ありふれてはない元守護者の異世界戦闘録   作:ギルオード

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過去回二回目です。
色んな世界線が混じってはいます。
生前の天之河光輝の友好関係は大分広いですね。
深くはないけれど。


邂逅

果たすべき正義を求めていたんだ。

他者から与えられる借り物ではなく、自分自身で見出さなければいけないのに。

お祖父様の姿を理想にして、正義にしていた。

俺に正義はなく、間違っていることだけは分かっていた。

逆にそれしか分かっていなくて、正義というものが分からなくて、そんな時に彼女を見つけた。

彼女との出逢いはきっと、良いものではなかったのかもしれない。

事実、俺は半分洗脳のような状態だった。

だから彼女の瞳に魅入ってしまった。

それでも、俺は助けを求めた声を、目を否定したくなかった。

やや重たいが、解けない暗示ではなかった。

でも、解いてしまったら、あの頃の俺は彼女を見捨てざるを得なかった。

そういう風に自分を歪めていたから。

だから、俺はやっと苦しんでいる人を救うために、彼女に洗脳されることを選んだんだ。

例えそれが、世界の思惑通りだったとしても。

 

 

 

 

 

彼女に名前はなかった。

ホムンクルスという訳では無かったけれど、生い立ちは特殊だった。

生まれたときから、その身に神の槍と神の瞳を片方もっており、その槍の所為で母親は胎内を引き裂かれ亡くなったようだ。

父親からは疎まれて、売られ捨てられ、時計塔に着いたようだ。

俺も九つだったけれど、彼女はまだ四つだった。

俺は彼女の存在に抑止力が絡んでいると推察した。

俺の存在もまた、抑止の力によるものだと祖父に教えられており、何かを感じ取れるからだ。

その何かは、今の俺でもハッキリとは分かっていない。

名無しと呼ぶのも、個体名を呼ぶのも気が引けた俺は、彼女をミルと名付けた。

ミルは生まれながらに人として扱って貰えていなかった。

俺はそんなミルに人並みの生活と平穏を与えようと思っていた。

だが、致命的なまでに、俺自身が『人並みの生活』というものを、理解仕切れていなかった。

学校には行けず、一家の魔術や技を覚えることに時間を費やした。

一人前に早くなりたかったから、お祖父様の忠告を振り切った。

お祖父様自身、跡取りと抑止力の事を知っていたから、強くは止めなかった。

お祖父様が亡くなった後は、世界を回り時計塔へと入った。

表の世界の経験が全くなかったんだ。

身元を保証してくれそうな身内は、俺が時計塔を裏切ったのを知ると、刺客を送るようになった。

とにかくミルが安心して暮らせる場所を求めて、歩き続けた。

そんな日々の中、俺が刺客と戦い退けている間に、ある出来事が起きた。

ミルが『戦乙女』を起動させたのだ。

ただ、その戦乙女は壊れかけていた。

大源(マナ)を大きく扱うことが出来ず、戦闘機能の殆どが使えない状態だった。

 

「現代の大源に合わない企画」と、言っていた。

 

それでも、戦乙女は強かった。

晩年の頃なら未だしも、子供の頃の俺ではどれだけの奇跡が重なっても、勝ち目の無い相手だった。

ミルは戦乙女をお母さんと呼んでいた。

俺も、お母さんと慕った。

お母さんは、戦闘よりは家事の分野に手を伸ばしだした。

 

「これなら、私も学習出来ます」と言って。

 

