「フィールドバリア」によって守られている「古の森」を抜けて光り輝く巨木である「ガイアパワー」へと近づくと「フィールドバリア」を作った魔法使いの1人が案内役として残した地属性の精霊に私たちは出会った。
出来れば、ナチュラルに学生時代の頃、共にいた友達が無事でいることを祈りながら私たちは地属性の精霊、「デーモンビーバー」に再び「古の森」の中を案内され、どこかを曲がり、どこかの木でくるりと回って森を抜けると不思議な森が目の前にあった。
かわいい草の精霊や草の羽をした虫型の精霊たち、フルーツの形をしたモンスターたちが明るい森の中でのんびりと過ごしている不思議な森に。
「ここにいる精霊たちは我らの同志にしてナチュラルの大部分と呼べる者たちだ。
本来温厚で争いなどしない彼らだが、今回の戦争はやがてこの森にまで食い込むことを想定されている、彼らは自分の森を守るため、我々は戦争を止め平和にするために協定を組んでいるのだ」
「じゃあ、ナチュラルっていうのは……」
「きみガ思ってイル通りさ、「ナチュル」と「我ら」のラを合わせタノさ、
それに首領が言ったヨウに彼らが大部分だしね」
ここにいる精霊たちがナチュル。
ナチュラルの大部分を占めている精霊達かぁ、あの「混沌の世界」に居た頃や魔法都市にいた時でもたくさんの本を読んだけれど、彼らのことは知らなかった。
ふと、キャロは魔法を使ったときに感じる魔力の力を感じ、その方向を見つめた。
そこにはメガネをかけて知的的で茶色のショートヘアーの女性だった、ただその女性は見覚えがあるローブを着込み、足元には先ほど案内してもらった「デーモンビーバー」がいたのだ。
ローブを見た瞬間、キャロは走り出した。
突然キャロが走り出したことで黒蠍盗掘団の面々も驚きながらも付いて走り、その先にいる女性に気が付き警戒を解いた。
キャロが女性の目の前で止まりじっと見つめる。
女性はどこか困りながらもキャロと黒蠍盗掘団に目をやる。
「え、えっとー、どうしたんだい?」
「あの! 闇霊使いのダルクを知っていますか!?」
その時、女性はいつの間にか距離が開き、いつの間にか飛び出ている宝石が先の方に付いている杖を構えてキャロをじっと見つめる。
足元にいた「デーモンビーバー」もキャロのことを警戒しながら威嚇をし始めた、そのことに気が付いたキャロがふと気が付くと回りには黒蠍盗掘団を含め、ナチュルの精霊達がキャロを警戒し始めた。
「キミ、なんでダルクのコト知っているんだい?」
「え?」
「だから、なんでキミは暗黒界の王子であるダルクのことを知って、探しているのかを聞いているんだ」
暗黒界の王子……そのことを聞いたキャロは頭が真っ白になった気がした、初耳なのだ、ダルクがそのような存在だということを。
キャロが知っているダルクは優しく、頭がよく自信に溢れていながらも使う力を扱いきれずにいたために魔法族の里にて黒衣の大賢者に闇霊使いとしての使い方を教えてもらっていることだけだ。
「黙ってないで、キミはダルクと何の関係があるの? 早く吐きなよ」
「え、あ……」
言葉が出ない。 キャロはまさにそんな状態だった、頭の中が混乱し何を言えばいいのか、それすらわからない。 なぜこんなにも警戒され周りからも臨機態勢に入っているのすらもわからなくなっていたのだった。
そんな何も語らないキャロを周りの精霊達はそれぞれ何も語らないのは敵だからだと考え始め臨機態勢から戦闘態勢へと変わっていく、すでに止められない状態。 いつ、だれが、どのタイミングでキャロに攻撃するか。
秒読みだ。 周りからの威圧感にキャロはさらに混乱し悪循環となる。
そんな時、キャロの後ろから低めの声と高めの声が周りに響き渡る。
「「待ちなさい!」」
その声の主へ顔をその場にいた全員が見た。
黒の高貴な雰囲気を漂わすドレスと垂れたウサ耳のような帽子を身に着けた女性と白の神聖さを表すかのような雰囲気が溢れるドレスと子羊の帽子を身に着けた女性たち、その後ろには黒いウサギと白い羊の執事がそれぞれ立っていた。
「あんた達、女王の御前よ、図が高い! 控えなさい!」
「く、クランちゃん! ここは王宮とかじゃないんだから!」
「ピケル、アンタは甘いのよ、たとえ王宮でなくとも格差は免れない、どんな狂人でもね」
「でもそれだとみんなと仲良く慣れないし、平和に暮らせていけないよ」
……どうやらいきなり現れた二人は女王らしいのだが、なぜか互いに言い合いを始めている。 様子から言えばこの二人は仲が悪い方なのだろうか? それはさておき、いきなり現れた二人に周りにいた精霊達は驚いて慌てて膝を地面につけ、頭を下げた。
