あの後、俺たちは一度ハイリヒ王国に帰っていた。
決意を固めて戦う生徒もいれば、現実を知り恐怖を覚えて戦意を無くした生徒もいた。
一度部隊を編成し直す、また、南雲ハジメの死亡のことを報告することも含めて、俺たちは帰還した。
雫はあの日から気絶している香織を部屋に寝かせに、龍太郎は決意を新たにした生徒達と、早速訓練に行った。
他のまとめ役の生徒は、王国で別行動せざる終えなかった愛子先生に、先日のことについての事を報告に行った。
俺はメルド団長と共に、国王やイシュタル、王国の重鎮達に事の次第を説明しに向かった。
「.........以上が、昨日に起きた勇者一行の一人、南雲ハジメの死亡と勇者、天之河光輝の帰還になります。私の重大なミスです。いかなる処分も受け入れます」
メルド団長が深々と頭を下げる。
国王が何かを言う前に、イシュタルが口を開く。
「確かに、ミスはいけませんが、勇者天之河が単独でベヒモスを討伐してから帰還しましたし、貴方以上に群を纏められる人材も居ません。なので、罰は無しで良いでしょう」
この一言によってメルド団長の無罪が決まった。
それに、南雲ハジメが死んだという事実がそこまで重く感じないのだ。
周りの重鎮達も死んだのが無能で良かったと思っている。
「ええ、イシュタルさんの仰るとおり、南雲は死にました。では、貴方たちは何をしてくれるのですか?」
「はい?何とは?」
重鎮が疑問の声を上げる。
いつもの、目上に対する丁寧な言葉ではなく、天之河光輝という一人の男としての声を出す。
「南雲は、俺たちを守るために勇敢に立ち上がった戦士だったと皆から聞きました。彼が死んだのは貴方たちの言う無能だからというのも、あるかもしれません。しかし、南雲は元々そちらの出身ではありません。俺たちもです。俺たちは貴方たちが必死に生きて救われたいと言うから立ち上がって戦っています。なのに、貴方たちは何をしているのでしょうか。領土運営や外交問題で忙しいとは思います。ですが、元々この問題は貴方たち自身が解決せねばいけない問題のはずです。それを俺たちに手伝わせて、失敗したら罵って切り捨てるのですか?それが貴方たちが取る亡くなった勇者への対処というのなら、俺はもう二度と貴方たちのために戦いません。俺以外も言うと思います」
「では、我々に何をして欲しいと望む、天之河様。我々の兵士が戦死された時の対処をしようにも、彼には遺族がおりません。どのような対処がお望みで?」
国王、エリヒドはそう口を開いた。
彼は、俺に少し微笑んでいる。
こちらが行う対応よりも、そちらの意見を尊重するという事だろう。
「まずは、遺族に対して払われる賠償金を俺たち全体にしっかりと払ってください。そして、今回の事件を境に戦えない生徒が出てきます。その生徒達の安全と衣食住の保証を!更に本人達が立ち直るまで戦闘行為をさせないでください。後は、職の斡旋もして欲しいです。何も出来ないというのは酷く辛いことですから。最後に南雲ハジメの名誉を守ってください」
「その願い必ずや、叶えて見せよう」
そう言って会議は終了した。
皆の元へ帰っている途中にメルド団長が口を開く。
「光輝。ありがとうな。お前のおかげでこの国全体が良い方向へ向かうかもしれない。俺たちはお前達に甘えすぎていたようだな」
「あまり持ち上げないで下さい、メルドさん。俺は若いから調子に乗りますよ。それに、何だかんだ言って、戦うと決めたのは本人達です。周りの意見に流されようが、選んだのは俺たちです。その責任を自分一人で受け止められただけ、南雲は幸せな方だと思いますよ。少なくとも、俺はそうじゃない。俺が行った選択で周りも巻き込んで、こんな目に既になっています。俺の失敗は俺だけの責任にして抱えて終われないんです。自分の行いが自分にだけ返ってこれれば一番幸せなんですけどね」
「光輝、お前は...」
「メルドさん。早速訓練に付き合って貰って良いですか?皆も頑張ってるから、俺も頑張らないと!」
「...ああ、わかった。いくらでも付き合うさ!お前の、お前達のためならな!」
そう言って、俺は訓練に参加した。
強気に出た光輝君。
本人的には、やっちゃった感が...
死刑はないけど、なんか罰が来ても可笑しくはなかったと反省中です。
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