魔法の世界のアリス   作:マジッQ

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「―――常識が通じない、いや、はじめからそんなモノがないんだ」


「世間は殺人鬼とか言うこともあるけれど、僕らはこう呼ぶ」

「存在不適合者―――って」


戦場

長い間セストラルの背に乗り続け、眼下のロンドンから光の大部分が失われてきた頃に、私達は魔法省の入り口に到着した。そこは古臭い電話ボックスが通りに隠れるようにして置かれている場所だった。一つだけある街灯だけが道を照らしているのみで、道の奥へと行くほどに闇に包まれている。

 

「ハリーとハーマイオニーはどこだ?」

 

ふらつきながらも一番に降り立ったロンが路地周辺を見渡すも、ハリーとハーマイオニーの姿はどこにも見当たらず、疑問の声を上げる。そんなロンを尻目にして、私は一直線に電話ボックスへと進んでいく。そして、電話ボックスの後ろにハリー達に付けていた蓬莱が寝かせてあるのを発見した。

それを目にした瞬間、急いで、そして優しく蓬莱を抱きかかえる。目立った外傷もなく、意識を失っていることから“失神呪文”によって気絶させられたのだと判断した。

 

「アリス、その人形はどうしたんだい?」

 

セドリックが私の横へと回りこみ、腕の中の蓬莱を見て尋ねてくる。

 

「“失神呪文”で気絶しているのよ。恐らく、やったのはハリーかハーマイオニーのどちらかね」

 

蓬莱には、二人が魔法省へと入らないよう足止めをしておくようにと伝えていた。それなのに、こうやって蓬莱がここにいる以上は、足止めは失敗してしまったということだろう。であれば、二人は既に魔法省の中へと入っている可能性が高い。

 

「エネルベート ―活きよ」

 

ロン達を集めるようセドリックに頼んでから、反対呪文を唱えて蓬莱を目覚めさせる。そうして、覚醒した蓬莱から話を聞いていると、ハリーが電話ボックスへと無理やり入ろうとしたところまでは覚えているようであり、気がついたらこの現状というわけだ。

ハリーとハーマイオニーが魔法省の中へと入ったことを知り、後を追うためにロンとセドリックの案内の元に電話ボックスへと入る。私の位置からは見えないが、電話のダイヤルを回して名前と来訪目的を告げるようだ。そうしてエレベーターのように下へと下がっていき、暗い空間が暫く続いた後に明かりが灯る場所へと出た。そこは広い廊下のような場所であり、床板は光を反射するほどに磨き上げられ、壁にはいくつもの暖炉が設置されている。道の先には広くなっているホールがあり、その中央には白い水盆の上に黄金の像が置かれている噴水があった。

 

「へぇ、ここが魔法省ね」

 

既に業務を終えたのか、本来であれば人が溢れているのだろうと思いながら辺りを見渡す。そこで、ふとした違和感に気づいた。

 

「ねぇ、セドリック。魔法省というのは、業務が終われば全く人がいなくなるような場所なの?」

 

そう、仮にもイギリス魔法界を牛耳る政治機関であるにも関わらず、人の気配がまったく感じられないのだ。もし業務時間外に無人になるならば、その間魔法省には入れないようにするだろうし、入れるならばすぐ傍にある守衛室に誰かがが待機しているのが普通だ。政治機関が鍵開けっ放しの入場自由とか、無用心以前の問題だろう。

 

「いや、そんなはずはない。魔法省には二十四時間対応している部署もあるし、夜は人が少ない分、警備の人が増えるようになっている。もし何らかの理由で魔法省に人がいない場合は、誰も入れないように完全に封鎖されるはずだ」

 

「まぁ、普通はそうでしょうね。ていうことは、今のこの現状は、まず起こりえない異常事態ということね」

 

魔法省の奥へと走り出したロン達を追いかけながら、注意深く辺りを見渡す。ここからでも多くの部屋を見ることができるが、そのどれもが明かりがあるにも関わらず、人影が見当たらない。もしかしたら、死喰い人によって制圧されているのかとも考えたが、それにしては争った形跡が一つも見当たらないし、制圧されているとしたら、入り口に待ち伏せされていて終わりだろう。

念のため、この先なにがあるかわからないので、万が一に備えて一枚のカードを目立たない場所に張り付けておく。

 

 

ホール奥にあるエレベーターに乗り込み、下の階へと降りていく。ロンが押したボタン横には“神秘部”という曇った金のプレートが打ち込まれている。ロンが言うには、ハリーが夢で度々見ていたという場所が神秘部らしい。神秘部といえば、去年の冬にウィーズリーさんが負傷した場所でもあったはずだ。そこで今度は、シリウスが負傷しているかもしれないという状況は、確かにハリーが落ち着いていられる状況ではないだろう。実際の真偽はどうであれ、ハリーにはそれが本当か嘘か判断することが出来ない以上、止むを得ないのかもしれない。学校にダンブルドアかマクゴナガルがいれば、また違ったかもしれないが。

 

「―――あ、そういえば一つ気になっていたんだけど、どうしてセドリックまでアンブリッジに捕まっていたのかしら? 貴方なら捕まる以前に、ハリー達を止めると思ったんだけど?」

 

「あぁ、それか。いや、僕も止めようとはしたんだ。ただタイミングが遅かったのか、僕が気づいて止めようとした瞬間にアンブリッジが戻ってきてね。現行犯ということで一緒に捕まってしまったんだ」

 

つまり、セドリックは巻き添えを食っただけと。そういった感情を込めてロン達を見れば、全員が一斉に視線を逸らす。ルーナだけは何故か胸を張り、目を見開いているが。

 

「まぁ―――そのうち良いことがあるわよ」

 

「―――気休めでもうれしいよ」

 

 

暫くの沈黙の後、エレベーターは神秘部のある九階で止まると、ガシャガシャと音を響かせながら格子扉が開く。静寂な空間にこれだけの音が響けば、聞き逃すなんてことはないだろう。そう思い、いつでも魔法を放てるように身構えながら薄暗い廊下の先を見渡すも、誰かがやってくるような気配はない。

 

「誰もいないわね」

 

ジニーの呟きに同意しながらも、慎重に進んでいく。ロンによれば、黒く取っ手のない扉というのが、ハリーが夢で見ていた場所らしいので、それを探していく。意外にもその扉はすぐに見つかり、扉を開けて奥の部屋へと入り込んだ。

そこは円形の部屋で、いくつもの扉が等間隔で並んでいた。そのうち、四つくらいの扉には“×”の焼印が押してあり、僅かな明かりしかない部屋の中で赤く輝いている。全員が部屋の中に入り扉を閉めると、部屋の壁が回転を始めだした。回転は徐々に速くなっていき、明かりが点から線となる頃合を境に、今度は減速を始める。やがて回転が収まると、先ほどまで見ていた扉の位置が変わっていることに気がつく。

 

「なるほど。こうやって無断で入った者を迷わせるわけね」

 

幸いにして、最初に確認した焼印の位置から入ってきた扉の位置は分かったので、そうと分かるよう“○”の焼印を押して目印とした。先にあった焼印は、恐らくハリー達が付けたものだろうと考え、どの扉を進んでいこうかと話していると、ちょうど私達の左隣にある扉が開いた。咄嗟に杖を扉へ向け警戒するも、そこから出てきた人物を見て杖を下ろした。

 

「ハリー! ハーマイオニー!」

 