キャロ以外。
「たく、まぁいいわ、このことは後でたっぷりと話しましょう。 ピケル頼むわよ」
「うん、でも大丈夫だよ、きっと」
ピケルと呼ばれた白いドレスを着た女性は後ろに羊の執事を連れてゆっくりとキャロの前まで歩き始めた、他の精霊達はいそいで頭を下げながら道を開ける。
「ごめんね、ちょっと見させてもらうね?」
「え……?」
その言葉と同時にピケルは空に右手を掲げると光り輝き、1本の杖が収まった。
そして、ピケルとキャロの真下に桃色の魔法陣が現れ鈍く光りだす、そのことに驚きながらも数分経ち、魔法陣が消えるとピケルはキャロに抱き着いた。
「やっと見つけたよ、キャロちゃん!」
「え、もしかして魔法都市のクラスメートだったピケル……ちゃんなの?」
「うん!」
『え、えぇぇぇぇぇ!!?』
森の奥にまで響き渡るかのような大合唱というべき声で精霊達一同が声を合わせて大声で叫んだ。 また声を出さなかった一部の精霊達も内心驚きながらも納得していた。
「そうか、それでダルクのことを知っていたのか」
茶色のショートヘアーをした女性はメガネを一度はずして目を解し再度メガネを付けた。
内心では女王の友達に攻撃を仕掛けなくてよかったとほっとしている。 しかし、そことあのことは別だと考えながら未だにキャロに抱き着いているピケル……ピケル女王を微笑ましいと思いながら二人の方へ歩き出した。
一方クラン、いやクラン女王も魔法都市崩壊事件で生き別れとなったキャロのことを深く後悔し最近まで落ち込んでいた事を考えいつもは眉間にしわを寄せていた顔には誰もが見惚れるような自然的な笑顔が現れており、ピケル女王の方へ歩き出すころにはいつもの顔へと戻っていた。
またクラン女王の笑顔を見てしまった特選t……黒蠍盗掘団男部は眼をハートにし倒れていた、ついでに言うとクラン女王から授かったムチをミーネが男たちをはり倒したと言った方が正しい。
さて、微笑ましい姿を見せている二人は、未だに抱き着きながら笑顔でいっぱいだ。
この時、キャロピケルクラブ会員募集をしていたナチュルの面々には何も言わないでおこう。
「ピケルちゃん! よかった! 無事だったんだね!!」
「うん! キャロちゃんも無事でよかった! あの時キャロちゃんとなんで一緒にいなかったんだろうってずっと後悔してたんだよ!」
「うん、ごめんね? あ、セーネちゃんやライナちゃんたちは無事なの!?」
「……うん、無事だよ」
どこか愁いがある声で答えるピケル女王にキャロは少し悲しくなりながら小さく答えた。
「さてピケル女王、彼女を教えてくれないか? 出来ればこの場にいる全員に」
「そうだね、うん、わかった。 みんな、ここにいる子は魔法都市エンディミオンのクラスメートで友達のキャロちゃん! ダルク君のことを知っているのは彼が世界樹のイタズラ精霊によってこの世界に飛ばされてきた所を助けて魔法都市の学校へ入学したからだよ。
魔法都市崩壊事件の時、先生方によって安全に飛ばされた私を含めたほぼ全員が「疑似空間」へ飛ばされたけれど、キャロちゃんは大事な子を返しに戻った頃には術式が消えた頃だった、先生方は仕方なく「混沌の空間」へ飛ばすことにしたの。
帰って来られたのは今日みたいだね、だからダルク君のこともライナちゃんのことも関係ないよ」
「あれ? なんで知っているの?」
「キャロちゃん忘れたの? 私が一番得意な魔法!」
「え? それってなんとなくしかわからない読心術のこと?」
「ふっふー! アレから何十年たっていると思ってるの? 今ではきーわーど検索までできるんだから!」
「きーわーど検索? えっとよくわからないけどすごく出来るようになったんだね!」
キャロの容疑が晴れたことでピケル女王、クラン女王、メガネをかけたショートヘアーの女性たちと共にキャロは1つの部屋へ連れてこられた。
「さて、先ほどはすまなかったな。 私はアウス、地霊使いのアウスだ」
「違うでしょ? 荒ぶるアウスじゃない」
「うっ……私としてはそんな暴力的な二つ名はやめたいのだが……」
「無理よ、アンタ、ヒータと意見の食い違いで何日暴れたと思っているの?」
「うぅ……あれは確かにすまなかったと思うが……」
「アレを見た全員が言っているわよ、『荒ぶる魂を持つアウスだ! 知的なんかじゃない!』ってね」
クラン女王に言われるたびに茶色の女性、アウスは顔を赤くしながら小さくなる。
ヒータという人物(?)とのことでアウス自信のイメージが壊れた事件とでも思っておけばいいのだろうか?
