◯KV-1重戦車(
◯Ⅲ号戦車J型(
◯T-34中戦車(ヒ
◯T-26軽戦車(オ
◯T-26E軽戦車(ト
◯BT-42突撃砲(妖
◯BT-7快速戦車(オオ
▼ワッフル学院
◯
◯105mm榴弾砲搭載型
◯ルノーAMC35(ACG1)
◯ルノーAMC35(ACG1)
◯ルノーAMC35(ACG1)(琳瑚搭乗)
◯ヴィッカースT-15軽戦車
◯ヴィッカースT-15軽戦車
◯ヴィッカースT-15軽戦車
◆継続高校:
継続高校、初期位置。
私、
先ず、西側道路の中央付近まで
思い付く作戦は幾つかあったが、それをなす為の練度が足りない。
作戦行動は今回が初めてになる面子が多い中、作戦はできるだけ単純なものを選んだ。それ故に相手からは作戦を読まれやすい。むしろ、読まれていることを前提に動いた方が良いはずだ。西側道路の現場指揮はヒグマさんチームのエトナが執り、中央住宅地に向かう部隊の現場指揮はミカに任せている。
そして私は両部隊の真ん中、少し下がった場所にある繁みに車体を隠して、両方を援護できるように努める。
今回、初参戦となる一年生の操縦手、緊張もあるのだろうか――T-34中戦車とT-26E軽戦車が、ふらふらとしながら前進する姿を内心ひやひやしながら見守った。意外なところで操縦が安定しているのは、風紀委員会が搭乗するT-26軽戦車である。日夜、戦車道の経費で暴走族を追いかけ、溜まり場を破壊して回っているだけのことはある。
さてと西側道路と中央住宅地で接敵するのは予定調和だ、嵐の前の静けさに息を飲んだ。
『こちら、ヒグマさんチーム。ヘイヘ、相手の動きが想定以上に速い』
通信機越しにエトナの焦る声が聞こえてきた。私は喉元に手を添えて、返事をする。
「エトナ、どうしました?」
『すげえ速い動きで西側道路を駆け抜ける戦車が三輌。今、西側道路中心付近から右折し、中央住宅地を横切る道路へと入っていった』
『エトナ、戦車だけじゃ伝わらないって。あれはヴィッカーズT-15って言うんだ、確か時速60kmを超えるんだっけ?』
『あーはいはい、分かったよ。瓶底眼鏡ロリの言う通りだ。とにかく私達よりも先に中央住宅地に入られるぞ、どうする?』
「……とりあえずヒグマさんチームとスズランさんチームは予定通り進んでください」
私はチャンネルを切り替えて、
「こちら、兵衛。ヴィッカーズT-15が三輌、私達よりも先に中央住宅地に入るそうです」
『T-15……なるほど、確かにあれなら私達よりも速い。それでいて厄介だね』
「ええ、隊長。機関銃とはいえ軽戦車の貴方達は撃破される心配があります*1。注意してください」
わかったよ、というミカの言葉を最後に通信を切る。
息を吐いた、そして思考する。戦車の能力だけで語れば、ミカ達が遅れを取ることはない。しかし相手は機関銃だ、優れた操縦技術を持つ二人が居るとはいえ損害を被る可能性がある。特に一年生チームのT-26E軽戦車にとっては少し酷な戦いになるかもしれない。ここはサポートに入るべきか……いや、彼女達を信じる一手だ。
そこを狙おうか、と私はキューポラから顔を出し、繁みに隠した車体から双眼鏡で敵の陣形を注意深く観察する。
「……北側から南側がよく見えない」
どうにも、ここからでは駄目なようだ。
◆ワッフル高校:
『西側道路にKV-1とT-34、更にT-26の三輌が走っています。このまま無視して、私達は予定通りに中央住宅地へと向かいますね』
「了解、全ては作戦通りに進めてくれ」
ヴィッカーズT-15からの報告を聞き入れて、私、
「……結局、三輌も西側道路に投入してきたか。奴ら、島田流の娘を相当信頼していると見える」
「これでは私達は西側道路で釘付けになるな」
「AMC35の主砲では、KV-1とT-34の脅威にはならないから仕方ない」
