非難は出ていない。

私についての他寮の反応は、グリフィンドールはハリーほどではないにしろ声援をくれている。ハッフルパフからは隠れて中傷せずともいい顔をしていないのが殆どだろうか。スリザリンからは一部の生徒からはハリー同様に中傷されることもあるが、大部分の生徒はハリーを標的にしているようなので、気にするほど被害を被っているわけではない。

 

 

殆どの生徒がホグズミードへ出払っている中、私は寝室で趣味の人形作りをしながら過ごしていた。人形作りといってもドールズのような人形ではなく姿かたちが似ているだけの人形だ。とはいえ、魔法を掛ければ魂を吹き込む以前のドールズ同様に動くことも可能ではあるが。

 

ドールズは寝室に私しかいないこともあり各々好きなことをしている。露西亜は静かに窓の外を眺めており、倫敦と仏蘭西と京は鬼ごっこをしている。蓬莱は京が鬼ごっこの最中に姿を消して倫敦と仏蘭西を驚かしているのを見て注意していて、残る上海は私の隣で一冊の本を読んでいる。

 

日が暮れ始め、階下の談話室が騒がしくなってきた頃。七体目の人形を作り終えて夕食まで休んでいようと片づけをしているときに、ふいに上海が本から目を離さずに話しかけてきた。

 

「ねぇ、アリス。学校の敷地内に誰かが入ってきたよ」

 

そう言う上海の言葉につられて、上海が読んでいた本―――本の虫―――を覗き込む。すると上海の言うとおり、学校の敷地の境界線に大勢の人が入ってくるのが書かれていた。集団は禁じられた森沿いに進んでいき、少し森に入ったところで立ち止まっている。

 

「誰かしらね。ここまで大勢で入っているってことは、侵入者とかではなさそうだけど」

 

「拡大してみるね」

 

上海が本の虫に書かれている地図を拡大していくと、一人ひとりの名前が確認できるようになってきた。アベル・マクベス、モリス・マッケンジー、ライナス・アトウッド……聞いたことのない名前ばかりなので、この集団が一体どういったものなのかは分からない。

 

「ん?」

 

そんな中、一つだけ見覚えのある名前が目に入った。

チャーリー・ウィーズリー。ウィーズリーという名前から察するにロンの家族だろうが、どちらにしても何をやっているのか分からないことには変わらない。

 

集団は五グループに分かれて半円を組むようにして並んでいる。集団に囲まれている黒点は、よく見ると人の名前ではなかった。

“ウェールズ・グリーン”“チャイニーズ・ファイヤボール”“スウェーデン・ショート-スナウト”“ハンガリー・ホーンテール”“ウクライナ・アイアンベリー”の五つの名が書かれている。

 

「ちょっと……これ全部ドラゴンの種族名じゃない」

 

本の虫に書かれている名前を見て驚愕する。この本の虫は人間以外のことを名前で表したり種族名で表したりとコロコロ変動するので扱いに困るときがあったのだが、今回ばかりは素直に助かったと思う。種族名で書かれていなければ、この黒点がドラゴンだなんて想像もできなかっただろう。

 

「それにしても、この時期にドラゴンが五体やってくるっていうのは……やっぱり、そういうことよね」

 

間違いであって欲しいが、まず間違いなく第一の課題はドラゴンに関する何かだろう。本物を人数分連れてきている以上、選手一人に一頭のドラゴンが割り当てられて何かをやらされると考えるのが妥当か。

 

「さて……そうなると、どうしたものかしら」

 

ドラゴンを相手に何をするのかは不明だが、流石に一人でドラゴンを倒せということはないと思いたい。尤も、過去の競技では死者が出たということと本来であれば十七歳以上の参加に限定されていたこと。このことを考えると絶対にないとは言い切れない。

とはいえ可能性的に低いだろうから、考えられるのはドラゴンから逃げ続けるか出し抜くか……といったところか。可能性としては、この二つが尤も有力だと思う。

 

「となると、どちらにしてもドラゴンの足を止めるか制限する必要があるわね。ドラゴン唯一の弱点が目だから“結膜炎の呪い”が有効だといわれているけれど、盛大に暴れるらしいし。逆に危険かしら」

 

その後は、一番隠れるのが得意な蓬莱に本の虫を預けてドラゴンを見てきてくれるように頼み、蓬莱が戻ってくるまでどうやってドラゴンに対処するか思案していった。

 

