ある日突然、俺は『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイに生まれ変わった。
 だが俺の目の前のガンダムには濁点が二つほど足りない。
 親父め、恨んでやる!

※細かい事は抜きで頭を空にして読んでください。


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 宇宙世紀0079にもしガンダムではないロボがあったら?


機動戦士?カンタム

 ある日突然、俺は『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイに生まれ変わった。

 まぁ、よくある転生って奴だ。

 俺は前世では……ってコレはまたの機会に話そう。

 

 俺はアムロ・レイとして生まれてから今日まで出来る限りの努力はした。

 だが前世でアニメを観たのはかなり前、そして俺は俗に言うガンヲタでは無い。

 確かに機動戦士ガンダムは好きなアニメではあるが一番好きか? と聞かれたらノーと答える。

 もっと言うならガンダムシリーズならGガンダムやガンダムSEEDみたいなアナザーガンダムの方が好みだし。

 

 なので早々に知識チートで無双するのを諦めたのは至極真っ当な判断だと思う。

 せいぜい少しだけ覚えてるガンダムシリーズの知識で原作の流れに対処出来るように準備するだけだ。

 とは言っても所詮アムロは一年戦争が始まるまでは何処にでもいる普通の少年でしかない。

 

 ただの少年では戦争を止めることも、コロニー落としを阻止する事も出来ない、非常に悔しいと思ってるよ。

 だからせめて自分が戦う時に少しでも有利になる様に動いた、自分と仲間達が生き残る為に。

 

 常日頃から身体を鍛え武術を習い、原作でもアムロが得意とした機械に関する知識も父親であるテム・レイにせがんで本格的に学んだ。

 そしてその親父にもそれとなく色々と助言もした。

 親父と一緒にオモチャのロボットを作ってる時に(オモチャとは言うが俺達親子が作ったそれは最早オモチャの粋を超えて全長ニメートルのラジコンガンダムになってしまったが)原作で見た『ガンダム』の悪い点や改良点を色々言っておいた。

 

 確かにガンダムは一年戦争時においては破格の性能である、だが欠点や改良点が無いわけでもない。

 

 例えば主な武器のビームライフルの攻撃力は確かに凄い、凄いが弾数が十五発では心許ないんだよ。

 更に言うなら手持ち武器を使い切ると武器が頭部バルカンだけになるのも改善したい。

 ガンダムNT-1の腕部ガトリング砲とまでは言わないがせめてシールド内蔵ミサイルぐらいは予備兵装として欲しいものだ。

 

 それと防御性能にもメスを入れたい。

 ルナチタニウムの硬度は確かに強い。が、物語の後半ではジオンもビーム兵器を使いだしルナチタニウムの優位性も薄くなってきた様に俺は思う。

 

 某赤いロリコンが言うように『当たらなければ』とも思うが転生者の俺がニュータイプになれる保証はない。

 魂が原作のアムロではない、転生者の俺で果たしてニュータイプになれるかは分からない以上、出来るならビーム兵器に耐えられるくらい装甲も厚くしたいところだ。

 

 と、こんな理由から親父には色々言ってある、親父も技術者だからかなり喰い付いてくれてメモを取りながら聞いてくれた。

 ……ただし、目が明らかにイっちゃってたり、休日に昔のロボットアニメをガン見してたりするのが少々不安だが、それだけ真剣に取り組んでくれてるなら原作よりガンダムは強力になってくれてると思いたい。

 

 最初からガンダムNT-1並に強ければ言う事無いが流石にそれは高望みしすぎだろうか。

 G-3ガンダム並なら可能かな? 

 

 ★★★★

 

 そして今日、ついにこのサイド7 にニ機のザクが襲来した。

 ……分かってはいた、分かってはいたが沢山の人が、巻き込まれただけの人が死んでいくの見るのは辛い。

 それでも俺は戦わければならない、目の前にある白い悪魔と呼ばれた『ガンダム』にのっ……

 

 白い悪魔……

 

 白……

 

 ……

 

「って、緑色なんですけどーっっ!?」

 

 俺は魂の底から叫んだ。

 

「待て待て待て! ちょっと待て! 色もそうだが形もおかしいぞ? 

