気が付けば字数が滅茶苦茶増えてる!?
今回は主人公の立場のお話。
鬼殺隊には「
鬼殺隊の剣士たちの最高位にして文字通り組織を支える役目を担う「柱」と行動を共にし、直接指導・修練が行われる柱の直弟子。
言い換えれば「次期柱候補」のことである。
その重要性から継子には一般隊士よりも広い裁量権が与えられ、一段上の立場として扱われている。
しかし、そんな継子といえど柱合会議への参加は基本認められていない。
では、その柱合会議への参加を義務付けられた結一郎の立場とはいったいどのようなものなのだろうか?
――鬼殺隊 拠点にて
報告書を上げるために先を急ぐ結一郎。
速足で歩き去る彼に他の隊士たちからの注目が集まっている。
「あれが
「継子なのに柱合会議の参加を認められてるっていうあの?」
「すごいよなぁ。次期柱に間違いなしだって言われてるらしいぜ」
尊敬の念を込めて見られる視線が結一郎に向けられる。
一方で、陰鬱な感情を抱く隊士たちもいる。
「一人だけ特別扱いかよ……」
「あいつ、柱の方々に媚びへつらって今の地位を得たらしいぜ。前に菓子折りを柱の方々に渡しに行っているのを見たぞ」
尊敬の眩い視線も嫉妬の粘ついた視線も結一郎にとっては困ったものでしかない。
ため息が出そうだった。
「と、いうことがあったのです。正直、困っております!」
急須でお茶を注ぎながらため息を吐く結一郎。
彼の愚痴に付き合っているのは水柱、蟲柱、炎柱、恋柱、音柱、蛇柱の柱の方々である。
柱合会議でもないのに多忙な柱が集まるのも珍しい話だが、何の集まりかと言えばなんてことはない。単なるお茶会仲間だ。
結一郎の趣味である菓子作りで作った茶菓子などを食べながら談笑するだけの親睦会である。
メンバーは結一郎と付き合いの深い義勇。
彼と結一郎とも年代が近く、接点の多いしのぶ。
柱の中でも健啖家な炎柱・
音柱・
蛇柱・
そういうプライベートな場であるからか、気安い雰囲気になっていることもあってつい愚痴がでてしまった結一郎。
彼の愚痴に対する柱たちの反応は様々だ。
「うむうむ、期待されているのは良いことだな! その期待に応えられるよう励むのだな!」
「炎柱様、たしかにそうなのですが、それで話を終わらせてしまうと自分はやるせないです!」
常に前向きな性格の杏寿郎は、発言も前向きだ。
他人が陰口を言っていることを気にするよりも、少なからず尊敬の念を向けられているのだからそれに応えるべし!
そんな至極真っ当で真っ直ぐな返事をするのが杏寿郎という快男児であった。
その真っ直ぐすぎるくらいの発言に結一郎としては少し戸惑いつつもお茶と一緒に大きめに切り分けた芋羊羹を出した。
「情けない情けない。他人のことを見ている暇があるほど余裕があるのか? そんな余裕があるのならもっと結果がでているはずだがな?」
「ハッ! 気に入らねえな。文句があるなら派手に本人にぶつければ良い。派手にな!」
対して、陰口をする隊士たちへの不満と怒りを見せているのは小芭内と天元の二人だ。
小芭内はねちねちとした口調でこし餡の煉羊羹を細かく切り分けながら、隊士たちへの不満を語っている。
天元は単刀直入に自分の感情を言い表した。その怒りを紛らわすように大きく切り分けたつぶ餡の煉羊羹を口に放り込む。
「正直、自分程度にそんな視線を向けられても……と思うのですが!」
「え~、でも和君は頑張ってるんだからもっと自信を持っていいと思うんだけどなぁ」
「そうですよ。和さんはよく努めていますよ」
蜜璃としのぶの女性ふたりから慰められる結一郎。
麗しい女性二人に優しい声をかけられ思わず笑みがこぼれそうだ。
「ありがとうございます、お二方。頑張らないといけませんね!」
お礼の言葉を言いながら、茶菓子の皿を出す結一郎。
女性ということもあって、出したのは見た目の美しい桜餡を使った桜色の水羊羹。
華やかな桜色は、二人のイメージにぴったりでもあった。
……蜜璃に出す際に切り分けずに一本丸ごと出すか迷ったのは結一郎だけの秘密である。