 

 

月曜の昼。翌日に試合を控えた私は校庭の木陰で何をするでもなく座っていた。次の授業まで時間が空いているので、明日に備えて身体を休めているといったところだ。

 

ドラゴンの対処については一先ず目処が立った。目処といっても、やることは単純なのだが運の要素が強いことも確かである。実際に成功するかは分からないが、蓬莱が教えてくれたドラゴンの体長や特徴、図書館で調べた各ドラゴンの行動や身体能力を考慮すれば、成功率は良く見積もって七割といったところか。ドラゴン相手に不十分過ぎるとは思うが、そもそも準備期間が短いのだからこれでも上出来だろう。

念のため、最初の策が駄目になったときに備えて次策も考えているが、できれば最初の策でクリアしたいところである。

 

そんな感じで、内心不安に感じながらも身体だけはベストコンディションで挑もうと休んでいたのだが、同じように木陰で休んでいた露西亜と京が、人が近づいているのを教えてくれた。

 

「こんにちは、ハリー。元気かしら?」

 

近づいていたのはハリーだった。

 

「あぁ、うん。それなりにね。アリスは何をしているの?」

 

「明日に備えての心身のリフレッシュ」

 

若干茶化して言ったが、まぁ間違ってはいない。

 

「リフレッシュって。アリスは明日の課題が不安じゃないの?」

 

「そんなわけないわ。これでも不安もあるし緊張もしている。だからこうして、気持ちを落ち着かせているのよ。いざ試合に臨むときに体調最悪じゃ何もできないでしょ?」

 

「……アリス。第一の課題はド「ドラゴン?」……えっ?」

 

ハリーの言葉に先んじて言うと、ハリーは驚きと疑問の表情を浮かべた。

 

「ど、どうして知っているの? 選手には秘密にされているはずなのに」

 

「それを言ったらハリーもでしょ? まぁ、情報源は教えられないけれど課題内容についてはある程度予測がついているとだけ言っておくわ」

 

ハリーの事情については、ドラゴンを確認した夜に蓬莱がハグリッドと一緒にいるのを確認していたので知ったのだが。しかも二人だけではなく、マダム・マクシームやカルカロフ校長までもあの近くにいたというのだから、フラーとビクトール・クラムにもドラゴンのことは伝わっているとみていいだろう。

 

「そうなんだ……ねぇ、アリスはどうやってドラゴンを出し抜くつもりなの?」

 

出し抜くね。こうも確信を持って聞いてくるということは、課題はやはりドラゴンを出し抜くということで間違いはないのだろうか。あの夜、ハリーはハグリッドとドラゴンを確認している。教員のハグリッドならドラゴンが課題にどう使用されるかは知っているだろうから、ハグリッドから聞いたのか? ハグリッドはハリーに対して非常に友好的なはずなのでありえなくはないだろう。

 

「それは秘密よ。というより、私が教えるなんてハリーも思っていないでしょ」

 

「まぁね」

 

「それなら、この話はこれでお終いね。話は変わるけれど、最近ロンと喧嘩でもしたの?」

 

話題を変えてハリーに聞くと、ハリーは先ほどまでの不安と緊張の顔から不機嫌な顔へと変わった。最近―――正確にいえば代表選手が選ばれた日―――を境にハリーとロンが一緒にいるところを見なくなっていた。

 

「深くは聞かないわ。二人の間に何があったのか知らない私が不躾に関わるのも憚れるし。ただ、ハーマイオニーが辛そうに見えるとだけ言っておくわ」

 

ハリーは黙ったまま俯きながら立っていたが、一分ぐらいたった頃に何も言わず城のほうへと歩いていった。そんなハリーの背中を少しの間見ていたが、すぐに視線を戻して脇に置かれた本を手に取った。

 

 

 

 

翌日、ついに第一の課題の日がやってきた。

フリットウィック先生に連れられて代表選手が集まる天幕へと向かっていく。第一の課題は禁じられた森の近くに作られた競技場で行われるらしく、校庭を横切って歩いていく。

 

「ミス・マーガトロイド。大変だと思いますが、落ち着いていくのですよ。決して冷静な心を乱しては駄目です」

 

天幕に辿り着くとフリットウィック先生が足を止めて話しかけてきた。

 