中央住宅地に入るヴィッカーズT-15を確認した敵は、警戒して動きを鈍らせるはずだ。
その間に、早めに西側道路を右折したAMC35軽戦車を相手に見えない位置から中央住宅地に入れる。代わりにヴィッカーズT-15は相手に見られないよう南側から中央住宅地を離脱。そして、いつでも西側通路に突撃できる位置に車体を隠すよう指示を出してあった*2。
作戦の第一段階は、中央住宅地における乱戦での軽戦車の殲滅だ。その為ならば、ヴィッカーズT-15とAMC35軽戦車は全て犠牲にしても構わない。あわよくば、この段階でⅢ号戦車J型、もしくはKV-1重戦車かT-34中戦車の内一輌を撃破しておきたい。
しかしまあ、それでもだ。隣を走る
二対三で恐らく同等、二対二であれば確実に勝てる自信が私達にはあった。
◆継続高校:
BT-42突撃砲を走らせながらカンテレを鳴らしている。
手慰み程度の演奏であったが、ふと風の流れが変わったのを感じ取り、手を止めて中央住宅地を見つめる。
これは……作戦を誤ってしまっただろうか。どうしたの? とアキが不思議そうな顔を浮かべたので、なんでもないよ、と笑い返した。今の私は継続高校の隊長ではあるけど、私の存在はチームにとって必ずしも必要ではない。年功序列で私は隊長という立場にいるが、チームの纏め役という立ち位置は性に合っていない。周りが納得しないから、それだけの理由で私は似合わない隊長の椅子に腰掛けている。
ただ他に全体指揮を執ってくれる人物がいることは、幾分か気を楽にした。それだけで私は自分の感覚に集中することができる、風に乗る。そして戦場に羽ばたくことができた。
私達が破れることは大きな打撃となるが、致命的ではないのだ。
カンテレの弦を弾く、情熱的に音色を奏でる。それだけでアキとミッコの顔付きが代わり、二人は楽しそうにリズムを刻み始めた。弦を弾く指先に興が乗る。神経を研ぎ澄ませた。風を肌で感じるように、乗るべき流れを探るように、五感を以て周囲を探る――言語というものは意外と不便だ。ある程度、習熟した能力を持つようになると感覚を言語化できない領域に辿り着くことがある。頭の中では理解できているのに言語化できない、そんなもどかしさ。私はきっと人よりも多くものを感じ取ることができる。そして人よりも多くのものを考えることができる。それを処理するだけでも結構な集中力を必要として、それを周りに理解できるように言語化するには多大な労力が必要だった。それでは遅すぎる、理解は足りず、時間も足りなかった。だから私はカンテレを奏でる。音楽であれば、言葉よりも理解しやすいと思って弾き始めた。言語化しきれない多くの想い、それを表現する為に私はカンテレを手に取った。
今は戦車道が楽しくて仕方ない。
「……行くよ」
嫌な風を感じる、中央住宅地から吹き抜ける風に不穏なものを感じ取った。
自然と警戒心が高まってくる。曲は同じ、しかし戦車内の空気が徐々に張り詰めていく。自分が全体指揮を執る隊長なら飛び込まない。しかし、今の私は隊長という席に居座っているだけの一兵士だ。
だから私は首元に手を添える、そして伝える。
「ヘイヘ、これから妖精さんチームは中央住宅地に突っ込むよ」
それだけを告げて、そして加速させる。
罠はある、確実に。どのような罠が待ち受けているのかまでは分からない。
だから、私は風を見る。乗りたい風を読みきった。
「少しアグレッシブに行ってみようか」
「えっとつまり……ミッコ、わかる?」
「たぶんこういうこと!」
とミッコがアクセルを踏み切り、中央住宅地に飛び込んでいった。
◆ワッフル学院:ルノーAMC35(AGC1)
ワッフル学院の作戦はこうだ。