アウスがしょんぼりする頃にようやくキャロの話が始まった。
「ピケルちゃん、ライナちゃんたちどうなったの? それにピケルちゃんが女王様って……」
「そうね、まずは私たちのことを話さないとね、私はクラン、ピケルの姉よ。 私とピケルは魔法の国の姫君だったの、あの頃は互いに仲良かったんだけどね、
あの糞親父が私とピケルに「『女王の試練』をクリア出来た者を次代の女王とする」って言われたわ、そのための準備期間として魔法都市エンディミオンで魔法を学び側近を選んでいたわけ、その間私たちは国の状況なんては全く知らなかったわ」
クラン女王はどこか苦しそうな顔でピケルちゃんを見つめた。
ピケルちゃんも悲しそうな顔で俯いて羊帽子を腕に抱えながらクラン女王に代わって話し始める。
「お父さんはね、私たちが対立するように互いにウソの情報を与えて、それが本当だと思わせる状況を作り見せられたの。 互いに互いを女王にさせられない、女王にさせれば国は崩壊すると思わせられた。 だから互いに憎いとも思っていた」
「けれど、あの魔法都市崩壊事件で仕方なく一緒に帰された私たちはその時国の状況を知ったわ。 門の外は綺麗、けれど中はもう見てられなかった。
最初は糞親父も国を守ろうとしていたわ、王宮の鉄壁を確実なものとし、敵から守るために戦争を仕掛けた。 戦争は長く本当に長く続いた、その間に朗報を待つ糞親父は心を壊し始め、王宮の重税を上げ民からお金を巻き上げ、糞親父に訴えようとしても強引な番兵を雇ったおかげで誰も王に訴えることは出来ず、どんどんと状況は悪化し始めた」
「通行税……通るためにお金の金額を上げ、検問で取り締まりが厳しくしほとんど無罪な人達が牢屋でご飯も食べられずに牢屋の中で死んで行って、その死んだ瞬間にその人の持ち物は全部お父さんが奪って売ったの」
「最終的には守るべき民から強制的に押収して弾圧し、牢屋に入れられたわ。 私たちはそんな状況を見せられ互いに驚きながら涙を流したのはあれが初めてね。 申したくもないけど。」
「うん、そうだね、あんな思いはしたくないよ。 あの時、戦争から帰還できたフリード将軍部隊が来なければ私たち、まだお父さんの人形だったものね」
「ええ、後はカンタンね、同時を集い岩投げアタックで王宮を崩してみんなで突入。
糞親父を王座から引き摺り下ろして新しい王を立てる。 といっても私たちが女王になるに相応しくなるまでの間だけどね。 今の王はいいやつよ」
私は言葉が出なかった、あの時ピケルちゃんたちがそんなことになっているなんて知らなかった。 その時の私はあの世界で魔法を学び訓練していた。 父さんも言うべきドラゴンにいろんなことを学んでお話をしたりしてフリード達と暮らしていた。
同情なんかしちゃいけない、だから私は
「そっか、ごめんね、大変な時に助けに行けなくて」
「ううん! 仕方ないよ、むしろ「混沌の空間」から帰還できたこと自体が奇跡だよ!」
「確かにそうだね、キャロ君、キミはどうやってあの空間から帰還できたんだい?」
「私ね「混沌の空間」に転移されたけれど、そこから「除外された世界」に飛ばされたの、そこで色んな精霊達に魔法を学んで助けてもらって帰還できたんだよ」
「ふむ、出来れば詳しく教えて貰いたい所だが、まずはダルクのことを話そうか」
「っ! おねがいします」
ついに来たと思った。 暗黒界の王子と呼ばれたダルク君のことを、今彼がどんな状況なのかを、もし出来る事なら助けてあげたいとも思う、だってダルク君が戦争を起こすなんて思ないから。
きっとなにか思惑があるんだ。
「まず彼、闇霊使いダルクは霊使いとしては珍しく、強力な力を持っている。