「君は私が教えてきた生徒の中でも特に優秀な生徒だ。ですが、そんな君でも今回ばかりは……とにかく、危険だと感じたならすぐに赤い花火を上げなさい。そうすれば我々がすぐに救助に向かいます」

 

「ありがとうございます、先生。安心してください。私だって死にたくはないですからね。駄目だと思ったらすぐに逃げますよ」

 

フリットウィック先生の忠告に返しながら天幕へと入っていく。中にはハリーを除く三人の選手がすでに集まっており、それぞれが不安そうな顔をして静かに椅子に座っていた。セドリックは私が入っていたのを見ると少しだけ微笑んでいたが、フラーは私のほうには顔も向けずに俯いて何かを呟いている。

私も空いている椅子に座り、目を閉じて時間まで気持ちを落ち着かせていった。

 

 

手持ちの武器は杖一本のみとされているのでドールズは連れてきていない。とはいえ、競技場の近くに隠れながらフル装備で待機させてあるので、いざとなれば呼び寄せることも可能だ。ただドールズを呼び寄せたとしても、それに対して審査員がどう反応するかが判らない。杖以外のものを持ち込んだとして罰を受けるのか、試合中に呼び寄せたものなので黙認されるのか。できるなら、ドールズを呼び寄せることもなく作戦通りに終えることができればいいのだが、課題クリアのための目的が分からない以上は用意しておいた作戦自体が潰れてしまうことも考えられるので、そうも言っていられないだろう。

 

しばらくの間天幕に沈黙が流れていたが、バグマン氏とハリーが天幕に入ってきたことで破られた。

 

「よーし! もう全員集合したな。では、いよいよ第一の課題について話して聞かせる時がきた!」

 

バグマン氏は選手をグルリと見渡した後、懐から紫の絹でできた小さな袋を取り出して選手の前に持ってくる。

 

「諸君はこの袋にはいっている自分が立ち向かうもの模型を順に選び取る。模型の種類は様々だ。そして肝心の課題は―――選び取った模型のものを出し抜いて金の卵を取ることだ!」

 

恐らく模型は五種のドラゴン。課題はそのドラゴンを出し抜いて金の卵を取ることか。

バグマン氏が言った課題の内容に一先ず胸を撫で下ろした。勿論本当に撫で下ろすのではなく、そういう気持ちということだが。

この内容であれば、考えていた作戦が使えるだろう。競技場の地形の問題もあるが、それはどうにでもなる。とはいえ、作戦が絶対に成功するとは限らないので油断は禁物だ。

 

「レディーファーストだ」

 

そう言ってバグマン氏はまずフラーに袋を向ける。フラーは恐る恐る袋に手を入れるが、すぐに手を引っ込めてしまう。だがその手にはしっかりと小さな模型が摘まれており、バグマン氏に手渡す。

 

「ウェールズ・グリーン普通種、競技は二番手だな。次はミス・マーガトロイドだ」

 

差し出された袋に手を入れる。袋の中で模型が動いているのか中々掴めない。思い切って袋の底まで手を入れて掬い上げるように模型を取り出した。

掌の乗っているドラゴンはフラーが取ったウェールズ・グリーン普通種よりも大きく、鈍く光る銀色の鱗をしていた。ドラゴンの首には⑤と書かれた首輪をつけている。

 

「ウクライナ・アイアンベリー種、競技は五番手だな。よしよし、では次は―――」

 

その後は、セドリックがスウェーデン・ショート-スナウト種を取り一番手、ビクトール・クラムがチャイニーズ・ファイヤボール種―――別名中国火の玉種または獅子龍―――を取り三番手、ハリーがハンガリー・ホーンテール種を取り四番手という結果となった。

 

「さぁ、これでよし! 諸君はそれぞれが立ち向かうドラゴンを引き当てた。ホイッスルが聞こえたら、一番手のディゴリー君から競技場に向かいたまえ。次のホイッスルが聞こえたら次の選手だ」

 

バグマン氏は必要事項を伝えるとそのまま天幕の外へ―――ハリーを連れて出て行った。他の人はバグマン氏が話を終えたところで再び俯いていたので、気がついたのは私だけみたいだ。何故ハリーが連れ出されたのか考えていたが、一分も経たないうちにハリーは戻ってきたので思考を中断した。

 

それから五分ほど経ったとき、天幕の外からホイッスルの音が聞こえてきた。その音にセドリックは過敏に反応しながらも足取りはしっかりと天幕を出て行く。

 

