※閲覧注意。
本日、遂にIII号戦車J型の修理を終えた。
想像以上に壊れていたようであり、使えない部品も多かったようだ。その辺りはなけなしの予算を削り、新しく部品を買うことで改修したとの話である。ともあれ、これで六輌の戦車を揃えることができた。全国大会に出るだけであれば、充分な数を揃えられたことになる。勿論、優勝するには全然、数が足りないんだけどね。全国大会では二回戦まで戦車十輌、次の準決勝で戦車十五輌、決勝戦ではなんと二十輌まで参加が認められているのである。つまり今のままでは決勝では三倍の戦力を相手にしなくてはならない、と言うことだ。戦力差三倍とか、砲兵が登場する以前の時代の攻城戦でも負けますなっ!
まあ、嘆いたところで仕方ない。久しぶりにIII号戦車J型の操縦席に座りながら継続高校の現有戦力を整理する。
先ずは、なんと言っても隊長達が駆るBT-42快速突撃砲、別名クリスティー突撃砲。ソ連の傑作戦車であるT-34中戦車、T-34と共にソ連の中核を為したKV-1重戦車。そしてT-34とKV-1が登場するまでのソ連軍の戦線を支え続けたT-26軽戦車。T-26と同時期に配備され、BT-42として鹵獲改修される前の車輌であるBT-7快速戦車。最後に私が黒森峰から持ち込んだドイツ戦車、III号戦車J型の計六輌となる。
私は黒森峰からの相棒であるIII号戦車J型に乗り換える予定であり、アマチュア無線部も違う機体に変えたいという訴えがあった。とりあえず戦車も揃ったことだし、この辺りで再編するのも良いかも知れない。
各々乗りたい戦車に乗った方が成長も早いのは自明の理だ。
†
「という訳で第一回継続高校戦車道会議を始めたいと思います、二回目があるかは知りません」
いえーい、どんどこぱふぱふ。
半ば強引にテンションを上げながら始めた本会議の参加者は
むふん、と私が腕を組んでドヤ顔を決める。補佐のスオミが私のすぐ横に椅子を移動させてるけど、もう慣れたので気にしない。
「とりあえず今決まっているのは、ミカ隊長達のBT-42だけだからね。他五輌の中から乗りたい戦車を各自で言って、その度に話し合いで決めようよ」
そう言うと「はいはいはーい!」と瓶底眼鏡の白衣幼女先輩もといソラ先輩が真っ先に手を挙げた。
「もうT-26は嫌なんですよ! ちっこいし、すぐ故障するし、ちっこいし! のろまだし! もうやだ!」
鬱憤が溜まっていたのかソラが言い募り、そして私に向けて指を差した。
「ヘイヘはIII号戦車に乗り換えるんだよね!? ならT-34を私達に頂戴! 大事にするからさ、魔改造するからさ! 具体的には85 mm砲を載せられるようにするからさッ!!」
余程苦労していたんだなぁ、と思いながら話を聞き流しながら少し考える。アマチュア無線部も戦車に乗り慣れてきたからT-34を任せることに問題はない。むしろ、これだけ熱望しているのだから彼女達のモチベーションのことを考えても乗せてあげたい気もした。しかし此処には空気の読めない女がいた。
「ちょっと待って欲しい、T-34に乗るのは私――いや、俺だ」
そう言いながら手を挙げるのはエトナ、彼女は私の方を向くと素敵な笑顔を浮かべて告げる。
「一番良い
「譲れるかッ! ここで退いてなるものか、そもそもアンタはヘイヘと一緒のチームだよね!?」
「いいや? 他に戦車がなかったから一緒に乗っていただけだが? 俺はマリと二人で一チームだからな」
エトナがうざったらしい顔で幼女先輩を見下す横で「ところでマリは希望あるの?」と私が問いかけてみると「ん〜、僕はBT-7かな。速い方が操縦するのが楽しそうだし」とものの数秒で妹に見捨てられる姉ができあがった。
「あ〜っはっはっはっはっ! えぇーっとぉ、今なんて言いました〜ッ!? 俺はマリと二人で一チームぅぅぅぅっ!? キャハハハハハハハッ!! ウ〜ケ〜る〜、ちょ〜ウケる〜ッ!! ギャーハッハッハッハッハッ!!」
バンバンバンと机を叩くソラ先輩に、顔を真っ赤にしてフルフルとエトナが拳を握り締める。