扉から出てきたのはハリーとハーマイオニーだった。ロンの声に二人は振り向き、驚いたような顔をする。いや、実際に驚いているのだろう。

 

「ロン!? それにみんなも、何でここにいるんだ!?」

 

「それはこっちの台詞だよ! 二人とも、アンブリッジに連れて行かれたと思ったら、なんでこんなことになってるわけ!?」

 

「それは―――」

 

パンパンという音が響く。

ハーマイオニーが何かを言おうとしたのを、私が手を叩いて中断させたのだ。

 

「はいはい。お互い言いたいことはあるだろうけど、それは後にしておきなさい。今は他にやるべきことがあるでしょう?」

 

「アリス―――そうか、アリスがみんなを連れてきたんだね。ここは危険なんだ。なんでみんなを連れてきたりなんかしたんだ?」

 

「貴方達が二人で勝手に先走ったからでしょ? それに、私が関与しなくても、貴方達を探して追いかけていっただろうし。大体、危険だと分かっている場所に、態々飛び込む貴方もどうなの?」

 

「僕はヴォルデモートに捕まっているシリウスを助けなくちゃならない。でも、もしかしたらヴォルデモートや死喰い人と戦いになるかもしれないんだ。だから、本当なら僕一人で来るつもりだったのに―――」

 

「ハリー、だったら尚更だよ。今までDAで訓練をしてきたのは何の為だい? こういう時の為じゃなかったの? ハリーがシリウスを助けたいと思う気持ちは分かるよ。でも、僕達だってそんな君を助けたいんだ。君一人を危険な場所へなんか置いておけない」

 

ネビルの言葉にロンやジニー、ハーマイオニー、セドリックなどが同意を示す。そんな彼らを見て、ハリーは何か言いたそうに口をパクパクさせていたが、諦めたのか溜息を一つ吐く。

 

「わかったよ。どのみち、ここまで来たんじゃ後戻りなんて出来ない―――みんな、シリウスを助ける為に力を貸してくれ」

 

ハリーの言葉に全員が応える。

先へと進む前に、ハリーとハーマイオニーの二人と情報の共有をしておく。扉にある焼印はやはりハーマイオニーがつけたものであるらしく、このうちの一つにハリーが夢で見た部屋が続いているらしい。扉の外見が同じである以上、虱潰しに探していくしか方法がなさそうなので、ハリー達と同様の方法で探索を続けることとなった。

 

回転が収まるごとに次々と扉を開けていった。脳が浮かんでいる水槽の置かれた部屋、盆地のように窪んだ中心の台座に石のアーチが置かれた部屋、封鎖され開けることのできない扉、初めて見るような希少な魔法具が置かれた部屋、用途がわからない名状しがたいナニカが置かれた部屋など。

繰り返される作業に全員の顔に焦りが出てきた頃、次の扉を開けたところでハリーが叫んだ。

 

「ここだ! この部屋だ!」

 

その部屋は、これまでに入った部屋の中では最も煌びやかな部屋だった。ダイヤのように輝くシャンデリアが無数に配置され、並べられた棚に置かれた懐中時計や砂時計、置時計、壁掛け時計、腕時計など様々な時計が、その光を受けて宝石のように輝いている。

 

「へぇ、これは中々の光景ね」

 

その幻想的な空間に、思わず見入ってしまう。棚に置かれている時計はいったい何だと見渡し、すぐにこれが何かを理解する。

逆転時計。現在から過去へと戻ることが可能な魔法具。私みたいな例を除いて、全ての逆転時計は魔法省が管理していると聞いていたけれど、ここに保管されていたのか。

 

「こっちだ! 立ち止まらないで!」

 

部屋の奥へと進んでいくハリーが、足を止める私達へと声を荒げて急かす。さっきは自分が足を止めていたくせにとジニーが文句を言っているが、聞き流して先へと進む。

部屋の奥へと進み、そこにあった扉を通ると、ようやく目的地へと到着したようだ。これまで見たどの部屋よりも高い天井、その天井に届きそうなほどの高さを持つ棚が等間隔かつ無数に並べられている。それぞれの棚には、白く濁った掌に乗る程度の水晶玉が置かれている。その数は数えるのすら億劫になるほど膨大で、千、いや、万を超える数があるだろう。水晶玉を近くで観察すると、どうやら透明な水晶の中で白い煙が渦巻いているようだ。各水晶の下にはラベルが貼られており、人の名前と思わしきものが書かれている。

 

「もっと奥のはずだ。たしか、九十七列目だったはず」

 

流石に目的地が近いためか、これまで急いでいたハリーも慎重に移動をしている。全員が杖を構え、棚の列の間を一つ一つ警戒しながら歩を進める。その中で最後尾を歩いている私だが、明らかにおかしなこの状況に眉を顰めている。

 

静かすぎるのだ。シリウスが拷問されているにしては叫び声もしないし、いるであろう死喰い人かヴォルデモートの声もしない。それどころか人の気配すらもしない。すでにシリウスが殺されてヴォルデモート達が撤収している可能性もあるが、ハリーはシリウスが殺された場合それがわかるようなので、まだ殺されてはいないとしておく。

 

しかし、そうすると最悪の予想が的中してしまう可能性が非常に高い―――いや、確定した。四十列目の棚を通り過ぎる瞬間、視界の端に黒い何かが掠めたのだ。声に出ないように溜息を吐く。

 

嵌められた。

まぁ、予想していたことではあるのだが、できれば外れて欲しかった。

ハリー達に、今の状況に気づいた様子は見られない。私にしても殆ど偶然のようなものであるから、仕方がないのかもしれないが。

 

既に六十列目の棚を超えているので、目的の九十七列目はもうすぐだろう。そこについてしまったら、恐らく死喰い人が現れるはずだ。であれば、それまでに何かしらの先手を打ち、逃走できるだけのものを用意しておかなければならない。とはいえ、打てる手など限られている。

 

服の中に隠れている蓬莱に“あるカード”を持たして、目的地の九十七列目まで先行させる。蓬莱同様に上海も姿を消した上で、私の背後を見張るように動かす。できればもう少し対策を用意しておきたいが、時間がないし、あまりに大規模な混乱を生じさせるものだと、ハリー達にも影響がいってしまう。

 

 

いよいよ九十七列目へと到着する。だが、そこにはシリウスの姿は影も形もなく、そのことに酷く焦った様子のハリーが隣の列、その隣の列と調べるも、探していた姿はなかった。

 

「ハリー、これ。君の名前が書いてある」

 

ハリーが顔を俯かせて黙っているのを、気にした様子も見せずにロンが声をかける。ロンの声にハリーが近づき、ロンが指差したものを見る。私も警戒は怠らずに横目で覗き込んだ。

 

“S.P.TからA.P.W.B.Dへ 闇の帝王そして(?) ハリー・ポッター”

 

ラベルにはそう書かれていた。S.P.TとA.P.W.B.Dというのは分からないが、闇の帝王、そしてハリーの名前があるように、両者にとって何かしらの関わりがあるものであることは予想がつく。

ハリーがその水晶を手に取ろうとして、ハーマイオニーやネビルが静止の声を出す。だがハリーは二人の静止の声を振り切り水晶を手に取った。

 

その瞬間、通路の端に黒い影が幾つも現れた。反射的に杖を影へと向け、同時に影の一人から赤い閃光が放たれた。それが何の呪文なのか不明であったので、反対呪文ではなく“盾の呪文”を展開。盾に当たった閃光は床へと跳ね返り、床を砕いて消えた。