セドリックが出て行って程なくすると、観客であろう生徒達の悲鳴や叫びが聞こえてきた。それに平行してバグマン氏の解説も聞こえてくる。

 

「おぉっと、今のは危なかった!……これは危険な賭けに出てきました! どうなる!?……うまい! いけるか!?……残念、駄目か!」

 

そのまま十五分ほどが経った頃、競技場のほうから大歓声が聞こえてきた。恐らくセドリックがドラゴンを出し抜いて金の卵を取ったのだろう。

 

数分後、ホイッスルが響き渡る。フラーは顔を真っ青にしながら全身を震わせながら天幕を出て行った。

暫くの間、先ほどと同じように観客の声とバグマン氏の解説が聞こえ、約十分後に大歓声が聞こえた。

 

三度目のホイッスルが鳴ると、ビクトール・クラムが天幕を出て行く。セドリックやフラーと比べると随分落ち着いているように見えた。クィディッチの国家代表ともなると胆の据わり方も違うのだろうか。

天幕には私とハリーだけが残されるが、お互いに会話もなしに静かに座っている。沈黙の中、観客とバグマン氏の声だけが響いている。

 

「大胆な! なんと……いい度胸を見せます……いくか!?……やった! 卵を取りました!」

 

バグマン氏の声と同時、大歓声が響き渡り空気を震わせる。競技中のバグマン氏の解説は先の二人よりいいものだったし時間も短い。恐らく現在はビクトール・クラムがリードしているのだろう。

 

少しの間のあと、ホイッスルが響く。ハリーを見るとゆっくりと椅子から立ち上がって競技場へ向かおうとするが、その足取りは覚束なく目の焦点も合ってないように見えた。

 

「ハリー」

 

流石に見かねたので声を掛ける。だが、聞こえていないのか返事をする余裕がないのか、ハリーは返事をせずにいる。

思わず溜め息を吐きながら立ち上がりハリーに近づいていく。ハリーが天幕の出口に着いたところで追いついた私は、ハリーの後ろからフラフラと揺れる頭目掛けて振り上げた手を叩きつける。私が近づいていることに気づいてすらいなかったハリーは避けることも出来ず、手は吸い込まれるようにハリーの後頭部を直撃した。

 

「痛!? なっ……なにするんだ!?」

 

ようやく私に気がついたのか、ハリーは頭を抑えながら振り向き声を荒げる。

 

「壊れた機械みたいにグシャグシャしてたから治してあげようと思って。よく言うじゃない? 壊れた機械は四十五度で叩けば直るって」

 

「僕はテレビじゃないよ!? それに、それは迷信だよ!」

 

「まぁまぁ、落ち着きなさい。これから競技だっていうのに疲れちゃうわよ?」

 

「誰のせいだと思っているのさ!?」

 

ハリーの顔を窺う。まだ硬いけれどさっきよりはマシか。

 

「私のせいね。そんなことより、早くいかないと不味いんじゃない?」

 

「あっ! そうだった! ていうか、アリスが変なことするからだよ!」

 

「はいはい、ごめんなさい。文句は後で受け付けるから、さっさといってきなさい」

 

そう急かすと、ハリーはまだ何か言いたげだったが何も言わずに天幕を出て行った。その足取りはさっきとは違いしっかりとしている。どれくらい効果があるかは分からないけれど、あのままドラゴンの相手をするよりはマシになっただろう。

 

ハリーが出て行ったから数分。バグマン氏の解説と観客の声が聞こえていたが、突然それが聞こえなくなった。卵を取ったというのは聞こえないので、まだ競技は続いていると思うが何があったのだろうか。

 

少しの時間、ザワザワとした声しか聞こえてこなかったが、突如として割れんばかりの歓声が響いてきた。

 

「戻ってきた! 一人だけだ! 上手くドラゴンを撒いたようです! もう阻むものはなにもない。そして……取ったぁぁ! 最短時間で卵を取りました!」

 

バグマン氏の叫ぶ声が響く。その声を拾って分かったことは、どうやらハリーは一旦会場を離れて、それを追ってきたドラゴンを撒いてから競技場に戻り卵を取ったということ。

 

「でも、どうやって競技場から離れたのかしら。それもドラゴンを撒けるほどに―――あぁ」

 

