後数話でオリジナルの話は終わると思います。
「ラアアアアア!」
霊器解放を行い、救世の勇者としての側面を持つコウキへと戻った俺が、雄叫びを上げながら突っ込む。
「フッ!!」
放たれた突きをねじり避け、追い打ちに振るわれた神槍の凪払いを一対の双剣で流し、カウンターが出される。
舌打ちをしながら、槍を回し双剣を弾きながら、縦に振るい突きに繋げる。
空いた左手でルーンを刻み炎を打ち出す。
槍を逸らし、炎を躱され、振るわれる一撃を槍で相殺して鍔釣り合いに持ち込む。
「随分と過激な真似をするな。私の知っている君はこんな事をするような人間ではなかったのだがね?」
「それは此方の台詞だ。あの時言えなかったが、貴様は変わりすぎた!理想を何処に捨ててきた!」
高速の剣戟。
槍と剣の応酬。
互いに傷は負わず、躱された一撃で地面は抉れる。
「まさか、君がその槍を持つとはな。眼の方も譲り受けたのかな?」
「その通りさ。アイツの忘れ形見だ。この槍で貴様を殺したいとどれだけ思っていたか!貴様の亡骸をこの目に写したいと願ったさ!」
消えない憎しみの炎に身を委ねる。
愚かなことだ。
実に愚かなことだ。
先に喋った理屈は本当だ。
数は恐ろしい。
生徒達は死んでも肉体は大丈夫な保険自体はある。
だが、それらを言い訳にしている。
俺たちが相見えるのは、千載一遇の機会なのだ。
互いに抑止の守護者として、同時に召喚をされないようにしてある以上、この機会はもう二度と訪れないだろう。
「貴様は大を救うためならば、小をたやすく切り捨てられる。貴様と俺とでは、話は平行線だ!衛宮士郎ならば話は変わっただろうな!全部を救おうとする彼なら!」
槍を放ちながら、エミヤに的外れなことを言う。
これは、八つ当たりでしかない。
でも、絶対に伝えなければいけなかった。
悲鳴なのだ。
あの時の俺の。
なぜ、ミルを助けてくれなかったのかという、悲鳴を伝えたのだ。
エミヤは何も語らない。
「エミヤ!俺一人が世界を相手に立ち回れるというのなら、俺を過大評価のしすぎで、この世界を過小評価しすぎだ!」
槍に魔力をかき集める。
「何人の犠牲者をクラスから出せばいい?その後の責任は、誰が果たす?遺族に伝えるのは誰だ?俺たちには出来ないだろう!?既に終わってしまった人間が!話せる物か!!」
そう。
俺たちは死人。
俺自身、サーヴァントとして呼ばれた時点で、死んでいる。
天之河光輝の肉体は既にエーテルの塊へと変わっている。
この戦いの果てに、どんな結末が訪れようとも、現実の天之河光輝の死亡は確定している。
「俺は、
「誘導されていた、というわけか。だが、その矛で私の盾を貫けるかな?正当な持ち主である彼女ですら、出来なかったぞ」
「未来の勝利ではなく、栄光の輝きでもなく。我が望むのはただ一つの命。黒点に映す破滅を今此処に!駆け抜けろ、復讐の流星!【
サーヴァントの宝具になる以上、その効力は弱まる。
だが、味方のステータスの向上に高ランクの啓示を付与。
相手によっては様々な恩恵を与えることに変わりはない。
味方を強くする対軍宝具。
その恩恵全てを攻撃のエネルギーに回し、狙いも個人に変えた投擲。
それがこの宝具の正体。
何処までも敵を追い、貫き殺す絶対の意思のもと放たれる一撃。
それは、
「I am the bone of my sword.