 

「止せ。まだ攻撃はするな」

 

呪文を放った影に静止をかけた影が一歩進み出て、自らを覆っていたマントと仮面を外した。

 

「ルシウス・マルフォイ!」

 

その姿を見て、ハリーが声を荒げる。ハリーの声に反応してかどうかは知らないが、残りの影達もローブと仮面を剥ぎ取り、その姿を晒した。

 

「へぇ、闇の帝王から聞いていたけど、思ったよりやるじゃないか」

 

先ほど呪文を放ったルシウスの隣に立つ魔女が、私を見てそう口にする。こいつは確か、ベラトリックス・レストレンジだったか。

 

「ふぅん。その言い方だと、さっきのは挨拶代りといった感じかしら?」

 

「随分と強気だねぇ。あぁ、その通りさ。闇の帝王はあんたのことを随分と高く買っているみたいだったからねぇ。どの程度のものか見てみたかったのさ」

 

ベラトリックスは嫌らしい笑みで顔を歪めながらそう語る。それを見ながら同時に思う―――こいつ、面倒くさい奴だ、と。絶対に粘着質な性格をしている。

 

「ベラトリックス、遊びはそこまでにしておけ。さて、ポッター。大人しく手に持つ予言を渡したまえ。さもなければどうなるか、その程度は教えなくとも理解できるであろう?」

 

ルシウスはベラトリックスを諌めた後、ハリーに手を差し出しながら単調に話し出す。とりあえず、ルシウスの言葉からここにある水晶が予言であることは分かった。正直、私にとって予言なんてものはどうでもよかったが、死喰い人にとっては重要なものであるらしい。

 

「シリウスはどこにいるんだ!? お前たちが捕らえたということは分かっている! 言え! シリウスはどこだ!?」

 

ハリーがシリウスの居場所を聞き出そうとするが、死喰い人はそんなハリーを見て静かに、あるいは大声で笑い返す。

 

「ポッター。いい加減、夢と現実の違いがわかってもよい年頃だぞ? 自分の見た夢が全部正しいと勘違いして、真に受けるのは子供にだけ許される特権だ―――あぁ、お前はまだ子供だったな」

 

「よかったねぇ! 子供だから、存分に英雄ごっこが出来るじゃないか!」

 

ルシウスとベラトリックスの馬鹿にするような言葉に、ハリーが激昂して呪文を放とうとするが、今はまだその時ではないため、腕を掴んで杖を下ろさせる。

 

「アリス! 邪魔するな! あいつ等からシリウスの居場所を聞き出してやる!」

 

「少しは落ち着きなさい。今攻撃したところで返り討ちに合うのが目に見えているわ。それよりも、折角こちらにアドバンテージがあるのだから、それを有効に使うべきよ」

 

そう言ってハリーから予言を取り、杖を予言へと突きつける。それを見た死喰い人が、僅かに息を飲んだのがわかった。

 

「なるほど。あなた達にとって、この予言は壊されたら困るもので間違いはなさそうね」

 

「チッ! 小娘が! 調子に乗ってるんじゃないよ!」

 

ベラトリックスが杖を向けてくるが、その射線上に予言を動かすと動きを止めた。口では何だかんだ言っていても、予言を壊さずに奪うことが第一らしい。

予言を盾に出来ている間に、姿を消している上海を伝って全員に作戦を伝える。作戦と言っても、隙を作った瞬間に逃げるという単純なものであるが。だが、予め言っておかないと、隙を作るためにやることで全員の動きも止めてしまうかもしれないのだ。

 

「マーガトロイド。君はもう少し賢いと思っていたんだがね。確かに、予言を盾にされれば我々とて迂闊には手を出せない。だが、周りを見てみたまえ。その予言を守り、盾にしながら、我ら全員と戦えると思っているのか?」

 

わかりきったことを言うものだ。そんなの無理に決まっているだろうに。

軽く見積もっても、死喰い人の数はこちらの倍。手っ取り早い方法で、誰かが捕まり人質にでもなってしまえば、その時点でアウトだ。

 

「まぁ、無理でしょうね。流石に、多勢に無勢が過ぎるわ」

 

「理解しているのならば、予言を渡したまえ。素直に渡せば、私から闇の帝王に進言して、お仲間の命だけは助けてもらえるよう取り計らおう。無論、ポッターは別だがね」

 

「命だけは、ね。それだと、“服従の呪文”や“磔の呪文”は使われない、という保障にはならないわね」

 

「―――相変わらず、よく頭が回ることだ。だが、君たちに選択肢があると思っているのかね?」

 

そろそろ限界か。

ルシウスは気が付いているのかどうか知らないが、奴の後ろでベラトリックスが頻りに杖を揺すっているし、表情も苛々が募っているかのように強張っている。雰囲気からして、反対側にいる死喰い人も似たような感じだろう。

 

「―――知らないようだから、教えておいてあげるわ。選択肢なんてのはね、与えられるものじゃなくて、自分で作るものよ」

 

パチン。

言い終えると同時に、指を鳴らす。それに反応して、ベラトリックスが呪文を放ってくるが、もう遅い。ベラトリックスの呪文は私が、反対側の死喰い人が放つ呪文はセドリックが“盾の呪文”で防ぎ、衝撃に備える。

 

「ハッ! 馬鹿な小娘だよ! そんなに死にたいなら―――なんッ!?」

 

ベラトリックスが急に言葉を切り、驚愕の表情を浮かべる。ルシウスも他の死喰い人も同様だ。全員が自身の上、天井を見て口を開いている。

 

「に、逃げろッ!?」

 

ルシウスが叫び、跳ねるように通路の向こう側へと駆け出す。ベラトリックス達もそれに続き、次の瞬間には、巨大な人形が棚と予言の水晶を破壊しながら降ってきた。

ズズン、という重い質量が落下した衝撃が響く。人形は着地体制から立ち上がると周囲の棚や予言を死喰い人のいる方向へ蹴り飛ばし、投げつけながら入口への道を開いていく。

 

「走りなさい!」

 

事前に言っていたにも関わらず、目の前の人形を前に固まっているハリー達へと声をかける。それに反応して、全員が入口へ向かって走り出した。

 

「あれはいったい何なんだよぉ!?」

 

ロンの叫びを無視して、呪文を後方に適当に放ちながら走る。一瞬だけ、暴れ続ける人形を見てみるが、試作段階にしては十分に役割を果たせそうだ。

 

“試作ゴリアテ人形”。それが、今暴れている人形の名前だ。外見は上海と同じだが、その大きさは全長八メートル。並の巨人を軽く上回る大きさと質量を持った特性人形である。簡易だが“盾の呪文”を施してあるので、簡単にはやられないだろう。

―――余談だが、名前を決める際に“ゴリアテ人形”ともう一つ、“G・上海”という案があったのだが、上海から駄目出しをくらってしまった経緯がある人形だ。

 

死喰い人の何人かは、ゴリアテ人形を潜り抜けて私達を追いかけているようで、後ろから呪文が放たれてくる。だが、それらは倒れる棚や落下する水晶に当たるばかりで、私達までは届いていない。

部屋の端にまで辿り着き、飛び込むように扉を抜けていく。最後尾の私が入ると同時にハーマイオニーが扉に呪文を掛けて封鎖した。

 

「よし、これで暫く時間を稼げるはずだ。みんな、急いで―――みんなはどこだ?」

 

ハリーが疑問の声をあげて、つられるように周囲を見渡す。ここにいるのは、私とハリー、ハーマイオニーの三人のみで、それ以外の姿は見えなかった。

 

「ど、どうしよう!? きっと、道を間違えたんだわ!」

 

ハーマイオニーが顔を青ざめ、震えるように声を荒げるのを聞きながら、内心でこの状況をどう打破するかに考えを巡らす。他のみんながどの道を通って、どの部屋へと行ったのかは不明。出口近くに出てきてくれればいいが、奥へと進んでいったとなると厄介極まりない。

 

ズドォン!

