◯KV-1重戦車(
◯Ⅲ号戦車J型(
◯T-34中戦車(ヒ
◯T-26軽戦車(オ
×T-26E軽戦車(ト
×BT-42突撃砲(妖
◯BT-7快速戦車(オオ
▼ワッフル学院
◯
◯105mm榴弾砲搭載型
×ルノーAMC35(AGC1)
×ルノーAMC35(AGC1)
×ルノーAMC35(AGC1)(琳瑚搭乗)
◯ヴィッカーズT-15軽戦車
×ヴィッカーズT-15軽戦車
◯ヴィッカーズT-15軽戦車
◆観客席
私、ダージリンは後輩のオレンジペコに紅茶のおかわりを頼み、状況を整理する。
西側道路では中央住宅地に続く横道を挟んで、継続高校のKV-1重戦車とT-34中戦車、ワッフル学院の
継続高校の隊長、ミカが乗るBT-42突撃砲は中央住宅地での戦闘後、ヴィッカーズT-15部隊を撃破しようとしたところを横から接近していた
「思っていたよりも早く脱落しましたわね」
と私は零し、新しく注がれた紅茶を口にする。
継続高校の要は良くも悪くもミカであり、このような序盤で無理をして良いような立場にない。しかしミカが撃破されても継続高校の動きには乱れがなかった。ミカ以外に誰か指揮を執れる者がいる――違和感を吹っ飛ばして、結論に至る。そして、そいつは恐らくⅢ号戦車J型に乗る人物、
お手並み拝見といきましょう、と私は静かにティーカップをソーサーに戻す。
「それにしても継続の隊長は規格外ざます」
アスパラガスが紅茶を嗜みながら巨大スクリーンを見つめている。
「ええ、あのBT-42は単騎で小隊級の戦闘力を持っていますわ」
「並大抵の作戦では、あれ一輌で引っくり返されるざます」
参謀泣かせも良いところざます、と彼女は溜息を零す。
実際、高校戦車道では彼女以上の実力を持つ戦車チームはない。射撃という分野であれば、ナオミとノンナの双璧が存在しているが、こと格闘戦という分野においてはミカの戦車チームが圧勝だ。まず彼女達の動きについていける者が少なく、唯一、遅れを取らないといえる存在は西住まほが率いる戦車チーム。それでもミカと比べると実力が数段落ちる。
彼女達一輌だけで、作戦一つ分と同じ価値があると云えた。
「お目当が消えたが――ここからどうなると思うざます?」
アスパラガスの問いかけに、私は涼しい顔で告げる。
「面白いことになるわ。ええ、きっと」
◆継続高校:
ミカ隊長が倒された、そのことを
勝手に中央住宅地に飛び込んで、勝手にヴィッカーズT-15の排除に向かって、味方の援護も待たずに突撃するから簡単に撃破されるのだ。――とはいえ
そんなことは後で反省会を開いた時に言及すれば良い。今、気にすべきは105mm榴弾砲を搭載した特殊仕様の
そして首元の咽喉マイクに手を添える。
「こちら長ぐつさんチーム、
あれは野放しにはできない。この状況で西側道路から一輌、放たれた猟犬が切り札でないはずがなかった。
「西側道路の指揮はエトナ先輩に移譲するね。私は今から
『こちらエトナ、了解した。……して、注文はどうする?』
「こっちの邪魔をしないように
了解、と軽い調子で返される。続く指示を私は全車輌に伝える。
「
みんな準備は良い? と問いかけると『
◆ワッフル学院:105mm榴弾砲搭載型
空気が変わった気がした。
試合前に整列した時、初めて顔を合わせる相手なのに、ヤバイ感じがしていた存在がいた。それは、先程倒したBT-42突撃砲の戦車長。確か敵チームの隊長でもあった気がする。少なくともエース、相手側の中心人物であることには違いない。しかし、その割には相手側の動揺が少なかった。他に参謀が居たのかもしれない、それならば指揮に乱れが生じないこともわかる。
だがしかし、それでも、やっぱり相手側に動揺が見られないのは不気味だった。
「ま、いっか」
どちらにせよ、相手を殲滅しなくてはいけないのだ。ここはさっぱり、ばっさりと思考を切り替える。
とりあえず現状把握。私達の戦力は