各々、意見を出す中で黙ったままの水柱・冨岡 義勇。
彼が何を考えていたかと言えば……
『旨いな。茶も良いのを使っている……ああ、幸せだ』
思いっきりお茶とお菓子を堪能していた。
目の前のお茶とお菓子に夢中になるあたり、育ちの良さとか人柄の良さを感じられるところだが、部下が真面目に相談してるときにコレはちょっと残念である。
あくまで天然であって、悪気はないのだが。
『結一郎の作る菓子はいろいろな種類があるな。……頼めば鮭大根の菓子も作ってくれるだろうか?』
「水柱様! さすがに鮭大根のお菓子は難しいです!」
「お……ッ!?」
どこまでもマイペースな考えを巡らせているときに、結一郎から返事が来てビクッと驚く義勇。
思わず声に出ていたかと周囲を見渡せば、なんとも微妙な雰囲気になっていた。
「よもやよもや、だ。和君はずいぶん器用なのだな!」
「うっそだろ!? どうやったんだよ? 地味に派手なことしやがって」
「はぁ~。これはよくそこまでできるようになったと和をほめるべきか、それともそこまでさせたと冨岡を責めるべきか……」
「冨岡さん……あなた和さんに謝ったほうがいいですよ。ホントに」
驚く杏寿郎と天元に、呆れる小芭内にしのぶ。
彼らからの視線の意味が分からずに義勇が困惑していると、その答えを蜜璃が告げた。
「すごいね、和君。冨岡さんが思ってることが分かるんだね」
「いやいや、大したことはありませんよ!」
蜜璃の言葉に手を横に振ってこたえる結一郎。
しかし、彼の言葉に頷く者はいない。
「冨岡が口下手すぎたせいで、読心術を身に着けるとか、ヤバい、ウケる!」
「宇髄さん、さすがに笑っちゃかわいそうですよ。結一郎さんが」
腹を抱えて笑う天元に注意をした後、義勇を責めるように睨みつけるしのぶ。
どんだけ、結一郎に苦労をかけてるのかと問うような視線だ。
「……俺は悪くない」
それを受けて義勇の一言。
「それはないだろう、冨岡」
「妄言をまき散らすな」
「派手に本気か?」
「えっと、ちょっとそれはないかな~って」
「つける薬はありませんね」
そして義勇に味方はいなかった。
南無……
「しかし不思議なものだな。よくもまぁこんな無口な男が結一郎のような継子を持てたものだ」
「いや、冨岡だからじゃねえのか? まあいいや。そういえば、俺も継子探さないとな」
机に突っ伏して撃沈された義勇を放っておいて、小芭内が継子について話題を切り出した。
天元も腕を組んで考え込み始める。
そもそもの原因となった結一郎の相談内容からも察せられるように、鬼殺隊の質の低下は大きな問題なのだ。
柱といえどいつまでも現役でいられるわけもなく。
また、鬼との戦いは命がけ。上弦の鬼と呼ばれる強力な鬼との戦闘では柱ですらも討ち取られる可能性が高いのだ。
そう考えれば後進の育成は重要課題といえる。
しかし、現状では柱の直弟子である継子の数は少なかった。
「恥ずかしい限りだが、俺も継子はいない。こうなってくると二人がどうやって自分の継子を見つけたのか気になるところだな。うむ! ぜひ、その方法を教授願えまいか!」
杏寿郎がしのぶと義勇に継子をどうやって決めたのかを尋ねる。
分からないことは経験者に聞くのが一番手っ取り早い方法ということで、水を向けたわけだ。
「すみません。私のところのカナヲは孤児院で保護した子がたまたま才能があっただけで、私が自分から見出したわけではないんです」
お役に立てずにすみません。と、頭を下げるしのぶ。
対して義勇はといえば――
「俺には関係ない話だ」
やはり、言葉が足らなかった。
協力を拒否するような一言。しかし、柱のメンバーもだいぶ慣れたものだったりする。
「おい、和。翻訳」
「はっ、承知しました! 音柱様」
もはや義勇が言葉足らずなことは周知の事実になっているため、慌てずに結一郎に言葉の解説を求める天元。
結一郎は与えられた役目を慣れた様子でこなし始めた。
