長くなっているので、切りの良い所で終わっています。
次回は少しは早く出せるようにします。
それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。
現在は謁見の間にて、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っている。
迷宮攻略組に、王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人も揃っていた。
「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」
「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」
「うむ、まずは紹介させて頂こう。天之河様、前へ出て頂けますか?」
「はい」
陛下と使者の定型的な挨拶の後、俺たちのお披露目となった。
俺を始めに、次々とメンバーが紹介される。
「ほぅ、貴方が勇者様ですか。随分とお若いですな。失礼ですが、本当に六十五層を突破したので?確か、あそこにはベヒモスという化物が出ると記憶しておりますが...」
使者は、イシュタルの手前露骨な態度は取らないものの、若干疑わしそうな眼差しを向けた。
使者の護衛の一人は、値踏みするように上から下までジロジロと眺めている。
自身は姿をさらさずにいるのに値踏みをする姿勢は正直好ましくない。
「えっと、ではお話致しましょうか?どのように倒したかなど...ああっ、六十六層のマップを見せるとかどうでしょうか?」
とりあえず、辺り触りのないことを言う。
無論、こんな事で納得はされないだろう。
今まで無関心で有りながら、何を今更と言いたくはなる。
俺は確かに、どちらかと言えば、人が良い方だが、礼節を弁えない人間に優しくするのは正直苛立つ。
色々提案するが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。
「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか?それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」
ベヒモスごときに勝てず、特に策も無く此方に興味を示さず、助けを求めている人間で有りながらこの不遜な対応。
俺には嫌いな物がある。
努力が出来ない、しない者が、自分に出来ること以上のことを求めることだ。
昔の自分自身がそうだったからこそ、嫌になるのだ。
だが、それでもそれを表に出すわけにはいかない。
俺の行動一つで国際問題に発展しうる。
人類が協力して行かなければいけないのに、個人の我が儘でそれを破綻させてはいけない。
「まあ、私は構いませんが...」
エリヒド陛下に視線を向ける。
イシュタルならば、その話術を持ってこの場を押さえられるはずだ。
エリヒド陛下は俺のの視線を受けてイシュタルに確認を取り、イシュタルは頷いた。
イシュタル、お前の詐欺師的な話術で平和的に解決してくれることを期待した俺が馬鹿だったのか。
こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定されて、一行は場所を変える。
俺の対戦相手は、値踏みをしていた姿を偽っている男だ。
恐らくメルド団長と互角か少し上位の実力だろう。
彼が帝国で何番目かは知らないが、実力主義の国だけはある。
勇者の力をある程度解放すれば、直ぐに片がつくだろう。
しかし、それではいけない。
模擬戦をするからには、お互いが讃え合う必要がある。
そして、外交でもある以上、ある程度は相手に花を持たせなければならない。
一見ダラリとしているが隙の無い構えをしている。
「行きます!」
馬鹿みたいに声を出しながら、相手に真っ正面から突っ込む。
洗練された動きで、ごく普通にカウンターを叩き込んでくる。
恐らく、見た目よりも年を取っているのだろう。
達人の動きで、メルド団長よりも鋭い攻撃だ。
やはり、読みは正しく、メルド団長よりも少し上の実力の持ち主だ。
「ガフッ!?」
それをわざと当たり、派手に転がる。
だが、しっかりと受け身を取り、動きの割にはダメージを負わないようにした。
護衛の方を見る。
その表情には失望が浮かんでいた。
予想以上に歯ごたえがなくて呆れているのだろう。
此方としては、使者の護衛というデリケートに扱わなければならない相手に、ベヒモスと同じように戦って貰えると期待していたと思っていたであろう相手に驚きを隠せない。
「...おい、勇者。元々戦いとは無縁か?」
今更な質問が飛んでくる。
そんなことすら知らなかったのか?
皇帝は何を思って彼を護衛に付けたのか?
そもそも皇帝は勇者達のことを何処まで知っているのか?
王国はそんなことも帝国に伝えていないのか?
不安な考えがいくつも過ぎる。
こんな連中に大切なクラスメイトの命を預けて良いのかと不安が浮かぶ。
こんな奴らを守るために、皆の命をかけ続けるのか?
思考が纏まらない中、それでも、使者もいる手前、返事をしなければならない。
「ええ、そうです。私達は皆元は学生。戦争が無い平和な国で武器を持たず、文官や商人を目指して生きてきました。武道に心得のある者いますが、それは自身の精神面を鍛えるためであって、貴方たちのように戦って命を奪いやがて死んでいくための物ではありません」
やや失礼に当たっても、貴方たちと一緒にするなと言うことを伝える。
自分たちがそういった身分の人間を、戦いに引きずり込んだことの重さを理解させなければいけない。
そして、そんな人間を無視して、自分たちの好きなようにして協調性を見せなかった帝国の非を認めさせなければいけない。
そのぐらいして貰わなければ、クラスメイトの命を預けたくない。
「...それが今や〝神の使徒〟か」
男はチラッとイシュタル達聖教教会関係者を見ると、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「構えな、勇者。これ以上腑抜けているようなら...」
聖剣で相手の大型の剣を受け止める。
言葉の意味が通じていないのか!?
それでも、ベヒモスは殺せたとでも言いたいのか?
戦争する覚悟を見せろとでも言っているのか?
戦争が出来る奴なんて、クラスにいない。
現状で、殺しを認めさせるわけにはいかない!
人を殺せないならば、いらないとでも?
だが、一番占めているのは、こんな事も出来ない勇者達ならいらないだろ?
癪だ。
だが、俺が出来ると言っても、クラスの皆は出来ない。
クラスの代表である以上、俺は、怒りを抑えなければいけない。
俺が出来るとクラスが出来ると思われる。
それだけは許してはいけない。
俺一人が耐えれば済む話だ。
そしたら、数日流せば今まで通りだ。
帝国とは干渉しなければいい。
人類を救えば良い。
人は救わなくて良い。
救えない犠牲の比率が帝国に偏っても仕方ないだけだ。
考えながら戦っていると、唐突に向こうが止まる。
「やめだ」
その後に言われたことはあまり覚えていない。
その男が隠していた姿を見せる。
「ガ、ガハルド殿!?」
「皇帝陛下!?」
その言葉を耳にして、俺は怒りに飲まれた。
皆の前で怒りと本気を見せた。
感想お待ちしています。