「闇」、それは破壊の力を持ち、悪とも呼ばれる存在が多い。
魔法都市崩壊事件後、彼は闇の閃光と共に私たちの前から消えた、その後突然に現れ光霊使いのライナを連れ去った」
「ダルク君がライナちゃんを……?」
「ああ、突然の犯行に私を含めた霊使いたちは対処出来なかった、次に現れたのは暗黒界の軍勢を引き連れ戦争を起こす姿だった」
「うそ……」
「嘘だと思いたい、彼のことは弟の様に思っていたからな、けれど間違いなく事実だ。
他の者には言っていないが、はっきり言おう、今回の戦争の原因はダルクだ。
私たちも知らなかったが、ライナを連れ去ったことで起こったといっていい」
「どうしてライナちゃんが?」
「ライナは……ライトロード、いや光の王女と言っていい存在だ。その力と霊術を組み合わせればライトロード軍を含めた光属性は操られる程だからな、準備を与えないように、戦争を起こしたのだろう」
ダルク君は暗黒界の王子で、ライナちゃんは光の王女だなんて……でも、けれどなんでダルク君がライナちゃんを浚ったのかが分からないよ。 エンディミオンにいた時、あんなに仲が良かったのに、みんなで遊んだり食べに行ったりしたのに。(男はダルクのみだったが)
うぅん、やることは1つ、ライナちゃんを助けて、ダルク君からお話をするんだ! そうすれば本当のことがわかるはず。
「私たちは今、戦力を集めている状態よ、アウスちょうどいいから報告しなさい」
「ああ、アマゾネスとの交渉は成立した。
報酬は子づくり、無論だからと言って無茶無謀を望まないし、命令をしないことを条件に入っている」
「妥当ね、これであとはヒータ、ウィン、エリアの3人か……」
その時、ドアがバタン大きな音を立てながら勝手に開き風が中に入り込んできた、その風は暖かい様で寒くもない心地のいい風。
コツコツとドアから入ってきた同じローブを着込んだ緑色の綺麗なポニーテイルがかわいい女性。
「おや、帰ってきたようだね。 久しぶりだな、ウィン」
「おひさー アウス」
ウィンと呼ばれた女性は眠そうな瞳で私たちを見つめる……いやなぜか私の方をじっと見つめている。
アウスさんはため息を吐いて、右手をあげて、ウィンさんの頭をたたいた。
「寝るな!」
「むもぉー? おーめんごめんご。 つい寝ちゃった」
「それはいつもだろ? でどうだった?」
「ノルマクリアー。 姉さんを通じて説得したし、ドラゴニティもハーピィもオーケーだってさー」
「それは良かった、で? 条件はなんだった?」
なんかサラっと流したけれど、ウィンさんって目を開けながら寝られるなんて器用なんだなぁ。
それにアウスさんと同じくらい背が高いなぁ、羨ましい。 私なんてあれから何年経っても背があまり伸びないし、コレも大きくならないし……。 べ、別に悔しくないもん、まだ大きくなるはずだもん! ピケルちゃんも大きくなっているんだから私にだって希望はある!
「姉さんたちは「フィールドバリア」で、ハーピィさんたちは子供―で、ドラゴニティさんたちはアウス、畑に栄養お願いねー」
「はぁ、結局は私に回ってくるのか……」
「し、仕方ないよー、アウスさんはリーダー的存在なのだもん!」
「ピケル、迷惑をかけているあんたが言っても効果はないと思うけど?」
「クランちゃんのいじわる―!!」
「おー、クランはいじわるなのかー」
ハッ! いつの間にかここがカオスな状態になっている! え? なんでこうなっているの? ピケルちゃんとアウスさん、なんで目が潤っているの? 泣いちゃうの? え? なんで? クランさん、なんでそんなに目がキラキラと輝いているんですか? それにこんな状況でも寝られるんですね、ウィンさん。
もう、訳が分からないよ。