扉の向こうから、先ほどよりも大きな音が聞こえ、扉がギシギシと軋んだ。

 

「ッ! こ、今度は何なの!?」

 

「ゴリアテ―――さっきの人形が爆発したんでしょうね。行動不能になると自爆するようにしてあるから」

 

これで死喰い人がやられてくれればいいが、現実はそんなに甘くはないか。少しの時間をおいて、ルシウスを中心とした死喰い人の声が扉の向こうから聞こえてくる。どうやら、死喰い人はバラバラに逃げてしまった私達を追うために、手分けして当たるようだ。

 

「―――相手は別れて行動するようね」

 

「この部屋に入ってくる奴は、ここで倒そう。奴らが別れるというのなら、それを利用するんだ」

 

「同意見ね。こちらは、先手を打てる立場にいるわけだしね」

 

見敵必殺(サーチアンドデストロイ)

いや、デストロイはしないが。仮にも死喰い人、殺す気でやったところで死にはしないだろう。

 

「どけ! アロホモーラ! -開け!」

 

開錠呪文により扉が開いた途端、死喰い人が滑り込んできた。数は二人、新聞で見たことはあるが名前を思い出すのも面倒なので、ハリーと挟み込むようにして呪文を放つ。

 

「「ステューピファイ! -麻痺せよ!」」

 

赤い閃光は寸分違わずに、二人の死喰い人の胸に突き刺さる。死喰い人は身体の力を失い、その場に倒れこんだ。

 

「インカーセラス -縛れ」

 

死喰い人を部屋の隅に放り、縄で幾重にも縛り上げる。

まずは二人。だが、部屋に入った瞬間に死喰い人を気絶させてしまったせいか、予言の部屋に残っていた死喰い人に、異常を知らせてしまったようだ。怒号をあげながら向かってきている。

 

「シブ・オブディワン! -封鎖せよ!」

 

扉に向けて呪文を唱える。開いていた扉は勢いよく閉まり、周囲の壁に同化するように姿を変える。本来は、道を塞いで迷路のように相手を迷わせることに使う呪文だが、周囲の壁と同じように変えられるという点で、普通の扉よりも頑丈にバリゲートを構築することも可能なのだ。

 

予言をハリーへと返し、壁を破られないうちに先へと進もうとする。だが、黒い回転するホールから四人の死喰い人がこちらへと向かってきているのを見た瞬間、進むのは諦めて右の扉へと進路を変える。

 

「アリス!」

 

ハーマイオニーの声に振り向くと、ハリーとハーマイオニーが私とは反対側の扉へと入っていくのが見えた。しまったと、内心で舌打ちをする。だが、今更引き返すわけにもいかない。

 

「後で合流しましょう! 無事でいるのよ!」

 

ハーマイオニーがこちらへと向かおうとしているのが見えたので、杖を振るい、向こう側の扉を無理やりに閉める。同時に懐からホルダーを取り出し、一枚のカードを手に取る。次の瞬間には、私の周囲に露西亜に似た人形が六体現れた。

 

「それッ!」

 

そのうち三体の人形を掴み、扉の向こうへと放り込む。同時に死喰い人も部屋に入ったのが、床を荒く踏み鳴らす音が聞こえる。扉を閉め、杖を振るうと、扉の向こうの部屋で爆発する音が響いた。爆発の規模こそはゴリアテに及ばないが、至近距離で食らったのなら十分にダメージは与えられたはずだ。

 

扉を封鎖し、この部屋から出るために奥の扉へと向かう。部屋の中を見渡すと、ここに来るまでに入った、名状しがたいナニカが置かれている部屋だとわかった。赤黒く、青黒く、紫で、緑の色が渦巻くように動いているナニカは、まるで蛸のような軟体生物を連想させる。害はないようなので、極力視界に入れないようにしながら、奥にある扉へと向かう。視界に入れれば、何かが削り取られる予感がするのだ。おぞましさで言えば、吸魂鬼すら生温く感じるほどである。

 

「扉は一つだけで、ほかの部屋に繋がってはいないか」

 

扉まで近づき、耳を扉に押し当てて向こう側の様子を伺う。物音一つ聞こえないが、この部屋が外と音を遮断しているという可能性もあるので、最悪死喰い人が待ち構えているという覚悟で扉を勢いよく開いた。人形を盾にして円形のホールへと躍り出る。左の視界の隅に影が映り杖を構えるも、そこにいたのはハリーとハーマイオニー、ロン、ジニー、ルーナの五人だった。

 

「アリス! 無事だったのね!」

 

「あなた達もね―――ロンはどうしたの?」

 

ロンの様子がおかしいので、どうしたのか聞いてみるも、何かの呪文に当たったぐらいしかわからないようだ。ロンの様子を確かめるために近づくが、今いる場所から真反対の扉が開き、ベラトリックスを含めた死喰い人がやってきたことで中断せざるをえなくなった。

 

「いたぞ! 中央ホールだ!」

 

ベラトリックスが叫び、杖から赤い閃光を立て続けに放ってくる。“盾の呪文”で防ぎながら、ハリーと共にロン達が開いている部屋へと入る時間を稼ぐ。全員が入ったのを確認すると、ハリーの言葉に甘えて先に部屋へと入ると同時に、残った三体の人形に“目くらまし”を掛けた。

ハリーが部屋に入り、扉を閉める。そして、“封鎖呪文”で扉を閉じてから一拍置いて、部屋の外に置いてきた人形を爆発させる。

 

ズッ。

扉を完全に塞いでいるためか、僅かな爆発音のみが聞こえる。負傷でもしていてくれればいいが、そう甘くもないだろう。

 

「アリス―――君って、爆弾が好きなの?」

 

「別にそういう訳じゃないけどね。単に攻撃手段として便利なだけよ」

 

ハリーの言葉に簡潔に答えて、部屋の様子を伺う。どうやら、脳の入った水槽の置かれている部屋へと入ったようだ。

 

ダンッ!

