※独自解釈在り
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にじさんじssもっとはやれ~
みんなで力を合わせたら必ず帰れる。そう、にじさんじのみんなでなら、必ず。
そんな感じで自分を勇気づけながら、リゼとあたしと笹木でちょっと遠くまで部品を探しに来た。もう発電機は直ったから燃料以外がたくさんあったらいいな。そんなことを考えながら笹木と話す。
「あでも燃料とかばっかりだね」
「燃料いらんやんね」
「もういらんよな」
えっと、なにがいるんだっけ?まあ、笹木の反応からここには大したものはないだろうと考えて、次の場所に行こうと入り口まで戻ったところで、笹木の声が聞こえて振り返った。その時
「あっ青のトランシーバー
ダァン!
背中に強い衝撃を受けた
「え?……誰……?」
痛い!衝撃が体の奥まで響いて頭がくらくらする。でもそれ以上に信じられない気持ちのほうが強い……!
笹木は本当に気づいていないのか、それとも気づきたくないのか。
あたしのうしろにいるのは
「リゼしか……
ダァン!
二発目の発砲音――トレイターは
「リゼだ!」
とにかく、早く、逃げなきゃ――――
「やばい、もう二人で出て、もういこう!?ボコボコにする!?」
銃を持っている相手に、素手で立ち向かえるわけがない。そんなことはわかっていても、強気な言葉を使っていないと心が折れてしまいそうで。
ダァン!
「逃げる!?」
あたしの言葉が合図になったのか、笹木が唯一の出口から飛び出す。それについていこうとして
ダァン!
銃声がして、前を走る笹木の体から血潮がしぶくのが見えた
「逃げろ逃げろにげてにげてにげて!」
叫ぶ
笹木が逃げる方向を変えたことでこちらに銃を構えて笑みを浮かべるリゼが見えるようになった。笑顔はいつものリゼと変わらないように見えた。でもそれがこちらを殺そうとしている行動とあまりにも合っていなくて、それが無性に怖い。
あたしの中の感情的な部分が、トレイターがリゼではない可能性を訴えていたけど、これで逃れようのない現実になってしまった。
「別々に逃げて言おう!みんなに!」
放たれ続ける銃弾から逃がれるのに必死でもう笹木に聞こえているかすらわからないけど、叫ぶ。
散弾が体のすぐそばを抜けていくのに冷や汗が出る。
直撃はしていないけど、何発か当たってしまった。あと一発でも体のどこかに受けたら動けなくなる!
やばいやばい「やば――」
「にがした」
全身に冷水を浴びせられた。そんなはずないのに、本気でそう思った。
長いこと雪山にいるからもう寒さにはなれたと思っていた。けど、それでも心までは冷えていなかったんだと今気づいた。
背後から聞こえてきたリゼの声は、今まであたしを先輩と慕ってくれていたかわいい後輩から放たれるなんて想像もできないほどに無機質で冷え切っていて。
あたしは、お茶目なギャグで場を和ませるかわいい皇女様とはもう二度と会えないんだと気づいてしまった。
「笹木さんなら追えるか……」
いつもの朗らかな笑いとは真逆の、嗜虐的な笑いを含んだ声が聞こえる。
静寂
銃声
「えへへやったぁ~楽しかったぜ先輩との友……」
遠くなるリゼの言葉を聞きながら走る。
笹木は、笹木は、笹木は。笹木は――――
「死んだ……誰かぁ、だれか……」
助けて
「笹木がやられ、あぁ……クマだ……!嫌だ」
ダメだ、こんなところでクマに殺されるわけにはいかない!
だって、みんなに伝えなきゃ!リゼが、リゼがトレイターだったって……
「みんなどこ……」
行きは賑やかで、こんな雪山なんてみんなで力を合わせればすぐに脱出できるなんて思ってたのに
「みんな」
一人がこんなに寂しくて
「みんなどこぉ……」
こんなに怖いものだったなんて
「 はっ はっ 」
自分の吐息だけが響いては、真っ白な雪に吸い込まれていく。
「家に帰れない」
無意識に口を出てしまった言葉にとても怖くなる。考えちゃダメだ。そんなとき
――――えっと
声が聞こえた。この、優しくて温かい声は。アンジュ!