迎え撃つは、七枚の花びらを形取る盾。
神秘の塊がぶつかり合う。
トータス全体に、今までの比ではない神秘が一瞬満ちあふれる。
四枚を瞬時に砕くも、三枚目から徐々に槍は勢いを無くし出す。
だが、勇者にそれは関係なかった。
俺はエミヤを振り切り、亜人族の追撃に移った。
エミヤの足を止めさえすれば、俺の追撃は成功する。
エミヤを殺したいのは、変わらない。
だが、エミヤを殺して、亜人族を見逃すのは、俺の敗北だ。
邪魔が入って勇者が任務失敗という評価は、戦争で人類を勝たせたとしても、その名声に傷を付ける。
そこから、周りの仲間達に被害が生まれる。
俺の言葉に説得力が無くなる。
皆を庇えなくなる。
今度こそ、護らなければいけない。
それは、エミヤを殺すことより優先しなければいけないことだ。
「これは、どういうことだ」
だが、事は上手くいかない。
いつまで経っても森から抜け出せない。
宝具を使った影響で眼を休ませていたのが仇になったのだろう。
幻術に囚われたのだ。
「キャスタークラスのサーヴァントが動いたというのか?エヒトルジュエとも連絡が取れない。眼はもう少し時間が掛かる」
試しに魔眼で魔力を吸収しようとするも、不発に終わる。
素の俺とではかけ離れた実力の持ち主なのがうかがえる。
幻術から目覚めるときが来た。
此方から破るより先に、亜人族の撤退が早かったのだろう。
促されるまま、幻術から離れる。
目の前には、槍を防いだエミヤがいた。
周りからは勝利の雄叫びが響いている。
人類が勝利したのだろう。
「エミヤ」
「なんだ。光輝」
「お前達は何のために此処にいるんだ。ランサーやアサシンはハイリヒ王国にいる。カウンターと喚ばれたにしては、動きがばらけ過ぎている」
「正直、誰のカウンターとして私達が喚ばれたかは分からない。それが現状だ。この世界を歪ませない程度に関わり情報を集めている。ただ、仕方が無いとはいえ、バーサーカーは暴れすぎだ。アレを抑えるために今回の戦争には関わっていたに過ぎない。本来なら亜人族も助けるつもりはなかった。が、お前が関わっていたからな。お前はサーヴァントだ。この世界の住人の問題にお前が首を突っ込む。その事に危惧をしたのだが、無用の長物だった。しかし、私の所為とは言え、お前はサーヴァントになってしまった。お前が仮に抑止の守護者として、喚ばれていたとしても、その状態になった以上行き過ぎた行為を取れば、私はお前の邪魔をする。だが、お前が人間としての範疇を護るならば、手出しはしない」
「分かった。俺は勇者として行動する。クラスメイトの力に合わせる。それを遙かに上回り、サーヴァントとしての力を使ったとき、貴様に攻撃されることを認める。その時は俺も貴様を殺す。それに、貴様等が中立に回っていることをしれただけでも、俺には良い成果だ。俺は戻る。どうする、エミヤ。お前達も此方に来るか?」
何処にいるか分からないよりも、手元に置いておきたい。
「いや、そろそろ私は他の所を周わる。敵の情報を集めなければいけないしな」
「分かった。あそこにいる、ライダーとセイバーを誘ってみるとする」
そうして、俺はその場を去った。
今回の話の通り、どのような結末を迎えても天之河光輝という人間が死ぬことに変わりはありません。
クラスから初の犠牲者が出ました。
光輝一人の視点で物語が進んでいますが、今回の戦争の惨状を知ったハジメ側の番外編もいずれ書こうかなと思っています。
シアは絶対に勇者を許せないでしょうね。
ハウリア族にも犠牲者は多数出てますので。
これでも当初よりは死んでいません。
戦場の中心に勇者を置きませんでしたので。
そっちのルートに入っていた場合、ハウリア族に未来はなかった可能性が高いですね。
と言うのも、原作を見るに、本来の危機感知能力が大分無くなってるように見えるんですよね。この時期は特に。
なまじ強くなった直後に、ハジメ達の後を追えるように強くなろうとしているので、撤退しないと思うんですよね。
そんな中に手加減してはいけない状態の勇者、天之河光輝に会うというのがある種の不憫が。
その為、裏方にまわって貰いました。
更に、生前に因縁のあるエミヤを置くことで、足止めをさせました。
感想お待ちしています。