その数秒後に中央住宅地から軽戦車が一輌、飛び出してきた。そいつは一輌、ヴィッカーズT-15を撃ち抜き、そのまま私達の方を目掛けて突っ込んできた――が、咄嗟に方向転換する。相手に照準を合わせた瞬間、引き金を引こうとした砲手に「まだまだ」と引き付けさせて、そしてドリフト走行で大きく側面を晒した瞬間に「撃て」と命じた。相手車輌は砲塔に被弾し、榴弾が炸裂した衝撃で大きな車体がゴロンと一回転、それから横に倒れて白旗を上げる。
これで二対二。かと思いきや、ヴィッカーズT-15が西側道路からの砲撃に被弾した。
「……隊長、きちんと足止めしてくださいよ」
『すまない、見誤った。あのT-34の動きが悪かったので素人集団かと思っていたが……砲手だけは良い腕をしているようだ』
「対峙している時も中戦車の方はしっかり狙っていました。重戦車は牽制を優先してましたよ」
『……重ね重ね、すまないな』
構いませんよ、と近くまで迫ってきた戦車二輌に狙いを定める。
そして正面に見据えたまま、戦車を走らせて敵二輌相手にヘッドオンを仕掛ける。
◆継続高校:
「……隊長に続き、マリもやられたか。勝てるかな、これ?」
マリの動きに翻弄されず、冷静に撃破した手腕にただ者ではないという気配を察する。
とりあえず、まとめて敵に倒されないように
「どうするにゃ、どうするにゃ! 相手やばいにゃ、指示キボンヌっ!」
「
「当てられない? いいえ、当てるのです、
「スオミ、メンバーを威圧するのは禁止だよ」
わかりました、とスオミが告げながら次弾を装填する。
さて、正面からの真っ向勝負。意識を集中させる、まだ私の心には余裕がある。
もっと研ぎ澄まさないといけない。
「次の一撃に全てを込めよう」
そう静かに告げて、キューポラから身を乗り出した。
◆ワッフル学院:105mm榴弾砲搭載型
今度こそ、ヘッドオンを仕掛ける。
道路の上ではない柔らかい畑の中、舗装されていない地面では行進間射撃の命中率は著しく下がる。そのことは相手も理解しているはずだ。つまり砲撃時には必ず止まる、その素振りを見せた瞬間に車体の進行方向を斜めにズラせば、次の数秒間、落ち着いて相手に照準を定めることができる。仮にもし互いに止まらなければ、至近距離からの行進間射撃の撃ち合いになる。遠ければ当たらず、引き寄せると相手に先に撃たれる。お互いに自身の限界ぎりぎりを見極める擬似的なチキンラン――と、なるのが普通の流れだ。
私はキューポラから顔を出す、相手もまたキューポラから身を乗り出しており、互いに互いの顔を見ることができた。
腕を組んだ、そして余裕の笑みを浮かべてみせる。かかってこい、と胸を張って挑発すれば、後悔するなよ、と敵の意思が感じ取れるようだった。ヒリヒリとした緊張感が肌を刺す、小さかった相手戦車が徐々に大きくなっていった。振動する、口を開けると舌を噛んでしまいそうだ。相手を見据える。お互いの表情を確認できる距離で、こいつはできる、と直感する。だから指示を出した。こいつはできる奴だから、この策が通用する。
速度を緩める――戦車でのヘッドオンには、こういう戦い方もある。
相手戦車が車体を私達から見て右に大きく動かした。砲撃はしていない。このまま静止して、擦れ違い様の横っ腹を狙うつもりで砲身を旋回させる――が、すぐ直後に相手戦車が反対側、右から左に車体を切り替えして、地面を削る。まずい、と思った私は操縦手にアクセルを全開まで踏み切るように指示を出した。その場で回転させるように動かした相手車輌は左九十度の角度で止まり、つまり私達の横っ腹に砲身が向けられる。その瞬間、横Gの負荷がかけられた。直後、放たれた砲撃は車体後方を抜ける。そしてドリフトした
砲撃。しかし、一歩遅く、相手車輌の急発進で避けられる。
「面白いのがいる」
私は舌舐めずりをし、そして相手車輌を追いかけるように操縦手に指示を出した。
◆継続高校:
くっそ、完全に騙された! この土壇場でフェイントを決める強メンタルの持ち主めっ!
二度も真っ向勝負を挑んできたから、もっと小細工なしの勝負を好むと思ったよ!