俺たちは対等な家族へと変わっていった。

主従関係や、庇護すべき対象ではなく、母親と長男長女の一家へとなっていった。

お母さんは、その頃にはキュリアと名乗っていた。

人間になっていこうとしていた。

時計塔に目を付けられていないような、大源が特に薄い場所で生活をしてた。

幸せだった。

唯々幸せだった。

人生を振り返って、これ程幸せだった時間はなかっただろう。

だが、その時間に終わりが訪れる。

その前触れの事件が起きた。

一言で言えば、ミルが神になろうと暴走を始めた。

今までミルの持つ、消失したと言い伝えられた【オーディンの瞳】は、お母さんのルーンと俺の布で封印を施していた。

だが、ミルが七つになった頃にその封印が解けてしまう。

その時は、お母さんと俺で鎮めることができた。

封印もより強い物へと昇華させた。

お母さんが言うには、神代エーテルの不足による、神代回帰の失敗だと言われた。

ミルが何故神に近づいていっているのかは、二人して理解出来なかった。

だが、今思い返せば原因は俺たちにあった。

神代の遺物たる、キュリアお母さん。

神代から続く家系であり、先祖返りをして、決して多くは無いが、少なくも無い神秘を纏い、なにより抑止力と契約している俺。

それに触発されたんだろう。

ミルを治す方法はなかった。

俺の魔眼で力を奪おうとしたが、逆に返り討ちにされ、気絶してしまった。

だが、その症状を遅らせる方法があった。

神の側面では無く、人の側面を強めることだ。

だが、それをするには、莫大な魔力を持って神の側面を抑える必要があった。

今住んでいる場所よりも、遙かに強い霊脈を求める必要があった。

神を抑えるのに、現代の人間一人では立ち向かうことなど出来ない。

故に、霊脈にミルを繋ぎ、その地に住む住人の生命力と魔力を少し吸い上げる必要があった。

だが、その上で魔術師のいない場所を見つける必要があった。

腕の良い魔術師がいたら、計画は失敗するからだ。

既に場所の目処を付けてはいたのだ。

祖父に引き取られる前に住んでいたと言われる、家がある。

既に亡くなっている両親が住んでいた町。

調べた限りでは、魔術師はいないか、限界を迎えて没落している。

少し離れた所に冬木市があるため、目立たないことも好条件だった。

希望的観測として、アインナッシュの実を使った治療も考えていたが、一度森を見た瞬間に諦めた。

世界と一体化する中華の技を使う俺とは、相性が悪すぎたのだ。

実力をろくに発揮せぬまま死ぬだけだと、理解したのだ。

これにより、治療を諦めて、俺たちは日本へ引っ越すことになった。

父と母が、俺をどのように扱っていたかが分からない。

偽名を使うのではなく、いっそのこと、天之河を名乗ってはと、お母さんが言った。

バレる可能性もあったが、日本の重要ではない場所を時計塔が監視をしているとは思えないし、何より、名前を偽るという行為は思ったよりも、負担になっていた。

世界と一体化しなければならない自分自身が嘘にまみれてしまえば、合うものも合わなくなるのだ。

不調によって悪い癖を付けたくなかった俺は、それを認めた。

曾祖父には悪いが、海外との女遊びがあったということにして、その時の子供をキュリアの母親とした。

キュリアとミルに天之河の血があることにして、亡き両親の家を引き継ぐことにした。

ミルは小学校に、俺は中学校に通うことになった。

中学校には龍太郎や龍太郎、香織といった、今のよく知る面子もいた。

だが、あの頃の俺は深くは関わることはなかった。

世間体を気にして、キュリアはある程度遅くまで働いていた。

俺は、ミルを悲しませないために家に直ぐ帰り、ミルの相手をした。

公園に遊びに行ったり、ケーキ屋さんにケーキを買いに行ったり、花屋さんに行ったりと、沢山のことをした。

ミルが神に囚われないようにと、必死になっていた。

ミルが友人を作ったときは、心から喜んだ。

人との繋がりがあれば、それだけで人でいられるから。

少しだけ余裕が生まれると、俺も友人を作った。

今とは違い、八重樫の道場に通っていないなどの差異はあるものの、交友関係にさほどの乖離はない。

俺は、ある程度は張り詰めていたが、ミルにとっては安らかな日々だった。

だが、ミルが十二歳になった頃、様態が急変した。

摂取する魔力量が跳ね上がっていった。

その量は日に日に増えていき、衰弱した人間に死者が出る程だった。

夏には時計塔から、監視者が送られ、秋頃には時計塔に彷徨海、そして聖堂教会の三つ巴の戦いにまで発展した。

ミルだけでなく、裏切り者として時計塔と聖堂教会は、俺を始末しようとしていた。

彼等を相手にするため、俺は高校を中退し、争いの日々に明け暮れた。

そして、クリスマスの日に、ミルは死んだ。

 

