ノイントとの訓練を終えた俺は皆がトラップに掛かった二十階層に戻ってきた。
皆は既にホルアドにある宿屋に帰って行ったようだ。
激しい戦闘後がまだ残っており、そこまで時間は経っていないかもしれない。
怪物は俺を見ていた。
気配を読み取り、まず二つ下の層からにしか人が居ないのを確認する。
誰も倒せなかった怪物との一騎討ち。
華々しい活躍とともに勇者の名声は確かな物へとなるだろう。
ステータス的にメルド団長に劣っている俺では、普通ならば勝てないだろう。
だが、此処には俺とお前しかいない。
魔眼を使って誰かを巻き添えにして死ぬ事もなければ、洗練された荒い動きに文句を言う人もいない。
先制にコネで教わった、鉄甲作用で石を撃ち込む。
本来ならば黒鍵が良いのだが、無いものは仕方がない。
それに、これは体術である為、応用が利く
そこから、聖剣を抜刀し強化の魔術をかけて斬りかかる。
初めて血を流したことに驚愕し、ダメージの大きさに恐れて、全身で敵と認定したのだろう。
激しい雄叫びを上げる。
周りに人が来る前に早急にカタをつける。
ルーン魔術から考えを真似して作った、転換魔術と結界魔術の改良型を用いて中〜遠距離の攻撃をする。
更に、こちらの世界のスキル限界突破を使い、魔力を大量に回して加速する。
カウンターを恐れず、剣を前に突き出しながら加速し、その巨体を貫いた。
そして、怪物は倒れた。
「ベ、ベヒモスが、死んでいる...君は誰なんだ!?」
「俺、いえ、私は天之河光輝、勇者です。トラップでやや遠い所に飛ばされて、此処まで戻ってきました。撤退したメルド団長達は何処にいますか。早く合流したいのですが...」
あの人が今、居なくなるのは頂けない。
俺が帰還すれば、メルド団長への非難も少なくなるだろう。
場所は分かりきっているが、一応聞いておく。
「あ、ああ。メルド団長達ならホルアドにある、宿屋にいるよ」
「ありがとうございます。後のことはお任せします。全力の戦闘で、疲労していましたが、ある程度は力も戻ってきましたので」
「わ、わかった」
そんなやり取りをした後に、ホルアドに向けて走り出す。
メルド団長達が勇者を失ったという報告をする前に着けばベストだが、間に合うだろうか?
結局、宿屋に着いたのは夜になった。
そもそも、外に出たら日が暮れており、これでも飛ばして帰ってきた方なんだが、夜になってしまった。
「あ、天之河くん!無事だったか!おい、メルド団長へ報告しろ!」
「はい!」
入口にいる見張りの兵士がメルド団長へ報告に行く。
『勇者が戻られたぞー!!』
遠くから、凄い足音が近づいてくる。
「天之河が帰ってきた!」
「だから言ったんだ。光輝は死なないって!」
「神様ー!ありがとう」
凄い歓迎だ。
「光輝、おめえ、おめえが消えたとき、俺、俺...」
龍太郎はもう、涙腺が崩壊寸前だった。
「はは、なんて声を出してるんだよ、龍太郎。俺は勇者で、人類の希望だ。そんな簡単にはくたばらないよ」
「おおおお!光輝~!」
俺が生きて帰ってきた実感を得て、我慢した涙が止まらないんだろう。
こういうときは、うんと泣かせるのが良い。
「光輝、無事で良かった。貴方にまで居なくなられていたら、もう、私達は立ち上がれなかったと思うわ」
「雫、その言い方だと誰かが...死んだのかい」
「分かんないわ。ただ、大きな奈落に南雲くんが落ちていって...」
「分かった。南雲は行方不明で、死亡の方が可能性が高いという訳だな」
本当は生きている。
回収が出来ていないだけで、意識を取り戻すまでなら、安全な結界にいる。
それに、回収は一人一日に一回だが、結界を張るのなら、いくらでも大丈夫だ。
当然ながら、俺の魔力を使い続けるから、魔術回路は開きっぱなしだ。
魔眼を作動させないように、眼をズラしているが、きついな。
魔眼殺しを作る必要があるかな。
「光輝、その、南雲が落ちたのも、皆をあんな目に遭わせたのも俺の所為だ。すまねえ」
龍太郎がいきなり謝ってきた。
いや、それなら、罠に掛かった檜山の所為だし。
そうなるように見逃した俺の所為だ。
「龍太郎、まだそれを言うの!あれは仕方が無い事よ!貴方の言い分も間違ってはいないわ」
「だが...」
「龍太郎。詳しく教えてくれないか?」
「俺は、あの怪物が出た後、逃げろって言ってたメルドさんに逆らったんだ。メルドさんの指示に従っていれば、南雲があんな目に遭うことはなかった」
「龍太郎!光輝も責めないで。龍太郎は、貴方の事を思って...!」
「話はわかったよ。龍太郎も雫も、皆も頑張ったんだよな。ありがとう。龍太郎、お前のことだから、俺が戻ってきたときのことを心配していたんだろう?嬉しいよ。それに、謝るなら、俺の方だ」
「光輝?」
「皆が苦しんでいるときに、俺は側にいれなかった。皆を守ると、連れて返すと約束したのにだ。済まなかった。だが、もう、誰も死なせない!どんな敵が来ようが、どんな困難が来ようが、俺の...いや、俺たち全員の力で乗り切ってみせる!もうこんな思いをしないためにもだ!」
静かになって、皆に火がつく。
「うおおおおお!」
「俺だって、負けねぇぞ!」
「ああ、やってやる!」
皆がやる気に満ちあふれている。
そして、メルド団長が現れた。
「光輝、そして皆。済まなかった。あれは完全に俺のミスだった。お前達と一緒ならば何があっても大丈夫と油断をした結果だ。お前達は迷宮は初めてで、戦闘経験も少ないのに、危険な場所だと知っていたはずなのに、油断をした俺の所為だ」
メルド団長が謝る。
たしかに、これはメルド団長の監督ミスだろう。
だが、今俺たちに必要なのはそれではないのだ。
その言葉ではない。
「メルドさん。この話はもう無しにしましょう。反省もして、現実も知りました。お互いが非を認め合って、時間を潰すのは止めましょう。今は時間が惜しいんですから。俺たちのことをもっと強くさせて下さい!もうあんな目に遭わないためにも!」
メルド団長の目を見て、心を揺さぶる。
「ああ、わかった!.........お前ら!飯の時間だ!食わなければ力は出ない!その決意を実行できんぞ!!食堂へ集合だ!!!」
『おおおおお!』
こうして、長い一日が終わった。
一対一ならば、この段階でベヒモスを倒せます。
まだ、レベルが足枷で地球より力を出せてはいませんが...
勿論、霊器解放すればもっといけます。
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