唐突に右側の壁にある扉が勢いよく開かれ、全員が杖を向ける。だが、入ってきたのがセドリックとネビルだとわかると杖を下ろそうとする。

 

「すぐ後ろに奴らが追ってきている! 扉を塞ぐんだ!」

 

すぐに行動に移ったのは私とハリー、ハーマイオニーの三人で、一拍おいてルーナとネビルが扉を塞ごうと動く。だが、時すでに遅く、正面と右の扉から死喰い人が雪崩れ込んできた。傷を負っているのが多いが、数は減っていないようだ。

 

「ステューピファイ! -麻痺せよ!」

 

「ディフィンド! -裂けよ!」

 

「エクスパルソ! -爆破!」

 

「プロテゴ・マキシマ! -最大の防御!」

 

「レダクト! 粉々!」

 

両者の間で呪文が飛び交う。だが、やはり手数で負けている上に、無言呪文まで使われているので、打ち漏らしが多くなっている。今のところ直撃は避けているが、それもいつまでも続きはしないだろう。すでにルーナとネビルが気絶させられ、セドリックも腕と足を負傷している。

 

「こっちだ!」

 

この窮地をどう切り抜けるかを思案していると、ハリーが予言を掲げながら唯一開いていた左側の扉に入っていった。死喰い人はハリーを追って次々と扉を通っていく。行かせまいと呪文を放つが、動けないロンやジニーを狙ってきたためそれを防ぐしかなく、その隙に死喰い人全員が扉の向こうへと消えて行ってしまった。しかも、ご丁寧に扉を封鎖しただけでなく、水槽に入った脳をこちらに向けて倒してきたのだ。異臭を放つ水槽の水はともかくとして、近くに転がってきた脳が触手のようなものを伸ばしてくるのが厄介だ。

“切断呪文”で切り裂こうにも、妙に弾性があるせいで中々切れないし、切ったとしてもすぐに新しいのが生えてくるためキリがない。燃やすにしても、火力不足なのか燃えるような気配はない。

 

「チッ、いい加減にしなさい」

 

数を増した触手に嫌気が差し、一気に最大火力で焼却することに決める。魔法省内部で使うのはどうかと思って使ってこなかったが、この際仕方がない。

 

「エト・フラーマ・ラーディス! -厄災の獄炎よ!」

 

呪文を唱えると共に、杖から灼熱というのも生温い獄炎が噴き出る。炎は生きているかのように脳へと絡みつき、脳はこれまでの耐久力が嘘かのように炭と化していく。

完全に燃え尽き、再生する気配がないことを確認した後、いまだ燃え盛る炎へ杖を振るって消し去る。

 

「はぁ、はぁ―――アリス、今のって、もしかして“悪霊の火”なのか?」

 

足に絡まった触手の燃え残りを引き剥がしながらセドリックが息絶え絶えに聞いてくる。

 

「えぇ、そうよ。闇の魔術がどうこうっていう話なら後で聞くから、後回しにしてちょうだい。それよりも、怪我はどう?」

 

「はぁ、くぅ―――すまない。足の骨が折れているみたいだ。腕も、動かなくはないけど、感覚がない」

 

「そう―――仕方ないわね。それじゃ、ロン達のことを任せていいかしら? 私はハリーを追ってくるわ」

 

そう言って、封鎖された扉へと向かう。

 

「すまない。ハリーを頼む」

 

セドリックの言葉に返事はせずに、杖を扉へと向ける。

 

「エクスパルソ! -爆破!」

 

爆発と共に、扉が向こう側へと吹き飛んでいく。煙を飛ばしながら、素早く視線を動かして部屋の中を確認する。扉の先は石のアーチがある部屋で、ハリーが中央の台座付近に、死喰い人が部屋全体に広がるように陣取っている。さらに、いつやってきたのか、シリウス、ルーピン、キングズリー、ムーディ、トンクスがハリーを守るようにして円陣を組んでいた。

 

「アリス! 無事だったか!」

 

ルーピンの言葉に軽く手を上げる程度で答える。そこで、右側に陣取っているルシウスが口を開いた。

 

「ほぅ、もうやってきたか。あの脳はそう簡単には対処できないはずなのだが、流石は闇の帝王が目をつけるだけはあるということか」

 

ルシウスの言葉を無視して状況把握に努める。騎士団メンバーがやられた様子がないところを見るに、死喰い人よりも実力で上回っているのだろうが、死喰い人の方に目立った外傷がないみたいなので、数の差で互角、いや―――トンクスやルーピン、キングズリーが負傷しているので、僅かに負けているといったことろか。

 

「アリス! 君は他のみんなを連れて逃げるんだ! ここは我々が何とかする!」

 

「戦局が読めないほど馬鹿ではないですよ。劣勢か優勢か、そのぐらいは見ればわかります」

 

「へぇ、賢い賢いお嬢ちゃん。それでぇ? それがわかったお前さんは、どうしようっていうんだい? こいつらに交じって、一緒に戦う気かぁ~い?」

 

キャハハッ、とベラトリックスが相変わらずな口調で話しかけてくるが、それに対して否定するでも肯定するでもなく、思ったことを口にする。

 

「貴女―――いい歳して、そんな話し方していて恥ずかしくないのかしら?」

 

一瞬場の空気が凍り付いたような気がしたが気のせいではないだろう。現にベラトリックスの顔が固まっているし。そんなベラトリックスを見て、シリウスが笑い声をあげる。

 

「はははッ! その通りだ、我が憎き従姉よ。お前もいい加減、自分の歳を自覚するべきだな!」

 

「こッ―――この小娘がぁ!」

 

「顔を赤くしているということは、多少は自覚があったのかしら? ほら、そんな貴女にプレゼントをあげるわ」

 

言うと同時に一枚のカードを放り投げる。全員がそれを目で追っていき、ちょうど部屋の中央、アーチの真上にきたところで杖を振るう。

 

「“ドールズウォー”」

 

私の声と共にカードが光を放ち、次の瞬間には無数の人形が光から現れる。

 

「なんだ!?」

 

死喰い人の一人がそんなことを叫んでいたが、その間にも人形は現れ続け、最終的には三十体を超える四十センチ程の人形が出揃い、全身をガード出来る程の盾が付いたランスを手に、軍隊宛らに整列している。

 

「さて、これで単純な数の差では逆転したわね。あぁ、一つ忠告しておくけど、人形達の持つランスには麻痺毒が仕込んであるから。気を付けることをお勧めするわ」

 

言い終えると共に杖を大きくかつ複雑な動きで振るう。それに伴い、待機していた人形が一斉に動き出し、死喰い人へと襲い掛かった。死喰い人は迫る人形に呪文を放ったり、避けたりして対応していたが、その隙を狙う騎士団によって劣勢に立たされている。

その光景を見ながら、人形を操る杖を振るい続ける。開けた場所での大雑把な動きならば自律操作でいいのだが、ここのように狭い部屋の中だと、数よりも正確な動きの方が優先されるので、私自ら操作するほうが効率よく動かせる。

当然、人形を操作しているために私自身が無防備になってしまう欠点はある。現に死喰い人の一人が人形を防ぎ、撃ち落としながらこちらへと向かってきている。だが、杖を私へと向けて呪文を口にしようとした瞬間に、その場へと崩れ落ちた。何が起きたのか、本人はわかっていないだろう。

 

「ファインプレーよ、蓬莱」

 

無防備だからとて、無警戒という訳ではない。私の周囲では、姿を消している蓬莱と上海が常に警戒をしているのだ。この死喰い人は、蓬莱の攻撃によって倒れ伏しているということ。本来ならば、蓬莱の本当の武器である“バジリスクの毒仕込みの鎌”で攻撃しているところだが、騎士団に所属している以上は無暗に殺すわけにもいかず、こうして麻痺毒で済ませている。

 

殺す気で襲ってきているのだから、こちらが殺したところで因果応報だと思うのだが―――私だけの価値観なんだろうか。

 

 