ヴィッカーズT-15軽戦車を先行させることで中央住宅地を確保するところを相手に見せる。そして敵軽戦車部隊を警戒させることによって進軍に遅れを生じさせて、その隙にルノーAMC35部隊を中央住宅地に潜り込ませるというものだ。ヴィッカーズT-15は敵から見えないように中央住宅地を離脱しており、現在は西側道路と中央住宅地の真ん中辺り*3の繁みに身を潜めさせている。
敵が火力の乏しいヴィッカーズT-15が居ると思ったまま、悠々と中央住宅地に侵攻してくれれば万々歳だ。装甲を削って撃破する重機関銃*4と、対戦車砲による一撃必殺の砲撃*5とでは話が違ってくる。被弾覚悟での進軍が、たった一撃で退場させられるのだ。ここで軽戦車を一輌でも多く、撃破しておきたい。
さて、中央住宅地に仕掛けてくるのはBT-42突撃砲とBT-7快速戦車、その後ろにT-26E軽戦車が追従しているとの通信が入っている。車体を隠しながら待ち伏せしているので当然といえば当然の話になるが、壁の向こう側を確認することはできない。
敵は三輌、味方もルノーAMC35が三輌。軽量級が三輌同士、ここはしくじれないな。と私、琳瑚は舌舐めずりする。
戦車が進む音が聞こえてきた、徐々に振動が強くなる。
そのエンジン音からして、BT-42突撃砲かBT-7快速戦車のどちらかだ。違和感はあった。しかし考えるよりも早くにBT-42突撃砲が待ち伏せ場所に飛び込んできた。敵の車輌を確認次第、という指示通りに砲手が砲撃する――が、しかし相手の速度は私達が想定していた以上。砲撃が遅れて、BT-42突撃砲が通り過ぎた後を撃ち抜いてしまった。
BT-42突撃砲が向きを変える。勢いを乗せたまま、履帯が地面を削ってドリフトして、強引に私達の方へと砲口を合わせる。
「ふっ……ざけんな!?」
戦車の乗り方じゃねえ、と敵の射線から逃れる為に戦車を前進させる――と次の瞬間、強い衝撃が車体を揺らしてパシュッと白い旗が上がった。何が起きたのか、キューポラの覗き窓から周りを見渡せば、私達のすぐ横をBT-7快速戦車が通り抜ける。
ああ、そうか、咄嗟に前進してしまったから身を隠していた民家から車体がはみ出したのか。そこを後追いのBT-7快速戦車に撃ち抜かれた、と。理解して、思いっきり壁に拳を打ち付ける。
◆ 継続高校:
「ほえ〜、ミカ隊長とマリ先輩の戦車ってすっごいなあ」
市街地の狭い道にも関わらず、まるで映画のスタントマンのように戦車を乗り回す先輩達に感嘆する。
「
操縦手の
「では、回り込むというのは如何デスカ?」
砲手兼装填手のソフィアの言葉に「そうだね」と頷き返した。
中央住宅地の西側辺りで身を潜めながら待ち受ければ、西側道路にいる中戦車達と合流しようとする敵車輌を撃破できるかもしれない。目指せ、初撃破。そうと決まれば、と進行方向を中央住宅地から西側に方向を変えて、進軍する。
漁夫の利作戦開始だ、と意気揚々と進軍するとダダダッと戦車が撃ち抜かれた。
「えっ、なにこれ! どこどこ!?」
「前進、後進!? どっか身を隠す場所ってない!?」
「う、撃たれてマス! 撃たれてマス!!」
てんやわんやとしている内に、パシュッと練習中に散々聞き慣れた音がした。
あっ、と三人全員が声を揃える。そして、よく見れば、目の前の繁みには敵が潜んでいるのがわかった。なにもできずに終わったなあ、と半ば呆然としながら被撃破判定が上がったことを味方に告げる。撃破判定を受けたものは戦闘に参加できない、通信も緊急時を除いて被撃破後の三分間だけしか許されていなかった。
つまるところ、ここでおしまい。残念、私達の練習試合はここで終わってしまったようだ。
◆ワッフル高校:105mm榴弾砲搭載型
戦況は好ましくない。