「おい、マリ! お前は俺と一緒に決まってるだろうがッ! ふっざけんな!!」
「何度も僕に土下座させる姉さんと一緒なんて嫌に決まってるじゃん」
「はあっ!? 別に土下座しろだなんて頼んでねぇし!!」
「ねえ今どんな気分? 妹に見捨てられて、ねえ今どんな気分?」
憤慨するエトナ、素知らぬ顔をするマリ。エトナを茶化すソラ先輩。最後に某国民的RPGのバトルBGM『戦火を交えて』をカンテレアレンジして奏でるミカの四竦みで本会議は混沌とした様相を見せ始めた。そこは止めてよ、ミカ隊長。
「ちなみにスオミはどうなの?」
「
「いや、乗りたい戦車のことだけど?」
「シロエと同じ
「あ、はい」
あんまり深く聞いてはいけないと察した。
ともあれ、このすぐ後でエトナに
会議が終わった後、会議室代わりに使わせてもらった生徒会室で考え込んでいると、バンと扉が勢いよく開け放たれた。
「話は聞かせてもらった!」
そう大声で叫んだのは風紀と書かれた腕章を付けた継続生だった。
†
継続高校は常日頃から暴徒の脅威に晒されている。
ある時は暴走族の騒音であり、またある時は不良生徒の抗争であったり、そしてある時は学生による学園艦施設の不法占拠である。
兎にも角にもヒャッハーで世紀末な継続高校の学園艦、善良な一般市民は部屋の奥でガタガタと震えて怯える毎日を送る他になかった。しかし彼ら彼女達には希望がある、ヒーローがいる。退かぬ、媚びぬ、省みず、の精神で校則違反を繰り返す生徒に鉄拳制裁、ステゴロで物理的に黙らせる英雄機関。この俺が規則だ、この俺が風紀の体現者。執行されない刑罰に意味はないと声高らかに叫ぶ粛清組織。彼らは誰だ、彼女らは誰だ、その名は継続高校風紀委員会ッ! 私達が来たからにはもう安全だ、と戦隊モノのヒーローのように不良達を千切っては投げて、叩き伏せ、その心に恐怖を刻むことで更正を促していた。
しかし、そんな彼らも最大のピンチを迎えていた。
継続暴走族界で四天王と呼ばれていた四大暴走グループが風紀委員会に対抗するために結託したのだ。その名も快速暴走同盟、四天童子! その大勢力を前に「言論統制に談合禁止、密告万歳ッ!」と乗り込んだ風紀委員会はなんとナントの難破船! 返り討ちにあってしまったのだ! これにより継続高校のパワーバランスは崩壊、そのことを知った木っ端珍走団が次々と四天童子に合流し、大々的に交通ルールを無視するようになり、しかしお婆ちゃんやお爺ちゃんが多いところでは心持ち静かに……交通網は機能しなくなり、学園艦は更なる混沌の渦中へと引き込まれていった!
コンニャローのバーロー岬ッ!!
世間様に迷惑をかけんじゃねえと継続番長がたった独りの漢立ち! しかし四天童子は容赦なく、四方八方からタコ殴り、哀れ番長一行も保たずに倒れて、学園の秩序を守れなかったことに涙する! 漢泣きである。ああ、最後の砦が砕け散った、もう四天童子を止められるものは居ないのか――そんな時だ、キュラキュラキュラと不穏な音が鳴り響いた。
戦車である、T-26である。キューポラから風紀委員長が顔を出し、そして告げる。
――撃て。
嗚呼、無情なり。
畜生、許されるのかよ……こんなことが、こんなことが許されるのかよ! こんなの人間がすることじゃねえッ!! てめえらの血の色はなに色だーっ!! 服はボロボロ、継続番長はアフロヘアー、バイクや廃車確定、車は――痛えなぁ……また板金7万円コースか。でも肌は煤汚れただけで五体満足な女が背中に四天童子を背負って嘆き叫んだ。
その言葉を耳にした風紀委員長が有情に告げる。
「未成年だからな、犯罪歴には残らないぞ☆」
そして続ける。
「その分、魂に恐怖を刻み込んでやるよッ!! てめぇらの罪の分だけなぁーッ! 今までの鬱憤を晴らしてやらァッ!!」
その日、暴走族は壊滅した。
ここに継続の正義は執行されたのだ。
しかし明日にでも第二、第三の暴走族が生まれるに違いない。
何故ならば、それが継続高校なのだ。
生徒会日報、会長の胃に穴が空きました。