戦局は圧倒的に騎士団側の優勢となっている。死喰い人も麻痺毒でやられたり、呪文でやられたりと数を着実に減らしている。だが、ベラトリックスを始めとした一部の死喰い人は流石というべきか。死角から攻撃している人形を正確に呪文で撃ち落とし、かつ騎士団の攻撃を捌いた上で、反撃までしている。質では騎士団が上回っていると思っていたが、死喰い人同士の実力に差がありすぎていただけで、そうでもないらしい。

 

人形が残り五体となったことで余裕が出てきたのか、死喰い人は部屋の出口へと後退を始めている。騎士団も逃がさないとばかりに攻撃をしているが、最初の時点で疲労が溜まっているのか、杖捌きにキレがなくなってきている。そして、ついに死喰い人が出口へと辿り着いて扉を開けたとき、扉の奥から一筋の緑の閃光が迸り、戦線に加わっていたハリーへと向かってきた。それを見て、最後の一体となった人形をハリーの前へと動かし、閃光の盾にする。閃光が当たった人形は粉々に破壊され、その残骸がバラバラと床に落下する。

 

「よくもハリーを!」

 

ハリーが狙われたことで激昂したのか、シリウスが前に出て呪文を放つも、ベラトリックスと姿を見せない相手の同時攻撃に杖を弾かれ、緑の閃光が脇腹を掠めた。

シリウスは一瞬だけ身体を痙攣させたあと、その場へ崩れ落ちていく。ルーピンがシリウスに駆け寄っているが、私はそれほど心配していない。たとえあれが“死の呪文”でも、身体を掠めた程度ならば死には至っていないはずだ。悪くても骨折と内臓損傷で済むだろう。重症には違いないが、十分に治療可能な範囲だ。

 

だが、ハリーはシリウスが死んでしまったと思っているのか、先ほどのシリウス以上に激昂して死喰い人の後を追って行ってしまった。動かせる人形が残っていれば麻痺毒を使ってでも止めたが、最後の人形は先ほど破壊されてしまっている。

 

このままでは、ハリーが殺されてしまうことなど容易に想像がつくので追うことにするが、その前に準備と片付けだけはしていく。ホルダーから、今までのカードとは異なる様式のカードを取り出し呪文を唱える。軽い音を立てて現れたものは一本の瓶。マグルのコンビニやスーパーで売っている栄養ドリンクのようなものだ。コルク栓を開けて、中の液体を一気に飲み込む。これは一種のドーピング剤で、栄養剤の効果を数倍かつ素早く吸収されるように配合した特別性である。といっても、思考速度が上昇したり、魔力が回復したり、傷が完治したりといった、ファンタジー小説にあるようなものとは違い、単純に栄養補給を目的としているだけである。たかが栄養補給と侮るなかれ。これをするのとしないのとでは、長期戦における持久力に雲泥の差が出るのだ。

空になった瓶を杖の一振りで消し、部屋中に散らかっている人形や武器の残骸も杖の一振りで跡形もなく消し去る。元々、今回の“ドールズウォー”で使用していた人形は、全て“双子の呪い”で量産した人形であるので、“終息呪文”を使えば簡単に片付けられるのだ。それはつまり、先ほどの戦いで“終息呪文”を使われていれば人形は消えていたわけだが。

 

一息ついたところで、ハリーを追うために必要なカードを取り出す。先ほどルーピンがハリーを追いかけていったが、途中に回転する部屋がある以上、足止めをくらうことは確実だろう。それでは間に合わないだろうと思い、私は別手段で追うことにする。

取り出した一枚のカード。これは“姿くらまし”の呪文を応用して作ったもので、対となる“姿現し”を応用して作ったカードの場所へと移動することが可能なものだ。それだけなら普通に呪文を使ってもいいだろうが、このカードの利点はホグワーツや魔法省内部など、“姿現し”が出来ない場所でも移動が出来るという点だ。対となっているカード以外や、長距離の場所には移動出来ないが、それを補って余りある有用性はあると自負している。

 

 

 

 

移動を終えた場所は、一階にあるエレベーターホール手前の柱の影。カードを回収し、柱から顔だけを出すと、ちょうどハリーとベラトリックスが向かい合っているのが見えた。他の死喰い人の姿が見えないので、先に逃げていったのだろう。いつも間にか明かりの殆どが消えており、僅かな明かりと月の光のみが二人を照らしている。

 

「よくも―――よくもシリウスを!」

 

「おやおや、私の憎たらしい従弟の敵討ちかい? それも一人で追いかけてくるなんて、泣かせるじゃないか」

 

死んではいないんだけどね。

内心でそう呟きながら状況を観察していると、ベラトリックスの言葉が逆鱗に触れたのか、ハリーがベラトリックスに“磔の呪文”を使った。ベラトリックスは悲鳴を上げるが、威力が甘かったのか、すぐに態勢を整える。

 

「許されざる呪文を使ったことがないみたいだねぇ、小僧。まだまだ甘いよ。本気になる必要があるのさ。相手を苦しませようと本気で思うのがコツさ。折角だ、私が手本を見せてやるよ!」

 

「クルーシオ! -苦しめ」

 

先ほどとは比較にならない悲鳴が響き渡る。高く広い空間であるためか、その声は遠くまで響き渡り、反響して幾重にも重なりあっている。

 

「本気になる、ね。こういうことかしら?」

 

悲鳴を上げているのはハリーではなく、ハリーに呪文を放とうとしていたベラトリックスだ。私は杖をベラトリックスに向けながら近づいていく。ハリーの傍まで来たところで、呪文を止め様子を見る。

 

「ハッ! ハッ! ハッ!」

 

ベラトリックスは荒く呼吸を繰り返しながら私を睨みつけてくる。上体を起こし、杖を向けてくるが、その前に再度“磔の呪文”を唱える。

 

「アアアァァァアアァァアァァァアッ!」

 

再び響き渡る悲鳴。ベラトリックスを視界の隅に捕らえたまま、ハリーへと視線を向ける。

 

「ハリー、予言は無事なの?」

 

「えっ、あ、いや、予言は、その―――」

 

歯切れの悪いハリーに嫌な予感がしつつ、外れているように願いながらも聞いてみる。

 

「まさかとは思うけど―――壊してしまった、なんてことはないわよね?」

 

「―――」

 

沈黙がなによりの肯定だった。思わず溜め息を漏らすが、突如としてハリーが額を押さえながら苦痛の声を漏らし、同時にどこからか閃光が真っ直ぐ飛来してくる。

 

「ふっ」

 

距離があったため余裕をもって防ぐことができたが、その隙にベラトリックスが立ち上がり、駆け出していく。逃がさないために杖を向けようとするも、今度は先ほどとは違う方向から閃光が飛来してきたので、そちらの対応に気を取られてしまう。“盾の呪文”で防いだ呪文は弾かれ、近くにあった噴水の一部を破壊した。

 

「そうか、そうなのだな、ハリー・ポッター。お前は予言を壊してしまったということか」

 

冷たく撫でるような独特の声が静かに響く。声のする方向へ顔を向けると、闇の中から一人の男がゆっくりとした歩調で姿を現した。骸骨よりも白いのっぺりした顔、細い切れ込みのような鼻、蛇のような細く赤い目―――ヴォルデモートだ。

 

「嘘は言っていないようだな。お前の心が俺様に全てを語ってくれている―――何か月もの準備、苦労―――それら全てが水の泡となった訳だ―――俺様に忠実な僕であるはずの死喰い人達は、ハリー・ポッターが俺様の思惑を見事挫くのを防げなかったという訳だ」

 