 ガンダムは角張った形をしてる筈なのに目の前のコレは全体的に丸い、そしてバックパックには四角い翼の様な物もついてるし!?」

 

 おかしい、俺はここに来るまでに走りながらとはいえマニュアルは読んできた、マニュアルには原作通りのガンダムの操縦方法が書いてあった筈なのに。

 これがグレー色なチョバムアーマーを着たアレックスならまだ分かる、だがこれは……。

 

 俺は急いでマニュアルを見直す、するとそこにはこう書いてあった。

 

『RX-78-2 ガンダム(没)』

 

「(没)って何だよー!! 

 え、あのクソ親父はガンダムを没にしたの? マジですか? バカなんですか? 死ぬんですか?」

 

 って何時までもこうしてられない、俺は慌ててページを捲る、そしてやっとこの機体のマニュアルを見つける。

 だがそこに書かれてる機体名がイカれてた、俺は思わず信じてもいない神様を殴り倒したくなったよ。

 

『RX-78-2K カンタム(ロボ)』

 

 ……ああ、これガンダムじゃない、カンタムなんだ。

 何かどっかで見たことがあるなぁって思ったんだよ、これは前世で見たアニメ『クレヨンしんちゃん』に出てくる劇中劇、『超電動カンタムロボ』の主役機、カンタムロボなんだ。

 

「……どうしてこうなった」

 

 ★★★★

 

【ちょっと前のアムロとテムの会話】

 

「おーいアムロ、新作のモビルスーツの性能見てくれ(こんなラジコンロボを作るぐらいの頭あるんだし色々聞こう)」

 

「って、オイ。幾ら俺がせがんだからってただのガキに機密をベラベラ喋んなや(調子に乗ってラジコンガンダムを作ってしまったが、まぁいいか)」

 

「構わん構わん、お前のおかげで開発スピードがかなり早まって感謝しとる。んで更に改良したいから意見くれ(つかこのラジコンをそのままモビルスーツにしただけだし)」

 

「たく(とは言え俺の命に関わることだし真面目に考えるか)、んじゃ仕様書見せてくれ。

 ……親父、ガンダムの内蔵武器ってバルカンだけか?」

 

「そうだ、ガンダムはガンタンクやガンキャノンとの連携を考えて接近戦重視にしたからな」

 

「だからと言ってバルカンだけはアカンだろ。腕に多少スペースあるんだし何か仕込んだら? (アレックスみたいに)」

 

「なるほどな(なら腕が飛ぶようにするか)」

 

「あと装甲も厚くしようぜ、盾があってももう少し厚いほうが生存率上がるだろ(チョバムアーマーにしたいが無理ならガンキャノンみたいにでも良いかな)」

 

「なるほど(対弾性を上げるために筒状の装甲で覆うか)」

 

「あと色、一番機が黒なのに二番機が白ってないわ(目立つし一番機と同じ黒でええやん)」

 

「そうか(なら緑にするか)」

 

「ついでに地上戦での対空戦能力って上げられない? (対空ミサイルとか)」

 

「ほうほう(羽根生やして空を飛ばすか)」

 

「……好き勝手言ったがこんなんで良かったか? (がんばってアレックスを作ってくれ)」

 

「ふむ、やはりお前の意見は参考になる(昔のロボットアニメに出てきそうな機体になるな、確かPCに昔録画したのがあるから見直してみよう)

 ありがとう、早速試してみるわ」

 

 ★★★★

 

 俺があまりのショックに暫し放心してると鈍重な足音を立てながらザクが近づいてくる。

 ちくしょう、こうなりゃカンタムでも構わない。

 

 俺は慌ててカンタムのコクピットに乗り込む、不幸中の幸いかコクピットの中は普通のモビルスーツとそう変わらない様に見える。

 

「頼む、動いてくれよカンタム」

 

 独特の機動音を鳴らしてカンタムは大地に立つ。

 

 よし、ちゃんと動いてくれた。

 その動きに驚いたザクは手に持つザクマシンガンから無数の弾丸を放つ。

 だが、カンタムに傷一つ付くことは無かった。

 

 どうやら装甲の厚さは見掛け倒しじゃないようだ。

 なら次は武器、俺はカンタムの武装が書かれてるページを開く。

 

『武装、カンタムパンチ、以上』

 

 ……最早驚くのにも疲れた、ビームサーベルもバルカンすらも無くて、武器がカンタムパンチ、俗に言うロケットパンチオンリーかよ。

 あの親父は原作では酸素欠乏症になって頭が可笑しくなったが、どうやらこの世界では最初からイカれてるらしい。

 

