キャロが子竜を拾い、治療してから1か月がたった。
すでに子竜の怪我は綺麗になり新しい鱗が生えて怪我をしていたとは思えないほどだ、しかしここにきて、新しい問題が発生した。
「なんで、飛ばないの?」
キャロは牧場桶の中で眠る子竜に問う。
そう、飛ばないのだ。翼に外傷もなく、筋肉も問題ないはずなのだがいくら森に帰そうとしても子竜は飛ばず、ただキャロを見つめるだけだった。元々は飛ばない竜族と考えるのは難しい、いや考えられない。
なぜなら、一度キャロの前で子竜は空を舞ったのだから。
「キミは帰りたくないの?」
飛ばないのではなく、帰りたくない。
フリードリヒが子竜と話している所をよく見ている、フリードリヒを通して話をしようとしても、なぜかフリードリヒは答えようとせず「答えられない」というだけだ。
今回も恐らく、次回も帰そうとする時だけ、飛ばないだろう。
時間も迫っている、キャロはため息を一つついて子竜を優しく鞄の中に入れフリードリヒは自分の頭の上に乗る。
学校の授業のみ、竜召喚学の教師であるウィッチ先生に子竜とフリードリヒを預かってもらっている。
今日も今日とて授業を受ける。
召喚士学を担当しているサモンプリースト先生はすごい有名な召喚士で下級モンスターをほとんど召喚することができる素晴らしい先生なんだけど、ものすごく眠たくなるようなありがたいお話を一時間座学として聞いているため「サモン爺」と呼ばれている。
白魔導師学では校長先生しか名前を知らない熟練の白魔導師先生が担当している、初めての授業での開口一番は「名前を封じている、お前たちで呼び名を適当につけろ」の発言。
クラスの全員で「白先生」と呼んでいる、授業自体は座学して大量の宿題を出され、次の授業で実技の繰り返し。
魔力石学でアーカナイト先生に魔力石の魅力を語られ、普通学で担任のホーリー先生に綺麗な笑みで宿題と掃除当番一週間を受けたクリッチー君が絶望の顔をしたり、フォーチュン6姉妹先生の1人ファイリー先生の火魔導師学を受けてるそんな時、ふと窓の外を見ると一部、変な雲があった。
黒い雲だけど、渦を巻いていr
「おら! そこのピンク髪! ここの問題を解いてみろ! よそ見できるほど余裕ならできるよなぁ!?」
「……い」
「あん?」
「先生、あの雲こっちにきていませんか?」
黒くて、渦を巻いている変な雲。
なぜかあの雲が私は恐ろしく感じた。
ファイリー先生は私のところまで来て窓を覗いた、真剣な顔つきで変な雲を見る。
何を思ったのか教卓まで戻り、一言言った。
「自習にする! 一応帰る準備だけはしておけ! こちらが判断するまで教室からでるんじゃねーぞ!」
教室内がざわめき始める、いきなりの自習宣言に驚きながらも一部はこうなった原因である雲を見に、一部は大丈夫だろうとノートと教科書、筆記用具だけだし残りをカバンにいれ、勉強をし始める。
そして、もう一部は
「キャロちゃん!」
「セーム!」
「なんなんだろうね、あの雲すごいのかな?」
「キャロがいうようにファイリーせんせいが自習にするほどだよ?なにかあったんじゃないのかな?」
「でもライナちゃん、魔法都市には高濃度コアを使ったバリアーがあるんだよ?」
「お、おい! あの雲! こっちに近づいているぞ!!」
クラスメートの1人が叫んだ。 窓を見ると先ほどよりいや、変な雲は校庭にまで近づいている。学校に迫った時、虹色の壁が雲を遮った。
そんな時 頭の中でホーリー先生の声が聞こえた。
『全生徒に通達します。 今から荷物を持って体育館に集合してください。怪我がないように慌てずに行動しなさい。
繰り返します。全生徒に通達します。 今から荷物を持って体育館に集合してください。怪我がないように慌てずに行動しなさい。』
ゴクン。
だれかが唾を飲み込み音が聞こえた。魔法都市エンディミオンは作られてから一度も外部から侵略されず戦争に巻き込まれない歴史がある。だけど、今それが覆された。
クラスの全員は素早く荷物をまとめ始める、セームもライナも自分の席に戻って荷物をまとめ始めた、わたしも荷物をカバンに詰めて職員室へ向かった。 フリードと子竜がどうなったのか、心配だから。
この時運命の神様がいるとすればキャロの行動は試練に挑むものと呼ぶにふさわしいだろう。あるいは運命を狂わすものと呼んでもいい、キャロ自身が本来ならば精霊界にいるはずがないのだから。
キャロが子竜とフリードリヒを返してもらうために職員室へ向かう時、体育館では職員たちが3つに分かれて作業をしていた。一部は職員が魔力石に魔力を込め、魔法術式の安定を務める。
もう一部は召喚士の職員は他の学校にいる生徒を体育館に召喚し、最後の一部は体育館の広さを何倍にもして魔力の壁を作りあげ鉄壁守りし少しでも侵略してくる雲を止めていた。
そして増えていく生徒と魔法術式の中へ消えていく生徒たち、雲の侵略が刻一刻と迫る中なんとか全学校生徒を魔法術式の中へ送り込むことができた。 送り先は疑似空間、どんな属性、種族でも住める広さもある。
「よし、これであとは破邪の魔法壁がどこまで持つかだな」
「そうだな、あの黒い雲の中にある巨大な眼。 王立魔法図書館に資料本があってよかった」
「まったくだな、生徒達を吸収されてたまるか」
エンディミオンと校長の混沌の魔術師がそういうと、体育館の扉が開いた。
キャロだ。頭にはフリードリヒが目を回していた。
「す、すみません! おくれましたー!」
「なに!? まだ生徒がいたのか!?」
「魔法術式は!?」
「だめです! もう、魔力石に魔力はありません! 疑似空間へ送ることは出来ない!」
「……仕方がない、ここよりはマシだ。 混沌の空間、カオス・ゾーンへ送ろう」
体育館に来たキャロは何が何だかわからない状態でキャロを中心に魔法陣が現れる。言葉を発することなく、キャロは時と空間が入り組む除外された空間、カオス・ゾーンへと送り込まれた。
カオス・ゾーンは本来なら枷を付けた罪人が行く空間、枷がない者が行けば遠い未来か過去、または現実の時間にこの場所、世界はたまた別世界に飛ばされる危険な行動ともいえるだろう。
こうして運命の、いや時の女神のいたずらか、それともきまぐれの女神によるコイントスか、運命の別れ道はこうして決まった。