ハリーの行動について考えていたところで思い出した。そういえば、ハリーはクィディッチ選手―――それも速さと飛行技術が売りのシーカー―――だったことを思い出す。恐らく、呼び寄せ呪文か何かで箒を取り寄せたのだろう。ハリーの持つ箒はファイアボルトだったはず。確かにあれならドラゴンとも空中デットヒートを繰り広げられるだろう。

 

それに判ったことがもう一つ。ハリーが箒を取り寄せて卵を取ったということは、競技中に外からものを取り寄せることも有りということだ。聞こえてきた解説を聞いていてもバグマン氏が箒について追求している様子はなかった。ならば、考えていたよりも幾分か楽に卵を取れるかもしれない。

 

そんな風にハリーの競技について考えているとホイッスルが聞こえた。

いよいよ私の番だ。天幕を出て競技場へと向かっていくが、いざ自分の番になると流石に緊張が強くなる。

簡易的に作られた道を進み、洞窟のような穴へ入る。出口が二十メートルほど先にあるのでそれほど暗くはなく、ゆっくりと進んでいく。

 

洞窟を出ると、そこは大小の岩が乱雑に置かれた空間だった。円状に囲むように観客席が設けられており、高さは十メートル以上ある。足場はゆるく斜面になっていて、全体を見渡すとお皿のようになっている。

歓声に包まれながらも、その声は一切無視して競技場の中央を見つめる。というより、耳を傾けている余裕もなければ中央に佇むドラゴンから目を外すこともできない。

 

鈍い銀色の鱗に覆われた身体は、全長十五メートル近くはあるだろうか。暗赤色の目を光らせながら威嚇するように唸り声を上げて周囲を見渡している。

 

「アクシオ、ドールズ! ー人形たちよ、来い!」

 

ドラゴンは威嚇しながらも中央に留まっているので、その隙に競技場外に待機させていたドールズを呼び寄せ呪文で呼び出す。魔法で呼び出すのは、武器は杖一本だけということを考えて難癖を付けられないようにするためでだ。

ドールズは一分も経たないうちに観客席を飛び越えてやってきた。ドールズといっても全員ではなく、一番成熟している上海、蓬莱、露西亜の三体だけである。

 

「蓬莱と露西亜は姿を消して待機。ドラゴンが卵から離れて合図があったら卵を取りにいきなさい。細心の注意を払ってね。上海は上に上がってドラゴンの動きを見ていて頂戴」

 

指示を終えると、上海と蓬莱、露西亜に目くらまし術を掛けて姿を見えなくする。ドールズなら自前で目くらまし術を使うことも出来るが、これも難癖を付けられないようにするためだ。さらに念を入れてと遮音呪文と消臭呪文も掛けておく。

 

最低限の準備が出来たので改めてドラゴンを観察する。時たま見える卵は複数あり、その中の一つに金の卵があるのだろう。卵を護っているということと、体長の大きさから考えて営巣中の雌ドラゴンと推測する。この時期の雌ドラゴンは確かに凶暴だが、卵があるので必要以上に近づかなければ自ら襲ってくることはない。

―――ちょっかいをかけてくる相手にはその限りではないが。

 

「ギュデート・イトゥムプパ! -踊れ、石人形!」

 

まずはドラゴンを卵から引き離す。卵の傍にいる状態で結膜炎の呪いを掛けても無意味に暴れるだけだし、卵が壊されでもしたら目も当てられない。

杖を向けた先にある岩を簡易的な石人形に変身させていく。石人形は成人男性ほどの身長があり、それらを複数作成。ある程度作り終えたら一斉にドラゴンへとけしかけていく。

 

ドラゴンが石人形の相手をしているのを離れて観察しながら次々と石人形を作り出していく。石人形は近づく傍から長い爪や牙、尻尾によって引き裂かれて砕かれていくものの、最初の時点で多くの石人形を作ったので、破壊より作成の方が上回っており上手い具合に撹乱できている。

身体に石人形が這い登ってきた頃、ドラゴンは大きく口を広げて息を深く吸い込み始めた。

 

「!?」

 

咄嗟に近くにある大きな岩の陰へと身を隠す。その瞬間、岩の反対側に炎が襲い掛かり、裏側にいるにも関わらず岩から伝わる熱と炎の余波が襲い掛かってきた。

 

「アエスチーユス! -耐熱せよ!」

 

