隻脚少女のやりなおし   作:にゃあたいぷ。

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どうにも世の中には毎話作風を変えることで固定層を作らず、毎話のように読者を振り落としにかかる作品があるようだ
しかもこれから暫くはオリキャラをメインで書くつもりらしいぞ
読者の選別が捗るなあ(震え声

今回は短いです。


試合、できます!③

《アマチュア無線部の場合》

 

 此処は太陽が照明代わりの ガレージ(廃工場)にある特設の研究室、もしくは開発室。半ば修理工房。

 実際にはアマチュア無線部の溜まり場と称するのが正しい。今も半球体の被り物にドライバーを挟むという遊びをみんなでやっており、お菓子を片手に頬張りながら何度も被爆している。まあ人体に優しい放射能だし、そもそも玩具なので倫理的には大丈夫だ。いろんな意味で道徳的問題を抱えている気がしなくともないけども、臭いものには目を逸らす精神でどうにかしようと思う。

 さてクリスティ三人娘と違って、私達には暇な時間はない。戦車の整備は大まかに搭乗するチームで行なっているが、それでも細かな点検は私達の役目であるし、修理が必要な箇所は外注に出さずに私達だけでやってのける。そんな訳で練習の後はいつもてんやわんやで、それが試合の後ともなればドタバタ劇だ。

 朝早くから頑張って、今やっと、ひと段落したところだった。

 

「ソラ部長、やっぱりこれを黒ひげ危機一発やワニワニパックンの代わりにするのは不味いのでは?」

 

 そんなことを黒煤に汚れた伊達眼鏡少女に言われたが、その辺りはもう本当に今更な話だと思う。でもまあ彼女の言うことにも一理あるので、私はポッキーを齧り、だらけきったアマチュア無線部のみんなに大声で告げる。

 

「これからアマチュア無線部、無線秘密基地に向かうわよッ!!」

 

 その声にガタッと反応を見せた四人の部員達が「あらほらさっさ!!」と眼鏡を輝かせる。

 今やアマチュア無線部の学園艦での移動手段は専ら戦車となっていた。練習する意味も勿論があるが、暴走族が雑草のように生える継続高校だ。T-26の時は一度、人体に優しい(倫理的には大丈夫)火炎瓶を投げ込まれる事件も発生したが、KV-1ではその心配も不要だ。初めて、KV-1の勇姿を見た時は思わず、「大きいことは良いことだ!」と初めてヘラクレスオオカブトを見た少年のように目を輝かせてしまったものである。問題のトランスミッションとクラッチは勝手に改造させて貰ったので、幾分かマシな取り回しになっている。よっこらせっとお気に入りのボコクッションをお尻に敷いて、いざ行かん、と無線秘密基地に出発した。

 無線秘密基地と云うのは現在、アマチュア無線部が活用している通信基地のことだ。不法占拠した納屋の外には数多のお手製のアンテナが設置されており、全世界のテレビとラジオの番組を受信できるようにしてある。英語以外の言語はよくわからないけども自己満足で受信できるようにしてやった。最近は全世界の戦車道の試合配信なんかを録画したりしている。発信の方は学園艦が範囲内に収まる程度に調整してあった。

 まあ、これらは練習用の戯れに過ぎない。私達、アマチュア無線部の目的は宇宙に向けた通信にあった。

 予め断っておくが、私達は無根拠に宇宙人やUFOの存在を信じるオカルト集団ではない。元は天体観測が好きなだけの集まりであり、その好きを拗れに拗らせたのが今のアマチュア無線部になる。二年生は皆、資格持ち。今は色んな許可申請を取っているところであり、準備ができ次第、流星散乱通信と月面反射通信を実行するつもりだ。アマチュア衛星にも通信を送ってみたい。

 私は先天的な障害で身長が伸びないから地球から月を見ていることしかできないけど、それでも手を伸ばすことそのものは止められなかった。宇宙には浪漫があった、宇宙に夢と希望を見た。伸ばした手は電波に形を変えて、今は月にまで手が届くほどになった。例え、宇宙飛行士として宇宙に行けずとも、何かしらの形で宇宙に関わって生きていきたいと思っている。それもできることなら末端ではなくて最前線で宇宙開発に携わっていきたい。できないものは仕方ない、だからできることをする。夢を見たなら追いかけなきゃ、夢は追いかけなければ夢じゃないって思うんだ。

 だから私はここで月を見る、私はここで手を伸ばすのだ。

 

「本格的に戦車道をやるつもりなかったんだけどねぇ」

 

 戦車道の手助けをしているのは効率的にジャンク品が集まるからだ、何故かは口を閉ざしておく。しみじみと言うと部員の一人が「チームで何かをするって楽しいじゃないですか」と告げる。

 

「私は結構好きですよ。ちょっとした宇宙飛行士みたいな気分が味わえて、同じ機体に乗って皆で力を合わせるのって、こんな感じなのかなって」

「ったく、物騒な宇宙船もあったもんだよ」

「元々宇宙開発史は物騒ですしね」

 

 その通りだ、と笑ってみせる。

 

「ところで部長の分野って何になるんですか? 多芸過ぎて専門が分からないんですけど」

「うん、それね。私もちょっと悩んでる。正直、戦車修理とかって機械修理みたいなノリで始めてるしね」

「いや、あれは、ストーブを修理できるなら戦車も修理できるだろって、前年度の戦車道科の連中がですね……」

 

 はあっ、と部員全員で大きく溜息を零した。

 まあ、それなりに楽しくやってるから良いんですけどね。ちょっと時間が足りないかなって思ってるだけで。あと一応、私はまだ通信関係が最も得意だと思ってます。

 近頃、機械修理と戦車整備が追い付きつつある気がしてる。

 

 

 時間の合間にお遊びで作ったドローンを飛ばしている時だ。

 パソコンのSNSにメッセージが届けられた。送信主は副隊長(ヘイヘ)殿からで、読んでみるとアキが戦車チームの名前案を作ってくれたとのことだ。添付されたテキストファイルを開いて、時折、奇想天外な単語の混じったチーム名案を仲間と一緒に眺める。

 

「あんまり良いのがないね」

「ミールとかどうかな、ミールさんチーム。今思いついたけど」

「他のチーム名と整合性取れないっぽい」

「命名規則の統一は大事、分かりやすいことは良いことだ」

「あんまり統一されてないっぽいけど?」

 

 ぐぬぬと悩みに悩んだ結果、なんか宇宙っぽいという理由でスズランさんチームで決定した。

 頑張れば星っぽく見えるかもしれない、とか、そんなあやふやな感じで。

 決して、小さな癖して毒が強いという理由ではない、決してだ。




・スズランさんチーム
使用戦車:KV-1重戦車(1940年型)

戦車長:蛇草(へびくさ)宇宙(そら)(二年生)瓶底眼鏡で白衣の幼女先輩。
装填手:コウノトリ(一年生)本名は鳥海(ちょうかい)高菜(たかな)
砲手:サキガケ(二年生)本名は大先(おおさき)飛翔(かける)
操縦手:ハヤブサ(一年生)井戸川(いとかわ)千隼(ちはや)
通信手兼:ヒマワリ(二年生)本名は日向(ひむかい)(あおい)

たぶん、瓶底眼鏡で白衣の幼女先輩以外は覚えなくても良いです。
設定があるっていうだけの話なので。
たぶん部員たちは二度と作中で名前は出ない気がします。

学園艦は治外法権。
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