「水柱様のお言葉ですが、その前に一つ訂正をさせてください。自分は、継子ではありません!」
「はぁ!?」
自らを継子ではないという結一郎に天元は思わず驚きの声を上げてしまう。
それ以外の面々も驚きの表情を隠せない様子だ。
「え? でも、和君はいつも冨岡さんのお供してるわよね? なのに、継子じゃないの?」
蜜璃が首を傾げて疑問をぶつける。
二人の普段の様子から継子ではないということが信じられなかったのだ。
結一郎は首を縦に振ってこたえる。
「ええ! そうなのです! 一応、階級は甲にはなっていますが、水柱様には継子として認められていないのです!」
「なんと! 本当にそうなのか?」
結一郎の告げる言葉に思わず問い返す杏寿郎。
残念ながら冗談ではないようだ。
「はい! 水柱様からは一度も指導を受けたことや稽古をつけていただいたことはありません!」
「……あれだけ、一緒にいて、一度もですか」
しのぶが絶句したように何とか一言絞り出す。
その結一郎を見る目はすごい同情に染まっていた。
「最近では当たり前のように任務も一揃いにされていますが、一度も、ないのです!」
「冨岡、お前……」
あまりの残念さに小芭内は頭に手を当ててため息を吐いた。
普段も一緒にいて、任務も付いて行っている。完全に継子と同じようなことをしておいて、継子として認めてないから稽古はつけてもらってないとか哀れにもほどがあった。
むしろ、ここまで状況が揃っているのに何故認めてないのか疑問で頭が痛くなりそうだ。
というか、ホント、認めてやれよ。
小芭内がため息を吐いた後も結一郎の嘆きは続く。
「自分は継子ではないので裁量権は一般隊士と同じなのです。が、しかし、周りは自分を継子だと思っているので、その、期待される仕事が……ッ!」
与えられた地位は変わっていないのに何故か責任ばかりが増えていく悪夢がそこにあった。
「派手に苦労してんなぁ。まったく憧れないが」
「音柱様! 自分も望んでこうなっているわけではないのです!」
口から出た同情の言葉に鋭く切り返されてしまった天元。
まぁ、そりゃそうだろうよ。としか返事できないのだが。
「ねぇ、冨岡さん。どうして和君を継子として認めないのですか? 和君には落ち度はなさそうですけれど」
しのぶが義勇に結一郎を認めない理由を単刀直入に尋ねた。
言葉の端に
『お前の都合なんだろ? ああん?』
という感情が見え隠れしないでもないが、義勇は気にせずにその理由を短く言葉にした。
「俺は柱じゃないからな」
柱ではない人間が継子を選ぶなどありえないと告げる義勇。
自分の忌まわしい過去を思い出し、暗い表情を浮かべる。
そんな彼に対して、柱たちは思い思いの言葉を投げかけた。
「はぁ? 何を言ってるんですか?」
「うむ。意味が分からん!」
「馬鹿なのか? ……馬鹿なんだな」
「地味に何を言ってるんだ?」
『真顔で変なことを言う冨岡さんもキュンとくるわ』
総じて厳しい言葉ばかりであったが。
いつも通りといえばいつも通りの展開に、義勇は結一郎に助けを求める視線を送るも結一郎は首を横に振った。
「さすがに無理です! 水柱様」
結一郎といえど、義勇の過去の出来事を語ることはできない。語るべきではない。
それはあくまで義勇の口から語らねばならないことなのだから。
むしろ、語れたら怖い。
「……だいぶ昔の話になる。俺は、最終選別を突破していない」
仕方ないと覚悟を決めて自らの過去を語り始める義勇。
最終選別で七日間生き残ったが、それは同じ年に選別を受けた錆兎という少年が山の鬼をほとんど一人で倒してしまったおかげだからだ。
自分は怪我を負って助けられ、気が付けば日にちが過ぎていた。
助けられただけの人間が選別に通ったとは言えない。
だから自分は他の柱たちと対等に肩を並べていいような人間ではない。
ゆえに、自分は柱ではない。継子を選ぶ権利などない。
辛い過去を交え、義勇は自分の考えを語った。
珍しくも長々と言葉を紡いだ彼へ、柱たちは何を告げるのか?
