話が余り進まなかったです。すいません。
どこかで、光輝の過去回も書きたいなぁ。
今回からオリキャラが出ます。
早朝、愛子先生と教会の騎士数名と、一部の生徒を含む農地改革部隊がハイリヒ王国を出発した。
その後、国王陛下が帝国と亜人族の間で戦争が起きた事を国民全体に伝えた。
同盟国として、援軍を派遣する事を伝えられた。
勇者である俺が出向くのは確定事項だが、他のクラスメイトは参加は自由になっている。
俺は、国王陛下からの命令を受けて直ぐに騎士団の中でも一番槍に選ばれた精鋭達と合流したため、他のクラスメイトが付いてくるかは分からない。
若しかしたら、騎兵部隊と共に行くのでは無く、歩兵部隊と一緒に進軍してくるかもしれない。
「失礼します。騎兵隊の部隊長ロイです。勇者様は、馬を扱えますか?」
唐突に話を掛けられたので、振り向く。
話しかけてきた騎士ロイは、今回俺が同行させて貰う部隊を率いる人物だ。
小柄なのが特徴だ。
彼の率いる騎馬隊と共に、歩兵部隊より先に帝国入りをして、戦場で戦う。
そうすることで、ある程度の誠意を見せつけておくそうだ。
肝心の質問だが、当然馬を扱える。
「ええ、勿論。乗馬の経験はあります。最初の方は迷惑を掛けると思いますが、走る事になれれば速くてもなんとか追いつけると思います」
「了解致しました。我が騎士団が所有する馬の中でも選りすぐりの物をお渡しします」
「ありがとうございます」
そう告げた後、騎士ロイは去って行き、俺はその後を追う。
そして、馬小屋につく。
そこにいたのは、周りの馬よりも一回りは大きい物で、角を生やし牙を持ち、大きな翼を持っていた。
白い体に黄金の鬣を持ち、片方の瞳は橙色でオッドアイである。
「これは、立派な馬ですね」
「もっと驚かれると思いました。まあ、察しの通り普通の馬ではありません。研究者達の見立てでは神の使いと魔物が混じり合った新種ではと言われております」
「これに乗れと?」
「申し訳ありません。団長方の馬はお貸し出来ませんし、その他の馬では勇者様には不釣り合いかと思いまして」
騎士ロイは素面でそう言う。
どうやら、勇者パーティーのことをどう思っているかは分からないが、俺個人の事は凄く嫌いなようだ。
恐らくは嫌がらせなのだろう。
この世界の住人に、好かれる要素を多く持っているが、それに並ぶほど嫌われる要素を持っているため、そういった反応をされても仕方が無いと割り切っているし、俺で良かったとも思っている。
それに、向こうも厳しい審査を通って騎士になった男。
この白馬よりは劣るが、周りよりも丈夫な足を持っている栗色の馬がいる。
何よりその馬は、この中で唯一白馬に対抗心を抱いている。
俺に白馬の存在感を植え付けて、いつもの姿とは違う側面を見せてから、この馬を紹介しようとしているのだろう。
それに、周りに人のギャラリーが居ない分、嘲笑おうとしているわけでもないようだ。
そう思うと、嫌っているというよりは、敵対心やライバル意識に近いと俺は感じる。
「この馬は、特別なんです」
「特別ですか?」
「ええ。怪我をしていた姿で見つかり、騎士団で保護しようとしたのですが、凄まじい抵抗を見せました。当時の騎士団から死者こそギリギリで出ませんでしたが、引退した人も少なくはありません。ですが、リリアーナ王女殿下を見たその瞬間、嘘のように獰猛な姿を沈めたのです。人の腕を食いちぎっていたとはとても思えないぐらいに静まり返ったのです」
「まるで、その場面を見ていたかのようですね」
「ええ、この目でハッキリと見ましたから」
騎士ロイは俺が思っていたより年を取っているのか、若くして騎士団に入ったのか。
気になってしまうが、今はそれよりも聞かなければいけない事がある。
「では、この馬は王女のでは?」
「それが、違うのです。嘗てはそうでしたが、実際にリリアーナ王女殿下が初めて、白馬に跨がるときでした。この白馬の放つ魔力に耐えられず、リリアーナ王女殿下は飛ばされてしまいました。それ以来、この白馬は王女への面会も許されず、此処で過ごしています。言う事を全く聞かないので、騎士団としては困りものです」
この馬にそんな事情があったのは意外だ。
だが、引っかかる事がある。
馬がなついていないという事は、威嚇なり、無視なり、それ相応の行動を取るはずだ。
なのに、騎士ロイに対して、この馬はそのような事をしていない。
「私がこの白馬に嫌われていないかが、不思議ですか?」
「はい。まあ、その通りです」
「腕ではありませんが、横腹を食いちぎられました。ですが、鋭い一撃を与えたのも私だけでしたので。その時は騎士団長は別件で留守でしたし。強い者には一定の理解があるようです。...それだけなら、とっ、話が逸れました。そういうわけで、私以外にも警戒されない者はいます。ただ、そういった面々ですら乗せてはくれません。まあ、私は身長が足りませんので飛び乗れないのが大きな理由ですけど」
「そうですか。でも、そんな馬を俺に?」
「試されるだけでもなさって下さい」
そう言われて騎士ロイに押されて、白馬の前に立たされた。
白馬がその橙色の瞳で俺を見つめる。