 せめて、せめてカンタムでもいいから『クレヨンしんちゃん』で使ってたカンタムビームかカンタムブーメランぐらいくれよ。

 

 ★★★★

 

【ちょっと前のアムロとテムの会話 そのニ】

 

「おーい、また意見くれ。以前アムロが言った腕部兵装でちょいと悩んでるんだ(カンタムパンチが難しい)」

 

「またか(腕部ガトリングって難しいのか?)」

 

「兵装自体は出来たんだが単発でしか使えなくてな(パンチを飛ばすと回収出来ない)」

 

「そうか(弾がリロード出来ないってこと?)。うーん、流石にこういうのは専門家じゃないと分からんじゃね、知り合いに詳しい人おらん? (武器開発の専門家とか連邦にいるだろ)」

 

「そうか(ジオンから亡命した奴に聞くか。たしかサイコミュ? ってシステムを開発してたって言ってたがあれなら使えるかも)」

 

「すまんな親父、力になれなくて(でもそれだけで本気で取り込んでくれるのはありがたい)」

 

「いやいい。こうして話すだけでも頭の整理が出来るしな(あ、でもサイコミュなんか仕込んだら開発費が足りなくなるな。まぁ二番機はプレゼン用の機体だしカンタムパンチ以外の武器は無くても良いだろ)」

 

 ★★★★

 

「えぇい、ヤケクソだ!」

 

 そして俺はやけっぱちに操縦桿のカンタムパンチのボタンを押す。

 

「……?」

 

 押す。

 

「……??」

 

 パンチが飛ばない? 俺は急いでマニュアルのカンタムパンチのページを見る。

 

『カンタムパンチを使うにはボタンを押しながら「カンタムパンチ!」と叫ぶ事←これ重要』

 

 ★★★★

 

【ちょっと前のアムロとテムの会話 その三】

 

「親父、モビルスーツって盗難対策はしてあるか?」

 

「いや特にしてない」

 

「それ危険じゃね? ジオンに盗まれて味方を攻撃されたら大変だぞ(ガンダムが盗まれるのはシリーズ定番のネタだし)」

 

「確かに(でも運搬と整備する時にいちいちロックを解除するのは面倒くさい。この前見たアニメみたいに攻撃するときには音声認識にしよう)」

 

「何か対策しようぜ(起動パスワードとか)」

 

「そうするわ(何より必殺技を叫ぶってカッコいい)」

 

 ★★★★

 

「……親父ぃ……後で俺自身の手で宇宙に投げ捨ててやる」

 

 たった一つしかない武器をわざわざ音声認識にしたゴミクズを宇宙に捨てると決めた俺は、既に悟りの粋に精神が達してる思う。

 

「そして、てめぇ等ぁ。八つ当たりだとは分かってるが……」

 

 目の前のモニターに映るザク達に向かって睨みつけながら俺は操縦桿のボタンを握り潰す様に押し込む。

 

「死ね、カンタムパンチだーッッ!!」

 

 今度はちゃんと鉄拳が火を放ちながら飛び出し右腕がザクの頭部を粉々に砕き、左腕がもう一体のザクの胸部をぶち破る。

 そしてニ機のザクは爆発することも無くそのまま地に伏せた。

 

「うっし!」

 

 俺はコクピットの中で小さくガッツポーズをした。

 

 ……俺の戦いはまだ始まったばかりだ。

 これからジオンとの過酷な戦争をしなければならない。

 だが、その前に……

 

「あのクソ親父に鉄拳制裁(カンタムパンチ)してやる!」

 

 俺はカンタムのメインカメラが捉えた笑顔で手を振る親父に殺意を込めて睨みつける。

 絶対に逃さないからな。

 

 ★★★★

 

【次回予告?】

 

 カンタムに乗ったアムロはジオンのザクを破壊することに成功する。

 だが怒りが収まらないアムロはそのまま実の父であるテム・レイに襲いかかる。

 逃げるテム、追うアムロ、そして完全に空気になったシャア。

 原作崩壊はまだ始まったばかりだ。

 

 

 次回、機動戦士?カンタム

 

『テム・レイ破壊指令(フルボッコ)?』

 

 テムは生き延びることができるか? 

 




じゃ!(ここだけクレしん風)


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