「アンジュ!アンジュ!」会いたかった
そう続けようとした声は、アンジュに届いていないことに気づいて止まった。
小屋の近くで雪に埋もれるように倒れるアンジュの遺体が視界に入ってハッとする。
そうだ。アンジュの声が聞こえるはずがない。だってアンジュは。
もう死んでたんだ。
やっと見つけた拠点の山小屋で、少し前に起こったことが一瞬で脳内を駆け巡った。
アンジュは最初の被害者だった。毒に侵されて死んだんだってかなかなが言ってた。
その時はまだ小屋にあったトレイターと呼ばれる化け物について書かれた古い手帳を見つけていなかったから、仲間の皮をはいで成り代わってしまう恐ろしい化け物がこの山に潜んでいるなんて思いもしていなかった。吹雪がやんだらすぐに帰れると思ってた。それなのに……
ある時アンジュの様子がおかしくなった。落ちてたベリーを食べてからだという。みんなは落ちてるものなんか食べるからあたったんだ!なんて笑ってたけど、アンジュは毒が入ってると断定していた。今思えば、錬金術師だからそういうのには詳しかったのかもしれない。心配だったけど元気そうにみえたし、食料も薪も必要だから、みんなで取りに行く間小屋で安静にしてもらってた。そしたら、まるでつながってた糸がいきなり切れたみたいにプツリと意識を失って、二度と目覚めなかった。
もっとアンジュの話を聞いてたら……と、今となっては意味のないことを思う。
その時のリゼの反応に違和感を覚えたのは、あの時すでにトレイターがリゼに成り代わっていたということなのか、そうでないのか。もう考えたってわからない。
ということは、この聞こえているアンジュの声は、あたしの幻聴……?雪山で遭難した時、あまりにも強いストレスで幻聴が聞こえるという話を聞いたことがある。そう考えたところで、てんかいじがどうとか畳がどうとかあたしにはよく分からないことを話しているのに気づく。そうだ。死んだアンジュの声が聴けるはずがない。アンジュ……もう一度会いたいよ。
「みんなに会いたい。ねえみんなどこ……?」
アンジュの遺体を横目に誰もいなくなった小屋を離れて当てもなくみんなを探す。
しばらく歩いたけど、自分の足音が響くだけで、みんなの姿は影も形もない。
体だけで、心の大事な部分が温まることはないとは知りながら、焚火の準備をする。
「ここであったまって来るの待つ……」
何かしていないと、静寂と不安に押しつぶされそうだった。
『…るって言った……』
「あっ葛葉!えっ?」
いきなり懐のトランシーバーが話し出した。葛葉の声っぽい!ボタンを押してこちらも話しかける。
「ねえ!」
「今葛葉の声した気がする!」
思わず独り言が漏れてしまう。でも今は誰かの気配がするだけでこんなにうれしい!
って熱い!声が聞こえたことに集中していたせいで、足が焚火に振れていることに気づかなかった。急いで歩きまわって雪で冷やす。
雪の冷たさでちょっと冷静になって考える余裕が出たとたんにハッとする。そういえば、手帳にはトレイターにはお互いに意思を疎通する手段があるって書いていた。それがこのトランシーバーのことを指しているとすれば……トレーターは
「リゼと葛葉じゃん」
早く
「ねえみんなどこいったの」
早くみんなを見つけてこのことを――そんな風に考えていたところで耳に届くかすかな声
「…ほら……」
もしかして!
「てんかいじ!どこ!ねぇてんかいじどこ!?かなかなどこ!?」
あたしの声が届いたのだろう。だんだんはっきり聞こえだすてんかいじの笑い声が今は何より頼もしい。
「かなかなどこ!?」
「うえうえうえ!多分上!」
そんなかなかなの声が聞こえるほうへ走りよりながら、あたしは言葉にできないくらい自分が安心しているのに気づいた。
椎名さんがかわいすぎたので椎名さんの心情を重点的に書きました。
初めて書きましたのでよかったら感想ください!
ハーメルンににじさんじブーム来て……
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良かったところを教えてください
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椎名さんの可愛さの表現
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原作の再現度
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読みやすさ
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アンジュの不憫さ
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その他