ここで決める勝負を決めるつもりが決まらなかった。
それに背後まで取られるのでは状況が悪い、今は後ろから追い回される形だ。身を乗り出したキューポラから背後を見ると、
私は大きく息を吸い込んで、吐き出した。そして、しっかりと相手を見据える。
今回の相手は獰猛な鷹。古来、燕を斬るほどの腕前を持つ剣豪の秘剣を燕返しと呼び、今なおも語り継がれるほどの達人芸とされているが――果たして、今回の鷹退治にはどれだけの難易度があるだろうか。まあ相手を鷹と例えるのであれば、真っ当に倒すことは難しく、かといって逃げ切ることも不可能に近い。
ならば、策を講じるのが常道だ。
「あの民家の裏に飛び込んで、そのすぐ角に車体を寄せて待ち伏せよう」
首元に手を添えて、指示を送る。
砲身はゆっくりと旋回させて今、真後ろに向けて、さあここで勝負を決めると意気込んだ。
最も手前にある民家の裏へと車体を飛び込ませ、すぐに停車、速やかに後進しながら民家の角に車体を寄せる。耳を澄ませる、近付いてくるエンジン音に意識を集中させる。このまま相手も飛び込んでくるのでタイミングが勝負、耳を頼りに相手との距離を測る必要があった。しかし途中で履帯の軋む音が聞こえて、エンジン音が少し遠ざかった。民家の裏をぐるりと回る軌道、サアッと血の気が引くのを感じる。「綾子、後退! 砲身、前!」と咄嗟に指示を出した数秒後、待ち構えていた方と反対側から
爆発音に紛れるように相手の後ろを取るべく、同じ経路を辿るように民家をぐるりと一周させる。
ゾクリと嫌な予感がした、この動きを相手が予測していないとかあり得るのか?
「止まってッ!」
角から飛び出す前に急停止、ガクンと前屈みになる車体。振り落とされないようにキューポラにしがみつき、その直後に目の前を榴弾が横切った。車体前部が少しだけ、角から飛び出してしまった形だ。それに反応して撃ち込まれたということはつまり、待ち構えられていた。動きを読まれていたということだ。
「綾子、マリみたいな超感覚でどうにかできないッ!?」
「無茶言うなーッ!!」
そのまま後退、これはもう真っ当なタイマンで勝てる相手ではない。
まるでミカ隊長やマリを相手にしているような気分だ。
かといって、逃げる事もできない。残ったチームでアレを相手にする事は無理だ。
ここで私達が
◆ワッフル学院:105mm榴弾砲搭載型
相手が住宅地の中で最も近い民家の裏に飛び込んだ時、待ち構えていると読めたのはキューポラから顔を出した相手の戦車長が首に手を添えていたからだ。後ろを取る為に回り込んでくると読めたのは、咄嗟の判断で罠に嵌めようとしてくる相手が素直に真正面から攻め込んでくるとは思えなかった為だ。
だが、どちらも看破したにも関わらず――相手の勘の良さなのか、まだ仕留めきることができずにいた。
「強いなあ」
不思議と笑みが溢れる。
ここまで自分と戦って、倒し切れない相手と戦った経験がまだ自分にはなかった。
そして強敵との戦いは自分が思っていた以上に高揚する。
ああもう、このままずっと戦っていたい。
そう思えるほどに。
「だから邪魔はしないでほしい」
北から軽戦車が突撃してきたので、丁寧に照準を合わせて吹き飛ばした。
その隙に再び裏から回り込んできた中戦車に砲身を向ける。そして砲身を向ければ、相手が回り込んでくることは読めた。相手は基本的に、勘よりも策を頼る。ここで正面突破という博打に出られるだけの度胸はない。だから砲身を相手の車体に向けた後、回り込まれてもいいように砲身を傾ける。
そのまま相手の動きに合わせて、砲撃をすれば良いだけだ。これで東側の敵を全て排除できる。
「今だ」
と告げた次の瞬間、ガクンと急に相手戦車が動きを止めた。
砲撃を止める間もなく、発射される。相手が動くことを前提とした砲撃は、もちろん掠りもしない。
キューポラから顔を出す相手を見据える。何故だか、とても気まずそうな顔をしていた。
◆継続高校:
向けられた砲身、相手の砲撃を避ける為の合図を出した直後のことだ。
ガクンと急にⅢ号戦車J型が動きを止める。その直後に放たれた砲撃は私達の進行方向に向けられており、車体を掠めることもなく遥か後方で破裂する。そして通信機から綾子のとても、それはもうとても気不味そうな声で『……エンスト、かな?』という言葉が聞こえてきた。ゆっくりと顔を上げると
なんというか、とても気まずい。
「……その動きは作戦であってる?」
「…………いいえ、
そんなやりとりの後、薫の容赦のない砲撃によって
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