そして、唐突に尿を掛けられた。
更にウィンキングをし始める。
「ロイさん。この行動って、もしかしなくても」
「あっ、ああ。うっうん!求愛行動でしょう。いやぁ、私も彼女がこのような行動をするとは予想外ですね。乗せて貰えるのでは?」
「その前に、この子と二人っきりにして下さい。少しお話がありますので」
「わ、分かりました。その、タオルをお持ちしてきますね」
「お願いします」
そういって、騎士ロイは去って行った。
俺が余りにも不憫だったからだろう。
だが、賢い馬が人を馬と見間違える事は、そうないだろう。
だからこそ、俺は自身の立てた仮説を元に、白馬に話しかける。
人間を番いにしたい変態なら諦めるが。
「お前、俺の過去を覗いたのか?」
白馬は縦に首を振る。
「つまりお前は、過去に俺が使っていた馬に恋をしたっていう訳か?」
白馬は縦に首を振る。
「気づいているだろうが、彼奴に会わせる事は出来ない。ライダーのクラスで呼ばれる事が出来れば可能かもしれないが...現状は不可能だ。ただ、俺と縁を結ぶというのならば、一概には言えないだろう。お前は此方側の基準で見ても中々の神秘を保有している。俺の宝具に慣れるぐらいの縁になれば、彼奴に会えるだろう。お前はどうしたい?このまま、誰も乗せる事も無く、自由に野を駆ける事も無く、誇りも抱けぬままただ飼われて生きるか?それとも、俺と共に戦場を駆け抜け、数多の敵を屠りその名を世界に刻むか?お前の生だ。お前自身が選択しろ」
白馬は自身に付けられている鎖を砕いた。
自由になった白馬はその叫びで馬小屋を震わせた。
「流石は勇者様ですね。ずいぶん手懐けたようですね。どうぞ。タオルです」
騎士ロイが馬小屋に戻ってきた。
騎士ロイは、白馬には優しい顔を。
俺には、祝福と敵愾心を含む視線を浴びせる。
彼の思惑通りに進まなかったから、もっと嫌そうな顔をするのかと思っていた。
此方側の戦力が上がるのは嬉しいが、警戒心がより高まったといった所か?
「ロイさん。俺の事がそんなに嫌ですか?タメ口で構いません。本音を聞かせて欲しい」
直接揺さぶる。
今回の戦いは、高確率でサーヴァントとも戦うだろう。
後ろから刺される不安を抱いたままでは、戦う事は出来ない。
俺に危害を加えるか加えないか、それだけはハッキリさせたかった。
「正直に私に話を伺った君に、正直に私は答えるべきなんだろうね。君に人としての好意を向けられるかはまだ分からない。こうして面と向かって話すのがそもそも、今日が初めてだからね。今は、悪い人間とは思ってはいないよ。それはそれとして、君が王女に近づいている事は嫌だね。この世界の生まれではない君なら、どの段階でも裏切られるからね。そういった意味で、僕は君だけではなく、君の学友も本当の意味では信じ切れてはいないよ。多分、騎士団の中だと僕ぐらいだよ。だから、気にしないで構わないよ。どちらかといえば、僕が国全体で見れば可笑しい人だから」
単純な王女や王族の崇拝者という訳ではないと感じる。
言ってる事は、王族の事しか目に見えていない狂信者のようにも聞こえるが、彼の目は違う。
「さあ、勇者様。準備が整いましたら、早く出発しましょう。民の列が増えれば、帝国への到着が遅れていきますから」
「分かりました。ロイさん、この子の名前は?」
「アイリスです。大事にして下さい」
「分かってます。行こう!アイリス!」
馬小屋を出て、既に集合していた騎兵隊と共に城を出る。
俺は騎士ロイと一緒に真ん中にいる。
城下町に出た瞬間!
爆発的な歓声が響く。
「騎士様!勇者様!忌まわしい亜人族に裁きを!」
「身の程知らずの獣どもに、人の力を知らしめて下さい!」
「嘗て殺された、同胞達の仇討ちを!」
「俺たちの正義と自由のために!」
勇者!勇者!勇者!と多くの人間が同調していく。
ここまでの盛り上がりを見せたのは、イシュタルが事前に焚きつけたのだろう。
この連帯感を自身達を奮え立たせる事に使ってくれればと思う。
他人に頼り切るのではなく、自身に使って欲しい。
「任せろ!この天之河光輝がいる限り、人類に敗北はない!我が剣、我が身はハイリヒ王国と共にある!この剣がある限り、この国は滅びず、この国が滅びぬ限りは、我が剣は決して折れぬ!吉報を待っていてくれ!」
その考えとは逆に、道化らしく、格好つけた事を言うが、先頭に立っていない時点で、余り意味はないか。
しかし、大きな拍手に指笛、それに女達の黄色い悲鳴。
「余り勝手な事は言わないで頂きたい」
騎士ロイが忠告する。
当然の反応だろう。
「申し訳ありません。ですが、これで失敗は出来なくなりました。後が無くなりました。乗り気で無い人がいたとしても、本気にならざるを得ないでしょう。それに、声援には応えたいじゃないですか」
出来る限りの笑顔を貼り付ける。
現実を知らない、愚かな男の笑みを貼り付ける。
「君は、とんでもない嘘つきなんだな。苦しくないのかい」
騎士ロイは俺の前に馬を走らせた。
何故、気づいたのだろう。
苦しくはない。
ただ、そんなに演技が下手だったのだろうか。
感想お待ちしています。
次回もよろしくお願いします。