身体に耐熱呪文を掛けて迫る炎の熱に耐える。ドラゴンの様子は右目を閉じて、宙に浮いている上海の視界を通して確認する。どうやら、ドラゴンは首を僅かに動かして私と正面にいる石人形に向かって炎を吐いているようだ。炎に煽られた石人形は黒ずみ崩れていく。

 

だがその間にも、ドラゴンの側面や背後に回った石人形がドラゴンへと攻撃を仕掛けていく。攻撃といっても拳でひたすら殴り続けているだけなのだが。

当然、ドラゴンの鱗に対してそんな攻撃が通用するはずもなく一向にダメージを与えられてはいない。それでも鬱陶しいことに変わりはないのか、ドラゴンは炎を吐くのを止めて石人形を爪や牙で壊しに掛かっている。

 

「ギュデート・イトゥムプパ! -踊れ、石人形!」

 

炎が止んだので、再び石人形を作り出していく。随分ドラゴンに壊されてしまったが石人形はまだまだ沢山いるし、岩もごろごろ転がっているので次々と作り出してはドラゴンへとけしかける。

 

「―――ようやく、来たわね」

 

ドラゴンは一際大きく咆哮すると、石人形がやってくる元―――つまり私―――に向かって予想通り(・・・・)突進してきた。まぁ、効かない攻撃をチマチマと続けられていれば誰だって苛立つし、元凶を潰してやろうと考えるだろう。私だってそう思うし、ドラゴンとて例外ではないはずだ。

 

石人形を作る手を止めて杖先を慎重にドラゴンへと向ける。ドラゴンは進行方向にある石人形を容易く踏み潰しながら咆哮を上げて近づいてくる。

 

「インファルア・メティオム! -炎症せよ!」

 

真っ直ぐに近づいてくるドラゴンの目を狙って結膜炎の呪いを放つ。頭に血が上っているだろうドラゴンは避けることもせずに向かってきて、呪文は吸い込まれるようにドラゴンの左目に当たった。そしてドラゴンは唯一の弱点ともいえる目を攻撃されたことで激しく暴れもがいている。

 

「ルーモス ノックス -光よ -闇よ」

 

一瞬だけ杖先を発光させる。蓬莱と露西亜への合図だ。

後は蓬莱と露西亜が卵を確保するまでドラゴンの足止めに専念する。

 

「エンゴージオ! -肥大せよ!」

 

壊されていない石人形に肥大呪文をかけて大きくする。倍ほどとなった石人形はドラゴンへと殺到して身体中に纏わりついていく。

 

「エムイベート! -鎖になれ」

 

そのうちの一体、ドラゴンの首にしがみついている石人形を鎖へと変身させる。ドラゴンの首に巻かれるように変わった鎖の端を、背中に乗っている石人形に持たせることで手綱のようにする。同じように手足と翼、尻尾に纏わりついている石人形を鎖へと変えて、それぞれを残った石人形に持たせる。

 

ここまでくれば、そうそう抜け出すことは出来ないだろう。成人男性の倍ほどある石人形に身体中を鎖で拘束されている上に、結膜炎の呪いによって激痛が襲う。もし痛みが引いてきても、拘束を解く前に残る右目へと結膜炎の呪いを掛けるには十分間に合う。加えて、効果は薄いだろうが失神呪文を掛ければさらに動きは鈍るだろう。

 

ドラゴンの様子を見ながらも、蓬莱へと意識を向ける。目くらまし術や消音呪文を掛けているため、繋がりを通じて意識を向けないとどこにいるのか私にもわからない。

 

どうやら、蓬莱たちはドラゴンとは逆方向に大回りしながら近づいてきているようだ。距離もあと二十メートルもない。ドラゴンをギリギリ視界の端に置きながら、蓬莱たちがいるであろう場所を見る。すると、岩に隠れるようにフヨフヨと金の卵が浮かびながらも少しずつ近づいてきていた。

 

杖を振って蓬莱と露西亜、降りてきた上海にかけた呪文を解除して、蓬莱と露西亜から金の卵を受け取った。

同時に、周りの音が鼓膜を伝い頭の中を響かせる。

 

「やりました! ミス・マーガトロイド! 巧みにドラゴンを撹乱して見事卵を手に入れました!」

 