「どんな派手な理由があるのかと思ったら、極限地味な理由だったな」
呆れたように詰まらなさそうに感想を述べる天元。
てめえの事情なんか知らねえよとばかりに突き刺さる言葉に義勇は落ち込んだ。
「昔は情けなかったとしても、今は成長したのだろう? ならば問題はないな!」
「冨岡さんはもっと自分に自信を持ってもいいと思うわ」
過去は過去。今のおまえが重要なのだと告げる杏寿郎と、優しく励ます蜜璃。
暖かな言葉を掛けられて、義勇は困惑したように問いを投げかける。
「俺は、こんな俺でも鬼殺隊に居場所はあるだろうか?」
「くだらないくだらない。当たり前のことを聞くほど愚かなのか。貴様が自分のことをどう思っていようが関係ないことだ。貴様は柱としての任を引き受けたのだろう? ならばその責を果たすことを考えていればいいのだ。それをうじうじと考えているなど馬鹿のすることだ」
小芭内がネチネチとした口調で義勇を責める。
自己評価がどうであれ、任された責務はこなさなければならない。それが責任ある立場、大人というものだ。
それが嫌なのならばそもそも柱という地位など引き受けなければよい。
一度引き受けておいて、自分は不適格だと責務を放棄するなどありえない。
何より、お前を信じてその地位を与えてくれたお館様を裏切ることになる。
次々とぶつけられる言葉に、義勇はようやく自覚した。
もはや自分はあのころの十三歳の少年ではないのだと。
今や、自分には与えられた責務があるのだと。
「冨岡さん……」
自らの考えを改め、前を向くことを決めた義勇。
彼に最後に声をかけたのはしのぶだ。
「あなた、普通に話ができたんですね」
「おい」
しんみりしてたのに台無しなことを言われてしまい、思わずツッコむ義勇。
頑張って語ったのに感想がそれかー。
「ごめんなさい。これだけしゃべっている冨岡さんが珍しかったものですから」
それだけ衝撃的だったんです。と、言うしのぶに他の人も賛意を示す。
「たしかに! はてさて、いままで冨岡がこんなに話したことはあったかな?」
「普段からこれくらい話をしてくれれば楽だというのに」
「おしゃべりな冨岡さんもいいと思うわ」
杏寿郎、小芭内、蜜璃の三人からもっと話をするべきという意見を貰う。
駄目押しとばかりに、天元が告げた。
「まっ、これからはもう少ししっかり話すようにするんだな。派手に!」
「……努力する」
皆に言われ、少しは頑張って話をしようと反省する義勇であった。
なんやかんやと他の柱たちに説得されて義勇が考えを改めたところで問題が一つ残っている。
結局、現状では結一郎が義勇の継子ではないという事実が浮き彫りになっただけである。
そのことに思い至った
いや、声を上げるどころかむしろ自分の意見の主張であったが。
「ところで、
「おい! ちょっと待て。異議ありだ」
「む、駄目か?」
突然、結一郎に継子になれという杏寿郎に
「当たり前だろ、横からかっさらうつもりかよ。こいつは、俺の継子になるんだよ!」
「あー! 宇髄さんズルい! 私も和君を継子にしたいのに」
杏寿郎に続き、天元、
複数の柱から指名を受けた結一郎はびっくりして声を上げた。
「あの! ここは水柱様に自分が継子として認めてもらう流れでは!?」
さっきまでの会話の流れから言えばそうなるはずでは?
という結一郎の疑問は、
「よく考えろ、和。現状で継子と同じように冨岡の任務に付いていけているお前を逃がす理由があると思うのか?」
「……ごもっともです!」
継子を見つけるのが大変だという話をしていたところに、完全フリーな継子としての能力があることが証明された隊士がいるのだ。
確保しないわけがないという話なわけで。
しかしながら、ここまで義勇に付いてきておいて別の柱の継子になるというのも今更な話だ。
「自分は水の呼吸の使い手ですので、皆さまとは合わないのではないかと!」
「ん? 別に柱と継子が同じ呼吸でないといけないという規則はないぞ!」
「そうですね。私とカナヲも同じ系統とはいえ別の呼吸ですし」
「既に水の呼吸の型は覚えているのだろう? ならば太刀筋矯正や身体動作の最適化などが指導の範囲になるからな」
「指導するにあたって、そこまで呼吸の差は問題じゃないわね~」
「俺なら、忍の技術も教えてやれるぜ。毒とか爆薬に、変装、隠密、情報収集とかな」
せめてもの抵抗と声を上げてみるも、あっという間に論破されてしまった。
もう自分ではどうしようもない。かくなる上は助けてもらうしかない。
そう思って義勇へと視線を送る結一郎。
義勇が「俺の継子にする」と一言いえば、いままでの実績からして継子になれることは間違いない。
視線を受けた義勇は結一郎の意図を読み、口を開こうとした。
その瞬間、義勇の脳内の天然回路が仕事をしたのだ!