中央住宅地でのヴィッカーズT-15とルノーAMC35を入れ替える作戦は打ち破られた。BT-42突撃砲とBT-7快速戦車が縦横無尽に駆け回り、ルノーAMC35三輌を全滅させてしまった。住宅地の外にいるヴィッカーズT-15も位置が割れてしまったので撃破されるのは時間の問題。撃破できた敵軽戦車は一輌だけ。ここで敵の軽戦車三輌を倒しておかないと勝つのは難しいと隊長が言っていた。
西側道路で睨み合いが続く中、ふとキューポラから身を乗り出して戦場を見渡すと、繁みに隠れていた敵のⅢ号戦車J型とT-26軽戦車が前進してくるのが見えた。進行方向を見るとヴィッカーズT-15を打ち破り、そのまま西側通路で睨み合いを続ける私達に十字砲火を仕掛けるつもりのようだ。
このままでは負けが確定する、というよりも今の時点で絶体絶命の大ピンチだ。
私は首につけた咽喉マイクに手を翳して、口を開いた。
「あー、テステス。こちら
数秒した後に『言ってみろ』と短い返事が返される。
「これから私は東側の敵を排除して来ます。その間、KV-1とT-34の足止めをお願いします」
『できるのか?』
「わかりません。しかし、やってやれないことはないでしょう」
考え込むような吐息が通信機越しに聞こえて、そして指示を伝えられる。
『東側の敵を殲滅してくれ、ここは任せろ。お前ならやり遂げるかもしれん』
「ここからの展開、最もドラマチックな結末は絶体絶命からの大逆転。運命の女神が脚本家であることを祈りましょう」
『あとは頼んだぞ、鷹見』
その言葉を聞き、私達は中央住宅地に向けて方向転換する。
勝てるかな? とメンバーに問いかけられた。分からないよ、と私は告げる。でも、と話を続けた。運命の女神が惚れるとすれば、それは最後まで戦いきった者だ。そういった者に勝利を捧げる、と告げるとみんなは、それじゃあ頑張ってみましょうか、と軽い調子で笑顔を浮かべてくれた。
やれることをやる、最善を尽くす。その先に最良の結果はある、と私は信じている。
◆継続高校:
中央住宅地に潜んでいたルノーAMC35三輌をBT-7快速戦車との連携で撃破した後、
その足で中央住宅地西側に潜んでいるというヴィッカーズT-15の撃破に向かった。ミッコの惚れ惚れするような操縦技術は市街地であっても色褪せることはなく、どのような環境であったとしても戦車が持つ最大限の能力を発揮させる。
そして家屋の裏と繁みに隠れているヴィッカーズT-15を確認し、すれ違い様にアキが撃ち抜いて一輌撃破した。そのまま敵の砲手を翻弄するように回り込んで、そのまま装填時間を稼ぎ、もう一輌撃破しようとし――強い衝撃が車体を揺らし、そのままBT-42突撃砲を横転させた。パシュッと白旗が上がる音がする。何が起きたのか、仰向けになりながら呆然としているとミッコが「あーあいつ! 横槍を入れやがって!」と怒鳴った。
ああ、そうか。目の前の敵に集中しすぎたね、と私は床に転がるカンテレが無事か確認する。
「ミッコ、私達を倒した戦車の車種わかるかな?」
「
「知らないなあ」
なんとなしに手癖でカンテレを奏でる。
上手くしてやられたかな、と思いながら隣で横になるアキを見つめる。すると、とても悔しそうに歯を食い縛っており、言葉を発しようとはしていなかった。なんだかんだで私達は負けず嫌い、だから、ここまで頑固に生きてきた。
やはり一輌では限界がある、そのことを噛み締めながら私は目を伏せる。
作戦が決まり、それを丁寧に進めようとすると物語性が失われる不具合。
とりあえず序盤戦を流す感じで、ここから佳境。
気合いが入りますなあ(震え声
座標はWoTの同名マップ「漁師の港」に対応しています。
ps.
ルノーAMC35(ACG1)の注釈の説明文が間違っていました。
情報提供多謝、そして間違った情報を流して本当に申し訳ない。