バグマン氏の叫ぶ声と、それに負けないほどの観客の声。入り混じった爆音が鼓膜を震わせるのを感じながら、身体に力を入れて競技場の出口へと向かっていく。正直、身体の疲労がとてつもなくキツイ。精神的な疲労が特にやばい。周囲の音が聞こえないほどドラゴンの動きに集中した上に魔法の多用。出来ることならば今ここで大の字に寝てしまいたいが、そんなことは出来ようはずもないので気合を入れて足を動かす。

 

出口まで辿り着くと、フリットウィック先生とパドマ、アンソニー、何故かルーナに出迎えられた。

 

「素晴らしかったですぞ、ミス・マーガトロイド! あれだけの魔法を巧みに使いこなすとは本当に素晴らしい! マクゴナガル先生も貴女の変身術の腕に感心しておりましたぞ!」

 

「本当! 凄かったわ、アリス!」

 

「あんなにドラゴンを手玉に取るなんて、プロのドラゴン使いでもそうそういないよ!」

 

三人の次から次へと出てくる褒め言葉は嬉しいが、出来ればいまは静かにさせてほしい。

 

「先生、二人も。アリスは疲れてると思うから静かにさせてあげよう」

 

私の心でも読んだのか、これ以上ないタイミングでルーナが三人を落ち着かせて話を中断させてくれた。相変わらず人の内心を察するのが上手い子である。

フリットウィック先生は教員席の方へと戻り、ルーナも観客席へと戻っていった。パドマとアンソニーはふらつく私が心配だったのか、救急テントまで付き添ってくれることになった。

救急テントではセドリックがベッドの上で休んでおり、どうやら寝ているようだ。テントに入ると同時にマダム・ポンフリーが駆け足で近づいてきて、私を椅子に座らせた後身体中を診察していく。

 

「ふぅ、怪我はなさそうですね。極度の精神疲労でしょう。これを飲んでいきなさい」

 

そう言って、濁った緑色の薬を手渡される。マダム・ポンフリーが言うには疲労回復を促進する薬ということだが、色といい匂いといい飲む者の根性が試されそうな代物だ。

 

少しの間休んで、三人で再び競技場へと向かう。その間に、二人から他の選手がどのように卵を取ったかを聞いていく。

幾分か体調が戻り闘技場へ向かうと、ちょうど審査員が点数を発表するところだった。

 

「点数は審査員がそれぞれ十点満点で採点するのよ。今の一位はハリーとクラムが四十点の同点ね」

 

「正直、誰もがハリーがクラムを抜いて一位だと思っていたんだけれど、カルカロフ校長が露骨に贔屓したせいで同点になったんだ」

 

「でも、今回はアリスが一番に違いないわ!」

 

「しっ! 始まるぞ」

 

アンソニーがパドマを静かにさせると同時、競技場全体も水を打ったように静まり返る。

皆が皆、審査員席にいる審査員の方を見つめていた。

 

最初にマダム・マクシームが杖を宙に掲げる。その杖先から銀色のリボンのようなものが噴出して形作っていき、“9”を描いた。

続いて、クラウチ氏が杖を掲げる。杖先から黄色い光が噴出し“9”を描く。

ダンブルドア校長は赤い光の帯を出して“10”を描いた。

バグマン氏はクラウチ氏と同じ黄色の光を噴出させて“10”を描く。

残るカルカロフ校長の杖先に競技場中の人間の視線が集まるのがわかった。カルカロフ校長は自分に集まる視線など気にしていないかのような平然とした動きで杖から灰色の光を噴出させて、“4”の数字を描いた。

 

「四点ですって!? あの人、ハリーに続いてアリスにまでこんなことするなんて!」

 

「クラムには十点をやったのに、アリスが四点っておかしいだろ!」

 

パドマやアンソニーだけではなく、観客席のあちこちから不満の声が上がるが、カルカロフ校長は目を閉じて少しも反応していない。

 

「いいわよ、二人とも。一位には変わりないんだから」

 

本当は少しばかり不満はあるが、それは表に出さないようにする。私の元々の目標がルールに抵触しない範囲で安全にクリアするというものなので、言ってしまえば得点なんてものは自身の安全と比べたら二の次だ。得点が高いに越したことはないが、安全と引き換えにするものでもない。

当事者の私が気にしないよう言ったのもあってか、二人は不満顔であったもののこれ以上何かを言うということはなかった。

 

その後、バグマン氏が呼んでいるというのを聞いて天幕へと戻っていく。天幕内には他の代表選手が全員集まっていた。

 