そう言って、ヴォルデモートは自らの足元で膝をついているベラトリックスを、目を細めて見下ろす。その視線にベラトリックスはビクリと身体を振るわせて、恐る恐るといったようにヴォルデモートを見上げる。

 

「も、申し訳、ありません、ご主人様。私は、知らなかったのです。騎士団と戦っていたので、気が付かなかったのです」

 

「黙れ、ベラ。貴様らの処罰は後でつけてやる。俺様は、お前の女々しい言い訳を聞くために魔法省に来たのではない」

 

ヴォルデモートの言葉にベラトリックスは黙り込み、ヴォルデモートの歩みの邪魔にならないよう道を開ける。

 

「さて、俺様がここに来た目的を果たす前に―――ハリーよ、お前の始末をつけてやろう。お前は長きにわたって俺様を苛立たせてきた。もはや、お前に言うことは何もない―――アバダ・ケダブラ! ―息絶えよ!」

 

ヴォルデモートの杖からハリーへ向かって緑の閃光が走る。“死の呪文”。命中さえしてしまえば、相手を確実に死に至らしめる呪い。反対呪文は存在しない最強の呪文。

だが、防ぐ手段が全くないという訳ではない。どの呪文にもいえることだが、当たらなければ如何に強力な呪文とて意味はないのだ。近くに転がっている噴水の破片を使って“死の呪文”を防ごうとするが、その前に噴水に残った像の一体が動き出し、ハリーの前に盾になるよう躍り出た。

 

「ほぅ―――ダンブルドアか」

 

ヴォルデモートがゆっくりと振り返る。その視線の先では、ダンブルドアが杖を構えながらゆっくりと歩いている。

ヴォルデモートが杖を振るい“死の呪文”をダンブルドアに放つ。だが、ダンブルドアはマントを翻したかと思うと姿を消し、ハリーを挟んで私の反対側に姿を現した。

 

「今夜、ここに現れたのは愚かじゃったな、トム。じきに闇祓い達がやってこよう」

 

「その前に俺様はいなくなる。貴様を殺してな。だがその前に、俺様がここに来た本来の目的を果たそうではないか」

 

ヴォルデモートはそう言うと、ダンブルドアから視線を外し、私へと向ける。まさかとは思ったが、やっぱりか。

 

「アリスよ。一年前の返事を聞こうではないか。俺様の下にくるか否か」

 

「―――答えは変わらないわ」

 

「ふむ―――まぁ、お前ならばそう言うだろうとは思っていたがな。やはり、俺様の評価は間違ってはいなかったようだ。お前は一度味方をすれば、決して裏切りはしない」

 

そういえば、去年にそんなことを言われた気もするな。

 

「お主にしては寛大な対応じゃな、トム。昔のお主ならば、有無を言わさずに“服従の呪文”で操るか、殺すかのどちらかであろうに」

 

「こやつにはそれだけの価値があるということだ。貴様とて、それをわかっているからこそ、自分の手元に置いておるのだろう?」

 

「それは違うぞ、トムよ。わしはアリスをお主の手から守るために、仲間として迎えておるのじゃ」

 

「ふん、白々しい。貴様は、自分がそこまで清廉潔白な人間だと思っているのか?」

 

「そうは思っておらんよ。じゃが、わしはアリスを一人の仲間として、愛すべき生徒の一人として守っているつもりじゃ」

 

ダンブルドアとヴォルデモートが舌戦を繰り広げている中、それに耳を傾けながら、ヴォルデモートの背後で徐々に後退っているベラトリックスを見やる。どうやら、隙をみて逃げようとしているようだが、ヴォルデモートの忠臣としてそれでいいのかと疑問に思うが、このまま逃げるのを黙って見ているのは愚策だろう。

ヴォルデモートから見えないよう、ローブの下で人形を一体取り出す。姿を消し、ローブの裾から出して、大きく迂回させながらベラトリックスへと向かわせる。

 

「抜け目がないな、アリスよ」

 

だが、ヴォルデモートが放つ無言呪文で人形は破壊されてしまった。そう簡単にはいかないと思っていたが、こうも簡単に壊されるとは。

 

「俺様がダンブルドアに気を取られている間にベラを狙うとはな。実に合理的な行動だ。まったく、お前のような合理さが死喰い人達にもあれば、俺様もこれほどの苦労はしないであろうものを」

 

自分の配下が闇討ちされようとしたにも関わらず、ヴォルデモートは上機嫌だ。いくら私が欲しいと言っていても、流石に寛大過ぎはしないだろうか。

 

「神秘部での戦いでもそうだ。俺様は見ていたぞ。お前は誰よりも周囲を警戒していたな。そして、死喰い人がいることに気が付いたお前は、それに備えるために行動に移した。あのカード、恐らくは“呼び寄せ呪文”の効果が秘められているのだろう。それを使い様々な人形を取り出しての立ち回りは見事なものだ。あの容赦のなさも実に良い。極めつけは“悪霊の火”と、先ほど使った“磔の呪文”だな」

 

ヴォルデモートがそう言ったところで、ダンブルドアの視線が私へ注がれるのが何となくわかった。まぁ、闇の魔術の禁術に許されざる呪文を使ったなんて言われたら無理もないのかもしれないが。

というより、ヴォルデモートはどうやって見ていたというのだろうか。そろそろ本気で、ストーカーのレッテルを張り付けてもいいかもしれない。

 

「その歳で“悪霊の火”を操るに留まらず、ベラをも苦しめる“磔の呪文”。その気になれば、“服従の呪文”や“死の呪文”も使えるのではないか? 全く、お前はどこまで俺様の興味を引けば気が済むのだ」

 

クックックッと、ヴォルデモートは心底面白いというかのように笑っている。確かに、“服従の呪文”も“死の呪文”も、使えないということはない。許されざる呪文なんて言っているが、現行犯で捕まえられない限りは証拠などないのだから、人目が付かない場所と時間で練習すればいいだけの話だ。杖から呪文の使用履歴を調べる方法も存在しているが、使用履歴自体を改竄することも可能である以上、意味はないことだろう。

 

「気が変わったぞ。今回の誘いで断られたならば殺そうと思っていたが、それは止めだ。俺様は何としてもお前が欲しくなったぞ」

 

「傍迷惑なこと、この上ないわね」

 

「ふっ、その尊大な物言いも許そうではないか。だが、今まで通りのやり方では、お前が首を縦に振らないことは理解している。そこでだ、一つ、俺様と賭けをしようではないか」

 

「賭け?」

 

「アリスよ、耳を貸すでない」

 

「お前は黙っていろ、ダンブルドア。なに、そう難しいものではない。お前にはこれから、死喰い人の一人と戦ってもらう。その者にお前が勝てば、俺様はお前を諦めよう。今後俺様の邪魔をしなければ、一切の危害を加えることもしない。だが、もしお前が負ければ、俺様に忠誠を誓うのだ」

 

ヴォルデモートが提示してきた賭けの内容の真意を探ろうと思考を巡らそうとするが、その前にダンブルドアが一歩前に進み出て、私の思考を遮るように話しかけてくる。

 

「アリスよ。そのような賭けに乗る必要などない。奴が約束を守るかどうかという以前に、話を聞く必要もない戯言じゃ。―――トムよ、若者を闇の道へ招くものではないぞ」

 