「ならば、結一郎を皆の継子にすればいい」
「なっ、水柱様!?」
周囲が怪訝な顔をするなかで、一人だけいち早く義勇の言わんとすることを察して絶句する結一郎。
結一郎が止める間もなく、義勇が言葉を告げた。
「柱が継子を選ぶという規則はあるが、柱が同じ人物を継子にしてはいけないという規則はなかったはずだ」
「おお! 言われてみればそうだな!」
同一人物を複数の柱が継子に指定しても規則上は問題ないという義勇の指摘に、納得した声を上げる杏寿郎。
天元、小芭内、蜜璃も「それだ!」という顔していた。
結一郎にとって非常にマズイ流れである。
「複数人の柱から指導を受ける継子か……派手で面白いな!」
「音柱様、おもしろくないです。自分は!」
派手が大好きな天元は新しい試みと聞いてテンションが爆上がり。
一も二もなく賛意を示す。
「興味深いな。複数人の柱から指導を受けることでどんな変化があるのか……うまくいけば隊士の質の向上に役立つかもしれんな」
「蛇柱様、たしかにそうかもですが、自分で実験するのは勘弁していただきたいです!」
僕で実験しないでくれ!
そう告げるも聞いてくれる様子はない小芭内に泣きそうだ。
「俺の継子になったからには、全力で指導して見せよう! 立派な柱になれるよう頑張るのだな!」
「炎柱様、やめてください。死んでしまいます!」
前向き発言の杏寿郎。やる気満々ですでに燃え上がっている。
しかし、結一郎にはこの前向きさが今は辛く感じた。
「大丈夫! 和君ならできるから頑張って!」
「……頑張ります!」
笑顔でにこやかに励ましてくれる蜜璃に返事をする。
確かに励ましの言葉なのだが、この一言で追い詰められた気がしないでもない。
どうしよう。正直逃げたい。
そんな思いからすがるように義勇に視線を向ける。
冨岡様。義勇様。水柱様。お助けください!
結一郎の視線を受け、義勇は深く頷いて口を開いた。
「結一郎、男なら、男に生まれたなら進む以外の道などない!」
「み、水柱様ァ!!」
かつての友の口癖のような信念を思い出し、結一郎に投げかける義勇。
その言葉に結一郎は涙を浮かべた。
もちろん、絶望の涙である。
誰がこの場で励ませって言ったよ!?
覚悟決めさせるようなこと言うんだよォ!?
受け売りの言葉でドヤ顔やめろよ!
もう内心でツッコミの嵐の結一郎。
義勇がしゃべらなくても苦労するが、しゃべったらしゃべったで余計なことを言われて苦労する結一郎であった。
「派手に良いこと言うじゃねえか、冨岡」
「よし。そうとなればこちらも気合を入れねばな!」
「念のため確認をしておくべきだ。勝手をして迷惑をかけるわけにはいかないだろう」
「キャー! とうとう私にも継子ができるのね! 楽しみだわ」
複数人の柱の継子になるのは避けられなくなった結一郎。
後日、鬼殺隊の当主から認められ、正式に複数の柱の継子になったのだった。
ちなみに、話を聞いた風柱と岩柱からも継子にされるのはまた別の話である。
目指せ、史上最強の継子?
上弦の弐「地獄なんて人間の妄想で存在しないのになぁ……」
結一郎「地獄はあるんですよ! この世に!」
参加キャラが増えると、話って長くなるよなぁ。
ツッコミどころは用意した!
さぁ、存分にツッコむがいい!!