『アリス、無事でよかったわ!』

 

『フラーもね、無事で何よりだわ』

 

「凄かったよ、アリス。なんていうか、僕よりも魔法の腕は上なんじゃないか?」

 

「得意分野で攻めたら上手くいっただけよ。総合的な腕ならセドリックの方が断然上だと思うわ」

 

「全員、よくやった!」

 

フラーとセドリックと話してしていると、バグマン氏が弾むような足取りで天幕へと入ってきた。

 

「さて、では手短に話してしまおうか。第二の課題まで君達には十分な休みが与えられる。第二の課題が行われるのは二月二十四日の午前九時半だ。そして、第二の課題のヒントは君達が獲得した金の卵だ。よく見てもらうと開くようになっているのがわかると思う。その中にあるヒントを解き明かすんだ。それが第二の課題が何であるか、必要な準備は何かを教えてくれる! 何か質問はあるかな? 大丈夫か? では、解散!」

 

天幕を出てパドマたちと合流したあとは、城へ向かって一直線に歩いていった。途中、ハリーがリータ・スキーターに絡まれているのを見つけたが、気にすることでもないと思い見なかったことにした。

 




【パドマとアンソニーの反応】
日頃の交友関係は重要。二人がアリス程でないにしろ優秀なのもポイント。

【真実薬】
とっても便利な自白剤。気になるあの子の秘密も……(血に濡れて解読不能

【フラーとクラム】
原作より物分りのいい人? フラーの場合、少しでも交友関係を築けられたのが幸いした。

【他校長s】
もうちょっと反感させてもよかったと思うが、フラーとクラムのファインプレーということで。

【魔法契約】
自己強制証文(セルフギアス・スクロール)とどっちが強力かな?

【眼鏡記者】
標的はあくまでハリー・ポッター。アリスも気になっているがネームバリューが違う。爺は犠牲になったのだ。

【自動速記羽ペンQQQ】
記者や書記、手書き作家からしたら夢のような道具。

【オリバンダー】
最も輝いていた頃。

【本の虫】
なんでや! こんなん、ただのチートやないか!

【ウクライナ・アイアンベリー種】
グリンゴッツでレストレンジ家の金庫を護っていたドラゴンと同種。

【ハリーの緊張を解くアリス】
デレませんよ?

【アリスVSドラゴン】
やりすぎた感はある。だが反省はしない。これでも、丸々三回は書き直したシーンです。

【得点】
オリンベ・マクシーム:9点:魔法技術はよく怪我もないが時間がかかった。
バーティ・クラウチ:9点:同上。
アルバス・ダンブルドア:10点:変身術の腕と作戦を評して
ルード・バグマン:10点:気分が高ぶって景気よく採点。一応見るところは見ている。
イゴール・カルカロフ:4点:本当はもっと下げてクラムと同点にしたかった。時間と卵を手元に持ってきたのが本人ではないというのが本人の主張。

【呪文】
相変わらずのグーグル先生のラテン語変換の曲解読み

”キュイクリド -消臭せよ”
消臭呪文。対象から発せられる匂いを無臭にする。呪文が切れた後は時間経過で元に戻る(再び匂いが付く)

”ギュデート・イトゥムプパ -踊れ、石人形”
石や岩から簡易的な作りの石人形を作り出して操る変身術。大きさは成人男性程度。同系統の変身術の中では数も用意できて操る負担が少ない、使い勝手のいい魔法。

”エムイベート -鎖になれ”
対象を鎖に変える変身術。術者の力量によって鎖の強度等が変動するが、本物の鎖を越える強度にはならない。材質的には鉄や鋼。
上位魔法となるとさらに硬い合金レベルの変身も可能ですが、それはエイムベートとは異なる魔法になりますので除外。
正直、魔法で変身させているため特別な状況下、方法では変身術を解除されてしまう場合もあるため、可能なら本物の鎖を使ったほうが確実。

”インファルア・メティオム -炎症せよ”
結膜炎の呪い。原作にあれど呪文が載っていなかったので捏造した。ドラゴンさえ悶絶して暴れるくらい痛い。

”アエスチーユス -耐熱せよ”
熱や暑さから身を守る魔法。耐火効果もあり、ある程度の炎なら服が焦げる程度に抑える。ドラゴンの吐く炎の直撃は防げない。


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