 

 

 

 

その日のことはよく覚えている。

前日に買ったクリスマスプレゼントを渡しに、ミルを隠してい山奥の小屋へ向かおうとしていた。

その山で大きな爆発があり、俺は直ぐさま走り出した。

急いでいた俺は、まんまと罠に引っかかり結界によって足止めされていた。

結界の中にいたホムンクルスやキメラに、結界を張った術士を殺していった。

そんな中、頭の中にあったミルへの絶対的な感情が綻び始めていることに、焦りを抱いた。

洗脳が解けだしているということは、ミルが死へと近づいている事を意味しているからだ。

ミルを救いたい。

その一心で走り続けた。

俺のやっていることは、絶対に正しいことではないことも分かっていた。

当然だ。

人一人を生かすために、少なくない犠牲を払っているのだ。

正しいはずがない。

でも、それを理由にミルを見捨てることも正しいかと言われれば、俺は正しいとは思えなかった。

俺はこのとき、初めて自分の意思でミルを救うことを決めた。

自分自身の正義を貫いたのだ。

それが何を意味するかを知らずに。

もう一度大きな爆発が起きる。

その爆心地へ駆け出す。

そこには、片腕が無く、両足が千切れ、肩から腰へ向かい大きい傷を負い、火傷も負っている虫の息のミルがいた。

ミルに駆け寄る。

襲いかかってきた相手にずっと抵抗していたのだろう。

腕が千切れるぐらい力を込めて、槍を投げたのだろう。

爆発によって、足は千切れたのだろう。

もう、死ぬその寸前だというのに、オーディンの瞳は閉じられたままだった。

 

「兄様が、光輝が、使っちゃ駄目って言ったから。人間でいたいなら、絶対使うなって言ったから」

 

何故と口走った俺に、ミルはそう答えた。

 

「──────────────────────────────────────────」

 

続く言葉を聞き取れなかった。

絶望と怒りに捕われて、現実を受け止めれなかった。

馬鹿正直に、俺の言葉を護ったから、ミルは死んでしまう。

俺が殺したようなものだ。

ミルは優しく微笑んでいた。

その表情が逆に俺を締め付けていく。

そして、ミルは死んでいった。

そこに、あの男が現れた。

男のことはある程度知っていた。

その思想に興味を抱き、話すこともあった。

友人とは言えなくても、赤の他人ではなかったはずだ。

だからこそ、俺はミルを殺された怒りを、男の思想とは真逆のことをしている事への怒りとを、混ぜ合わせて爆発させた。

 

 

 

 

 

 

衛宮士郎

正義の味方を目指している、全てを分け隔て無く救うと!

それを本気で願っていた。

俺も、その言葉に羨望を抱いた。

本気で応援した。

だからこそ、ミルを斬り捨てて、市民を助ける選択をしたこの男を許せなかった。

貴方なら、俺を間違っていると言い、ミルを救い、市民を救う方法を見つけてくれると信じていた。

俺にとっての理想を裏切った男が、理想を抱かせた本人というのが、堪らなく悔しかった。

その思いをぶつけた瞬間に、意識が途絶えていた。

俺が目を覚ますのは、それから二日後の夜だった。




エミヤとの関係はやや複雑です。
光輝自身が、本当に子供の頃に憧れて、精神が成熟してない時期に確執があるので。
他にも、色々と友好関係はあります。
これが明かされる時は訪れるのだろうか...

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