「心外だな、ダンブルドアよ。この件に関して、俺様は一切の虚偽をするつもりなどない。約束は守ろうではないか。ヴォルデモート卿が、偉大なる祖先サラザール・スリザリンの名において誓おう」

 

ここでサラザール・スリザリンの名を出してくるとは。ヴォルデモートも本気だということが伝わってくる。純血主義を掲げるヴォルデモートは、祖先にして先駆者でもあるサラザール・スリザリンを崇拝している。その名に誓うということは、ヴォルデモートなりの最大の誓いともいえるのかもしれない。

 

「それに、貴様が何を言おうと既に遅い。これは―――強制参加だ」

 

ヴォルデモートが言い終える寸前、私の視界ギリギリの場所から、何かが投げられるのが見えた。反射的に杖を向けて呪文を放つも、ソレを投げたであろう人物も同時に呪文を放ち、ソレは同時に当たった双方の呪文によって粉々に砕け散った。

 

「なッ!? 今のは!」

 

ダンブルドアが声を荒げ、私はしまったと後悔の念に駆られる。次に虚空から現れた羊皮紙を手に取り、目を素早く通していく。

 

「―――チッ」

 

やってくれた。苛立ちによる舌打ちを隠そうともしないで、こちらへと歩いてくる人物を見る。その顔は、去年見た時よりも清潔に整えられており、借り物の服は小奇麗な服へと変わっている。手に持つ細長い杖をクルクルと弄びながら姿を現した人物は、立ち止まると羊皮紙―――恐らくは私が持っているものと同じ内容が書かれているだろうものを掲げながら口を開いた。

 

「“審判秤”。かつて無法者同士が決闘をする際に、お互いの契約を違えることが出来ないようにする目的で作られた魔法具だ。製作者は不明で、現存している数も僅か。だが、その効力は凄まじくてね。契約を確実に履行出来るように、敗者の記憶はおろか、魂まで弄ってまで達成させようとする。所持しているだけでアズカバン終身刑、使用が発覚したら裁判無しでの死刑が言い渡されるほどの、呪いの一品だよ」

 

「そう―――そこまでして私が欲しいなんてね。正直言って、憎しみすら湧いてきたわ」

 

「だが、こんな方法を取らざるを得なくなったのも、君が頑なにご主人様の誘いを断ってきたからだ。恨むのならば、過去の自分を恨みたまえ。もう意味のないことだけどね―――引き返すことなど出来ないんだから」

 

確かに相手の言う通り、もう引き返すことは出来ない。あの魔法具は、互いの呪文で同時に破壊した時点で効力を発揮してしまう。呪文での防御をしてしまった過去の自分を呪いつつ、契約文書として現れた羊皮紙に再度目を落とす。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

以下の契約者は、提示された契約を遵守するものとする

契約を破ることは許されない

契約が遵守されるため、魔術的処置を受け入れることに同意するものとする

契約は、決闘者のどちらかが戦闘不能又は敗北を宣言することで履行される

決闘者の生死は問われない

敗者=決闘者=契約者である場合にのみ、契約は履行されずに破棄されるものとする

契約の履行までは、予め定められた時間の猶予が与えられる

 

契約履行までの猶予時間

 三十秒

 

決闘者

アリス・マーガトロイド・ベルンカステル

 バーテミウス・クラウチ・ジュニア

 

契約内容

 決闘者バーテミウス・クラウチ・ジュニアが決闘者アリス・マーガトロイド・ベルンカステルに勝利した場合、契約者アリス・マーガトロイド・ベルンカステルは、契約者トム・マールヴォロ・リドルへ対し絶対の忠誠を誓うものとする。

 決闘者アリス・マーガトロイド・ベルンカステルが決闘者バーテミウス・クラウチ・ジュニアに勝利した場合、契約者トム・マールヴォロ・リドルは契約者アリス・マーガトロイド・ベルンカステルに対する傷害・殺害の意図、及び行為を永久に禁則とする。これは契約者トム・マールヴォロ・リドルの仲間、配下、協力体制にある者全てに適応される。ただし、契約者アリス・マーガトロイド・ベルンカステルが自ら干渉してきた場合に限り、上記の契約を無効とすることができる。

 

契約者

 アリス・マーガトロイド・ベルンカステル

 トム・マールヴォロ・リドル

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 




【気絶させられ、物陰に隠される】
お巡りさん、こちらです

【無人魔法省】
原作でもなんで人がいなかったのか、個人的謎。

【巻き添えセドリック】
常識はあった。でも運はなかった。

【ネビル】
頑張れネビル―――お前がナンバー1だ!(えっ

【名状しがたいナニカが置かれた部屋】
ああ! 窓に! 窓に!

【危険を察知するアリス】
探査回路 搭載済み(大嘘

【ベラベラさん】
死喰い人の中でもアリスは有名人。
カメコ役はピーターであるのは、確定的に明らか。

【夢を信じるハリー】
だって、男の子だもん

【試作ゴリアテ人形】
待ちに待った本格兵器。
全長八メートル、体重は秘密。武器は未搭載。
単純な質量なら並の巨人を上回る。スカートの中は見てはいけない。
上空からのボディプレスは勿論、ただ暴れるだけでも大惨事確定。
倒されると爆発する自爆機能もあるよ。基本ですね。

だが、あえて言う。
”試作”ゴリアテ人形であると。

なお、”G・上海”のGは、ジャイアントのG。

【見敵必殺】
私は命令を下したぞ!
見敵必殺!見敵必殺だ!
我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ!
全ての障害はただ進み、押しつぶし、粉砕しろ!

【手投げ露西亜人形(偽)】
つまり手榴弾

【名状しがたい部屋再来】
ふんむぐるふたぐん

【俺の能力は命の音(カウントダウン)。威力は~】
爆弾魔違い

【触手うねる脳】
動くたびにネチョネチョした粘着質な音がしている

【”ドールズウォー”】
待ちに待った第二弾。
総数三十。全長四十センチ程。体重は秘密。武器は麻痺毒仕込みランス。
部屋が狭かっただけで、本来はもっと数で攻めるものです。

【蓬莱】
正直、ドールズの中で一番の貢献者

【殺す気できているのだから】
撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ

【勘違いによる先走りハリー】
そうrゲフンゲフン!

【ドーピング剤という名の栄養剤】
服用しても、上半身マッチョになったり、破壊音がゴシカァンしたりはしないので安心して飲んでください。

【移動カード】
またの名を”再来(リターン)”か”磁力(マグネティックフォース)”。
あるいは”四次元マンション部屋なし”

【磔の呪文】
ドSなアリスは好きですか?

【ヴォルデモート】
カリスマ漂う帝王様。
多分、ブレイクする日は望み薄。
でも、根本はやっぱり悪役。

【帝王に評価されるアリス】
闇の素質があるという意味で。

【審判秤】
状況によっては相手の意思を無視できる迷惑な代物。
問題児が集まる世界の黒い手紙的な。

【バーティ・クラウチ・ジュニア】
久々の登場。
本来のハンサムフェイスで現れました。


【恒例の呪文説明】
●シブ・オブディワン -封鎖せよ
扉を周囲の壁と同質に作り替える呪文。壁自体を作ることも可能なので、迷路を作りたいときには便利。

●エト・フラーマ・ラーディス -厄災の獄炎よ
原作でもあった”悪霊の火”。
呪文がなかったので捏造。

今のはメラゾーマではない―――メラだ




次回予告「三つ巴の戦い(ただしカメラは一つのみ)」

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